ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

生きることの意味~少子化7

2006-06-11 20:50:41 | 少子化
 生あるものとしての人間について続ける。

●生命の原理

 生命は、自己の保存と再生を目的とするシステムである。生物は自己を保ちつつ、次世代を生み出し、生命を永続させようとする。そこに自衛本能と生殖本能が働く。生体は時間とともに劣化する。次世代を生み出すことで、生体が更新され、生命は持続できる。それと同時に次世代を多数産み出すことで、継続を担保する。それが繁殖となっていく。そういう仕組みを採用しているのが、生物である。

 上記の目的により、生物の世界では、個体の維持よりも、種の存続が追求されている。生物の集団は、生命を共有する集団である。その集団的生命の目的は、集団の維持・繁栄である。  人間社会は単に個人の集合ではなく、生きた個体の集団である。その集団の全体で、生命を共有している。自己の生命が、自己の身体において完結していると考えると錯覚に陥る。人間は、集団生活によってのみ生存・繁栄することができる生物である。

 生命に基礎を置いた考え方に立つと、個人の自由と権利とは、集団の維持と繁栄のために、尊重されるべきものというふうに位置づけ直される。個人そのものに絶対的な価値があるのではない。その考え方は、生命の原理に外れている。

●性徴と恋愛

 人間は、赤子から成長し、一定の年齢になると、遺伝情報のプログラムが働いて、性的な特徴を加える。少女は初潮を迎え、乳房が膨らむ。少年は勃起をし、ひげが生える。それは、生殖のための個体の変化である。男女が互いを求め、結びつき、子供を産み、育てていくための準備である。この生命の働きに従って、男女が協力して、生命を次の世代に継承することが、生あるものの道である。

 男女は、自分の性だけでは生命の目的を果せない偏片的な存在である。異性と結びつくことで、生命の目的を成し遂げようとする。そのために男女が、それぞれ相手を求める。それが、恋愛である。
 男女は異性と対をなすことによってはじめて具全性を獲得し、生命の目的を実現できる。だから、人生において、恋愛は重要な意味を持つ。

 恋愛は、数ある文学の主要なテーマともなっている。恋に陥った若者は、生きている喜びを知る。自分の生命に意味を、存在に価値を得ることができる。異性とのつがいづくりに成功できない個体は、集団的生命の目的を果たすことができない。

●子作りと性愛

 男女は愛し合い、子供をつくることで、自己の生命に、真の意味、真の価値が与えられる。次世代を生み育てることによって、自己にまで継承されてきた生命を受け渡すことが出来る。個体自体に究極の価値があるのでなく、世代を超えて継承される生命にこそ個体を超えた価値がある。

 男女の個体は、集団の中で対を組み、子を産み育てるという役割を果すことで、自分が生まれてきた意味、生きる目的、存在の価値を深く知る。その役割をないがしろにしていては、自分の生の意味・目的・価値を、真に認識・自覚することができない。

 性愛は、生命の最高度の快感を伴う。性の快感は、生命の目的を達成するための促進作用となっている。個体は性行為に快感を覚えることで、生殖活動に積極的になる。それゆえ、生殖と切り離して快楽の追求自体を目的とする性的活動は、生命の目的に反している。

●生きることの意味

 人間の一生において、生きることの意味は、以下の段階を経て重層化していくと考えられよう。

①個体それ自体
 個人はそれ自体、生まれてきた意味、生きる意味を持つ。また集団に貢献することができる。しかし、個体のままでは生命の継承に貢献することにならない。生命の目的を実現することができない。

②恋愛
 男女は、異性と結びつくことで、生命の目的を成し遂げようとする。そのために男女が、それぞれ相手を求める。恋愛によって、個体は生の意味を深く理解する。生きる喜びを感じる。それと同時に、世界のあらゆるものの存在の意味をも感じ取る。

③子供の誕生
 男女の対は子供を生むことによって、さらに深い意味を感得する。次世代を生み出すことで、初めて生命の目的を達成する。子供を育てることは、生あるものを育てる喜びであり、本能的な喜びである。また親が子供の成長と幸福を願って努力することも、生の本能の現われだろう。

④孫の誕生
 孫の誕生に、祖父母は自分の子供の誕生とは異なる格別の喜びを感じる。子供のさらに次の世代にまで生命が継承されることを確認することによって、深い満足を覚える。これは生の本能に基づく喜びだろう。それによって、生きることの意味は、一層深く感じられる。

 こうした4つの段階を経て、生きることの意味は、重層的に増していく。人生の意味を段階的に体験・感得していくことは、生命の原理にのっとって生きることであり、自然の法則にそって進む生命の道だと言えよう。

 私は、こうした生命に基礎を置いたものの考え方、生き方を日本人は回復しなければならないと思う。次回はその点をさらに続けて書く。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿