ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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慰安婦問題の虚偽9~アジア女性基金

2007-06-25 09:45:09 | 歴史
●河野談話に基くアジア女性基金の設立

 慰安婦問題は、政府が謝罪したり、個人補償を行なう問題ではない。国対国の関係では日韓両国間の請求権は、日韓基本条約と関連協定で、「完全かつ最終的に解決済み」である。個人補償を検討するのであれば、韓国政府がなすべきことである。日本政府ではありえない。
 この原則を曲げて設立されたのが、アジア女性基金だった。この基金は、正式名称を「財団法人女性のためのアジア平和国民基金」といい、平成7年(1995)7月に、政府の決定により設立された。
 アジア女性基金の問題点については、後で触れることにして、まず河野談話からアジア女性基金の設立にいたる当時のわが国の動きを概観しておきたい。

 河野談話を出して総辞職した宮沢政権は、昭和30年(1955)以来38年間続いた自民党政権の終焉となった。いわゆる55年体制の崩壊である。続いて、政権に就いたのは、日本新党を中心とする連立政権で、首相は細川護煕氏だった。
 平成5年(1993)8月、細川首相は、先の大戦は「侵略戦争」だったと認識していると発言した。それに続いて、一連の謝罪外交が行われた。中国・韓国は、戦争補償の問題を蒸し返し、日本に賠償金の支払いを強要しようとし、さまざまな訴訟が起こされた。
 そうしたなか、自民党は政権を奪回するために社会党との連立を図り、平成6年(1994)6月、社会党党首・村山富市氏が、首相となった。首相は、同年8月、「内閣総理大臣の談話」で、いわゆる従軍慰安婦問題について改めて「心からの深い反省とお詫びの気持ち」を述べて、幅広い国民参加の道を追求する考えを表明した。

 翌7年(1995)、わが国は、戦後50年を迎えた。この年6月9日、衆議院は「戦後50年国会決議」いわゆる謝罪決議を行なった。これは立法府が歴史認識に関して決議するという異例なもので、法的な効力はない。
 続く8月15日に、村山首相談話が発表された。首相は、閣議決定に基づき、日本が戦前、戦中に行ったとされる「侵略」や「植民地支配」について公式に謝罪した。村山談話は、以後日本国政府の公式見解として歴代政権に継承されている。

 私は、戦後日本人が日本精神を失ってきて、精神的に最低の状態になっていたのが、戦後50年の年と見ている。この平成7年は、1月17日に阪神淡路大震災、3月20日にオウム真理教地下鉄サリン事件が起こった。天災・人災のきわみである。この年の前後5年ほど、つまり平成5年から9年(1993~1998)ごろは、政府も議会も国民も、自国の歴史認識に関し、最も自虐的に傾いていた。この時期には、今日までわが国の進路に深く影響している失策や事件が目立つと思う。

●使途の詳細不明のまま基金は解散

 アジア女性基金が設立されたのは、戦後50年となる平成7年の7月である。発足当時は、原文兵衛元参議院議長を理事長としたが、平成12年(2000)9月に村山元首相が理事長に就任し、解散まで務めた。
 本基金の目的は「『慰安婦』とされた方々への道義的な責任を痛感した日本政府が、国民と協力して」、元慰安婦への償い事業、歴史の教訓とする事業、女性尊厳事業を行なうためだという。

 アジア女性基金が「償い金」を渡す際には、「深いお詫びと反省の気持ち」を表す首相の手紙を一人一人の元慰安婦に「お届け」したという。その手紙には、次ぎのように書かれている。
 「いわゆる従軍慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題でございました。私は、日本国の内閣総理大臣として改めて、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを申し上げます。(略)」
 このような文言を含む手紙が、歴代首相、橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎各氏の署名のもとに渡されたのである。
 手紙の中の「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」という表現は、河野談話の「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」という表現と一致する。宮沢=河野の慰安婦謝罪外交が、以後の政権を呪縛しているのである。

 アジア女性基金は当初、国民から「償い」の名目で募った寄付金を各地の元慰安婦に分配することを活動としていた。初年度は約1億3千万円かけて、主要6紙の全国版に全面広告を出して、募金を呼びかけた。12年間の活動期間に集まった寄付金は、6億円近くにのぼるという。元慰安婦たちへの償いとして、一人あたり200万円が、合計285人に配られたとされる。
 ところがこれは、償いたい人が寄付をし、名乗り出た者に配られたというだけの話ではない。国民からの寄付金のほかに、政府が拠出金を出した。寄付金を、元慰安婦たちに「お届け」(外務省の用語)するために、約48億円もの税金が使われたのである。
 ジャーナリストの野村旗守氏は、使途の詳細を明らかにするよう外務省に求めた。回答は、医療事業費が各国合計で約11億3000万円、歴史教訓事業と女性尊厳事業で併せて約18億円だったという。これらを合算しても、約29億3000万円であり、残りの18億7000万円については、詳細の報告がされていない。(野村旗守著「どこへ消えた? アジア女性基金50億円」~撃論ムック『慰安婦・南京の真実』オークラ出版)
 アジア女性基金は、国別の支給数も発表していない。発表しないまま、本年(平成19年)3月に解散してしまった。多額の募金を集め、またその8倍もの公費を費やしていて、その使途の詳細を報告していないのである。
 道義と善意に基くはずの基金の運用が、不透明であるところに、アジア女性基金の本質的な問題点があるように思う。基金は、元慰安婦への償い金としてのみ支出されたのではなく、歴史教訓事業・女性尊厳事業という名の下に、別の目的のために使用されたのではないかという疑惑がある。反日・左翼・フェミニズムの勢力は、慰安婦問題を利用してきた。アジア女性基金の資金の一部は、彼らの運動を益するように使われたのではないかという見方である。

 次回に続く。

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