ジャン・アレチボルトの冒険

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乃木坂の風 19Sep13 ~ AKB48の34枚目は松井珠理奈センターの新人キャンペーン選抜、その理由と問題点

2013-09-19 16:00:00 | 芸能
昨日、日本武道館で行われたAKB48の「じゃんけん大会」、すべて「パー」を出して優勝するなんて、松井珠理奈さん、オシャレっすね(笑)。

34枚目のシングル曲を歌う16人を決める大会ですが、大島優子、小嶋陽菜、渡辺麻友、高橋みなみ、柏木由紀といった「大物」が軒並み敗れて、ほとんどのメンバーがあまり名前を聞いたことがないような、超フレッシュな選抜陣容となりました。

一方、じゃんけん大会のオープニングでは、10月30日(水)発売予定の33枚目シングル曲「ハート・エレキ」がステージでお披露目されたそうです。小嶋陽菜のセンターは新しいですが、じゃんけん選抜とは対照的に、「大物」メンバーに、島崎遥香などの若手筆頭メンバーを加えた従来通りの選抜構成となっています。

つまり、34枚目シングルでは、新人売り出しキャンペーンを仕掛けたいが、全員が新人ではさすがにマズいので、知名度の高い松井珠理奈をセンターに据えて、保険を掛けた。

そして、松井珠理奈以外の主要メンバーには、34枚目は遠慮して頂いて、そのかわり33枚目の「ハート・エレキ」に専念してもらうのが、運営の意図なんだと思います。

この戦術は理解できます。

総選挙後にリリースした32枚目「恋するフォーチュンクッキー」は、賛否両論、大いに注目を集めた「センター指原莉乃」で臨みました。

しかも、個別握手会の日数を3日間から4日間に増やすという「禁じ手」を打って、総部数を、従来の2000部から、その1.4倍である2800部にまで引き上げ、大幅なCDセールスの伸びを狙った。

しかし、2012年総選挙後にリリースされた「ギンガムチェック」と比べて、初週売り上げは118万2千枚から133万枚の1.13倍、累計は131万6千枚から現在141万枚の1.07倍しか伸びていません。

AKB48個別握手会の日に、博多HKT48、大阪NMB48、名古屋SKE48の主要メンバーほぼ全員が、首都圏の一会場に集結することを考えると、個別を1日増やすことは、とてつもなく大きな負担増ですが、そこまでして達成した総部数1.4倍の効果としては、CDセールスの伸びが小さ過ぎると言わざるを得ません。

皮肉なことに、「恋するフォーチュンクッキー」は、「センター指原莉乃」で一般層の関心度が上昇したためだと思いますが、ダウンロード数が増え、有線ランキングでも「ギンガムチェック」以来1年ぶりに、最高2位という成績を挙げて、一般的な意味では明らかに好調と言っていい状況です。

しかし、業界を仕切っているレコード会社への影響力を維持するためには、CDの売り上げ枚数がすべてで、その意味では喜んでいられない状況ということなんでしょうか。


では、CDセールスが思ったほど伸びなかった理由ですが、実は簡単なことで、知名度の低いメンバーや研究生の握手会人気が伸びていないからです。

完売状況表を見ると、大島優子や小嶋陽菜などの主要メンバーはもともと全部数を完売していて、担当部数が増えた今回も、変わらず全完売です。

しかし、それでは、担当部数の伸びしかCD売り上げを伸ばせません。

そして、大島優子や小嶋陽菜は、多くの外仕事を抱える売れっ子タレントなので、スケジュールの都合上、増やせる担当部数は限られていて、2部くらいしか引き上げられない。

2部というと、AKBの場合は、CD1千枚程度で、10人併せても1万枚の売り上げ増にしかなりません。

従って、まだ知名度の低いメンバーや研究生が頼りとなってくるのですが、この層の握手会人気が、今回は期待していたほどは伸びなかったということです。

AKB48の選抜は、現在、大島優子を筆頭とする古参組と、島崎遥香や横山由依などの新入組という二部混成チームですが、メンバーの顔ぶれ自体は固定されている感があります。

そのため、それ以外のメンバーや研究生は、自分を売り出して、一般的な知名度を上げるチャンスがほとんどない状態です。

やはり一般の知名度が低いと、コアなファンが集まる握手会でも、なかなか人気は上がってこないようで、「恋するフォーチュンクッキー」では、あまり知られていないメンバーや研究生の部数を増やしたものの、CDセールスがそれに見合うだけ伸びなかったのだと思います。

しかし、主要メンバーの卒業が続く可能性を考えると、知名度の低いメンバーへのてこ入れは、緊急かつ、不可避の命題であって、34枚目シングルの「新人キャンペーン選抜」という構想が生まれたのでしょう。

つまり、これまで有望な新メンバーを、一人か二人ほど、選抜に入れて売り出してきたけど、有名メンバーの陰に隠れて、思うようにブレイクしない。

この際、お馴染みの主要メンバーを一切入れないで、新人オンリーの超フレッシュ選抜を作ってしまおう、AKBの運営がそういう気持ちになったんじゃないでしょうか。

これは第2、第3の大島優子を生み出そうという試みですが、もちろん、それほど簡単なことではありません。

もっとも効果的なのは、「ポニーテールとシュシュ」のような本当の意味でのヒットを飛ばすことですが、そういった一般層にアピール出来る曲は、雰囲気ががらりと変わるので、これまでAKBを支えてきたコアなファンの反発を買う可能性がある。

しかも、有名なメンバーがいないフレッシュ選抜で、コアなファンが食いつくかどうかすら分からない。

もし、ミリオンを割る事態になれば、次世代のエースを期待されている松井珠理奈の今後にも、悪影響が出かねない。

従って、34枚目シングルは、冒険をしないで、ガチガチにAKB48的なテイストの曲になる気がします。

また、発売時期ですが、昨年と同じようなスケジュールでリリースが進むのであれば、34枚目CDは12月4日(水)からの発売で、12月初めからクリスマスシーズンにぶつける形が普通だと思いますが、その一週間前である11月27日(水)に乃木坂46の7枚目シングルCDがリリースされるので、少し遅らせて、12月11日(水)にしたのだと思います。

とはいえ、乃木坂は、AKB48が仕掛ける、おそらく空前規模の新人大キャンペーンの真っただ中で、新曲リリースを行うわけで、あまり気分の良い流れではないですね(笑)。


ところで、乃木坂も「ガールズルール」では、個別握手会を前作「君の名は希望」の5日間から、6日間に増やし、二期生も容赦なく投入して、総部数を437部から、その1.44倍である630部にまで引き上げました。

その結果、CDセールスは、初週が24万2千枚から33万7千枚の1.39倍、累計は30万5千枚から現在43万9千枚の1.44倍に伸びていて、総部数の引き上げ率とほぼ同じくらいの伸び率となっています。

「恋するフォーチュンクッキー」と比べると、明らかに握手会人気が順調に伸びていますが、これは、何人ものメンバーが完売数を大幅に増やして、ファンの動員人数をアップしたからです。

とくに、秋元真夏、桜井玲香、若月佑美、生田絵梨花は、「ガールズルール」において、「君の名は希望」と比べて、四人合わせて80部も新たな完売を出していて、推定ですが、「君の名は希望」からの売り上げの伸びは、四人で、個別握手会だけで3万6千枚となり、急激に握手会人気を伸ばしました。

全国握手会への波及効果を考えると、5万枚以上のセールスアップだと思われますが、累計売り上げ枚数の伸びは、全部で13万5千枚ですから、こういった急成長するメンバーの出現がいかに重要かが分かります。

しかし、7枚目シングルCDでも、「ガールズルール」と同じようなセールスアップを達成するためには、新たな急成長メンバーが出てくる必要があります。

というのも、上に挙げた四人は、担当部数が上限である1日5部に近づいていて、それを全完売、あるいはほぼ全完売しているので、7枚目CDでは、担当部数の増加分程度しか、売り上げを伸ばすことが出来ません。

大島優子や白石麻衣が、握手会の応募が始まって、すぐに全完売を出しても、CDセールスの「伸び」にはあまり貢献しないのと同じです。

結局、乃木坂も、AKB48と同じく、7枚目シングルに向けて、新人発掘が大きなテーマとなりつつあります。

最近、運営は、アンダーメンバーを「乃木坂って、どこ?」に出演させたり、衛藤美彩を積極的に起用したり、「乃木坂って、ここ」で川後陽菜をフィーチャーしたりと、これまでと違った動きを見せていますが、これらの背後には、新しい握手会スターを誕生させたいという目論みもあると思います。


AKB48や乃木坂の運営が「新人発掘」に勤しむのは、メンバーから見ても、とても良いことですが、その切り札は、やはり真の意味でのヒット曲を出すことです。

歌っているメンバー、踊っているメンバーがステージ上でキラキラ輝く、それこそが一般層からも支持される、新しいスターを生み出す唯一の方法だと思います。

しかし、現在のような過酷な握手会日程では、歌とダンスの練習時間が削られ、ライブへの準備時間がなくなり、定期公演もままならず、テレビ出演も制限される。こういう状況で、多くの人を魅了するヒットを飛ばし、歌っている無名のメンバーをスターダムに押し上げるのは、到底無理でしょう。

実際、AKBグループがこれまでに出した曲で、有線ランキング1位を獲得したのは、2011年8月24日にリリースされたAKB48の「フライングゲット」が最後で、それ以来一つもありません。

つまり、ほぼ2年間、本当の意味でのヒットから遠ざかっていて、その当然の帰結として、一般層の関心度が下がっている。

「日経エンタテインメント!」が2013年6月号に載せた「タレントパワーランキング」によると、AKB48はグループとして、1位の座をももいろクローバーZに明け渡し、個人ランキングでも、主要メンバーは依然高い順位にいますが、軒並みポイントを下げていて、一般的関心度が低落傾向にあることが窺えます。

そして、最近になって、一般層からファンになる人が減り始めたのだと思いますが、握手会へ来てくれるコアなファンの数も減少しつつある。

その結果、これまでのように、CDセールスを伸ばすためには、同じ規模の握手会を同じペースで行っていてはダメで、握手会の日数を増やしたり、1日の部数を増やしたり、あるいは、乃木坂のように、長期間に渡る日程を組んだりして、握手会を規模的にも、期間的にも、どんどん拡大しなければならない。

これは、リピーターを増やして、ファン1人あたりが買うCD枚数を増やす戦略ですが、その分、メンバーの負担はどんどん厳しくなっていて、NMB48の山田菜々がGoogle+で嘆いたように、劇場公演を土日に行えないなど、日常活動にも支障が出始めています。

そこで「新人キャンペーン選抜」が登場してきたのだと思いますが、秋元康氏を始めとする運営の人たちは、行き過ぎた握手会商法が、ヒット曲を目指すにしろ、新人を売り出すにしろ、大きな障害となっていることに気づいていないようです。

新しいスターを生み出して、握手会でCDセールスを大きく伸ばすためには、ヒット曲が必要ですが、ヒットを飛ばすためには、握手会の回数を大幅に減らす必要があって、一時的にせよ、CDセールスは大きく落ち込んでしまう。

一時的に握手会主義を止めて、CDセールスの大幅ダウンを受け入れなければ、握手会主義は続けられないというジレンマこそが、AKBグループが今陥っている困難の本質だと思います。

握手会商法によって、右肩上がりのCDセールスがいつまでも続くという考え方は幻想に過ぎず、そのビジネスモデルは不治の病を抱えているんじゃないでしょうか。


HKT48は先週の土曜日、新曲「メロンジュース」の個別握手会を幕張メッセで開催しましたが、中学3年生や高校1年生の15歳メンバーが、その1日で90分掛ける6部も担当させられています。

とくに、全完売している子は、博多から遠路はるばるやって来て、移動の疲れが残っている中、朝の9時から夜の8時半まで、実質9時間に渡って休みなく握手を続けることになります。

握手会券付きCDは、業界を活性化したと評価する声を聞きますが、子供を容赦なく酷使しなければ活性化しない業界なんて、日本に必要でしょうか?

メンバーへの負担はすでに限度を大きく越えてると思いますが、HKT48も含めてAKBグループも乃木坂46も、握手会日程は今後もさらに厳しくなっていくでしょう。

本当にこのままでいいんでしょうか?


// 関連サイト

2013年じゃんけん大会についての詳細は、
AKB48公式サイトの関連ページへ

NMB48山田菜々の握手会についてのコメント

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