AKB48の51枚目「ジャーバージャ」が、iTunes Store で配信スタートとなって4日以上が過ぎました。
トップソングの順位推移を見ると、初期の上昇が終わり、現在、下降局面に入っていますが、私が確認した範囲では、TOP30へのランクインがなく、近年のAKB48シングル表題曲に比べ、伸び悩み感がある。
ツイートした内容に加えて、さらに詳しいデータを紹介します。
(表1) iTunes Store トップソングにおけるAKB48シングル表題曲の配信全期間に渡る順位帯分布
凡例
A-B-C-D-E / F-G-H (50位以内/200位以内ランクイン日数; 確認できた最高順位) [シングル番号_CD発売日] 曲名 (配信元である収録パッケージ)
# 上記 A〜H と Z は、それぞれ以下の順位帯にランクインした日数を表す
A(1〜10位)、B(11〜20位)、C(21〜30位)、D(31〜40位)、E(41〜50位)、F(51〜100位)、G(101〜150位)、H(151〜200位)
# 表題曲の配信元が複数ある場合は、最高順位がもっとも上の成績を載せている。結果として、すべてTypeA収録版
# 配信開始から2018/03/17(土)時点までのデータを示している
00-00-01-02-01 / 13-09-01 (04/027日; 27位) [44_2016/06/01] 翼はいらない (TypeA)
02-03-01-01-02 / 05-06-02 (09/022日; 07位) [45_2016/08/31] LOVE TRIP (TypeA)
02-02-02-00-01 / 28-17-13 (07/065日; 03位) [46_2016/11/16] ハイテンション (TypeA)
00-01-02-01-02 / 11-05-12 (06/034日; 18位) [47_2017/03/15] シュートサイン (TypeA)
00-01-01-03-03 / 10-14-07 (08/039日; 20位) [48_2017/05/31] 願いごとの持ち腐れ (TypeA)
00-02-02-00-03 / 03-04-03 (07/017日; 16位) [49_2017/08/30] #好きなんだ (TypeA)
00-02-01-00-01 / 07-06-06 (04/023日; 15位) [50_2017/11/22] 11月のアンクレット (TypeA)
00-00-00-01-01 / 02-00-00 (02/004日; 34位^現73位) [51_2018/03/14] ジャーバージャ (TypeA)
上表には、個人的に順位を記録し始めた、2016年6月発売の44枚目「翼はいらない」以降のデータを載せています。
「翼はいらない」は、今回の「ジャーバージャ」における岡田奈々と同じく、向井地美音という一般的にはあまり知られていなかったメンバーを、単独センターに抜擢した表題曲です。
しかも、ファンの関心が収録曲以外に向きがちな、「総選挙」投票券付きシングルという、楽曲人気にとって、いわば「ハンデ」となる条件があった。
実際、このタイプのシングルは、2015年「僕は戦わない」167万枚、16年「翼はいらない」144万枚、17年「願いごとの持ち腐れ」131万枚と、100万枚を優に越えるオリコン初動を叩き出しながら、Billboard JAPAN Hot100の「ルックアップ」1位を、3年連続で3曲とも逃していて、AKB48シングルの中でも、音楽面での関心をとくに集めづらい作品になっている。
そして、確かに、iTunesトップソングでも、「翼はいらない」は上位への食い込みが弱く、「願いごとの持ち腐れ」と並び、上表でワーストの部類に入っている
ただ、新人センターと「総選挙」投票券付きというマイナスに傾きがちな因子が重なっても、何とかTOP30は確保しています。
AKB48の人気が今より強力だったこと、さらに、特集記事を組むなどして、向井地美音個人のプロモーションを分厚く仕掛けたことが、一定の効果を挙げたのだと思います。
その後、表題曲ごとに最高順位の変動はあるものの、45枚目から50枚目までは、TOP20へのランクインを続けてきました。
しかし、51枚目は、20位以内どころか、30位以内も難しい情勢で、次の水曜に発表される、オリコン週間ダウンロードランキングのTOP30に、曲名が載るかどうか微妙です。
理由の一つとして、岡田奈々のプロモーションが、まだ足りない可能性が挙げられます。
上表を見ても、最高順位はセンターの存在感に左右されている節がある。
「LOVE TRIP」は指原莉乃の『総選挙』連覇で7位、「ハイテンション」は島崎遥香の早すぎる感のある「卒業」で3位、次の「シュートサイン」は、逆に、小嶋陽菜の「随分前から知ってた」感のある「卒業」で18位(笑)、「願いごとの持ち腐れ」は知名度のやや落ちる、宮脇咲良と松井珠理奈のWセンターで20位。
さらに、「#好きなんだ」は、指原莉乃の『総選挙』3連覇に意外性がなかったのか16位、「11月のアンクレット」は、渡辺麻友の「もう皆んな覚悟はできてた感」のある「卒業」で15位。
配信開始直後に最高順位へ到達するアイドル系ソングの場合、その順位は、楽曲そのものの魅力以上に、既存ファンの注目度や期待感に左右される部分が大きく、センターの知名度と話題性は重要な因子になっているようです。
2013年8月発売の「恋するフォーチュンクッキー」の後、MVの再生回数で勢いを示した曲が「ハイテンション」くらいしかないなど、AKB48の楽曲人気が再上昇のきっかけを掴めない中、「ジャーバージャ」は、ついにiTunesトップソングの最高順位が30位を割り込んでしまった。
グループを取り巻く環境が厳しさを増し、「翼はいらない」の向井地美音以上に、岡田奈々を盛大にフィーチャーする必要があったのだけど、それが上手くいっていないように見えます。
AKB48シングルの楽曲配信は、表題曲、共通曲、盤限定曲を、すべて一つにまとめた「Special Edition」のような単独パッケージではなく、店頭セールスCDと同じく、初回限定盤各タイプや劇場盤をそのままアップする方式を続けてきました。
そのため、例えば、50枚目表題曲「11月のアンクレット」は、TypeA、B、C、D、E、劇場盤という、6種類のパッケージすべてに収められ、結果、配信元が6個、順位推移も6パターン存在します。
(表2) iTunes Store トップソングにおけるAKB48「11月のアンクレット」の配信全期間に渡る順位帯分布
00-02-01-00-01 / 07-06-06 (04/023日; 015位) 11月のアンクレット (TypeA)
00-00-00-00-00 / 01-00-01 (00/002日; 083位) 11月のアンクレット (劇場盤)
00-00-00-00-00 / 00-00-00 (00/000日; 200外) 11月のアンクレット (TypeB,C,D,E)
(表1)に示した順位推移は、複数配信元の中で、もっとも成績が良いものだけをピックアップしたものですが、結果としては、すべてTypeA収録バージョンです。
AKB48姉妹グループも、NGT48以外は、同じ方式の配信スタイルを採用しており、表題曲の場合、ほとんどがTypeA収録が一番の人気を見せるんですが、HKT48「最高かよ」のように、なぜかTypeBがトップを獲得するケースもあり、これに関しては未だに理由が分かりません(笑)。
あと、「365日の紙飛行機」は劇場盤が主力で、曲への注目が高まると、TypeAもランキングに入ってくる感じです。
この方式は、同一曲のダウンロード先が分散するので、トップソングでより上位を狙う観点からは不利と言えます。
そして、それを考慮したのでしょう、「ジャーバージャ」は、「Special Edition」ではないけど、TypeA収録の表題曲とオフボーカルのみを、現在、iTunes Store にアップロードして、配信元を1つに絞っています。
つまり、これまでの表題曲と比べ、順位が高くなる設定なのですが、その条件にも関わらず、長らく守ってきたTOP30入りを逃したわけで、人気の下落感がより鮮明になっている。
さらに詳しく、AKB48のセンターを振り返ると、42枚目「唇にBe My Baby」のセンターも「卒業」を控えた高橋みなみで、AKB48は直近10シングル中、4作が「卒業」センター、2作が「総選挙」1位センターを採用し、いわゆる若手の抜擢は4作。
この4作中2作に関わっている宮脇咲良は、43枚目「君はメロディー」が初の単独センター抜擢でしたが、このシングルには、前田敦子や大島優子など「卒業」した「神7」メンバーが臨時参加、さらに、48枚目「願いごとの持ち腐れ」は松井珠理奈とのWセンター。
宮脇咲良というフレッシュ感のある若手を思い切ってセンター起用したのに、運営が「保険」を掛けたのか、2シングルとも、それ以外へファンの関心を分散させ、彼女の存在感を薄めかねないメンバー構成だった。
(表3) AKB48シングル表題曲のセンター変遷
凡例
[シングル番号_CD発売日] iTunesトップソング最高順位 : センター「表題曲名」
#「*」は「卒業」を間近に控えていたセンター、「^」は「総選挙」による1位センター
[42_2015/12/09] ??位 : 高橋みなみ*「唇にBe My Baby」
[43_2016/03/09] ??位 : 宮脇咲良「君はメロディー」
[44_2016/06/01] 27位 : 向井地美音「翼はいらない」
[45_2016/08/31] 07位 : 指原莉乃^「LOVE TRIP」
[46_2016/11/16] 03位 : 島崎遥香*「ハイテンション」
[47_2017/03/15] 18位 : 小嶋陽菜*「シュートサイン」
[48_2017/05/31] 20位 : 松井珠理奈・宮脇咲良「願いごとの持ち腐れ」
[49_2017/08/30] 16位 : 指原莉乃^「#好きなんだ」
[50_2017/11/22] 15位 : 渡辺麻友*「11月のアンクレット」
[51_2018/03/14] 34位 : 岡田奈々「ジャーバージャ」
51枚目「ジャーバージャ」の岡田奈々は、44枚目「翼はいらない」の向井地美音以来となる、直球勝負の新人センターと言えます。
しかし、2016年「君はメロディー」と2017年「シュートサイン」と同じく、今年の春シングルも、AKB48姉妹Gがカップリングを1曲づつ担当する、複数グループ参加形式で、さらに乃木坂・欅坂と48Gの合同チーム、坂道AKBによる楽曲も収録されている。
これは姉妹各グループのファンに、より確実にAKB48本体のシングルを買って貰うためだと思います。
また、48Gファンの坂道への興味、あるいは坂道ファンの48Gへの興味を掘り起こし、それをAKB48シングルのCDセールスに結びつける狙いもある。
「ジャーバージャ」はオリコンデイリー初日ですでに100万枚を越えたものの、その後の売り上げ推移を眺めると、5つの姉妹Gと坂道の楽曲参加がなければ、ミリオン維持は危なかったかもしれない。
「総選挙」投票券付きシングルの一つ前である春シングルは、毎年、ミリオン達成が厳しくなるCDで、もはや「シングル」とは呼べない域に踏み込んでも、数字を稼げるコラボを仕掛けている。
盤種ごとに、それぞれ違うグループの楽曲が入っているのに、全盤種の売り上げを「合算」して、「シングル」ランキングにリストアップすることが一番意味不明ですが(笑)、日本にはそういう調査会社があるので、AKB48の「シングル連続ミリオン」という記録が途切れず続いています。
もちろん、乃木坂も、各タイプの初回限定盤セールスと forTUNE music 盤セールスを「合算」しなければ、ミリオンにはなりませんから、「合算」こそ、46&48GのCDセールス幻想を支える重要システムとも言えます。
以前は、サウンドスキャンが、初回限定盤のタイプ別売り上げ枚数を調べ、それに基づいたランキングを公表していたのですが、どういうわけか、すっかり様変わりしています(笑)。
しかし、巨大なCDセールスこそグループの人気を示すとばかり、ミリオン維持にのめり込み、手を変え品を変え、盛大な「保険」を掛け続けていることが、本当の人気にマイナスの影響を与えている可能性がある。
51枚目「ジャーバージャ」は、知名度の向上がとくに必要な岡田奈々をセンター起用したのに、AKB48姉妹各グループや坂道が軒並み参加するシングル構成では、カップリング曲の話題が多くなり、表題曲への関心が低下する危険が大きい。
実際、YouTubeに無料公開されているMVの再生回数は、過去のAKB48表題曲MVと比べ、伸びに勢いがなく、一方、それと対照的に、坂道AKB「国境のない時代」MVは、ショートながら、「ジャーバージャ」に迫る数字を出しています。
(表4) AKB48表題曲MVのYouTube再生回数の初期推移
凡例
1w速度(累計)→2w速度(累計)→ : 15d速度(累計)→…→18d速度(累計) 曲名
#「1w」はMV公開から1週間後の同曜日同時刻まで、「2w」はそこから1週間後の同曜日同時刻までと、順に数えたもの
#「1d」はMV公開から1日後の同時刻まで、「2d」はそこから1日後の同時刻までと、順に数えたもの
#「w速度」は対象週の再生回数平均増加速度、「d速度」は対象日の再生回数積み上げで、単位はいずれも「万回/日」
#「w累計」は対象週の週終わりの再生回数、「d累計」は対象日の日終わりの再生回数で、単位はいずれも「万回」
# 以下のMVは、AKB48の45枚目以降で、YouTubeに発売前単独公開された表題曲のフルバージョンMV
#「ジャーバージャ」の赤色はCD発売日の数字
19.5(136)→7.7(190)→ : 5.4(196)→4.9(200)→4.6(205)→4.8(210) LOVE TRIP
27.9(195)→9.4(261)→ : 6.3(267)→6.3(274)→6.3(280)→6.7(287) ハイテンション
20.0(140)→5.4(178)→ : 5.6(183)→5.2(188)→4.1(193)→4.2(197) #好きなんだ
16.0(112)→5.2(148)→ : 5.9(154)→6.6(161)→4.5(165)→3.9(169) ジャーバージャ
-----------------------------------------------------------------------------------------
14.8(103)→4.1(132)→ : 3.1(135)→2.8(138) 国境のない時代 [short ver.]
「ジャーバージャ」フルMVは、現在、公開3週目(w)に入っていますが、それはもちろんCDがリリースされた週であり、発売日にあたる15d、そして翌日の16dでは、再生数の増加速度が上がっています。
しかし、「ジャーバージャ」は、発売3日後にあたる18dで、再生数の積み上げが他のMVより低い水準に戻っていて、CDリリースによる加速効果に力強さがない。
他のMVが発売週を迎えるのは公開4w以降なので、今後さらに累計再生数で引き離される虞れがあり、見通しは厳しいです。
一応、48姉妹グループによるカップリング曲ショートMVの再生数も載せておきます。
(表5) AKB48「ジャーバージャ」カップリング曲MVのYouTube再生回数の初期推移
凡例
1w速度(累計)→2w速度(累計) グループ名_曲名
# 以下のMVは、AKB48の51枚目シングルに収録されたカップリング曲のYouTubeに公開されているショートバージョンMV
# 2018/03/17(土)21:00が、ちょうど公開2w終了時点
2.4(16.5)→0.7(21.4) NGT_友達でいましょう
2.5(17.3)→0.5(20.9) HKT_ぶっ倒れるまで
1.8(12.6)→0.4(15.2) NMB_下手を打つ
1.6(11.1)→0.2(12.7) AKB48若手_Position
1.2(08.3)→0.3(10.6) STU_ペダルと車輪と来た道と
1.1(07.5)→0.1(08.4) SKE_愛の喪明け
ショートMVは、フルMVとCD音源の予告編のようなもので、作品自体に対する評価や人気というより、ファンの期待感と熱量が反映される面がある。
しばらくシングルを出していないHKT48と、3枚目「春はどこから来るのか?」のMV公開が迫っているNGT48は、ファンの関心が高いのか、6グループの中では、再生数の伸びがより大きくなっています。
ところで、STU48「ペダルと車輪と来た道と」は51枚目の共通曲ですが、表題曲センターである岡田奈々が参加しているものの、この曲のセンターは彼女ではないようです。
表題曲のセンターとフロントを、共通曲でも起用して、異なる世界観の楽曲とMVによって、その選抜を多面的に紹介する。
乃木坂の初期シングルでよく行われた手法だけど、AKB48では、そういった選抜のフィーチャーはなく、STUそのものを起用するに留まっている。
AKB48の51枚目は、新センターや選抜フロントを突出させず、総花的に各グループの楽曲を並べていて、表題曲を引っ張る岡田奈々を、重点的にプロモーションする構成になっていない。
様々なグループのファンが、「推し」の参加しているシングルの一部分に興味を持つものの、それらを序列化し統合するコンセプトはなく、岡田奈々は他のカップリング曲センターとあまり変わらない、並列な存在として提示されている。
CDセールスの「合算」ミリオンこそが、AKB48の至上命題なので、こういった多焦点の巨大なシングルが出現するのだと思いますが、その結果、表題曲とセンターへの関心が薄まり、iTunesトップソングやMV再生回数で、楽曲人気をさらに低落させているように思えます。
対症療法に過ぎないけど、人気メンバーの「卒業」センターを今後も続ければ、一時的に、配信や動画の数字を上げることは可能かもしれない。
しかし、「神7」が全員グループを離れた今、「卒業」が大きな話題を呼ぶメンバーは、もはや指原莉乃など少数しか残っていない。
そのため、新しい人気メンバーの育成が急務だけど、ミリオン維持にこだわり、既存グループとのコラボによって、ファンを左から右へ「流す」の発想を続ける限り、なかなかスターは誕生しない。
乃木坂が人気グループに成長したのは、生駒里奈という当時無名の新人を、デビューから連続5シングルに渡ってセンターに起用し続け、その間、AKB48と一切関わらなかったことが大きい。
当然、メンバーの一般知名度はゼロ、しかもNGT48やSTU48のように、AKB48の有名メンバーを「兼任」として取り込むこともなかったので、初期の頃は、握手会にファンを呼ぶことが出来ず、デビューシングル「ぐるぐるカーテン」はオリコン2位のスタートだった。
しかし、それでも生駒里奈をセンターから外さず、共通曲では同じフロント、同じ福神を起用して、重点フィーチャーを続け、選抜に入らなかったメンバーは、アンダー曲という形でシングルに参加させて、いわば自前でスターを作ろうとしてきた。
乃木坂は、握手会、選抜センターなどAKB48のシステムを採用しながら、48Gの『総選挙』や『組閣』には参加せず、全くの別グループとして、独立性と独自性を保持したことが、少しずつファンを増やし、人気を上昇させる原動力になった。
秋田からやって来た生駒里奈が、年齢の近い生田絵梨花、星野みなみと一緒にレッスンに励み、少し年齢が上の超美人お姉さん、白石麻衣、橋本奈々未、松村沙友理と出会い、キャプテンの桜井玲香や途中から復帰の秋元真夏と知り合い、メンバー同士の関わりの中で成長していく。
こういった「生駒里奈の物語」が、選抜構成や個々のキャラに反映され、初期乃木坂のベースを作ったことが、グループ人気の強い追い風となる。
人気のあるメンバーがいても、お互いに交流がなく、バラバラに存在するだけでは、グループとしての人気は上がっていかない。
乃木坂の中心には、メンバーを結びつけ、お互いを関連づける物語、生駒里奈の物語があった。
その優れたストーリー性によって、個々のメンバーと彼女たちの関係性を内包するグループが輝き、物語の登場人物とそれが上演される舞台のような、賑やかで魅力的なアイドルの新しい「場」が誕生したのだと思います。
乃木坂という「場」の中で、人気メンバーが次々と誕生し、グループ全体が成長していった。
AKB48という既存人気グループと距離を置き、自分たちに何が出来るかを追求したことが、AKB48に興味のない層をも惹きつけ、欅坂へと続く、アイドルの別潮流を生み出していく。
欅坂46も、出発点において、乃木坂の人気メンバーが「兼任」で参加するようなことをせず、当時まだ若干14歳だった、平手友梨奈という傑出した才能を持つメンバーを中心に、自分たちの道を模索したことが、その後の成功につながっている。
宮脇咲良であれ、向井地美音であれ、岡田奈々であれ、運営が安易な「保険」を掛けず、CDセールスと楽曲指標の一時的な低下を我慢して、彼女たちを選抜中軸に抜擢し続け、新しい物語を誕生させる覚悟がなければ、新しいAKB48は生まれてこないと思う。
生駒里奈が「卒業」を表明している今の乃木坂に対しても同じことが言えます。
7枚目「バレッタ」の堀未央奈や18枚目「逃げ水」の大園桃子・与田祐希のように、1期選抜の先頭に、2期3期メンバーをポツンと置くだけでは、そのメンバーの知名度は上がっても、新しい乃木坂は出現しない。
新しいメンバーだけでなく、若い1期や2期3期の持っている新しい物語を一緒に抜擢して、それを乃木坂の新しい物語に据えることが重要じゃないでしょうか。
新しい物語が始まらなければ、AKB48は、「神7」メンバーがもはや1人もいないのに、「神7」の物語が続き、その想い出の中で輝くしかない。
生駒里奈が乃木坂を離れる今、これまでグループの土台であった、彼女の物語を終わりにして、新しい主人公が、新しい登場人物と織りなす、新しい物語が、乃木坂にも必要です。
生駒里奈と同じくらい、あるいはそれ以上に魅力的な主人公と物語を見つけ出し、主要な登場人物と一緒に、選抜中軸に一斉起用することが、乃木坂第2章の出発点になる。
その決断ができなければ、次世代を担うスターを育てられないまま、対症療法的なセールス維持策を続け、4期、5期、6期と、何期まで入れても、橋本奈々未や生駒里奈がいた時代の1期乃木坂が頂点だったグループで終わってしまう。
もちろん、選抜に1期を入れるなというわけではなく、選抜中軸に、若い1期や2期3期を入れ、彼女たちの物語によって、乃木坂を再構築するという意味です。
経験値やスキルの問題から、齋藤飛鳥や星野みなみなど、1期の若いメンバーがパフォーマンスの軸を担い、鈴木絢音や渡辺みり愛といった、近年成長著しい2期メンバーがそこに加わる形が、まずは現実的ですが、新しい登場人物によって、新しい物語を始める、その雰囲気を作ることが大事だと思います。
5枚目「君の名は希望」のヒット祈願で、誰がスカイダイビングを飛ぶかを決める福神メンバーの会議、あの雰囲気の再現を、2期3期を含む新しいメンバーで見たい(笑)。
あのときから、生駒里奈の物語が本格的に始動したと、ずっと感じてきたので。
最後に、欅坂「ガラスを割れ!」のカップリング6曲が、iTunesトップソングの200位圏外にすべて去り、順位推移がおおよそ確定したので、歴代のCW曲と一緒に載せておきます。
(表6) iTunes Store トップソングにおける欅坂46カップリング曲の配信全期間に渡る順位帯分布
凡例
シングル番号「タイトル」
A-B-C-D-E / F-G-H (50位以内/200位以内ランクイン日数; 確認できた最高順位) 曲名
# 上記 A〜H と Z は、それぞれ以下の順位帯にランクインした日数を表す
A(1〜10位)、B(11〜20位)、C(21〜30位)、D(31〜40位)、E(41〜50位)、F(51〜100位)、G(101〜150位)、H(151〜200位)
# カップリング曲に関しては、ランクイン日数のより長い方を上に、同じであれば、最高順位がより高い方を上に載せている
#「*」はMV付、「C」は共通曲
#「^」は最新日付でランクインしている曲で、直後の数字はその順位
# 配信開始から2018/03/17(土)時点までのデータを示している
06枚目「ガラスを割れ!」
0-1-0-1-0 / 1-2-3 (02/08日; 17位) 半分の記憶 (けやき坂2期)
0-1-1-0-1 / 1-2-1 (03/07日; 08位) もう森へ帰ろうか?* (C, 6th選抜_平手センター)
1-0-1-0-1 / 1-2-1 (03/07日; 09位) 夜明けの孤独 (平手ソロ)
0-0-1-0-1 / 1-1-2 (02/06日; 17位) ゼンマイ仕掛けの夢* (今泉・小林)
0-0-1-0-1 / 1-1-1 (02/05日; 26位) イマニミテイロ* (けやき坂1期)
0-0-1-0-1 / 1-1-0 (02/04日; 21位) バスルームトラベル* (尾関・小池・長濱)
05枚目「風に吹かれても」
2-1-1-4-1 / 18-47-26 (9/100日; 4位^現在170位) 避雷針*
0-1-1-0-1 / 1-2-1 (03/07日; 17位) 再生する細胞
0-0-1-0-1 / 1-1-2 (02/06日; 24位) 波打ち際を走らないか?* (青空とマリー)
0-0-0-0-0 / 2-3-4 (00/09日; 42位) NO WAR in the future (けやき坂)
0-0-0-0-1 / 2-0-1 (01/04日; 35位) 結局、じゃあねしか言えない
0-0-0-0-0 / 1-1-1 (00/03日; 74位) それでも歩いてる* (C, けやき坂)
04枚目「不協和音」
1-3-6-3-6 / 7-11-14 (19/51日; 07位) エキセントリック*
2-0-1-0-1 / 4-1-2 (04/11日; 05位) W-KEYAKIZAKAの詩* (C)
0-1-0-1-0 / 2-2-3 (02/09日; 17位) 割れたスマホ*
0-1-0-1-1 / 2-1-1 (03/07日; 14位) チューニング*
0-0-0-1-0 / 2-1-2 (01/06日; 32位) 僕たちは付き合っている* (けやき坂)
0-0-0-1-0 / 1-1-1 (01/04日; 36位) 微笑みが悲しい
03枚目「二人セゾン」
0-0-0-1-0 / 1-2-1 (01/05日; 39位) 夕陽1/3
0-0-0-0-1 / 1-2-0 (01/04日; 44位) 僕たちの戦争*
0-0-0-0-0 / 1-1-2 (00/04日; 66位) 大人は信じてくれない* (C)
0-0-0-0-0 / 1-0-1 (00/02日; 86位) 誰よりも高く跳べ!* (けやき坂)
0-0-0-0-0 / 1-1-0 (00/02日; 88位) 制服と太陽
02枚目「世界には愛しかない」
0-1-1-0-1 / 4-3-6 (03/16日; 17位) 語るなら未来を…* (C)
0-0-0-0-1 / 1-1-8 (01/11日; 50位) 青空が違う
0-0-0-0-0 / 1-1-6 (00/08日; 58位) また会ってください*
0-0-0-0-0 / 1-1-5 (00/07日; 69位) ひらがなけやき (けやき坂)
0-0-0-0-0 / 1-1-5 (00/07日; 75位) ボブディランは返さない
0-0-0-0-0 / 1-1-4 (00/06日; 86位) 渋谷からPARCOが消えた日*
01枚目「サイレントマジョリティー」
0-0-1-1-0 / 3-8-4 (02/17日; 25位) 渋谷川*
0-0-2-0-0 / 1-2-1 (02/06日; 26位) キミガイナイ
0-0-0-1-0 / 1-1-1 (01/04日; 39位) 手を繫いで帰ろうか* (C)
0-0-0-0-0 / 2-0-1 (00/03日; 53位) 乗り遅れたバス
0-0-0-0-0 / 2-1-0 (00/03日; 55位) 山手線*
6枚目カップリングは、全曲がTOP30に食い込むなど、初期上昇の勢いには目を見張るものがあったけど、200位圏内へのランクインが10日以上の曲がなく、割とあっさり圏外に去ってしまった印象がある。
5枚目収録の「避雷針」や4枚目の「エキセントリック」など、欅坂のシングルには、びっくりするほど長期のランクインを続けるC/W曲が出現するので、最高順位のレベルから6枚目でも期待していましたが、そういう曲は今のところ出ていません。
坂道AKBが、欅坂6枚目のリリースに重なる形で、「国境のない時代」MVを公開したため、関心が分散して、CW曲のランクイン日数がやや伸び悩んだのかなと、少し疑っています(笑)。
まあ、平手友梨奈が現在、「開店休業」状態で、表面的な動きが全然ないことが、作用している可能性はあります。
ただ、AKB48Gの各グループが、『組閣』によって、相当なダメージを受けてきたように、坂道AKBのようなコラボは、思っている以上に大きな影響を被る恐れがある。
今年の全曲200位圏外日数が昨年のトータル5日に、早くも並んでしまった乃木坂を含め、最近、坂道の楽曲人気にやや不安を感じる数字がちょこちょこ出ていて、シングルごとの誤差範囲内に収まる変動かどうか、敏感になっている面があって、ついあれこれ考えてしまいます(笑)。
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# 記事中の青字部分は、テレビ番組、公式サイト、書籍、歌の歌詞などに、掲載されたものを、そのまま抜粋引用したことを表しています