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英国の教育実態について長期にわたる観察記

2013-02-08 08:19:45 | 読書ノート
山本麻子『ことばを鍛えるイギリスの学校:国語教育で何ができるか』岩波現代文庫, 岩波書店, 2012.

  英国における初等・中等教育の制度と実態の報告。著者は家族とともに渡英して、息子三人を向こうの学校に入れて育てた経験のある研究者。体験記的なところから始めて、子どもたちが実際に受けた授業を実例にとり、英国の教育理念を分析している。オリジナルは2003年で、文庫版はそれを改訂したものである。

  英国では教育のどの段階でも、英語によるコミュニケーション重視であり、英語を主、他教科を従としたカリキュラムが組まれている、ということだ。コミュニケーションといっても、日本のように情緒的なつながりをもとめるものではなく、円滑な議論や説得などで力を発揮するような論理重視のものである。シェイクスピアなどの古典文学の鑑賞においても、そのことは一貫しているようだ。日本なら大学の初年次教育として行われているスタディ・スキルの獲得訓練も、初等教育の頃から中等教育にかけて、段階を追って長い時間をかけて行われているとのこと。

  本書が描いているのはおそらく中流層の教育現場であって、英国教育の全体をこれでつかむのは不十分なのかもしれない。しかし、社会の中核となるはずのそうした層に対する教育方針と実際の教育をコンパクトにまとめており、とても参考になる。
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