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いまさらかもしれないが『統治と功利』に驚く

2011-10-05 08:20:28 | 読書ノート
安藤馨『統治と功利』勁草書房, 2007.

  政治哲学の専門書。それも倫理学としての功利主義の知識がないとまったくついていけない内容である。かく言う僕も、3年前に手に取ったときはわけがわからなくて3章あたりで挫折した。今になってちょっと知識がついたので、もう一度挑戦してやっと読了したしだい。それでも、完璧に理解したという自信はない。

  その内容も過激。功利計算の基本は「快楽」で、その範囲はその未来にわたらず、その時点であるという。これらはいろいろ批判されて打ち捨てられてきたはずだが、著者はその単純さの魅力を問いて再評価する。さらには、「人格」や「自由」については、基礎的な価値ではないと断じ、厚生を高めるならばそれを活かしておいてやってもよい、とする。なかなかこんなことを書けないよなあ。

  ちなみに中身は東大に提出された修士論文で、指導教員の井上達夫に「方向性からなにからまったく間違っている」と言われたそう。
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