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著者はこの後テレビコメンテーターに

2009-09-01 07:49:21 | 読書ノート
高瀬淳一『「不利益分配」社会:個人と政治の新しい関係』ちくま新書, 筑摩書房, 2006.

  自民党小泉政権を材料に日本政治の変化を2006年時点で展望した著作。巨額の財政赤字のため、これまでの自民党が行ってきた利益分配は行えず、今後は利益分配の一部停止と再編成・国民全体での不利益(増税など)の甘受が政治課題となってくる。そして有権者にそうした政策を飲ませられる指導者が必要とされる。その画期が小泉政権の誕生だったという。

  2009年の衆議院議員選挙を終えた視点からみると、著者が予想(期待?)したようには事態は進まなかったように見える。安倍政権以降の自民党は強力な指導者を持てず、「不利益」の付け替え作業は停滞したかのように見えるし、今回の選挙も自民・民主ともにマニフェストで「得られる利益」を謳う様相で、国民に不利益の甘受を迫るものではなかった。

  それでも、底流としての「不利益分配」は当たっているような気がする。今回の選挙で民主党に投票した人の多くは、政府支出の付け替えを期待しているはずである。すなわち、誰かに既得権益を手放させるのである。それは、小泉政権が壊したものの復活ではなくて、その後の政権がなおざりにした構造改革路線の継承だろう。もちろんそうでない層も民主党を支持しているところを見ると、同床異夢の面が大きいだろうけれども。

  今のところ、民主党政権が「不利益分配」路線を進むのか、それとも復活した経世会として新手のバラマキをはじめるのか、どっちに転ぶのかわからないのがもどかしいところ。後者ならば、前者を支持する層はまた他の党へ離れてゆくのだろう。
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