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女性を労働市場に留めておくには?

2010-02-22 20:51:35 | 読書ノート
川口章『ジェンダー経済格差:なぜ格差が生まれるのか、克服の手がかりはどこにあるのか』勁草書房, 2008.

  純然たる研究書で、使用されている統計分析の詳細なロジックについて僕にはわからない部分もあった。まあ、回帰分析をやっていると考えて読み進めれば数値の意味は理解できなくもない。

  著者によれば、日本では次のような三角関係が成立しているという。第一に、日本企業による雇用は転勤・休日出勤・多大な残業を要求するものであり、家庭生活と両立し難い。そのために、第二に、出産などを境に女性は職場を離れてゆき、性別役割分業が実態として進行する。第三に、性別役割分業を実践する世帯が多数を占めるようになったために、第一の問題を矯正するようなワークライフバランス政策が政治的に支持されなくなる。こうして、労働市場での男女間の格差が維持されてしまう、と。

  解決策は意外にもささやかなである。企業の有給休暇の取得率など、広い意味での労働条件の情報開示をすることで、情報の不完全性に対処するというもの。背景には女性が働きやすい企業は効率的な経営が行われているという実証結果があるためで、有能な女性労働者が労働市場から退出してしまわないような環境を整備することで、格差に対処できるというわけである。アファーマティヴより世間の抵抗が少なく、導入しやすい政策だと思われるが、どうなんだろうか?
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