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リバタリアニズムではない「新自由主義」なのだが・・・

2011-09-30 11:37:27 | 読書ノート
八代尚宏『新自由主義の復権:日本経済はなぜ停滞しているのか』中公新書, 中央公論, 2011.

  現在の日本で悪役を担っている「新自由主義」思想について、これを解説して正当化することを試みた書籍。本書でいう「新自由主義」とは普通の経済学思想であり、規制緩和をすすめる一方で、市場の失敗に基づいた規制や公共事業もあるし、セーフティネットもある、というものである。本書を読めば、細かい点では異論があるかもしれないが、大まかな点では同意できるだろう。

  とはいえ、論敵がラベリングするように、経済学思想を「新自由主義」と単純に言ってしまっていいものだろうか。個人的にはこういう皮肉な態度は好きな方だが、「新自由主義」にはコノテーションが多すぎて冷静になれない読者も多いだろう。その点で、読者の広がりに欠けるかもしれない。

  また内容も、経済学思想を大まかに掴めるだけで、新書の分量では論証が十分展開できておらず、説明不足の感が強い。結局一通りわかるには図表や数式の載った学部レベルの分厚い経済学教書を読む必要があるのだが、そうする気のない読者を納得させるところまでいかないだろう。この本も含めて、そういう人たちを説得できるような書籍が無いことを痛感する。
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