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女性向けポルノグラフィの知られざる世界

2010-07-01 10:08:01 | 読書ノート
守如子『女はポルノを読む:女性の性欲とフェミニズム』青弓社ライブラリー, 青弓社, 2010.

 「性差別的ではないポルノもある」という立場から、女性が好むポルノグラフィを分析する試み。対象はすべて漫画である。著者は、男女だけなくやおいもの(男男)にも貫徹する性交時の役割として「攻め/受け」という概念を導入する。ポルノコミックの読者アンケートの分析によれば、女性がポルノを受け入れる重要な条件は、「怖くない」ことだという。受け側が性交することに対してまったく合意していない、内心でもまったく受け入れていないものはダメらしい。楽しめるレイプ表現とそうでないものがあるらしく、それは重要な境界線とのこと。

  男性の読むポルノコミックとの比較もされている。男性のそれにおける「受け」は、欲望の対象としてモノのように描写されて内面を感じさせない。だが、女性のそれにおいては、受け側の内面が重視されてかなりのモノローグ記述が費やされるという。また、男性のそれにおいては省略されることのある攻め側の姿態が、女性においては描きこまれており鑑賞の対象となっているという。

  このようにあまり垣間見ることのできない世界の知識が得られるところは面白い。ただ、「なぜ女性が好むポルノは漫画表現なのか」という根本的な疑問も残る。この疑問に取り組んだ章もあるのだが、説得力は今一つである。漫画表現だけを好むというのは本当かという点と、ではなぜそうなのかという疑問に答えることが今後の課題だろう。

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