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米国連邦最高裁による判決の要因および影響の歴史、とすると硬いかな

2014-03-10 20:58:29 | 読書ノート
阿川尚之『憲法で読むアメリカ史(全)』ちくま学芸文庫, 筑摩書房, 2013.

  米国連邦最高裁が憲法をどう解釈してきたかについて歴史的に記述した内容。最高裁の判決が政治や世論にどのような影響を与えたのか、あるいはその逆の影響について、その時代のアメリカ社会全体を眺めるように書いている。入門的な内容ではあるが、読みこなすには多少の憲法の知識が必要だろう。

  全28章と細かく分かれており、冒頭の数章は米国憲法の成り立ち、続いて原住民が作った国家と連邦および州との外交関係、真ん中の章のほとんどは黒人の人種差別問題が南北対立となって南北戦争となり占領地行政と代わっていく様について、後半1/3は19世紀後半から20世紀初頭までの経済自由主義時代、ニューディール時代、1950年代から60年代にリベラルな判決を多く下したウォレン長官時代、およびバーガー長官時代を扱っている。当初の最高裁は大した影響力をもっておらず、また時代によって浮沈もあったとのこと。特に戦争や恐慌の時代になると大統領の力が増し、議会や最高裁の地位は相対的に低下することがわかる。

  この文庫版は、2004年にPHP新書として二分冊で発行されていたものを、冒頭と最後を削って一冊にしたもの。もったいないのは1986年-2005年のレンキスト長官時代を削ったことで、もう数年経たことであるし、むしろ加筆されるべきだったのではないだろうか。
  
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