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言語を習得をしているかしていないかで行動に差が出るとのこと

2014-03-14 20:46:48 | 読書ノート
今井むつみ『ことばと思考』岩波新書, 岩波書店, 2010.

  言語が思考を決定するのか否かを科学的に問うている入門書籍。いわゆるサピア=ウォーフ仮説が唱えるように言語の種類によって世界の見え方は全然変わってしまうのか、それともスティーブン・ピンカーが言うように現実世界に対する認識は言語とは無関係であり人間に共通したものなのかについて、各種実験を参照しながら検証している。

  で、その答えは「どっちも」というもの。「ねこ」とか「いぬ」のレベルなど、基礎カテゴリは各言語で共通しており、「動物」や「チワワ」などの他のレベルに比べて子どもにとって覚えやすいという。このような先天的に習得しやすい人類共通の概念があり、これらは言語に先行する思考と言えるだろう。一方で、動作の分類や色彩など言語によって異なる概念もまた、様々な実験によって思考に影響を与えているという。したがって、言語によって世界の見え方が異なっているというのもまた事実だという。

  以上のように玉虫色の決着のわけであるが、それでも現在の科学的言語研究を垣間見ることができて面白い。言語を使える状態にないと、概念間の連結が出来なくなって適切な行動ができなくなったりするとのこと(「一つの空間にある複数の特徴を把握してものの位置を記憶する」ということが難しくなるらしい)。著者は言語の違いからくる認識の違いを強調しているが、個人的には言語があるかないかで思考や行動が変わるという点が興味深かった。
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