ハンナ・アレント『人間の条件』志水速雄訳, ちくま学芸文庫, 筑摩書房, 1994.
古典だというので読んでみたが、月並みなことしか書けそうにない。原著は1958年で、哲学書らしく読みやすい議論ではない。内容は以下のようなものである。人間の行為は、生命の維持と再生産のための「労働(labour)」、耐久的なモノを作る行為を「仕事(work)」、公共的な言論活動や政治を「活動(action)」の三つに分けられる。古代ギリシアでは活動>仕事>労働という価値序列だったのが、近代になると労働>仕事>活動に転倒されたという。
本書の議論で危惧されているのは、民主政治を機能させるためのコストを払おうとしない大衆の増加だろう。現代では、労働のような私的なことが優先されるようになったため、活動のような公共的領域の衰退をもたらしている、と。しかし、どうしろとは著者は言っていない。この議論が「公共性のある活動の優位(すなわちそれらを政治的に奨励しよう)」といった近年の卓越主義の議論につながってくることは明らかである。しかし、実際に政府が奨励するとなるとクリアすべきことは多いという印象。
古典だというので読んでみたが、月並みなことしか書けそうにない。原著は1958年で、哲学書らしく読みやすい議論ではない。内容は以下のようなものである。人間の行為は、生命の維持と再生産のための「労働(labour)」、耐久的なモノを作る行為を「仕事(work)」、公共的な言論活動や政治を「活動(action)」の三つに分けられる。古代ギリシアでは活動>仕事>労働という価値序列だったのが、近代になると労働>仕事>活動に転倒されたという。
本書の議論で危惧されているのは、民主政治を機能させるためのコストを払おうとしない大衆の増加だろう。現代では、労働のような私的なことが優先されるようになったため、活動のような公共的領域の衰退をもたらしている、と。しかし、どうしろとは著者は言っていない。この議論が「公共性のある活動の優位(すなわちそれらを政治的に奨励しよう)」といった近年の卓越主義の議論につながってくることは明らかである。しかし、実際に政府が奨励するとなるとクリアすべきことは多いという印象。