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テレビの見方は子ども向け番組を通じて学習される

2017-01-18 22:23:44 | 読書ノート
村野井均『子どもはテレビをどう見るか:テレビ理解の心理学』勁草書房, 2016.

  メディア論。副題に「心理学」とあるが実験系ではなく、自由記述方式の学生アンケートからエピソードを拾って、子どもやお年寄りのテレビに対する理解(というか誤解)を材料にするもの。そうした誤解の存在によって、テレビ映像を理解することは訓練が必要だということ、そしてどうやって子どもが訓練されてゆくのか、を明らかにしている。統計にうるさい本ではなく、ですます調で書かれているので一般の人にも読みやすいだろう。

  幼い時は、テレビの中には人がいない、画面の向こうにいる人からは茶の間の視聴者のことは見えない、などのことを理解できない。では日本人はどうやってテレビ番組の見方を学習するのか。著者によれば、幼児向け番組や、CMの入る民放と入らないNHKの差異などを学習してゆくことによってだという。幼児向け番組にはカメラワークが少なく、時制の変化がない。すなわち、モンタージュや回想シーンがないので理解しやすい。しかし、子ども向けと思われる番組にも対象年齢があって、『サザエさん』のようなもう少し上の年齢以上を狙った作品の場合は盛んに回想シーンが入る。そうしたシーンは幼児には分かりにくいのだが、音やワイプという処理によってできるだけ時制を明瞭化しようとしているという。こうした製作者側が与えた符牒のほか、子ども同士での議論や、就学して知識を得ることによっても正しいテレビ視聴の仕方を身につけているようだという。

  例として挙げられている学生アンケートの回答は、真面目に書かれているのだが笑える。汗をかいているテレビ出演者に対して、茶の間で見ていたおばあちゃんが「お茶をだしてあげなさい」と述べるとか。昔NHK教育で放送されていた『できるかな』は当時の子どもを混乱させていたようで、姿を見せないナレーターの女性の声をノッポさんの声だと勘違いしていた人は多かったみたいだ。当時の僕も見ていたが、逆にゴン太くんがナレーターの声でしゃべっていて、ノッポさんがウゴウゴ言っているのだと思い込んでいた。挙げられている番組がわかるので、非常に理解しやすかった。
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