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やや厳しめの評価を伝えるドイツ現状報告

2016-01-22 21:39:43 | 読書ノート
三好範英『ドイツリスク:「夢見る政治」が引き起こす混乱』光文社新書, 光文社, 2015.

  ドイツの現状についてのレポート。著者は読売新聞のドイツ特派員。フクシマ報道に現われる日本に対する偏見、エネルギー問題、ユーロ危機、中国ロシアへの接近をトピックとする内容である。全体としては、ドイツは日本の手本とはならないし、また頼れるパートナーでもない(どちらかと言えば友好的でない)ということを伝えている。副題の「夢見る政治」というのは、ドイツ人には理想主義的な傾向があり、リアリズムを貫徹すべき政治の領域でも例外でないということ。「贖罪イデオロギー」に沿った価値観から、日本に対しても倒錯した優越感を隠さないという。

  発行時点の昨年9月の段階で、すでにギリシア危機での対応をめぐって批判されていたとはいえ、読んだ当初は「ちょっとドイツに厳しすぎるかな」という印象だった。しかし、本書発行後に起きたフォルクスワーゲンの不正問題と、最近の大晦日の女性暴行事件のニュースを知って、本書の言わんとするところが腑に落ちた。企業の不祥事は日本でもしょっちゅうあって他人のことをあまり言えないと思う。だが、日本の場合は単なる無能の糊塗であり、その場しのぎのごまかしにすぎない。ところがフォルクスワーゲンの不正は、持てる能力を駆使したよく設計された戦略的ズルであって、日本企業ではちょっと考えられないものだった。理想に合わせることは絶対的で、駄目な現実をそのまま放置してはならず必ず何らかの処理しなければならない、というのがドイツ人の考え方なのだろう。

  大晦日の難民による事件も、外から見ればいずれ起こるだろうと予想されていたことだ。だが、ドイツ研究専門の同僚によればこの事件がドイツ国内でかなりの衝撃を与えているという。どうやら治安の悪化を覚悟したうえでの難民の受容ではなかったようだ。すなわち、あまり計算高くなくてイデオロギッシュ。人に例えれば良い奴だがやり過ぎて失敗することもある、というところだろうか。そういう国がヨーロッパをリードしている。ネガティヴ評価に終始しており一方的ではあるが、日独関係を考えるうえでこういう一面を伝える書籍も必要だろう。 
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