中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

主治医との連携は大切です

2013年11月18日 | 情報
メンタルヘルス問題で、あらゆるトラブルを回避しながら、精神疾患をり患した従業員を、元の職場に復帰させるには、
当該従業員の主治医との連携、さらに言えば、主治医との良好で綿密な信頼関係を築くことが大切です。

ところが、主治医との連携がうまく取れていないことが原因と思われるトラブルが多く発生しているのが現状です。
例えば、「会社側との接触を一切許さない」と云われる場合があります。
主治医は、医師として患者本位の診療を心掛けていますので、患者の治療に障害となるようなことは、極力排除するようにします。
しかし、企業にとっては、このような主治医の対応では困ってしまいます。

そこで、以下に主な対策を列記しましょう。

まず、主治医が「会社側との接触を一切許さない」と云われる背景を考えると、企業を信頼、信用していない側面が窺われます。
十人十色ではありませんが、企業も百社百様で、中には「お行儀」が悪い企業もありますので、
企業全体に対する信頼度を低下させてしまったのではと考えています。
ですから、企業は主治医との信頼関係をつくることから始めなければなりません。
そのためには、当該従業員の了解を得て、または同行して、主治医に面談する予約を取り付けます。
面談では、まず名前と顔を主治医に覚えてもらいましょう。それから、会社・事業所の考え方、事業の内容、
当該従業員の復職の条件等を説明します。特に、復職を認める場合の会社側の条件を、正確に伝えることが重要です。

主治医のほうも、「そうしていただけるととても助かります」と、企業・事業所からの情報提供を望んでいるのは事実です。
ということで、主治医側からの企業・事業所への問い合わせは、まず考えられませんので、
企業・事業所から、主治医にアプローチすることになります。
なお、面談には、相当の謝礼が必要ですので留意してください。

次に、当該従業員(休職者)には、定期的に診断書の提出が求められますので、
会社は、産業医に必要に応じて、主治医との情報交換を密接に実施するよう要請してください。
主治医が提出する診断書には、正確かつ詳細な情報は記述されていませんので、
産業医に要請するまでもなく、主治医からの情報収集は必要になります。

さらに、会社は主治医が復職を可とする診断書を提出する頃を見計らって、
主治医に対し、当該従業員(休職者)の回復状況を確認しながら、会社側の復職条件を再確認します。
現状では、会社は当該従業員(休職者)から、「突然に」復職を可とする診断書を提出されると
困惑しているかのような態度を示すことがありますが、これは会社側の怠慢と云われても仕方がありません。
会社は、安全配慮義務の履行の観点から、当該従業員(休職者)の回復状況を注意深く見守らなければなりません。

いよいよ、復職可の診断書が、当該従業員(休職者)から会社に提出された段階での対応です。
復職を認めるかどうかは、会社側の権限です。産業医の見解をもとに社内の関係者の合意で決定し、
事業所責任者名で、当該従業員(休職者)に通知します。
なお、復職可の診断書に疑義があれば、納得いくまで主治医に問い合わせることが必要ですし、
場合によっては、復職を認めないことも検討しなければなりません。
ただし、復職を認めない場合は、主治医に対し丁寧な説明が必要です。
これが、ご理解頂けると思いますが、主治医との信頼関係を維持するうえで、とても大切なことなのです。

復職してからも、当該従業員は主治医の治療を継続して受けているのですから、
当該従業員の就労状況を主治医に報告することが求められます。
以上に述べてきたことが、とても面倒な行動に見えるでしょうが、
主治医との信頼関係を維持するうえで大切であることは理解頂けると考えています。
繰り返しますが、この主治医との信頼関係が、企業や事業所のリスクマネジメントで重要な条件になります。

参考データ「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」
独立行政法人 労働政策研究・研修機構(平成25 年6 月24 日)

図表7:主治医との連携状況
メンタルヘルスの場合 積極的に 7.7%、事案に応じて 59.9%、 社員の希望により 32.4%
その他の身体疾患   積極的に 5.2%、事案に応じて 52.2%、 社員の希望により 42.6%




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