「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 ・・・森林県高知からのメッセージ

2010-11-25 | 鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

「ぷらっとウオーク」                情報プラットフォーム、No.260, 5(2009)掲載
{森林県高知からのメッセージ}


  高知県産業振興センターで活躍された松崎武彦さんが、昨年12月20日に急逝された。3月28日には「偲ぶ会」が開かれ、黙祷を捧げた後、同日発行の「バイオマス通信~森林県高知からのメッセージ~」((株)南の風社)が披露され、皆で思い出を語った。


 [松崎さんの専門は触媒化学]   着任の挨拶で「不安一杯で高知にきました。通産省傘下の研究所で37年間を、触媒化学という狭い分野の基礎研究で過ごしました。高知に来ることは新しい経験への挑戦でした。」と述べている。

触媒化学を、分担執筆されたエコマテリアル事典((株)サイエンスフォーラム,1996,12,)の「合成ガスを経由する油化」を例として説明しよう。合成ガスとは、炭素で構成される化石燃料、有機物、化学合成品のような複雑な化合物を一酸化炭素(CO)と水素(H2)の混合ガスにしたものであり、H、O、Cの元素パーツに解体したと考えればよい。

そのパーツを、鉄やコバルトの触媒の存在下でフィッシャー・トロプシュ反応を制御し、必要とする合成油、合成燃料、化学合成品に作り直すのが油化である。触媒は、化学反応の仲立ちとして、反応速度を高める物質であり、それ自体は反応の前後で全く変化しないものである。


 松崎さんは「木質ペレットを見たとき、高知県を活性化するのはこれだと感じました。」と述べている。広い視野を持ち、エネルギー・環境問題に直に関わっていたからこその直感であり、高知県に来て森林バイオマスをテーマとすることは必然だったように思える。


  [松崎さんは研究開発コーディネーター]   コーディネーターとは「いろいろな要素を統合・調整して、一つにまとめ上げる役」と辞書に出ており、産学官連携、異業種交流、シーズ発掘・育成、市場開拓・販路拡大などが頭に浮かぶ。技術面に軸足を置いて、要素間を取り持つ仲人のように走り回り、触媒のように活躍していた。しかし、それ自身は変化しない触媒の筈だったのに。森林バイオマスの研究会を立ち上げようとした矢先だった。


 [好奇心一杯の松崎さん]   質問時間に必ず手を挙げるのは松崎さんである。講演の後も講師を独り占めにしている。側で聞いていて、根掘り葉掘りそこまで聞かなくてもと思う。傍若無人なのか、天真爛漫なのか。でも、知ったかぶりを絶対しない、好奇心一杯、探求心旺盛な松崎さんである。素直に質問できるのが羨ましいと思った。


 [フィンランドに1年半]    松崎さんはフィンランド国立工業技術研究所で研究活動を行っている。でも、「フィンランドでは・・・・・」と積極的に語る松崎さんを知らない。森と湖の国、ムーミンの国のことを根掘り歯掘り聞いておけば良かったと悔やまれる。


 フィンランドを調べてみた。森林資源の適正な管理による持続性のある森林産業の上に、エレクトロニクス産業の柱を確立した産業構造、そして好奇心を育てる教育を進め、自立を促す福祉対策を強めての豊かな国づくりの政策がある程度は理解できた。


 [松崎さんが指し示す高知県のこれから]   過疎化の進む、そして森林率84%の高知県のあるべき姿を考えるとき、フィンランドが目標になるよう思われる。

「バイオマス通信」からは、コーディネーター役を触媒化学の手法で重ね合わせ、高知県とフィンランドの自然の豊かさを念頭に置き、森林バイオマスから発展する産業振興をイメージしていたことが読み取れる。さらに、地域の文化・伝統を大切にして、土佐の誇りを盛り立てる方策を示している。松崎さんの辿った高知への道は予定調和そのもののようである。

 

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鈴木朝夫  s-tomoo@diary.ocn.ne.jp

 高知県香美郡土佐山田町植718   Tel 0887-52-5154 

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