「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 ・・・土佐語

2010-11-24 | 鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

 「ぷらっとウオーク」                    情報プラットフォーム、No.209、2(2005)
{土佐語}


  高知に来て8年になろうとしている。手帳には土佐語の字引が出来ている。仕事の上で、日常会話で、宴席で、聞いたことのない表現や面白い語り口に出会うと「今、なんと言いました。意味は」と質問し、記録しているのである。

走り書きのために自分でも読めなくなることもあるし、手帳は更新されるので去年のメモが手元に残らない。だから、忘れていることもあるし、二回も尋ねることにもなる。さらに、大学受験のときに勉強した「徒然草」や「枕草子」を思い出せば納得できる表現も多く、その分質問が多くなる。


  確認しようと、私の手帳の字引をもとにして別な人に尋ねると面白いことが起こる。高知の人は「知らない」と言いたくないように思える。「それは幡多の方だ」とか、「嶺北の方言だ」といった具合である。高知の人が二人の時、「そうは言わない」などと論争が始まる。例えば、「てんごのかー」と「てんごのかわ」などである。「てごのか」もあるようだ。(注:お節介、余計な手出し)


  そんなとき、ある方が「高知県方言辞典、編著:土居重俊、浜田数義、(財)高知市文化振興事業団 発行、(1985)」をプレゼントして下さった。あまりに質問が多いので自分で調べなさいとのメッセージだったのかもしれない。また、「土佐弁かるた」がありますと教えてくれた人がいる。これには「しょう懐かしいちゃ、土佐弁が聴けて・・・」と副題が付き、CDも付いている。お正月にNHKのニュースでこの「かるた」のことが取りあげられた。初めて耳にする若者も多いとの趣旨である。


 多数の高知出身者にこの「かるた」の意味を聞いて歩いた。当然のことかもしれないが、年配層か若年層かで差が出るのではなく、祖父母と一緒に暮らした期間が長いほど、記憶に残っているようである。「日常的に使いますか」と聞けば年齢差が出るであろう。

 私は父親の転勤で北海道から九州までの各地に住んだ。転校は小学校だけでも7回に及ぶ。四国には来たことがなかった。転校して半年もすれば流暢にその土地の言葉が話せるようになった。また転校(を)すれば全てがご破算である。このような体験から、地方の言葉は極めて豊かな表現力を持ち、それに相応しい感情表現ができることを知った。その地域の生活・習慣・人情・文化に根ざしているのである。共通語ではできないことである。


 和歌山県の南部に出張したことがある。土佐の言葉とよく似ているので吃驚した。黒潮に乗っての往来があったと聞かされた。松本清張の「砂の器」では、東北なまりが犯人の手がかりであるが、出雲地方の方言が東北地方に似ていることがトリックになっていた。日本海側の親潮での貿易・交流・定着があったのである。


  表題を「土佐語」としたのは意味がある。若い職員に土地の言葉を覚えてもらって、患者さんに土地の言葉で接している病院が宮城県気仙沼市にあると聞いた。ここでは気仙沼弁ではなく、「気仙沼語」と呼ぶことにしているとの話だった。「土佐語」と云うべきである。

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鈴木朝夫  s-tomoo@diary.ocn.ne.jp

 高知県香美郡土佐山田町植718   Tel 0887-52-5154



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