「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

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三郎さんの昔話・・・鉄砲鍛冶の忍術使い

2010-11-26 | 三郎さんの昔話

鉄砲鍛冶の忍術使い

 大川村の山奥へ伊予から越してきて、畑作をしながら山猟師の鉄砲の直し(修理)が上手で、忍術使いの伝助という人が女房と二人で暮らしてた。
 ある時よそから忍術使いが来て、鉄砲鍛冶の伝助と忍術の腕くらべをすることになった。それを聞いた村人達は忍術くらべの場所、氏神様の広場に集まった。
 広場の中央に三間程のなる(木の棒)を立てらした。かたずを飲んで見守る村人の前で、先ず試合を申し込んだよそ者の忍者が、手に印を結んで呪文を唱えた。とたんに白い煙がぽうーと立って姿が消えた。そしたら白鼠が出て来て棒の下を二、三回まわって棒をスルスルッと登って、天辺でチュウ、チュウと鳴いた。
 見ていた村人はたまげて、ウワァーと声が出て手を叩いた。
 その時、側にいた伝助も白い煙と共に消えた。アッという間もなく天空に鷹が舞い、飛び下りて来た、と見るや棒先の白鼠をつかんで飛び去った。
 あっけにとられて見ていた村人達が正気にもどった時、よそ者の忍者は姿なく、鉄砲鍛冶の伝助が一人立っていた。この試合は伝助さんの勝ちじゃと、村人は手を叩いて喜んだ。
 さて、ある日のこと、山猟師が鉄砲の調子が悪いので直してもらおうと悠々やってきたら、鍛冶の伝助さん家の前で畑を耕していた。
 猟師は「この鉄砲は少々古うて当たらんが、直してもらえまいか」と頼んだら、「そんならちょっと見てみよか」と家にもどって、伝助さん猟師に、「わしが覗いてみるけ、この鉄砲捧げ筒して持っちょりや」言うて猟師に持たし、筒の手前で覗いていた伝助さん、ウニャムニャと一言二言いうと、白い煙になって筒の中へスゥーと吸い込まれるように消えた。しばらくたったがなかなかに出てこん。
 捧げ筒したままの猟師は少しくたびれあぐんでいた。その時、伝助の女房が番茶を持って出て来て、猟師の恰好を見て「まあ、それがたまるか、うちの人は時々忍術使うて人をおちょくるけ、早う鉄砲おろして一服して、畑へ行って」と。
 猟師は忍術でやられたと思うたがしかたがない。お茶飲んで裏の畑に行ったら、伝助さん知らん顔で畑を打ちよる。その背に、「鉄砲の具合はどうじゃろ、直るろうか」と聞くと、伝助さん振り返って、「あっ、畑に気をとられて、おまさんのことすっかり忘れちょった、あの鉄砲は少し筒が狂うちょるが、鍛冶仕事は雨の日だけするけ、降ったら直しちょく、雨あがりに取りに来いや」と。「そんならお頼みします」と猟師は帰った。
 その後何日かして雨も降り上がった晴天に取りに行ったら、鉄砲は直っていた。猟師は伝助に、「鉄砲は直ったら、これでよう当たるろうか」と聞くと、伝助の言うこと、「鉄砲は筒なりに直したが、当たる当たらんは、鉄砲の癖と撃つ人のわざ(技)じゃ」
 ふぅーんとうなづいて聞く猟師に「鉄砲が当たる秘伝を教えちゃろう。鉄砲も人と同じでそれぞれ癖がある。上下左右とその癖をよーお知って、撃つ時は呼吸を静かに息を吐いて、邪念を除き無になって的をこじゃんと見据えて引金を引く。これが出来れば百発百中じゃ」
 熱心に聞き入っていた猟師、「鉄砲直してもろうた上に、ええ話を聞かしてもろた」と直し賃を十分に払い喜んで帰った。
 その後この猟師は鉄砲撃ちの名人になったと。村人は「鉄砲鍛冶の伝助は、ありゃ元は忍術使いの侍じゃ」と噂していたと。
 こりゃ、嘘かまことか、昔の話。

 

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