「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

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三郎さんの昔話・・・一言三文なり

2010-11-25 | 三郎さんの昔話

一言三文なり

 昔のこと、田舎の村里の木賃宿に、旅から旅をしていた賢くて貧しいインテリの学者が泊まりました。 が、旅の疲れが出たのか、何もせずに日々を過ごすので、宿の主はこのまま泊まり続けて、宿賃を払ってもらえるのか、少し心配になって聞いてみた。
 「お客様、少し長いですが宿賃は心配ありますまいか。」と尋ねると、学者は、「実のところ私も少し疲れて長居をしたが、金もなくてご主人にご迷惑も掛けられんので、何かせねばと考えていたところじゃが、ご主人、一言を三文で皆の益になることを売るので、里の人に知らしてくだされや。」と申しました。
 これを聞いた宿の主はやや不信であったが、なにせ宿賃を稼いでもらわねばと、 「私の宿にえらい学者が来ているが、皆が得になる話を、一言たったの三文で話してくださる。聞きに来なはれや。」と、人から人へ伝達した。
 何事もないのんびりした里の人は、学者に一言聞けば賢くなるかもしれない。得なことがあるかも、と好奇心も添うて、里人は次から次に話を聞きに来た。
 学者の言ったことは、『稼ぐに追い付く貧乏なし』とか、『早起きは三文の得あり』とか、『論より証拠』、『花よりだんご』、『腹がへっては戦はできん』と。
 商人がお金儲けしたいがと聞くと、『大儲けより小儲け』と申された。その通りで、『塵もつもれば山となる』。
 ある男が注文もなく聞くと、『大木の下より小木の下』と答えたので、合点がゆかず、「大木の下より小木の下」と続けて言いながら並木の道に掛かった時、天俄に曇って夕立がバラバラッと降ってきた。
 あわてて枝の茂った大木の下で雨宿りしようかと思い、行こうとしたが、「大木の下より小木の下」と頭を走った。
 枝も少ない小木の下に寄り添った時に、たまるか、ピカピカッと光るやガラガラズドーンと雷鳴で目を瞬いた。
 天からいなづまがチャチャーと大木のりんに走ったかと思うと、大きな火の玉が木をつたって地面に下りると、ヅーンと地響きがして消えた。
 男は小木にかきつき身震いしたが、雷も小鳴りになり、やっと気をとりもどし、あーあ、三文の一言で命拾いしたと、胸をなでおろし家に帰ったと。
 この「一言三文」の話は理にかなった言葉で、やがて、「いろはかるた」となり、広く庶民に愛されることとなった。

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