「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

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三郎さんの昔話・・・古狐おさん(二)

2010-11-26 | 三郎さんの昔話

古狐おさん(二)

 御殿場の下の集落に、兵七という三十歳の夜相撲もとる小元気な、すけべえな男がいた。
 嫁はんもあるが、小柄で百姓がえろうて病身なひ弱な人じゃった。
 そのせいもあったろう。兵七は夜が来ると、きょろきょろと出歩きよった。 秋も終わりに近い小寒い晩に、後家やらへらこい娘を捜してそちこちしたが、ええ口も無うて、夜半も過ぎて一本松へもどりかかったら、向こうからとぼとぼと人が来よる。
 大松の下でばったりと向かい合った。兵七が見た顔は、年は四十ともいかん、若年増のええ女ごじゃ。
 兵七とっさに、「おまさん、今頃どこへ」と聞いたら、「わたしゃ、上関の知り合いを尋ねていったが留守で、夕方まで待ったがもどらんけ、あきらめての帰りじゃが、しょうだれた。」言うて道端へ座り込んだ。
 兵七見れば見るばあ、ええ女ごじゃ。兵七日頃のくせが出てもやもやとした。「おまさん、嫁はんか、後家かよ」と聞いたら、「わたし、去年の春に亭主が死んで若後家で、しょうむごいぜよ。」
 兵七、これがたまるか、むらむらっとして女に飛びかかろうとしたとき、若後家に、「おまさん、汗臭い。そうあわてずに、そこのゆ溝でちとゆすいできいや。」と。
 兵七あわてて横の兼山掘りへ飛び込み、水をシャブリ掛けてザブンザブン。そのうちに若後家は消えて居らん。
 おさんにこじゃんとだまされちゅう兵七、夜が明けるまで、ぶるぶる震えもって水をザブリザブリと。
 そこへ名主の与兵衛さん、急ぎの用で朝も早いに通り掛かってこの様を見て、「こりゃ兵七、おんしゃー何しよりゃー」言うたら、兵七やっと気が付き、正気にもどって溝から上がり、ガタガタ震いよる。
 与兵衛さん大きな声で、「おさんの古狐のやつ、すけべーの兵七化かしよったわ」言うて行った。
 しわい古狐の化かすがは、てこにあわんぜよ。

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