「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 ・・・パビリオンの見学

2010-11-24 | 鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

「ぷらっとウオーク」                   情報プラットフォーム、No.216、9(2005)
{パビリオンの見学}

Expo 2005 in Nagakute 01.jpg

愛・地球博長久手会場内

画像出典:2005年日本国際博覧会


  愛・地球博の見学旅行から帰ってくると、鉄鋼関連の学会からの月刊誌が届いていた。トップ記事は「愛知万博における環境配慮と鉄骨建築」である。展示物・展示品を見るために、パビリオンに入るために、列を作って順番を待つものと思いこんでいた。

建築物・構造物・パビリオンだけを外から観察することも見学の一つの方法だったことを知らされたのである。後悔することしきりである。思い出しながら、この記事の内容を紹介したい。


  長久手会場の主要エリアを結ぶためのグローバル・ループは、幅20m程、全長2.6kmの板張りの環状の歩道であり、バッテリー駆動のグローバル・トラムや自転車タクシーも走るメイン・ストリートでもある。

この空中回廊は起伏に富んだ地形を痛めつけることなく各エリアを繋ぐために考え出された。回廊を支える橋脚は、複数の鋼管が地上の一点(支点)から扇状に広がった構造をしており、その基礎となる支点は、ねじ様の鋼管杭を地下に回転貫入させたものである。この工法では、この基礎鋼管杭を逆回転によって、地中に残存させることなく、また地上に大きな傷跡を残すことなく、撤去できることになる。


  トヨタグループ館やガスパビリオンでは、解体時に障害となるような鋼材の溶接接合や鋼材のリユースの価値を下げるようなボルト孔を使っての締結結合(ボルトとネジによる締め付け法)を使わずに、鋼板あて板、ボルト、ネジを使った摩擦締結法を採用してリユース性を増している。三井・東芝館は単管の足場用の仮設資材を使い、建物を覆うルーバーとして、外装の美しさを追求している。

 西ゲートを入ると直ぐに、竹籠を被せたようなパビリオンが目に付く。長久手日本館である。竹ケージの下にはホーロー鋼板に光触媒(TiO2)をコーティングした屋根材が使われ、これに散水して蒸発潜熱による温度低下を図っている。

光触媒外装材は超親水性(水に対する良好な濡れ性)を持っており、散水により屋根表面に薄い水膜が形成される。少量の水で効率よく打ち水効果が得られるのが特徴である。


  各国の展示空間は地域ごとに6つのグローバル・コモンに集約されている。これらのパビリオンはモジュール単位で構成されている。1モジュールは18m×18m× 9mであり、積み木のように接続できる構造である。組み立て、解体、リユースを容易にするためである。これを基準にして、各国は内外装を個性豊かに仕上げているのである。

  水の蒸発に伴う気化熱で温度を下げようとする試みは「愛・地球博」の至る処で目に付く。ワンダーサーカス電力館の順番待ちの広場では天井からの微細な水滴のスプレーで温度を下げているし、三井・東芝館のルーバーには水が伝い流れる仕掛けがあり、熱交換機の役割を果たしている。

ギネスに載った最大の万華鏡の名古屋市パビリオン「大地の塔」では四つの外壁面を水が膜のように静かに流れている。世界最大級の緑化壁(バイオラング)も植物の蒸散機能を使って温度を下げる試みの一つである。バイオラングとは生物(Bio)と肺(Lung)を組み合わせた造語である。

 
  前もって調べていれば、受け売りでなく説明できたのに。パビリオンの前の説明板、案内板を読んでいたら、そのつもりで見てきたのにと悔やまれる。
 参考資料:「ふぇらむ」(日本鉄鋼協会会報)、Vol.10、No.7(2005)pp.576~580.

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鈴木朝夫  s-tomoo@diary.ocn.ne.jp

 高知県香美郡土佐山田町植718   Tel 0887-52-5154

 

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