「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

「高知ファンクラブ」に投稿された、続きもの・連載記事を集めているブログです。

三郎さんの昔話・・・失敗と不注意

2010-11-26 | 三郎さんの昔話

失敗と不注意

 寿太郎爺さんは、私の父方の祖父で西暦一九一六年生まれでしたから、私が小学五、六年の頃には、もう八十才過ぎの年寄りでした。
 祖父は面長な顔に小皺で、痩せひすばった身体で腰も曲がっていたが、わりに元気で祖母とふたり隠居暮らしをしていました。が、ひょっこり思い立つと、曲がった身体に両杖ついてテクテクと、大石から土居(本山の町)の私の家までやって来て一晩泊まると、両杖の四つ足でテクテクきようて帰る。
 祖父が泊まったある日のこと、風呂に入りたいと言うので、夕方早めに風呂を沸かして、祖父を入れた。
 すると父が「風呂へ行って、お爺さんをこすって垢おとしちゃれ」、と言うたので、すぐ行って祖父の頭から背を洗って流し、足にかかった。腿よりすねの皿骨が大きい、皺だらけを順に洗っていて、むこう臑をこすった、こすり方に力が入り過ぎたのか、骨と皺のむこう臑の皮が、ペローと剥げちゃった。
 ビックリ。でも十センチ程、皮が剥げているのに血もろくに出ない。さあ困ったが仕方がない。
 急いで出て来て「お爺さんの臑こすったら皮が剥げた」と言うと、たまるか親父の雷がおちた「皮がはげる程、がいにこするやつがあるか」と私はすくみ込んだが、後はしいて怒らず、父母が大事に風呂から出して、狸の油をぬり、皮をひっつけて手当てした。
 祖父は割に平気で、事はない言うて二日泊まって、テクテクと歩いて帰った。

◎子供の事とはいえ失敗である。しかし父にしてもまだ若年(四十才)で、老人の皮膚がこれほどに弱いとは知らなかったと思う。もし知っていたら、「年寄りじゃ、大事にこすれ、がいにすなよ」と注意したであろう。
◎昔の人は過労と粗食で暮らしが貧しかった、それで短命の者が多かった。その中で八十才越す老人は、まれな長寿者でした。

 

三郎さんの昔話 目次

情報がてんこもり  高知ファンクラブへ



最新の画像もっと見る

コメントを投稿