令和2年12月9日
「山本周五郎が描いた男たち 男としての人生」(木村久邇典・きむらくにのり著)を読みました。
初版は1982年に発刊されています。
高倉健氏がインタビューされたとき「この本を撮影中もいつも手元の置き愛読しています。」との発言で俄然注目されました。
インターネットでも探しましたが中古本も高額であり、地元の図書館に依頼してようやく県東部の府中市図書館から2週間という期限付きで貸し出ししていただきました。
先に詠んだ『日本婦道記」が控えめながら芯の強い良妻賢母の日本女性の賛歌なら、この本は男性版の物語です。
この小説に登場する男たちの感動的な生き様を描いています。
言わば、山本周五郎の小説の手引書、解説書のような書籍です。
この小説では「男の見切り」「男の頑張」「男の最後」等 15章にわたり18名の男たちの様々な生き方が取り上げられ、その男たちの珠玉の言葉が読む者の心を打つ。
第1章 男の忍耐では
火を放されたら手でもみ消そう
石を投げられたら体で受けよう
斬られたら傷の手当てをするだけ
どんな場合にも彼らの挑発に応じてはならない
ある限りの力で耐え忍び、耐え抜くのだ。
『樅の木は残った」 原田甲斐の言葉
山本周五郎は「日本人という国民はよろづにつけて辛抱が足りない。粘り強さに欠けている。諦めが早い。熱しやすく冷めやすい。これではいけないね。
命ある限り、藁にすがってでも、最後の最後まで己の最善を尽くす方に僕は共感する。」と述べています、
全編この精神で書かれています。
彼の座右の銘はストリンドベリ―の言葉「苦しみ悩みつつ、なお働け、安住を求めるな、人生は巡礼である」
山本周五郎の小説に登場する人物像は高倉健氏のイメージに重なる。
彼も死後に次の言葉を残している。
「行く道は精進にして、忍びて終わり悔いなし」
彼は初めは仁侠映画で売り出し、その後は「八甲田山」「幸福の黄色いハンカチ」「鉄道員」「あなた」等多くの名作を残し、文化勲章も授与された有名な俳優でありながら誰に対しても礼儀正しい態度は彼の映画に登場する人物そのままの姿であり、好感をもって迎えられた。
健康にも留意され、体形維持のため筋トレにも励んでおられました。
ストイックで素朴、しっかりとした信念を持った生き方、藩主のためすべてをささげる武士のゆるぎない生き方。山本周五郎と高倉健氏とは同じような考え方、共鳴しあうものがあつたのでしょう。小説に登場する人物のように生きたいと希求しておられたのではないでしょうか。
長期間にわたる撮影中において気持ちが落ち込んだり、モチベーションが落ちた時にはこの小説を読んで気持を高め演じた。役者とはそれほど軽いものですとも記していました。
古き良き日本人の典型を見る思いです。もうこのような人物は現れないのでは・・・
私にとってもとてもなれそうにないからそのような人になりたいと思うのでしょう。
一歩でも近づけるよう精進したいと思います。
ダイジェスト版でなく本物の山本周五郎の小説を読んでみたいと思います。