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東京医大問題で露呈した医療界の特権意識、「卒業生の親族優先は当然」- 問題は男女差別だけではない

2019-01-09 | いとすぎから見るこの社会-格差の拡大
東京医大問題は只今も盛大に「延焼」中で、
また他にも大問題が発覚するかもしれないが、
女性差別問題や不正入試以外にも興味深い現象が起きている。

それは、赤枝前衆院議員や高須院長のような著名医師が
ついうっかり口を滑らせて本音を喋っている点だ。

両者とも、今回の問題を「不正ではない」と明言している点で共通する。
つまり、客観的な公平性など無視して独善的に判断するのを当然視しているのだ。

若い世代の医師が上の世代の「体質の古さ」に辟易しているとは
よく聞く話であるが、上記の両者が図らずも自らの言動でそれを証明したと言える。

医師の方々は総じてクレバーでよく勉強されているが、
それでも自分の利害が絡んでくると自己の正当化や弁明に
その賢さをフルに活用する通弊があるように思える。

他の医療職から「子供みたいなことを言う」と囁かれたり、
家庭では「自分からは何一つやらない」と言われたりするのも道理であろう。

ただ、問題は日本の医療システムを改善しなければならない時に、
そうしたクレバーさが自己弁護や自らの損失回避に活用される点だ。

病院と診療所の差別的な診療報酬の格差には何ら合理的な根拠はなく、
自由開業の特権も医療現場の崩壊を促進するものとなり果てている。

また、医療予算を増やしたいなら一般国民より高所得な医師世帯が
一般国民よりもその原資をより多く負担するのが当然であるし、
勤務医の苦境が続いているならドイツのような開業規制と
休日夜間の診療義務化を受け入れるべきであろう。

フリーアクセスが問題なのは理解出来るのでアクセス制限は必要だろうが、
アクセス制限したら医師の労働時間を合理化だけでなく賃金も合理化が必要だ。

女性医師が増えて勤務医の労働環境が過酷になってきたら
自由開業を廃止して開業規制する以外に国民の納得する方策はない。

診療科や地域によって忙しさも違うので、診療報酬も機動的に「調整」すべきだ。
女性医師の産休育休に備えて医師の負担を引き上げて社会保障基金を運用し、
産休育休の際の代理人員確保に支出することも必要である。

女性医師の育成にも男性医師同様に数千万円の国費が投入されているから、
合理的な理由なくして労働時間の短い医師には国費を「返納」させる制度が必要だ。
その代わり、育児家事の外注は経費として税控除しなければならない。

……どれも至極当然の話なのに、物凄く嫌がる医師がいるのは確かだ。
医大や医学部では「公共」の概念を全く教えていないのだろう。

▽ 2005年頃から世襲による経済格差が鮮明に、具体的には政治家と医師である

『世襲格差社会 - 機会は不平等なのか』(橘木俊詔/参鍋篤司,中央公論新社)


当ウェブログにとって驚きはないことだ。
かなり前から以下のように指摘しているからだ。

「適切な医療なのか不適切な医療であるかは
 利害関係のある当事者が判断すべきものではない。
 高等教育を受けた者なら当たり前過ぎる常識である」

「利害関係者は公共政策を誘導するのではなく要望にとどめ、
 情報を開示して有権者の判断に委ねなければならない。
 まともな民主主義国なら当然であろう」

「医療界は業界への株式会社の進出に強い警戒感を表明するが、
 残念ながら行動原理において株式会社と医療界はよく似ている。
 同類だからこそ互いに憎み合っているとさえ言える」

「情報の非対称性を武器とし、不都合な情報は隠そうとすること、
 公益性を前面に押し出してプロパガンダを振り回すが
 実際の行動を見ると利害でほぼ全ての行動が説明できること、
 自らの縄張りへの侵入者に対しては敵意を剥き出しにすること。
 考えれば考えるほど両者は共通点が多い」

「北原茂実氏は「日本の医療は関係者の利害が絡み合って動きが取れなくなっている」
 と総括されており、日本医療の変革を事実上諦めている」

「医療については誠実な議論が成り立っていないために、
 利害関係者に対する根深い不信がある」

「医療界が情報公開に積極的でないという事実は、
 企業の不祥事と全く同じ構造で「不都合な事実」の存在を強く示唆する。

「何か不都合な報道があると「医者叩き」とレッテルを貼る
 程度の低い医師も残念ながら存在するようである。
 それは日本の医療への信頼を深く傷つける行為でしかない。
 本当に過労で倒れそうな医師であればそのような裏工作をする暇はない筈だ」

日本の医療界は、他の先進国に比べて異様である。
勤務医の労働環境も異様だが、実質的な世襲制や
医療界が「階級社会化」し、自民党を通じ政策に干渉しているのも異様である。

▽ しかも日本の医師免許制度は、アメリカ等に比べて相当甘いと指摘されている

『市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗』(李啓充,医学書院)


医療界のガバナンスは「お手盛り」で信用できないという事実は、
東京医大問題だけでなくそれを巡る医師自身の言動からも立証されている。

「週刊ポストが素晴らしい仕事をしている。
 ジャーナリストと共同でお馴染みのバリウム検査を調べ、
 効果が殆ど期待できないにも関わらず関係者の利権となっている実態を暴いた」

「それによれば、殆ど無意味に近いバリウム検査が続けられる理由は
 厚労省のガイドラインの関係者が研究費というカネで「汚染」されていることであり、
 天下り元公務員がこの利権で給料を貰っている実態も明らかになったのだ」

「果敢な突撃取材は週刊誌の独壇場であり「誤爆」も当然あるが、
 今回の件では週刊ポストの功績は大きい。
 (後で紹介するが、美容外科の暗部を暴いた週刊SPAの記事もかなり良い)
 大手メディア、特に新聞が追随して大きく取り上げざるを得ないだろう」

「医師の方々は一般の水準から見れば真面目で誠実であるが、
 こと経営や利権に関わる問題になると怖いほど「人が変わる」時がある。
 性善説で成り立っている医療界において、医師免許制度の欠陥を強く感じさせるところだ」

「医療界は基本的に「タコツボ」なので自浄力を期待するのは間違いであろう。
 情報公開を進め、外部の識者や第三者の意見を踏まえて改革を進めなければ、
 医療界への信頼そのものが損なわれ、予算や人材育成においても締め付けが厳しくなってしまう。
 利害関係者による現状維持の試みは、いずれ自らに深刻な打撃を与えることになる訳だ」 

と当ウェブログは指摘したが、矢張り「自浄力を期待するのは間違い」だったと言えよう。

 ↓ 参考

バリウム検査利権が発覚して利害関係者・天下り役員は絶体絶命、逃げ道はない -「取材拒否」に至る醜態
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/310e2d0a288758d01be0e51f630ef4b8

医療事故により日本で毎年5万人が死亡か、自殺者数より多い - 医療機関は依然として情報公開せず
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/27b999746aa8b688981c0c5cdff8b285

日本医師会、巨額の医療扶助をも「適切」であると主張 - 政治的主張ではなく情報開示を
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/3ba7efdb299dbd664ec14dcd58099575

▽ 医療界は欧州並みの医療予算増額を求めても、欧州並みの情報公開や開業規制は嫌がっている

『失われた「医療先進国」』(岩本聡,講談社)


東京医科大卒・赤枝前衆院議員 OB親族の合格依頼「優先は当然」(スポニチアネックス)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190101-00000042-spnannex-soci
”東京医科大の不正入試問題で、同大卒で自民党前衆院議員の赤枝恒雄氏(74)が、医学部医学科入試で同窓会関係者の親族らを優先して合格させるよう、臼井正彦前理事長(77)=贈賄罪で在宅起訴=に働き掛けていたことが31日、分かった。
〔中略〕
 赤枝氏は「同窓会で募金を集める責任者を務める中で、各地の卒業生らに頼まれ、10年ほど前から年2、3人の受験生について合格を依頼していた」と説明。ただ、多くが不合格になったとみられるとし「効果はなかった」と強調。謝礼の受け取りは否定した。
 29日に公表された東京医大の第三者委員会の最終報告書は、医学部医学科入試で国会議員を含む複数の政治家や同窓会関係者から、臼井前理事長らに対し、特定の受験生に関する合格依頼があった疑いを指摘。議員名は明らかにしなかった。
 赤枝氏は面接や小論文などの2次試験での優遇が念頭にあったとし「東京医大の遺伝子を残すことを考えなければならない。1次を通過できる学力があるなら、2次では卒業生の親族を優先するのは当然だ」と述べた。
 1968年に東京医大卒業。82年に日本で初めて「水中出産」を成功させた。東京・六本木に診療所を構え、若者の性感染症予防などに尽力。
〔中略〕
 2012~17年に2期務めた衆院議員(比例東京)時代には、言動が物議をかもすこともあった。16年、子供の貧困に関する超党派の会合で「高校や大学は自分の責任で行くもの」と発言。「仕方なく親に行けと言われて進学しても、女の子はキャバクラに行く」とも話し、野党から批判を受けていた。前衆院議員でタレントの上西が15年、体調不良を理由に本会議を欠席して旅行していた騒動にも関与。上西が欠席する前日、ウイルス性腸炎で「静養を要する」とする診断書を書いたにもかかわらず、一緒に六本木のショーパブなどを訪れていた。”

医師としての功績は否定しないが、
こうした独善的な言動を見れば医大が面接を課すのは当然で、
こうした顰蹙を買う人物を医大は排除したいと思っているのだろう。
赤枝の論理は米大学界の恥とも言うべき「縁故入学」と全く同じものである。


昭和大OB・高須院長、親族の優先合格は「不正ではない」 親が医師なら「心構えができている。大学が学生を選んでもいい」(careerconnection)
http://news.careerconnection.jp/?p=60857
”昭和大学は、医学部入試で現役と1浪の受験生に加点していたことを10月15日、会見で明らかにした。また一部の試験で合格者を決める際、同窓生の親族を優先させていたと各紙が報じた。
 これに対して美容外科「高須クリニック」の院長で、同大医学部出身の高須克弥さん(73)は同日、ツイッターで、
医師の家庭に育った学生は医師になる心構えができている。一次試験で学力がクリアーできているなら大学が見込んだ学生を選んでもいいではないか」
と投稿。同窓生の親族を優先させることは不公平ではないという考えを明らかにした。

■「いい素質を持った学生を鍛え、良い医者に育てるので、素質・心構え重視が正しい」
 同大は現役・1浪生に加点していた理由について会見で、「学習能力のみならず、より優れた医学生になっていくことが多い」と"将来"に対して加点していたと説明。同窓生の親族を優遇した理由は、合格しても辞退する受験生が一定数いることから「入ってくれる可能性が高い」とも説明した。
 高須さんは翌16日、あらためて「僕は不正ではないと思います」と述べる。「文部科学省が『不正だ』と言うから昭和大学執行部が『その認識はなかった』と言っているだけです」とコメント。自身も「特待生入学」だといい、「特待生は利益を受けています。悪いですか?」と投稿した。
 また「医学部は医師になるための教育を受ける場」とした上で、
いい素質を持った学生を鍛えて良い医者に育てるのですから学力に加え素質や心構えを重視するのが正しいです。医師になる心構えのない学生は研究者に向いています。医師免許はいりません。病人の役に立つ臨床医を育てるのが私立医学部の義務です
と持論を展開した。

■「そもそも文科省官僚の騒動が発端」と怒りをあらわに
 問題の発端になった東京医科大入試不正問題については「そもそも医者になる心構えができているかどうかわからぬ学生を東京医大に裏口入学させた文部科学省の役人が騒動の発端」と憤りをあらわにしている。
文部科学省のお役人が息子を東京医大に裏口入学させたのが問題の発端なのに昭和大学の採点にケチつけて『大変遺憾だ』なんて笑わせる。 事件の本態は文部科学省の収賄事件だろ? 文科相、病態を誤診するな」
 また、自身が2011年に出家し、僧侶の資格試験で一度落とされたときのエピソードも明かした。一緒に受験した子どもたちが合格だったため、高須さんは「不公平だ」と抗議したそうだ。しかし、合格した少年たちはお寺の跡継ぎとして育てられ「心構えが出来ている」という試験担当僧侶の説明に納得したという。
〔中略〕 
 ツイッターでは、大学側の裁量で加点・減点されることそのものよりも、「その事実を受験生が知らされていないことが問題」という声が多く上がっている。”

これは心理学の観点で言えば明白な「他責性」である。
自分達は特別な存在で一般庶民と違うと確信しているから
平然と独善的な顰蹙発言を連発するのである。
医師としての功績と「社会的常識」「公共性の理解」が全く別なのも理解出来ずに。


セクハラ懲戒の人物を顧問に 茨城県の“言い訳”と医師事情(日刊ゲンダイDIGITAL)
http://news.infoseek.co.jp/article/gendainet_512149/
”セクハラ問題を起こした人物を顧問に採用――。茨城県の決断が話題になっている。この人物は厚労省健康局長を務めた福田祐典氏(59)。同省に勤務していた当時、勉強会を主宰し特定の女性職員を泊まり出張などに誘っていたことが発覚。1年間に400回ものメールを送り、セクハラメールも含まれていたため、昨年4月に懲戒処分を受け、7月末に同省を退職した。
 その5カ月後、福田氏を茨城県が昨年12月1日付で保健福祉部の顧問に採用したのは、彼の経歴を買ったようだ。福田氏は1985年に筑波大医学専門学群を卒業して旧厚生省に入省。医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長や技術総括審議官などを歴任し、医学博士の学位を持つエリートだ。山梨県健康増進課長、宮崎県福祉保健部長の経験もある。採用の理由について茨城県はこう説明する。
「当県は以前から医師不足に悩んでいます。福田氏は山梨と宮崎で実績を上げた方なので、公立病院などの医師を確保するアドバイザーとして活躍を期待しています。11月に大井川和彦知事が福田氏を面接し、過去のことを割り引いても県政にプラスになると判断して採用を決めました」(保健福祉部厚生総務課)
 茨城県は福田氏の採用を公表せず、大井川知事が12月27日の会見で記者に質問されて初めて採用を認めた。出勤は週に3日程度で月給は30万円。
〔中略〕
 茨城県の医師不足は深刻だ。2010年の調査では人口10万人当たりの医師数は166人。全国では埼玉県に次ぐワースト2位だった。茨城県の医療に詳しい医学博士の左門新氏が言う。
「筑波大の医学部ができて40年以上になりますが、茨城県は地味でブランド力がない土地なので医師が集まらない。そこに取手市や土浦市など県南部の人口が急速に増え、医師不足に拍車をかけました。新しい顧問を招いても医師を招くのは難しいでしょう」〔以下略〕”

医師の偏在は数字上ではっきり確認されている。
我が子の教育上の問題があるのはよく分かるが、
これは他の先進国では見られない自由開業の明白な弊害である。
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