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泊原発・廃炉ニュース第48号

2024年05月11日 | ドラミング

 

去る3月15日、第3回口頭弁論が札幌高裁にて開かれました。

主な内容は、下記の通りです。

①一審原告の内、遠隔地居住者が請求した使用済み燃料の「屋外貯蔵施設の仕様変更」に関する控訴主旨の変更申立書の提出。

②一審被告(北電)の積丹半島西岸沖断層の扱いに対する反論書面の提出。

③一審被告の答弁書及び、一審原告の敷地内断層に対する主張への反論書面の提出。

④一審原告(福尾健司さん)による意見陳述。

次回の審理は、2024年7月12日午後2時30分からです。ご一緒に傍聴にまいりましょう。

尚、詳細は、こちらの「廃炉ニュース48号」をご覧下さい。

意見陳述 控訴人 福尾健司

福尾健司と申します。小樽に生まれ、工学部衛生工学科卒、札幌市関係の団体職員として下水道分野で36年間勤務し、札幌市の環境を守る一端に関わってきました。

しかし、泊原発の再稼働が北海道の環境と人々の暮らしを壊してしまう恐れがあるという思いから、意見陳述入としてここにいます。

能登半島地震は、危険な泊原発再稼働に対する最後通告

2024年1月1日、能登半島ではM7,6の巨大地震が入々を襲いました。この地震は阪神'淡路大震災をも上回り、日本海側では最大級といわれています。特徴は半島北側が4~5秒間の一瞬で4mほど隆起した逆断層であり、ずれた断層は長さ150㎞に及びました。また震源が陸地に近いため津波は1分程で到達しました。そのため地域全体の建物やインフラは破壊され、道路はズタズタに寸断され、住民は孤立状態になり、周りから救助に入るも重機等を搬入できず救命に時間がかかる惨状でした。

同じ日本海に面している泊原発はどうでしょう。沖含わずか5㎞にも活断層が推定され、東傾斜の逆断層であり、泊原発の直下で地震が起きる可能性が指摘されています。

もしこれが泊原発の再稼働中に起きた場合、今世紀最大の大惨事になります。これから詳しく述べたいと思います。

泊原発は加圧水型で1次冷却系統は150気圧と言われています。これは水深1500mの水圧に圧力容器が耐えながら、その内部では循環ポンプの羽が回転して燃料棒の隙間を水が高速循環して、核分裂の熱エネルギーを奪い300度の熱を2次冷却水へ引き渡す仕組みになっています。もしこの直下や周辺で地震や隆起が起こり、1次冷却系統に一か所でも亀裂が生じた場合、爆発的な破壊が生じることは容易に想像できます。老朽化し放射能で劣化した圧力容器では、超高圧下でこれは一瞬で起こります。よって制御棒の挿入も間に合うのか疑問です。また、挿入が間に合っても、使用済み核燃料貯蔵プールは無事なのか?福島第一原発事故では4号機のプールが干上がった場合、関東・東北一帯が放射能で汚染され人が住めない事態になるまで追い込まれました。

仮に以上の事態を逃れたとしても、2次冷却系統は無事なのでしょうか?この系統はタービン建屋までつながっています。原発は原子炉建屋とタービン建屋がそれぞれ巨大ブロックでできており、地震や隆起ではこの間のパイプ類の破断や電気系統の断線等が生じます。その状態では緊急冷却装置が正常に働くのかもわかりません。

外部からの応援はどうでしょう。隆起では能登半島地震に見られた道路の破壊、土砂崩れ、停電等が起き、原発隣接の港さえ使用不能となりました。

そうなると福島第一原発での放水車等使った外部からの決死の封じ込め作業はできなくなり、原子炉内のメルトダウンは不可避です。それが泊原発3号機の核燃料貯蔵プールでのメルトダウン、停止中の1・2号炉の使用済み核燃料のメルトダウンヘと続き、福島第一原発事故の数十倍もの放射能が北海道から東北・関東地方まで降り注ぐことになります。

北電は再稼働を進める前に、以上の事態が起こらないことを科学的に説明し、一方的な被害者になりうる道民の理解を得る必要があります。

北電は政府の原発推進政策に従ってはならない

政府は昨年の国会で、通算最長60年間の原発稼働を可能としました。泊原発3号機はまだ3年しか稼働していません。つまり再稼働した場合、57年間運転が可能となり、さらにその後の使用済み核燃料の冷却期間が数十年続きます。この間に能登半島並みの地震が起こらないと誰が言えるでしょう。

それが万が一の確率であったとしても、再稼働で引き起こされる人災は巨大であります。原発で電気を作り出す、ただそのことだけで道民、ひいては全国民、未来の子供たち、日本の豊かな自然を破壊することだけは何としても避けなければなりません。

北電は民間企業であり、自らの発電事業の進め方を決めることができます。今まで泊原発に投じた資金とこれからも積みあがる安全対策費用や労力等は、採算が合うのでしょうか。

北電の経営理念は、「人間尊重・地域への寄与・効率的経営と持続可能な社会の実現」としていますが、再度その意味を自らかみしめて頂きたい。そして、原子力部門からの撤退と泊原発の廃炉を決めるべきでしょう。

原発による発電を選択した実態

幸運にも、泊原発が無事故でその役目を終えたとしても巨大な問題を抱えています。原子力産業全体を見てあると、その施設と発電で生み出した放射性廃棄物(以下、核ゴミ)の問題は世界のどの国も解決できないでいます。

日本でも、核エネルギーを利用することで放射能汚染された50か所以上の原発施設や土地は、その後の有効活用や計画すらありません。おそらく数万年間は失われた土地になるでしょう。さらに日本政府は使用済み核燃料を再処理する道を選んだことから、これに「もんじゅ」や六ケ所村の再処理工場などが加わります。原発と再処理政策を進めることは、一方で貴重な国土の喪失拡大を意味するのです。

最も巨大な核ゴミは福島第一原発事故が生み出したものです。10万年間隔離しなければならないこの危険な核ゴミの量は、原子力委□貝会が試算した結果から導くと、なんと、世界中の高レベル廃棄物の全量に匹敵します。

この福島原発事故の処理費用は23兆円に達し、さらに、見通しのない六ケ所村施設等の再処理に18兆円、計41兆円が使われたといわれています。これらは原発を選択しなければ全く必要のない経費でした。これを電気料金に上乗せすると、とてつもない金額になるので、多くがそっと税金で賄っているのが実態です。もはや「原発は安い」は死語になりましたし、昨今の「原発が再稼働すると電気料金が安くなる」という言説は悪質なデマです。

泊原発とそこから作られる核ゴミは資源のブラックホール

北電は本来、発電施設の建設、売電、跡地等の再活用と廃棄物の適正処理の過程全体で利益を得ながらも、同時に社会の発展にも貢献するという大きな役割があります。しかし、泊原発はどうでしょう。放射能のため、立地した土地や施設・資材を永久に使い捨てにし、やり直しができないのです。

厄介な核ゴミが発生するため、持続可能な産業とは真逆の性質を運命づけられています。たった数十年間の発電と引き換えに、その約2000倍もの期間、核ゴミを環境から隔離する厳しい保管を、何の責任も恩恵もない子孫に強要する、まさに世代を超えた責任転嫁が生じるのです。発電後は核ゴミと保管施設の維持管理・補修・更新のため、あらゆる資材と電力を一方的に浪費し、労力と被ばくを発生し続けます。しかも10万年間!

従って泊原発の再稼働は、得るものより失うものが巨大過ぎるマイナス産業の復活であり、泊原発とそこから作られる核ゴミは資源のブラッグホールそのもの、と私は考えます。

私が何よりも優先して原発に反対する理由はこのためです。ましてや、発電期間だけを見て「原発は一一酸化炭素を排出しない、環境に良い」の主張は論外です。

最後に

以上述べたことから、もし北電が泊原発の再稼働を行った場合、それわ原発に万が一の破局が起きても構わないと宣言するに等しい行為とみなされるでしょう。さらに北海道を営々と築いてきた先人の努力ちとこれからの未来に対する冒涜に等しく、道民と未来の子孫に対する人権と生存権の否定と言えます。

山登りに例えますと、電気を作り出すというゴールに向けて、いつ転落するかもわからない目の前の険しい稜線に、道民を巻き込んで歩みだす原発再稼働の道なのか、それとも広くて安全な道を、誰の巻き添えも無く歩む他の発電の道なのか、この一つの選択が裁判で問われているのです。原発再稼働の道は、ゴールの後もさらに苦難の道が続くことを付け加えておきます。

裁判長にお願いします。どうか憲法の精神に則り、北海道の未来に思いを馳せ、泊原発廃炉への一歩を踏み出せるよう、公正な審判を行うことを切に願いまして、私の意見陳述を終わります。

 

 

 

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