英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

女流名人位戦② ~4手目の岐路~

2011-02-19 11:44:19 | 将棋
 「ゴキゲン中飛車はずし」の▲6八玉

 この手に対し、後手に△8四歩と居飛車で来られるとやや損になり、振り飛車党に限り有効な手である。相手を選んだ手で、正道の手ではないと言える。(決して卑怯な行為と非難している訳でなく、勝負を争う立派な手段です)
 「あなたは居飛車ができないでしょ」と挑発し、自分の土俵に引っ張り込むのと、相手のゴキゲン中飛車を封じる両面の狙いがあった。ただし、最近、「ゴキゲン中飛車はずし」と言い切れない研究(実戦でも三浦八段-久保二冠戦で▲6八玉に△5四歩と進行している)が進められている。

 ▲6八玉に対し、後手は3つの手段が考えられる。
①△8四歩と居飛車を選択し、相手のリスクを突く
②△4四歩、△4二飛など△5四歩(ゴキゲン中飛車)以外の振り飛車を選択する
③△5四歩と突きゴキゲン中飛車を貫く

 ①は、▲6八玉を咎める手で、居飛車党なら迷わず着手する。ただし、振り飛車党にとっては、指し慣れない居飛車を指すというマイナスを伴う。この場合は、先手、後手共にリスクを背負って戦うことになるが、どちらのリスクが大きくなるかの勝負となる
 ②は苦手な居飛車を避け、ゴキゲン中飛車も危険と見て断念した無難な指し方。得意戦法を封じられ、気合負けの感が強い
 ③馬を作られて後手指しにくいと言われていたが、久保二冠がA級順位戦で指したことによって、評価が変わってきている。力将棋となり、事前の研究と将棋センスが必要。「ゴキゲン中飛車はずし」を無視、否定している手とも言える。

 先手の立場としては、
 ①はリスクを拡大させない苦労が伴うが、振り飛車党の居飛車は望むところか。
 ②は気合勝ちの上、ゴキゲン中飛車を封じたので、気分が良い。
 ③は上記のような実状から、簡単ではない覚悟が必要。ただし、△5四歩に対し踏み込まず(馬作りを目指さない)、ゴキゲン中飛車を容認する妥協も可能

 さらに、③の場合の事前研究での心理としては、後手はゴキゲン中飛車の成否にかかわる(初手▲7六歩に△5四歩とする手はある)ので、是が非でも△5四歩を成立させたい。さらに、先手に馬を作られたというデメリットに対し、如何に対応するかを考えればよいので研究の指針を立てやすい。
 逆に、先手は馬を作った後の後手の対抗策を絞りにくく、いざとなったら△5四歩に対し馬を作りに行かなければよいので、研究を進めにくい。

 とにかく、③の選択が生じたため、対局開始直後、いきなり一局を左右する岐路を迎えることになっている。
 8分後、里見女流名人は△5四歩!(第2図)

 おお、行った!

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