英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『平清盛』 第15話「嵐の中の一門」

2012-04-16 16:27:10 | ドラマ・映画
風雪を耐え忍んだものだけが見られる美しきもの


(忠盛邸、家盛の亡き骸を前にして)
宗子「触るでないっ!……家盛に触るでない!」(清盛を睨みつける)

忠正「お前がこの家に災いを持ち込んだ!
   お前が神輿に矢など射たゆえ、家盛に神罰が降じたのじゃ!
   お前が…お前が死ねばよかったのじゃ!!!
   家盛のかわりにお前が死ねばよかったのじゃ!」

(清盛邸にて)
頼盛「私は兄上が・・あなたが苦手です。
   騒々しく何かをしでかしてはそうしてくよくよと悩まれる。代わりに死ねばよかった…とまでは思いませぬが」

 家盛(大東駿介)の死で、清盛(松山ケンイチ)はボロカスに言われる。
 迷信深い時代、これまでの清盛の所業、生い立ちなどを考えると、やむなきことか。

 特に、頼盛(西島隆弘)の言葉「騒々しく何かをしでかしてはそうしてくよくよと悩まれる」は的を射ており、思わず頷いてしまった。


頼盛は恨みを言いに来たのではなく、「落馬の寸前、家盛の兄上は確かに呟かれてございます。『兄上』と」という家盛の最後の言葉を伝えに来たのだった。兄を慕っての家盛の言葉であったが、この言葉を清盛や頼盛は、どう捉えたのだろうか?


 家盛の死という慟哭を前にして、清盛、忠盛(中井貴一)、宗子(和久井映見)、時子(深田恭子)、忠正(豊原功補)ら平氏一門に嵐が吹き荒れ、それを乗り越えていくという回であった。

 そんな平氏一門の嵐のさなか、落雷炎上した高野山の宝塔を建て直す大仕事を引き受ける。家盛は悲しみをしまい込み平静を装う。清盛は頼盛の言葉通り「くよくよ」しながらも、事業に取り掛かる。
 しかし、家盛の一周忌の際、舞子の形見の鹿の角を叩きつけ、泣きわめき取り乱す宗子の姿を見て、さらに落ち込む清盛。
 
 それにしても、一年。心の内はともかく、表立った抗争は起こらなかったのは、宗子、忠正の怒り、頼盛や家盛守り役の維綱(尾美としのり)の悲しみぶりからすると不思議。宝塔を建て直しを引き受けたのが幸いしたのかもしれない。

 そんな平氏の窮地を救ったのは西行(藤木直人)であった。かつての義清(のりきよ)が僧として戻って来ていた。この再会は、清盛が宝塔再建に取りかかってすぐで、その時に、今回の一門の嵐を乗り切るヒントの話(凍える寒さの中での衣川の話)をさりげなく種をまいておいたのには、感心。
 文武両道の色男であったが、剃髪のせいか、俗物をそぎ落とした印象の修行僧。だが、相変わらず風流人で、しかも……女人にもてる。

 一周忌の後、意気消沈の清盛の前に現れる。
「今…一門はひどい嵐のただ中に居る。そしてその嵐の元は俺なのじゃ。俺というよそ者が平氏の子となったときからこの嵐はまきおこっておった。
 家盛の亡骸に触れることも許されず、家盛の代わりに死ねばよかったとまで言われ、そんな俺がこの務めを果たしたとてどうして家盛が浮かばれよう」
 そんな清盛に西行は
「今、嵐の中に身を置き、この務めを一心に果たされよ。さすれば、きっと見られましょう。風雪を耐え忍んだものだけが見られる美しきものを。嵐の中の一門のためよそ者のお手前にしかできぬことがござります」
 僧侶姿で控えめで穏やかな物言い、さらに、過去の衣川の体験談もあり、説得力がある。清盛気を持ち直して、事業に取り組む。


 西行が救いの「ヒーロー」なら、頼長(山本耕史)は「悪の権化」
 忠盛の前に現れ、家盛が死に至ったてんまつを暴露する。家盛は自らが平氏の棟りょうとなるために全てを自分に差し出し、自ら平氏一門を売った小心者だと馬鹿にし、家盛の死を「犬死にだ」と笑い飛ばす。
 最初、家盛を持ち上げておいて、じわじわじわじわ真相を明かしながら、蔑んでいく。これにはさすがの忠盛もにじみ出る怒りを押さえきれない。
 「所詮、武士は武士、いくら頑張っても報われない」と投げやりになり、曼荼羅の彩色に取り掛かる清盛に怒りをぶちまける。
 世を変えるため、宗子や家盛にも無理を強い、清盛に託した。志を成就すれば、それらの苦労、無理強いも報われると思っていたが、頼長に踊らされていたことを知り、世を変える事など絵空事と思ってしまったのだろうか。
 冷静に考えれば、この結論に至るのはおかしいのだが、頼長のネチネチ攻撃の巧妙さにギリギリまで張り詰めていた忠盛の気持ちが切れてしまった。家盛の身体まで汚されたとあれば、冷静さを欠くのも仕方ないことかもしれない。


 作業をやめようとしない清盛に忠盛は何度も暴力を振るう。清盛は頭から血を流すが、その血を曼荼羅の仏像の唇に塗る……
 やがて、宗子もその場にきて曼荼羅に見入った。家盛が兄上によろしくと言っていると、宗子はほほえみかける。
 平氏一門に吹き荒れた嵐は治まった。
 最初、忠盛と清盛の大立ち回りを見ていない宗子が、悲しみと怒りが晴れたのか分からなかった。宗子は曼荼羅に込められた清盛の家盛への思いを感じることができたからだったのであろう。
 個人的には、宗子はあの乱闘?シーンも目撃した方が、家庭円満になると思うが。


 これとは対照的に、源氏は親子の亀裂が深まっていったよう。(長くなったので省略します)

 今回は、オールキャストだった。
 西行が再登場し、レギュラー陣に加えて、崇徳院(井浦新)、雅仁親王(松田翔太)信西(安部サダヲ)、常盤(武井咲)らも顔を揃えた。(平氏一門の嵐という割には、先週突然現れた三男、四男は出てこなかった気がする)
 さすが武井咲は、美少女コンテストには強いなあ。



【ストーリー】(番組サイトより)
 1149年3月、熊野詣の帰途に落馬した家盛(大東駿介)は、そのまま帰らぬ人となった。宗子(和久井映見)は悲しみのあまりとり乱し、忠正(豊原功補)は家盛が死んだのは清盛(松山ケンイチ)が神輿(しんよ)を射た報いであり、「お前が死ねばよかったのだ」と罵声を浴びせる。
 後日、清盛の館を弟の頼盛(西島隆弘)が訪ねると、失意の清盛に家盛が落馬寸前に発した言葉を告げる。「兄上」というひと言だった。また自分は清盛が苦手であること、それでも伝えに来たのは、父母を同じくする唯一の兄・家盛のことを思ってのことだと伝えた。
忠盛(中井貴一)は喪が明けるとすぐに鳥羽院(三上博史)に謁見し、変わらぬ忠誠を誓う。そして、高野山の宝塔再建という鳥羽院の命を受け、自分の名代を清盛に務めさせたいと申し出る。清盛は戸惑いながらも引き受け高野山を訪れると、そこで陸奥(むつ)国への長旅から戻ったという僧・西行(藤木直人)、かつての義清(のりきよ)と再会を果たす。
そのころ、藤原摂関家の兄弟争いは激しさを増していた。1150年に近衛天皇が元服すると、すぐに弟・藤原頼長(山本耕史)は養女・多子(まさるこ・中田美優)を入内(じゅだい)させた。兄・忠通(堀部圭亮)は対抗すべく、得子(松雪泰子)の養女・呈子(しめこ・伊藤麻実子)を自分の養女にし、入内に向けて動き始める。
 一方、崇徳院(井浦新)の御所には権力争いから遠ざけられた兄弟が暮らしていた。兄・崇徳院と弟・雅仁親王(松田翔太)である。歌ってばかりの雅仁親王に、政治に復帰する野心がないのかと崇徳院が問うと、雅仁親王は笑い飛ばし、野心があるのは兄ではないかと言い当てる。
 家盛の一周忌がやってきた。供養のため家盛の愛用品を正倉院に収める支度をする忠盛に、宗子が清盛の生みの母・舞子の形見である鹿の角を差し出した。亡き舞子の志を遂げたいと忠盛が思っていたために家盛が死んだのだと宗子は感情をぶつけた。
 ある日、清盛の館を西行が訪ねて来た。清盛は西行に、平氏一門は嵐のただなかにあるが、その嵐のもとは自分であり、自分に宝塔再建の大役は果たせないと弱音を吐く。西行は、清盛にしかできないことがあるはず、嵐の中に身を置いて務めを一心にはたすべきだと清盛を諭す。清盛はふっきれたように宝塔の再建に全力を注ぎ始める。
 一方、源義朝(玉木宏)は藤原摂関家に言いなりの父・為義(小日向文世)と衝突を繰り返していた。ある日、義朝は常盤(ときわ・武井咲)が貴族の家人らしき男ともめているのに出くわす。実は忠通が呈子の入内を華々しいものにするため、見目麗しい女性を都じゅうから集めていた。そこで、病人の母を抱える貧しい家の娘・常盤に白羽の矢が立ったのだ。嫌がる常盤に向かい義朝は、呈子に仕えれば親孝行になると説得。常盤は集められた千人の中で随一の美女に選ばれ、宮中に入ることになった。
 美福門院となった得子に呼ばれた忠盛は、この再建が落成のあかつきには、公卿の地位も夢ではないということをほのめかされる。しかしその直後、頼長が忠盛の前に現れ、家盛が死に至ったてんまつを告白する。家盛は自らが平氏の棟りょうとなるために全てを自分に差し出し、自ら平氏一門を売った小心者だと馬鹿にし、家盛の死を「犬死にだ」と笑い飛ばす。忠盛の心中には、やり場のない怒りが充満していた。
 高野山に納める曼荼羅(まんだら)を彩色する様子を見つめていた清盛は、絵師にすすめられ、筆をいれようとしていた。そこへ忠盛があらわれ、清盛に今すぐ中止しろと叫ぶ。志のために家盛に犠牲を強いてきたと自らを責め、もはや自分が出世のために努力を重ねてきたことすべてが無駄だったと悔い叫ぶ。だが清盛は、曼荼羅の彩色を止めようとせず、そんな清盛を忠盛は幾度となく投げ飛ばす。それでも清盛は、自分は家盛の兄だと叫び、額から流れた血を筆につけ、曼荼羅の中央にある大日如来の唇を塗った。そんな清盛を忠盛はただ涙を浮かべながら、もはや見守るしかなかった。やがて、宗子もその場にきて曼荼羅に見入った。家盛が兄上によろしくと言っていると、宗子はほほえみかけると清盛はすでに疲労のあまり、深い眠りについていた。
 こうして平氏一門が嵐を乗り越えて結束を深めた一方で、源氏一門の絆を危うくする事件が起きようとしていたのだった。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『都市伝説の女』 第1話 | トップ | 梅、小彼岸桜、ソメイヨシノ »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
今回はとても良かったね。 (koumama)
2012-04-16 21:18:44
西行のひとことのおかげで 寺の再建に打ちこみ
確執のあった義母と和解するまで見ごたえありました。

清盛が活躍するようになるかな。期待してまだ見ることにしました(笑)
返信する
そうですね ()
2012-04-16 23:03:11
koumamaさん、こんばんは。

先週から、平氏中心に話が進んで、面白くなってきたような気がします。若干、不満や疑問はありますが……

今週で、清盛は成長したのでしょうか?
頼盛に「騒々しく何かをしでかしてはそうしてくよくよと悩まれる」などと、再び言われないことを望みます。
返信する

コメントを投稿

ドラマ・映画」カテゴリの最新記事