「2016年棋王戦 佐藤天八段-渡辺棋王 その1」
「2016年棋王戦 佐藤天八段-渡辺棋王 その2」の続きです。
佐藤天八段が▲4六角と角を据えた局面。
この角で後手の攻め足が止まるはず。△6二飛なら▲4四歩△同金▲4五桂で調子が良さそう。
△5四金!
「△5四金はちょっと変な手なのですが……。△6二飛はバランスが悪く、攻め合いにならないので考えなかった」(局後の渡辺棋王の感想)
また、この手について『将棋世界』の観戦記では
「玉を堅く守り、一気の攻撃を仕掛けるのが渡辺棋王の勝利スタイル。確かに自陣が薄くなる金上がりは棋風に合わない気がするが、研究の成果と見たい」
と分析している。
確かに渡辺竜王は“玉を固める”志向が強いが、力強く四段目に金を上がるのを何度か見た記憶がある。意外と好きなのかもしれない。
将棋世界・観戦記では
「控室でこの△5四金が絶妙手という評価に代わるのにそう時間は掛からなかった。さらに驚くことに、無難な▲4六角まで疑問手になるとは……。驚愕の一言だ」
とある。
△5四金が▲4六角の働きを制御した好手で、この手によって▲4六角が疑問手の範疇に入れられてしまったように思う。
ただ、「▲4六角が“疑問手”」と言うのなら、最善手を示す必要がある。しかし、観戦記では述べられていなかった。おそらく、▲4六角に代わる最善手は▲2四歩~▲4一角か、単に▲4一角ぐらいであろうが、私は以前述べた≪▲6三歩成が勿体なかった≫という感触が拭えないでいる。
△5四金(第4図)に▲3五歩と佐藤天八段は攻める。渡辺棋王は一旦△同歩と取り、▲4四歩に△7五歩▲4五桂△7六歩▲同銀△8六歩と攻め合う。
3三の銀は桂と交換になってもかまわないと見ていたが(手にした桂を攻めに使う)、▲8六同歩に一転△4四銀。
ここまで進むと、期待した4六の角は6四の銀の動きを制してはいるが後手陣への響きは小さく、角と銀の相殺は角の方が損である。さらに、後手の6四の銀は動けないものの7五や6五への利きで先手玉へのプレッシャーを掛けている。
(第6図では、▲8六同歩△4四銀▲2四歩△同歩▲6四角△同金▲2四飛の十字飛車が見えるが△2三歩▲4四飛は△6六角の王手飛車が掛かってしまう)
中継の解説欄でも
『「本譜は▲3五歩から攻めたのですが、余されてしまいました」と佐藤。先手は▲2九飛と引いてあるか、4八の金が5八なら戦えた。本局は盤面右辺の飛車と金の形が悪く、最後まで祟ってしまった』
とあり、佐藤天八段もうまくいっていないように感じていたようだ。
対局当時の中継解説では
『久保九段は▲2四歩△同歩▲2五歩△同歩▲2四歩を調べている。継ぎ歩から垂れ歩の筋だ。後手は△4五銀と桂を取れない。▲同銀△同金▲6四角がある。
形勢を聞かれた久保九段は「どちらかがいいはずなのですが、分からないです」と答える。まだまだ難解な戦いのようだ。
大盤解説会場から戻った山崎八段は「▲2四歩といくか、▲7七歩と打つか、方針を決めれば、佐藤さんのほうが分かりやすいと思います」と話す』
とあり、対局者ならではの読みと大局観の精密さによる高次元の戦いであったと窺える。(実際は非常に微差)
「その1」、「その2」、「その4」
「2016年棋王戦 佐藤天八段-渡辺棋王 その2」の続きです。
佐藤天八段が▲4六角と角を据えた局面。
この角で後手の攻め足が止まるはず。△6二飛なら▲4四歩△同金▲4五桂で調子が良さそう。
△5四金!
「△5四金はちょっと変な手なのですが……。△6二飛はバランスが悪く、攻め合いにならないので考えなかった」(局後の渡辺棋王の感想)
また、この手について『将棋世界』の観戦記では
「玉を堅く守り、一気の攻撃を仕掛けるのが渡辺棋王の勝利スタイル。確かに自陣が薄くなる金上がりは棋風に合わない気がするが、研究の成果と見たい」
と分析している。
確かに渡辺竜王は“玉を固める”志向が強いが、力強く四段目に金を上がるのを何度か見た記憶がある。意外と好きなのかもしれない。
将棋世界・観戦記では
「控室でこの△5四金が絶妙手という評価に代わるのにそう時間は掛からなかった。さらに驚くことに、無難な▲4六角まで疑問手になるとは……。驚愕の一言だ」
とある。
△5四金が▲4六角の働きを制御した好手で、この手によって▲4六角が疑問手の範疇に入れられてしまったように思う。
ただ、「▲4六角が“疑問手”」と言うのなら、最善手を示す必要がある。しかし、観戦記では述べられていなかった。おそらく、▲4六角に代わる最善手は▲2四歩~▲4一角か、単に▲4一角ぐらいであろうが、私は以前述べた≪▲6三歩成が勿体なかった≫という感触が拭えないでいる。
△5四金(第4図)に▲3五歩と佐藤天八段は攻める。渡辺棋王は一旦△同歩と取り、▲4四歩に△7五歩▲4五桂△7六歩▲同銀△8六歩と攻め合う。
3三の銀は桂と交換になってもかまわないと見ていたが(手にした桂を攻めに使う)、▲8六同歩に一転△4四銀。
ここまで進むと、期待した4六の角は6四の銀の動きを制してはいるが後手陣への響きは小さく、角と銀の相殺は角の方が損である。さらに、後手の6四の銀は動けないものの7五や6五への利きで先手玉へのプレッシャーを掛けている。
(第6図では、▲8六同歩△4四銀▲2四歩△同歩▲6四角△同金▲2四飛の十字飛車が見えるが△2三歩▲4四飛は△6六角の王手飛車が掛かってしまう)
中継の解説欄でも
『「本譜は▲3五歩から攻めたのですが、余されてしまいました」と佐藤。先手は▲2九飛と引いてあるか、4八の金が5八なら戦えた。本局は盤面右辺の飛車と金の形が悪く、最後まで祟ってしまった』
とあり、佐藤天八段もうまくいっていないように感じていたようだ。
対局当時の中継解説では
『久保九段は▲2四歩△同歩▲2五歩△同歩▲2四歩を調べている。継ぎ歩から垂れ歩の筋だ。後手は△4五銀と桂を取れない。▲同銀△同金▲6四角がある。
形勢を聞かれた久保九段は「どちらかがいいはずなのですが、分からないです」と答える。まだまだ難解な戦いのようだ。
大盤解説会場から戻った山崎八段は「▲2四歩といくか、▲7七歩と打つか、方針を決めれば、佐藤さんのほうが分かりやすいと思います」と話す』
とあり、対局者ならではの読みと大局観の精密さによる高次元の戦いであったと窺える。(実際は非常に微差)
「その1」、「その2」、「その4」
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