英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『将棋世界4月号』①(先月号です)

2009-04-16 23:11:30 | 将棋
『熱局探訪』(野月七段)より引用
===================
 次の木村八段の一手が驚愕だった。

第2図以下の指し手
▲6六銀打△9五角▲9六歩△8六歩
▲同 歩 △8七金▲5八飛△8四角
▲8八銀打△同 金▲同 玉△6五歩
▲同 銀 △6四歩▲8五歩△9三角
▲5五飛(第3図)

 ▲7五歩と突き捨ててからの▲6六銀
打は、読み筋だったらありえない才能で
ある。何か誤算があっての予定変更だろ
う。藤井-鈴木の感想戦を聞いていたの
で、詳しいことは分からないが、この手
を見て、思わずのけぞった。
 その手に動揺したわけではないだろが、
△9五角はやり過ぎだ。▲9六歩と催促
をされてみると、決め手がなかった。
 気がついてみれば、木村陣は安泰とな
っていた。▲5五飛と出た局面は、後手
に勝ちのない局面となっていた。執念の
▲6六銀打が実った恰好だ。
===================

 非常に不満が残る観戦記?である。
 「驚愕」「ありえない才能」「思わずのけぞった」「執念」
という誇張的表現が頻出しているが、それが「なぜ」なのかは一切説明されていない。
 「誤算」があっての予定変更らしいが、
「詳しいことは分からない」そうだ。取材して欲しい。
 取材ができなかったのなら、推測できるはず。
 それに、なぜ(自分が)のけぞったのか、
 なぜ、「ありえない才能」と思ったのか、
それは説明できるはず。
 さらに、「△9五角はやり過ぎだ」とある。
 では、どう指すべきだったのか?

 観戦記掲載日の都合で、使える図面数が少ないとのことだが、
怠慢としか思えない。


 文句の言いっ放しはよくないので、私なりに考察。
まず、

▲7五歩(第1図…第2図の一手前)と突き捨てたからには、第2図では①▲8八銀と飛先を通すか、②▲7四銀と開いた地点に銀を打つのが自然である。
 ①▲8八銀は、△8六歩▲同歩△8七歩▲同銀△8五歩▲同歩△8六歩▲同銀△8七金で先手不利(中継サイトの解説)。
 ②▲7四銀は、△9五角に(1)▲8三銀打△7七角成▲同飛△8六歩、(2)▲9六歩は△8六歩▲同歩△8七金▲5八飛△8六角▲同銀△同飛…という手順が示されている(難解というニュアンス)。

 ①の変化で現われるように、先手にとっては△8六歩と突かれて、8七の地点をこじ開けられて△8七金と打たれるのが嫌味だ。そこで、動かずにじっと▲6六銀打としておいて、次に7五銀と出れば8六の地点を強化できると考えたのだろう。
 しかし、突き捨てた上に、一手と銀を投入したのに、▲6六銀打自体は、それ以外あまり意味がなく、▲7五銀と出ても敵陣への響きはない。《こんなぬるい手でいいの?》と拍子が抜けたのだ。

 ちなみに、▲6六銀打に対し、「△5六金でつらいと思った」と木村八段はコメントしている。
 「以下、▲5八銀△6五歩▲7五銀が示されたが、大変な局面のようだ」との解説。


 ▲6六銀打に対して、はっきりした決める手は難しいようで、▲6六銀打でペースを握った木村八段が、深浦王位の攻めを跳ね除けて勝利している。
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4 コメント

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取材不足。 (yutanpo23)
2009-04-17 22:16:33
手厳しいですね。
ただ、文句を言いたくなる気持ちはよく分かります^^;

「熱局探訪」は今月号でも取材不足が見える表現がありましたね。

「いずれの変化も森内九段が勝ちだったようだ」
「最後はトン死気味」
「正直、見ていて▲9三桂成には心底驚いた」

「いずれの変化」について全く触れられていませんし、トン死気味と言われても困ります。▲9三桂成の部分も抽象的すぎます。驚いたのは分かるのですが、驚いた理由について触れられていないです。

木村八段の講座のように論点がコンパクトにまとめられ、良し悪しの結論を出してくれると読み手としても納得できますし、読後感が良いです。
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同感です ()
2009-04-17 23:26:43
 yutanpoさん、こんばんは。

 こういう批判を書いた記事にコメントが付くと、ドキドキしますね(笑)。

 実は、yutanpoさんが指摘されたことも、後日書こうと思っていました。連載当初からこのように感じていました。
 特に▲9三桂の辺りは、手の意味をしっかり解説して欲しかったですし、順位戦の骨身を削る戦いの凄さを伝えて欲しいです。

 木村八段の解説は、私も好きです。
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同感 (勝手新四朗)
2009-04-20 01:37:51
谷川九段の▲93桂成の周辺はもっと解説して欲しかったですよね~。NHKのBSでの渡辺・山崎解説でも時間の都合(なにせ、放送開始時点で終局していたので解説が後回し)で解説は無かったですし・・・。
前回のNHKの解説でも後手の井上8段の押さえ込みが成功していたかどうか、疑問が残りましたし・・・。
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同感2 ()
2009-04-20 10:18:54
「▲9三桂成には心底驚いた。…この手には歓声すら出せないほどだった。谷川流の勝負手には、得体の知れない凄みが感じられた」

 〔感動的な指し手に対しては、具体的な手順を解説するより、印象や周囲の反応で、その手のすごさを表現する〕という野月七段のスタンスかもしれませんね。

 改めて、記事に取り上げたいと思っていますが、論理的に構成された▲9三桂成に対して「得体の知れない凄み」は、ずれていると思いますし、やはり、なぜすごいのかを説明する義務があると思います。

 NHKの解説はテレビ中継という特殊な状況の中で、よどみない解説をいつもされていますが、今回は先手の肩を持つ傾向があると感じました。
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