英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

何のための「日本陸連設定記録」なのか? ……リオ五輪マラソン代表選考

2016-02-07 15:24:05 | スポーツ
 大阪国際女子マラソンで、2時間22分17秒で優勝した福士選手が名古屋ウィメンズマラソンも出場するという。
 日本陸連設定記録(選考基準タイム)の2時間22分30秒を上回る成績で優勝したというのに、代表の内定が出されず、“有力な候補選手のひとり”に据え置かれたからである。
 本人はもちろん、マラソン関係者、マスコミも「福士、代表決定!」と思ったはずである。ところが、上記の扱いで、その後の報道も「代表に大きく前進」というような表現に留められていた。


 これでは、設定記録の意味がない!

 全く実績のない選手なら、内定を出すのに慎重になるというのなら理解できるが、トラックでのスピード、これまでの実績において申し分のない福士選手である。と書くと、「福士選手だからOK」という論旨に受け取られそうだが、「設定記録を上回り、優勝したのだから、即“内定”を出すべき」というのが論旨。

 日本陸連が、よほど優柔不断なのか、福士選手が嫌いなのか……
 陸連が優柔不断なのは、「瀬古選手の為に補欠選考レースを設けたソウル五輪選考」から何度も不合理な選考を繰り返してきており、“優柔不断”というよりは“論理的思考欠如”と言ったほうが良いかもしれない。
 直近では、マラソンと競歩は「世界選手権で8位以内なら即内定」、それ以外の種目では「世界選手権で8位以内ならほぼ内定」という甘い選考基準を設定している。だいたい、“ほぼ内定”て何だよ!
 そのおかげで、7位入賞の伊藤舞選手が内定し、残り枠が「2」となってしまい、ただでさえ難航する代表選考が、さらに混迷の度を深めた。


 リオ五輪のマラソン代表選考レースは、さいたま国際マラソン、大阪国際女子マラソン、名古屋ウィメンズマラソンの3レース。伊藤選手が内定してしまったので、3レースで2代表選手を選ぶという歪な選考状態となってしまった。

 3レースによる選考規定(条件)は
3レースにおいて日本人3位以内から、次の1、2の優先順位で選考する。
1、陸連設定記録(2時間22分30秒)を満たした者(最大1人)
2、選考3レースの記録、順位、レース展開、タイム差、気象条件等を総合的に勘案し、五輪で活躍が期待されると評価された者


 この規定だと、3レースにおける日本人3番目以内の選手が候補(最大9人、重複する選手が出現する可能性もある)で、この候補の中から、設定タイムを上回った選手から1人選出。その後、記録やレース状況や期待度を総合的に評価して、残り(今回は1人)を選出することになる。
 なので、名古屋ウィメンズの前に内定を出すのは、この規定に矛盾することとなり、福士選手に内定を出さなかったのは妥当な判断と言える

 選考方法は歪なのだが、変なとこだけは厳格である。

 内定をもらえなかった福士選手だが、普通に考えれば、少なくとも「2」の規定で選出されるはずだ。しかし、名古屋ウィメンズで福士選手を上回る選手が2名以上出現すれば、代表が危うくなる(名古屋ウィメンズ出場の選手は福士選手の記録を目標としては知ればいいので、レース展開を組み立てやすく若干有利)。タイムがすべての選考規定ではないが、福士選手が選ばれなくても文句は言えない。
 福士選手を上回る選手が2人出なくても、設定記録を上回る選手(福士選手のタイムを下回るタイムでも可)が1人いれば、理論的には福士選手が選ばれないこともあり得るのである。

 まず、疑問なのは「1」の項目で、設定記録を上回った選手が複数いる時、何を基準に選ぶのか?(私が知らないだけかもしれない)
 単純に考えれば、記録の良い方であるが、レース条件等で左右されるので、単純には比較できない。やはり「2」の項目のように、総合的に比較するのであろうか?

 そもそも、設定記録が有効に機能するのは、設定記録を上回る選手が1人のみの時で、設定記録を上回る選手が複数いる場合は有名無実に近いものとなる。そう、現行規定では「設定記録は有名無実」なのである(大事なことなので、2度繰り返す)。

 では、選考基準記録を設定することはナンセンスなのだろうか?
 そうではない。諸悪の根源は、「3レースで2名を選出する」という歪んだ選考方式なのである
 これが3レースで3名選出なら
「設定記録を上回った日本人選手最上位は即内定」という規定を設けることができる。

 本来は1レースでの一発選考が理想なのだが、せめて、「3レースで3名選出」に留めるべきである。選考レースに「世界選手権」を加えたことで、歪みが生じただけでなく、甘い「即内定」を出してしまったせいで、文句なしのレースをした福士選手が内定を得られないのは、不幸としか言いようがない。(福士選手に内定を出せないのなら、伊藤選手の内定を取り消してほしいくらいである)
 せめて、さいたま国際の日本人選手最高記録が2時間28分43秒となった時点で、残り選考2レースで「設定記録を上回った日本人選手最上位は即内定」と変更するべきではなかったか?
 それができなかったのなら、福士選手のレース内容を協議した上で、「福士選手、代表内定」と裁定を下せば、名古屋ウィメンズに出場する選手も納得し、最上位の好タイムを目指すのではないだろうか?
 「文句は受け付けない」ぐらいの度量がなければ、安易に選考基準記録を設定してはいけないのである。


 名古屋ウィメンズに出場することで、福士選手がコンディションを崩してしまったら………今からでも遅くはない、内定を出してほしい。
コメント (2)
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