崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

添削の人生

2009年12月16日 05時28分32秒 | エッセイ
 今、20年ほどの前に出版した著作を増補・再版するために作業している。写真を入れ、900ページくらいになるとと思われる。分量が多く、なかなか校正が進まず半分にもなっていない。自分の文章を読みなおすことで反省するところも多い。基本的な考え方は変わっていないが「添削」するところが多い。主に文章の表現では削り、内容においては添加する。「次に説明する」などのような蛇足の文と重複の文を削る。文の行と行のつながりが内容として繋がっていないので理解しにくいところを書き加える。このような作業はコンピュータがあって楽にできる。
 今までは過去を振り返らず、主に新しいことを目指していたが、自分の「人生を添削」しているような気分である。しかし人生の過去を添削することはできない。特に自分史の中にある過ちを削ることはできない。もし自分の過去をやり直すことができるなら多くの人が教科書的な立派な人生になるかもしれない。しかし、個性の少ない味気ない人間社会になるだろう。国家の歴史にも恥の歴史が含まれている。それをなくして新しく入れ替えてもそれは別のものに過ぎない。負の遺産とは言ってもそれを削ることができない。ただ「赦される」ことしかない。今からも自分の負の遺産を貯えながら「添削の人生」を生きるしかないだろう。