こころにうつりゆくよしなしごとを

あやしうこそものぐるおしけれ。

cancer screening(長文)

2011-11-17 18:04:01 | 体調
癌好発年齢なので、種々癌検診は受けている。

どんな検診(検査)でもそうだが、症状も何もない人に最初から精密検査はしない。
そんなことをしたら manpower も機械の稼働もとんでもなくなる。
なので、簡単な検査で screen して、異常が出れば二次検査、さらに疑わしければより確実な精密検査、という手順を踏む。
胃癌であれば、バリウム透視→endoscopy、大腸癌であれば、便潜血→colonoscopy。
乳癌の場合は、触診→mammography→echography(たぶんそのあとbiopsy)、というのが一般的な流れ。

現在、ホルモン補充療法(HRT)中で、HRTにより乳癌の罹患率が上昇するというデータがあることから、
検診をすすめられている。
(余談ながら、模擬トライアルの課題にこの論文を出したところ、
ほとんどの回答者が内容を理解していなかった、ということがあった。
内容を理解しないで、何を翻訳するのかと小一時間(ry)

自分の居住区では、mammo は1年おきで、今年はたまたま触診のみの年であり、
そのクリニックでは mammo より echo が確実なので echo を勧めており、
(確かに、以前、mammo で疑陽性と言われ、別の病院で echo を受けたことがあった)
今日、そのクリニックの乳腺外科で受けてきた。
問題なし。

ちなみに、日本乳癌検診学会では、米国予防医学専門委員会の勧告に対する見解を出している。

日本で罹患率の高かった胃がんに対して、バリウム透視の一次検診が果たした役割は、大きかったとおもう。
胃癌が早期発見されるようになり、罹患率は低下した。
ただし、何事もそうだが、risk と benefit があるわけで、
検診をしても早期発見できない、というのであれば resource のムダ使いだし、
危険でない腫瘍に(本来は)不要な治療をすれば、場合によっては被検者に risk となる。
昨今のように、放射性物質汚染云々なんて騒がれていれば、
「できるだけ放射線は浴びたくない(=放射線を使う検査は受けたくない)」
という人もいるとおもう。
(胃のバリウム透視の放射線量なんか知れてるんだけど、
どのくらいが嫌かというのは人によって違うので)


癌というのは究極の成人病で、長生きすれば癌(=遺伝子の傷)が起こる確率は上昇する。
従って、寿命が延びれば癌の罹患が増えるのは、ある意味自然。

仕事上、抗癌剤の臨床試験の論文などを見ることが多いが、
overall survival 改善とか言ってもせいぜい数十か月。
(転移がないごく初期の癌なら、外科手術で根治(と言っていいだろう)できる
症例もあるようだけど。)

患者さんの状況はひとりひとり違うので、数字でひとくくりにしてはいけないだろうが、
chemo にあまり期待するもんじゃない(問題発言)

イレッサの副作用の裁判で、国と製薬会社の責任に対する裁判所の判断が分かれている。
最初の添付文書では間質性肺炎が一番目に書かれていなかったことを、患者原告側は問題にしているらしい。
お医者がどういう説明をしていたかはわかりようがないが、
治ると思って治療を受けたら副作用で死んでしまった、
(どんぴしゃですごくよく効いた例もあるらしいが)
そりゃあ無念だし「騙された」とか思うだろう。

でもね。

1) 厚生労働省のカタをもつつもりは毛頭ないが、
1番目だろうと4項目目だろうと、いちおう書いてあるわけ。
別にデータを隠してたとかじゃない。

2) 添付文書の「副作用」は、臨床試験で出たものしか書かれていない。
(そりゃそうだ、「これも出るかも」と、出てもいない副作用を書いたら
それはそれでデータ捏造になる。
ただし、「~など」と記載されていることはあるとおもう(未確認))。
そして、それらがすべてなわけじゃない。
そもそも臨床試験は大規模でも被験者数は4桁程度でしょ。
10万人にひとりくらいの特異体質の人にしか出ない副作用というのがあったとして、
その特異体質の人が被験者にいなかったら、報告されないわけで。
これは、全世界の全員で臨床試験をやることなど不可能なので、もうしかたがないことだとおも。
(上述の、全員に最初から colonoscopy をやる、というのと似てるな)
大事なことなのでもう一度言う。
どんなくすりにも、副作用が出る可能性はあるし、
報告された副作用が出るとは限らない。報告されていない、未知の副作用が出る可能性はある。

3) 癌患者は体力がすでに低下していることが多いし、
抗癌剤は知られているだけでも副作用が激しいものが多いので、
死因が、癌なのか、副作用なのか、複合的なものなのか、
clear cut にわからないだろう。
「イレッサが死因になった可能性は否定できない」けれども
だからといって「イレッサが原因だ」と言えるわけではないだろう。

4) 東京高裁の判決は「製薬会社に製造物責任はない」という判断だったけど、
製薬会社で開発部署にいた経験者としては、
抗癌剤の製造物責任まで負わせられたら、そういうくすりの開発は進まなくなるんじゃないかとおも。
いくら、イラスト入りでパッケージに「こどもやお年寄りは食べないで」と書いても
こんにゃくゼリーで窒息する子どもがあとをたたないのは、
製造会社の責任か?

5) 個人的な感想としては、

お医者がもうちょっとしっかり勉強してよ!(さらに問題発言)

前述のように、お医者が個々の患者に対しどういう説明をしていたかわからないから
何とも言えないが、
癌治療に限らず、医療提供者と患者の間に十分なコミュニケーションがあれば、
ここまで感情的にならなくても済んだのでは、とおもうことが、
いわゆる医療裁判の事例で、ある。
(投薬量を間違えたとか、鋏を置き忘れたとかいう、明らかにミスの場合を除いてね)

自分の家族が思わぬ形で亡くなって、悲しい、悔しい、のはわかる。
その怒りをどこかにぶつけたいのもわかる。
そこから先は、個々人の資質にもよるだろうし状況にもよるだろうけど、
(自分の家族が死ぬなんてことはない!と思っているひとが多いようなので、昨今)
少なくとも、お医者とちゃんとコミュニケーションが取れていて信頼関係があれば、
訴訟だ賠償だということにならなかったんじゃないか、と、
第三者的にみて(私が)思える事例が、あるような気がする。

抗癌剤というか chemotherapy に関しても専門医・認定医制度ができているし、
safety & efficacy の高い癌治療ができるようになるとおもう。


ただ、個人的には、OS 数十か月なら、chemo ではなく緩和ケアをお願いしたいなとおもっている。
有明の癌研究所も築地のがんセンターも近いのでね、ここは(^^;