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戦艦・山城

2018-08-14 09:52:47 | 軍艦




戦艦山城(やましろ)は、私の好きな戦艦のひとつです。
前のめりにつんのめった様な特異なスタイル。
そのアンバランスとも取れる姿に、何故か魅かれるのです。
一番好きなドイツ戦艦シャルンホルストの均整のとれたスタイルとはまるで正反対。

日本の戦艦は全部で12隻。
最初の戦艦はイギリス製の金剛で、
金剛を基本形にした同型艦3隻(国産)合わせて4隻。

次が、この山城(扶桑型)の2隻。
つまり純国産戦艦としては最初の戦艦でした。
この扶桑型戦艦は、世界で最初に3万トンを超えた、
当時としては世界最大の戦艦でした。

扶桑型は、その後に続く伊勢型戦艦と共に、
扶桑型戦艦4隻だった筈でしたが、
様々な欠陥が見つかったりした為に設計をやり直し、
伊勢型は扶桑型とは別の艦形となりました。

戦艦・山城。

1917年(大正6年)完成。
最終的には、
34500トン。全長210メートル。幅33,1メートル。
出力75000馬力(これは戦艦大和の半分)乗員1221名。



これは、金剛型戦艦です。

前作のイギリス製戦艦(金剛型)が、
14インチ(36センチ)砲、4基、8門であったのに比べ、
山城は、その1,5倍の6基、12門の主砲を配置しました。
その当時は主砲の数こそ戦艦の能力といった考えも確かに大きかったのですが、
それが為に、山城は速度が遅くなってしまいました。

金剛型の主砲が、前部2基。後部2基なのに比べ、
6基の主砲が船体に万遍なく配置されています。
それはエンジンルームの面積が取れなくなってしまったという事です。

その為に、金剛型が30ノット(時速55キロ)に比べ、
たった24、5ノット(時速45キロ)しか出ないのです。
第二次世界大戦時には、30ノットが出せる事が必須条件となりつつあり、
日本の空母は30ノットの世界でしたので、
そういった高速空母群との同一行動が取れない事は致命的でした。

そうなる以前、
完成時から、この艦形は欠陥が問題となっていたのです。
高速時に急カーブをとると、速力が極端に遅くなったり、
全主砲を一斉射撃すると、
船体のあちこちで爆風による破壊が起こったり・・・

扶桑型戦艦は第二次改装までを行いましたが、
その結果、扶桑と山城は艦形にかなりの違いを生み、
一目見ただけで、それがどっちの戦艦かが分かる様になりました。



これが山城であり、



これが扶桑です。

鐘楼(しょうろう)・・艦橋(軍艦の指令所)が置かれた、
軍艦で一番背の高い部分の形が大きく異なっています。

これは前から3番目の3番主砲を山城は後が側に向けたのに反し、
扶桑は前向きに配置したからです。
これが為に扶桑は、鐘楼基部が狭くなってしまい、
色々な構造物を、後側に出っ張って配置せざるを得なくなったのです。

それに比べ、山城は鐘楼基部に余裕があったので、
鐘楼背面をスッキリとした形で済んだのです。
山城は好きですが、扶桑は嫌いです。
扶桑の、あのウネウネとした鐘楼を、
「まるで、花魁芸者の様だ」と表現した人も居ました。

それにしても、日本の戦艦は一般的に鐘楼の高さが高過ぎる。
自分達が背が低いからの負い目ではないでしょうが、
用兵側の意見をそのまま取り込んでしまい、
つまり「俺んとはこれだけは欲しい、是非付けてくれよ」
そういった意見の収拾が付かなくなってしまった為か?
外国戦艦に比べ、その高さが気になります。

扶桑・山城は、その鈍足が禍して、
あまり使い道の無い、みっそっかす的な存在でした。
第二次世界大戦が始まっても、
高速の金剛型戦艦が太平洋ところ狭しと八面六臂の大活躍に比べ、
扶桑型戦艦は出撃機会も与えられず、不遇を囲っていました。

そして、やっと出番が来たのです。
フィリピンのレイテ海戦です。

この作戦は、日本の運命を決する大作戦でしたが、
扶桑型戦艦は鈍足ゆえ主力の栗田艦隊と行動を共にする事は出来ず、
西村司令長官座乗の西村艦隊として別行動をとります。
しかし、アメリカ艦隊が待ち伏せする、
スリガオ海峡で待ってたのは・・・

それはアメリカ軍からの集中攻撃でした。
まさに、飛んで火にいる夏の虫。
動きの鈍い老人を、皆で寄ってたかって袋叩きにする様なものです。
最初にやられたのは扶桑でした。
その最期を見届けた者は誰も居ません。
扶桑は生存者0という悲惨な最期を遂げたのです。

扶桑が落伍した事に気づかない山城は、
悲劇的末路に向け、全速力で突撃して行きました。
そして、なるべくして山城もその時を迎えます。
山城の生存者は10名だけでした。
2艦で2500名以上が乗っていたと思われますが、
その生存者が、たった10名というのは、驚くべき数字です。
絶望的に悲惨な最期でした。

軍艦というのは、戦艦というのは、
私からは、何と素晴らしい芸術品だと思うのですが、
その結末の悲惨さには胸が痛みます。

戦争は、絶対にダメです。







コメント
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