杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

油断大敵

2022年08月29日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2004年1月17日公開 110分 G

平成4年、夏。妻を亡くし、男手ひとつで8歳になる娘・美咲を育てている泥棒専門の新米刑事・関川仁(役所広司)は、ある日、偶然にも大泥棒の“ネコ”こと猫田定吉(柄本明)を逮捕する。しかし、ネコはのらりくらりと取り調べを交わすばかりで、どんなヴェテラン刑事をしても彼に自供させることが出来ない。ところが、仁の実直さを気に入った彼は、仁にあっさり自供を始めた上、泥棒刑事としてのイロハや一流の泥棒の手口、哲学、プロフェッショナリズムを教えてくれるのであった。それから、10年の歳月が流れた。ネコの教えのお陰で、今ではすっかりヴェテラン刑事となった仁は、出所して仕事を再開したネコを再び逮捕する。だが、今回のネコはなかなか自供しようとしない。そんな中、仁は看護学校に通う美咲が、卒業したら海外で看護活動をしたいと聞かされ動揺する。いつまでも幼いと思っていた娘は今、自らの翼で飛び立とうとしているのだ。しかし、そのことがきっかけで、彼は不幸な生い立ちのネコもまた、自らの翼で飛び立とうとして盗みを始めたのだと知る。そして、それを理解した時、遂に自分の力でネコを自供に導くことが出来たのであった。(映画.comより)

 

刑事と泥棒の間に芽生えた奇妙な絆を描いた人間喜劇で、飯塚訓のドキュメンタリー短編集『捕まえるヤツ 逃げるヤツ』を基にしているそうです。

役所さん、若い!!というのが最初の感想。そりゃそうだ、18年も前の作品だものね

駆け出しの刑事が、その素直で真っ直ぐな性格をベテランの泥棒に気に入られて逆に刑事としてのイロハを教わり成長していくという何ともゆる~~い時代のニュアンスがありました。

娘の壊れた自転車を直してくれた男の道具箱を見た関川仁が、ネコと呼ばれる伝説の大泥棒の7つ道具と同じものが入っていることに気付き職質をかけて捕まえます。意気揚々と取り調べを開始したものの、相手の方が何枚も上手で、いつのまにか自分が取り調べを受けているような状況に。この場面はほぼコントに見えます仁を気に入ったネコはあっさり自白したのですが、実況見分では沢山の場所を回らねばならず大仕事になります。トイレに行かせたら姿が消え、青くなって探すと駅のホームにいて「油断大敵、目を離すな」と逆に説教されたりと振り回されっ放し。

忙しい仁に代わって娘の美咲(菅野莉央)の面倒を見てくれたのは教会の牧子先生(夏川結衣)で、美咲も慕っていました。仁と牧子先生は互いに惹かれ合っていて、熱を出した美咲を家まで送ってくれた夜に結ばれます。しかし、二人の様子に何かを感じ取った美咲はその日以来先生を拒絶し食事しようとしませんでした。亡くなった母を忘れられない娘のために、仁は泣く泣く先生と別れます。

ネコが仁に捕まったのは、痔の治療を(国のお金で)したかったからとわかり、自分の手柄だと思っていた仁はがっくりしますが、そんな彼にネコは「俺がシャバに戻ってくるまで立派な刑事になっていたら、また相手をしてやる」と言います。

その後、仁は転任先でも泥棒刑事として経験を積み成長していきます。美咲(前田綾花)も看護士の道へ進んでいきます。(小児患者役で大後寿々花が出ていました)ネコがまた盗みを働いているという噂を聞いた仁は、今度こそ実力で捕まえようと彼の過去まで調べ追ううちに、ネコが病を患っていると知ります。ネコを捕まえた仁は、だんまりを決め込む彼の心を解きほぐし自白させることに成功します。ネコが泥棒を始めたのは父親の暴力から逃げるためだったのです。 取り調べ中、娘が外国で看護士として働きたいと言われ動揺した仁は、我知らずネコに相談します。すると、ネコは父親としての仁に助言を与えるんですね。それで、仁は娘の背中を押してやる気持ちになります。

ネコの体の状態が気にかかる仁でしたが、今回も重病じゃなかったという この人、病気になるとわざと捕まって治療を受けてるような

護送途中、またトイレに行きたいというネコと河原で用を足しながら(前回の轍を踏んだ=刑事として成長している)、「体に気をつけて、お互いまだ頑張ろう。」と仁が言うと、ネコは笑って頷きます。二人は刑事と泥棒の立場を超えた友人なのね


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

椿の庭

2022年08月27日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年4月9日公開 128分 G


葉山の海を見下ろす坂の上の古民家を移築した一軒家。絹子(富司純子)の夫の四十九日の法要が行われた。法要のあと、東京から参列した娘・陶子(鈴木京香)は、年老いた母がいまだ、姉の娘の渚(シム・ウンギョン)と二人きりでこの家に暮らし続けていることが気が気でない。東京のマンションで一緒に暮らそうと勧めるが、絹子は長年家族で暮らした思い出深いこの家から離れるつもりはない、と言う。よく丹精されたその家の庭では、四季の移り変わりにあわせ、花が変わり、海からの風も変わり、季節を全身に浴びるように感じることができる。今日も近づく夏の気配を感じながら、朝食をとる二人。

梅雨
激しい雷雨に藤棚の花が散り、やがて雨蛙が現れだした頃、渚が家に帰ると、玄関に見慣れない男物の靴が……。絹子は相続税の問題で、訪ねてきた税理士からこの家を手放すことを求められていた。絹子の悲痛な表情に胸を痛める渚。

盛夏
お盆に訪ねてきた夫の友人と、若い頃の思い出話に花を咲かせる絹子。渚は、このところ元気のなかった祖母が久しぶりに見せた笑顔に安堵する。だが、その直後、絹子は過労から倒れ込み、病院に担ぎ込まれる。

そして季節は秋から冬へ……絹子にも、渚にも、人生の新しい決断の時が迫っていた。(公式HPより)

 

数多くの広告写真を手がける上田義彦の初監督作品です。椿から始まり、ツツジに藤、松の葉から滴る雨の雫、蓮の花、仏壇の芍薬(牡丹?)や百合、スイカを切る音、梅に桜・・・庭に咲く四季折々の花々や果物と庭先から見える海の描写がとにかく素晴らしかった!

高台の古い日本家屋の一軒家に住む老婦人と彼女の孫の日常が淡々と綴られるだけのお話なので、静止しているかのようにゆっくり流れる時間を心地よく慈しむ心のゆとりのある時に観るべき作品です。

冒頭に登場する、椿の花でくるまれて庭に埋められる「金魚の葬儀」は、命あるものはすべからく朽ちる時がくることを示す象徴的なシーンです。蟻が寄ってくるリアルさにはちょっと目を背けたくなりましたが、これこそが自然の営みそのものとも受け取れます。

続いて描かれる49日法要場面で、この家の間取りや部屋の様子が映し出されます。絹子が着物を着替えるシーンで見せる流れるような所作がとても美しく印象的です。着物姿自体に品があり、旧き良き日本女性の姿が重なって見えます。

陶子が呼びかけた「渚」が何者なのか、親族らしいけれど陶子の娘とは違うような?と思いながら観ていくと、中盤あたりで絹子の長女が生んだ子で陶子の姪だとわかります。韓国人の男性と駆け落ちして家を出たこと、両親は他界していること、母親の最期の言葉が日本語で「ごめんなさい」だったことから、亡き母の想いを察して、叶わなかった祖母との暮らしを、自分が叶えようと日本にやってきたことが明かされ、やっと腑に落ちるのです。

同様に、相続税を捻出するために絹子が家を売らなければならなくなったこともわかってきます。季節は藤やツツジから紫陽花に変わり、瑞々しい桃を味わう真夏へ移ります。桃の皮を剝かずに切って出すのは韓国風?

お盆に尋ねてきた、夫の友人の幸三(清水綋治)をいそいそと出迎え、若い頃の思い出話を懐かしく語り合う二人。レコードに針を落として聴く曲はブラザース・フォーの『トライ・トゥ・リメンバー』亡き夫が好きだった曲です。劇中でも随所にこの曲が挿入されていました。「もし私がこの地から離れてしまったら、ここでの家族の記憶やそういう全てを思い出せなくなってしまうのかしら」という絹子のセリフに、彼女の想いが全て込められていると思いました。それは彼女が過去に生きているということでもあります。

庭先で倒れた絹子ですが、医者からは薬を飲めば大事ないと言われていました。しかし、税理士(ファン)が客(田辺誠一)を連れて来て、売却話が進むと、彼女は渚に隠れて薬を飲まなくなります。少しずつ家の整理をする様子にも彼女の「決意」が見えます。

陶子が訪れたある日、絹子は娘に夫との思い出の指輪を、渚にはパリで買ったブローチを譲ります。昔話に花を咲かせた夜、陶子は渚に姉と母のことを「お互いいつか元に戻れると意地を張ってたのね」と話します。

秋も深まった頃、渚は祖母が薬を飲んでいないことに気付きますが、何故と聞くことができません。落ち葉を掃いてと言う祖母に思わず苛々をぶつけてしまいますが、何よりもこの家を愛している祖母の気持ちに寄り添うことにします。

椿の花が満開になった天気雨の日、祖母は庭を眺めながら静かに息を引き取ります。祖母の手を握りじっと雨音を聞く渚の胸中にどんな想いが浮かんでいたのでしょうか。

梅の花が咲く頃、渚と陶子は家の最後の片づけにやってきます。そこで渚宛ての手紙とベビー靴(送りたくても住所がわからず送れなかった孫の誕生祝)の入った箱を見つけます。手紙には母が祖母に送った渚の赤ん坊の時の写真が同封されていました。時を超えてやっと届いた母と祖母の想いがそこにはありました。

桜の花びらが舞い始めたある日、家を壊す重機の音が響く中、渚は庭の金魚を迎えに行って一人暮らしの家に戻り、水槽に2匹の金魚を放ちます。

この結末は衝撃的です。家を大事に住んでくれると約束してくれたからこそ絹子は売却に応じたのではなかったのかと 確かに古い日本家屋は情緒はあっても便利さに慣れた人には不便なだけなのかもしれないけれど、あまりにも無残に取り壊される音に耳を塞ぎたくなる思いになりました。

家も人もいつまでも「同じ時」に留まることはできない。だからこそ今日の一瞬一瞬が愛しいと思える、そんな作品でした。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イマジン!

2022年08月26日 | 

有川ひろ(著) 幻冬舎

憧れの映像制作の現場に飛び込んだ、良井良助(27歳)。聞き慣れない業界用語が飛び交う現場に戸惑う日々だが、そこは現実と物語を繋げる、魔法の世界だった。「必死で知恵絞って想像すんのが俺たちの仕事だ」やがて良助は、仲間たちが作品に傾ける熱意に、焦がれるような思いを募らせていく——。走るしか能のない新米、突っ走る!行き先は、たぶん未来。
「有川浩」改め「有川ひろ」の、お仕事小説&ベタ甘ラブコメ。涙と笑顔と元気が湧いてくる、待望の最新小説!(本紹介より)

 

1.天翔ける広報室

良助がバイトに入った現場で制作されていたのが「天翔ける広報室」・・ってなんだか見たことあるドラマだよな~と思ったら2013年にTBS日曜劇場で放送された「空飛ぶ広報室」(航空自衛隊の全面協力で撮影され、東日本大震災後の松島へブルーインパルスが帰還する話も盛り込まれています)だ!しかも有川浩さんの小説のドラマ化じゃないですか 作者自身が自分の小説をネタに盛り込んで新たな物語を創り出すとはびっくりです。といってもこちらの主人公は、子供の頃に見た「ゴジラVSメカゴジラ」に触発されて映像の世界目指すも、入社予定の会社が夜逃げしたため夢を諦めざるをえなくなった良井良助。ひょんなことから制作会社のバイトに雇われた彼は、ドラマ制作現場で頑張って周囲に認められ正社員への扉が開きます。叶わないと諦めていた夢の扉が開いたのね。

2.罪に罰

良助が正社員となって初めての現場は、超絶我儘な監督と保身に終始するチーフ助監督と打っても響かないサード助監督で「荒れる」予感しかない

主演は「天翔ける~」に続いて喜屋武と聞いて喜んだのも束の間、撮影がスタートすると案の定、現場はピリピリ。内容自体が復讐劇の心理サスペンスだしね。セカンド助監督の島津幸がその優秀さで逆にチーフの妬みを買って虐められる展開はかなり痛い。そんな過酷な現場での良助の「イマジン」を効かせた機転がです。喜屋武が強面外見の佐々に好意を持っていて、ダシに使われた良助、早くも失恋です。

撮影裏話に登場するのはおそらくは「図書館戦争」と思われ、制作を受け持つ裏方の苦労あるある(ロケーション選びなど)も盛り込まれているのも興味深かったです。脚本を読み込んで、全体の繋がりに齟齬が出ないように考え、監督の性格に合わせてロケーション場所を提案するなど、業界あるあるがここでも盛り沢山でした。この監督のキャラは誰だろ?って想像するのもありかも ただ、個人的には自分の思い描く作品を作るために非人道的な振る舞いをするような人が作る映画は好きになれないかも。

3.美人女将、美人の湯にて~刑事真藤真・湯けむり紀行シリーズ

幸ちゃんが殿浦イマジンの正社員になります。今回は王道のTVドラマシリーズの制作に加わった良助。人当たりの穏やかな監督でホッと一安心でしたが、人気お笑いタレントが抜擢のプレッシャーから薬を飲み過ぎて酩酊状態となり全裸でいるところに遭遇してしまいます。慌てて一番近い避難場所として自室に引っ張り込もうとしているところにたまたま通りかかった監督も協力してくれますが・・・これがとんだ誤解を生んでしまうのね 「罪に罰」の監督も嫌だけど、この監督もなぁぁぁ (でもこういう人絶対いそうだな)良助のピンチを救ったのは幸ちゃんと彼女から連絡を受けた亘理、殿浦の両人。事態にショック状態の良助を励ます幸ちゃんに、良助惚れてしまうがな

4.みちくさ日記

モデルは、「空飛ぶ広報室」に続き作者自身の作品「植物図鑑」で、映画化にあたっての現場が描写されています。

原作のある映画は、本の熱烈なファンからはとかく比較されこき下ろされるものですが(自分でも思い当たるのでちょっと耳が痛い)、「みちくさ日記」もキャストが発表された途端激しいバッシングが起こります。主役の俳優が売れっ子アイドルだというだけで、演技以前にその容姿がイメージと合わないとか、茶髪はあり得ないとか・・・スタッフでさえ当初はそういう見方をしている節がありました。でも彼が原作を読み込んで勉強してきたことが現場に伝わると、風向きも変わります。元々原作ファンが多い現場でもあったようです。植物と天気相手のままならぬ状況をスタッフ一丸となって乗り切ろうとするその原動力は、まさに良い作品を作ろうという情熱でしょう。

5.TOKYOの一番長い日

こちらも小説が原作のでかい企画が舞い込んできて大張り切りの殿浦イマジンのスタッフたち。アクション大作は莫大な予算がかかるけど見入りも大きいんですよね

ロケで工事現場の音に邪魔され撮影が度々ストップした時の良助の機転に彼の成長を感じます。

百里基地でのヘリを使ったロケでは、突風に煽られて機材が機体に倒れ掛かり、中止になりそうなところを、「天翔ける~」で世話になった広報官の協力で再開することができます。一つ一つの現場の人間関係の積み重ねが実を結んだ一例になっていました。

撮影現場が一丸となって作り上げた作品の出来に、原作者も大変満足していたのですが、空気読めない局Pがやらかして、続編製作を拒否されてしまいます。なのに打ち上げでは全く反省の色もない発言に良助キレちゃうんですね。まだまだ若いぞ!周囲が凍り付くなか、またまた幸ちゃんが助け舟を出してくれて何とか事なきを得ました。この二人、やっぱりくっつくのか?? 

制作会社に入るという夢が叶った良助は、初めはそれだけで満足していたのですが、仕事を続けるうちに、その先の夢が芽生えてきます。

佐々の「おら、走れ! 新米なんざそれしか能がねえんだから!」に素直に応じて率先して動く良助はほんとまっすぐでいい奴。殿浦社長の「自分が何をしたら相手が助かるだろうって必死で知恵絞って想像すんのが俺たちの仕事だ」も彼の胸にスッと入ってきます。自分には何ができるのか、ここで何をすべきかを想像することが出来るというのが良助の最大の長所ですね

内定をもらった会社から受けた最低な仕打ちに挫けた夢が、「殿浦イマジン」で再び輝きだし、映像業界で働く楽しさ、遣り甲斐を見つけていく良助と一緒に、この業界の色々な面を知ることが出来てとても楽しく読み終わりました。

ただ、努力は必ず報われるわけではない現実も見えてきます。それでもいつか報われるかもと信じて次の現場に向かうことが大事なのだとエールを送られている気がしました。

多くのTVドラマや映画化作品を持つ作者だからこそ書ける業界お仕事小説ですね 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

異動辞令は音楽隊!

2022年08月26日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2022年8月26日公開 119分 G
部下に厳しく、犯人逮捕のためなら手段を問わない捜査一課のベテラン刑事・成瀬司(阿部寛)。高齢者を狙ったアポ電強盗事件を捜査する中で、令状も取らず強引な捜査を繰り返した結果、広報課内の音楽隊への異動を言い渡されてしまう。不本意ながらも音楽隊を訪れる成瀬だったが、そこにいたのは覇気のない隊員ばかりで……。(映画.comより)

 

「ミッドナイトスワン」の内田英治監督が、警察音楽隊のフラッシュモブ演奏に着想を得て、最前線の刑事から警察音楽隊に異動させられた男の奮闘をオリジナル脚本で描いた作品です。主題歌は髭男の「Choral A」

豊槻市ではアポ電強盗事件が多発していました。捜査一課の刑事・成瀬は、捜査は足で行うものと机上で行われる捜査会議を軽視し、一課長の篠田誠(岡部たかし)や、県警本部長の五十嵐和夫(光石研)を無視するかのような態度を取り怒りを買います。

コンビを組む若手刑事の坂本祥太(磯村勇斗)とアポ電強盗グループの一員と目星をつけた西田優吾(高橋侃)の家に向かった彼は、手荒な尋問をしますが、西田は口を割りません。

成瀬は妻と離婚し、認知症の母(倍賞美津子)と二人暮らしですが、娘の法子(見上愛)が祖母に会いによく顔を出しています。

文化祭に祖母を連れて行く約束を父が忘れていると知って怒った娘にラインをブロックされて焦る成瀬ですが、さらに、五十嵐から音楽隊への異動を命じられます。子供の頃に和太鼓をやっていたこと、西田への強引な尋問が問題となったこと、極めつけは部下からパワハラの投書があったことがその理由でした。

衝撃を受けながら向かった音楽隊の事務所は本部から離れた場所にあり、音楽隊隊長で指揮者の沢田(酒向芳)が紹介するメンバーの中にはやる気の無さそうな者も見受けられ、交通課所属のトランペット奏者の来島春子(清野菜名)からは補充が一人だけかと不満を漏らされます。

ドラム担当と言われた成瀬は交通機動隊所属でパーカッションの広岡達也(渋川清彦)から指導を受けることになります。自動車警ら隊所属のチューバ奏者・国沢正志(板橋駿谷)はメンバーそれぞれ楽器に名前を付けていると言い、同僚でサックス奏者の北村裕司(高杉真宙)は刑事志望だったけれど研修で失敗して叶わなかったようです。

飲んだ帰り、法子が男子たちと歩いているのを見かけて問い詰めた成瀬は、今日が文化祭だったことを指摘されます。揉み合った際に娘のギターを落としてしまった彼は、怒った娘に腕時計(昔、父の誕生日にプレゼントした)を壊されます。

逮捕寸前で逃げられた3年前の強盗傷害事件を追っていた成瀬は、犯人の顔を覚えており、その男が
アポ電強盗犯の頭だとにらんでいました。また被害者が出たとニュースが流れ、いてもたってもいられず捜査一課へ顔を出した成瀬でしたが「もう刑事ではない」と追い返されてしまいます。その夜、倉庫で見つけた和太鼓を投げ捨て声を上げて泣く成瀬の背から刑事一筋30年やってきたのに何故?という悔しさが伝わってきます。

豊槻市民大会での音楽隊の演奏はバラバラで、成瀬や演奏に合わせてフラッグを振るカラーガードの柏木(モトーラ世理奈)のミスもあり、野次を飛ばされて散々な結果になり、来賓で来ていた知事も怒って帰ってしまいます。そんな中、音楽隊のファンだという老女・村田ハツ(倍賞美津子)だけが、成瀬に「あなたのドラムは勇気をもらえる。」と褒めてくれました。

打ち上げの席で、春子は自分は音楽が好きで警察音楽隊に入ったと話します。後日、春子の母が営む居酒屋で彼女と腹を割って話した成瀬が帰宅すると母がいません。慌てて捜し回る彼の前に国沢と北村が乗るパトカーが停まり、母が降りてきます。母は隣町まで歩いて行ってしまったのです。(徘徊が始まったのね。)彼らが帰った後、春子が成瀬の忘れていった上着を持って訪ねてきます。中には警察手帳が 警察官としてあってはならないミスに肩を落とす成瀬に、春子は見なかったことにすると仄めかします。起きてきた母の行動に様子を察して合わせてくれる春子。その後、倉庫で和太鼓とトランペットでセッションをする二人のエピソードに成瀬の気持ちの変化が示されます。

この夜を境に、成瀬は変わっていきます。広岡の知り合いからドラムセットを譲り受けて練習するうち、どんどん楽しくなって貸しスタジオでも練習するようになった成瀬。ある日スタジオで法子とそのバンド仲間と会ってセッションした彼は娘に謝り和解します。
マーチングの練習が上手くいかないまま終わりにしようとする沢田に、もっと練習した方がと提案した成瀬。成瀬に否定的だった北村ら、初めは嫌がっていたメンバーもその熱意に打たれて変わっていきました。

駅前で行われた犯罪撲滅キャンペーンで音楽隊も演奏します。アポ電強盗犯を捕まえるための情報提供を得ようと捜査一課も来ていて、成瀬の変化に驚きます。ハツも来ていて褒めてくれました。坂本と再会した成瀬は、過去の自分の行為を謝罪します。しかし、五十嵐は音楽隊の廃止を考えていました。

再びアポ電強盗事件が発生し、遂に死者が出ます。被害者はあのハツでした。坂本は西田の家に踏み込んであるチラシを目にします。それは1か月後に行われる、ミュージックフェスタの案内でした。

成瀬が頼み込んで、霊安室でハツと対面した音楽隊員たちは彼女を演奏で送ります。霊安室から出ると坂本がやってきて、西田が口を割りグループの頭が成瀬が追っていた男だったと判明したことを伝えます。ミュージックフェスタで西田が男に接触するので協力をして欲しいと言う坂本に、成瀬は「その日は音楽隊最後の定期演奏会だから無理だ」と断るんですね。(え??

1か月後。会場で張り込む一課の面々の前で、ピエロの格好をした楽器隊が西田の周りを囲みます。ピエロの正体は成瀬たち音楽隊員でした。ちゃんと協力してるんじゃん 成瀬は西田の後ろに座っていた目深に帽子をかぶり杖を持つ男を指さし「こいつが頭だ!」と叫びます。捜査員が一斉に迫りますが、男は杖や椅子を投げつけ彼らを振り払って逃げ出します。いやいや、捜一なんだからそんな簡単にやられないでよね~ 執念で追いかけた成瀬ら音楽隊が遂に男を捕え事件は解決します。一行は演奏会の会場に向かいますが、渋滞にはまって動けなくなり、このままでは間に合わないと諦めかけた時、坂本がパトカーのサイレンを鳴らしてやってきて先導してくれ、無事到着します。

舞台に向かう成瀬に坂本は告発者は自分だったと謝罪します。それ、今言うか??なんですが、成瀬は彼を許し部署は違っても俺たちは同じ警察官だと言います。いかにも昭和な猪突猛進男が明らかに変わったとわかる瞬間ですね。 演奏会では一曲しか披露されませんでしたが、劇中では、「宝島」他、最初に成瀬が聴いた「パプリカ」や「茶色の小瓶」「聖者の行進」「威風堂々」「アメイジング・グレイス」など多数演奏され、しかも俳優陣は吹替無しで演奏しているんだとか

会場には母を連れた法子の姿もありました。アポ電強盗犯逮捕の瞬間がネット動画で拡散されているのを見た知事が音楽隊を褒めたため、五十嵐は音楽隊の解散を断念せざるを得なくなったようです (あれ?子供優先で楽隊諦めた春子はどうすんのかな?)

町の中心部から音楽隊事務所が離れている設定の割には隊員たちの行き来に時間的な制約を感じなかったり、強盗団の頭が外見から想像できないほど強かったりの違和感もありましたが、本業と兼業しながら頑張っている隊員たちの姿にハツさんじゃなくても勇気を貰える作品でした。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

サバカン SABAKAN ネタバレあり

2022年08月22日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2022年8月19日公開 96分 G

1986年、夏。斉藤由貴とキン肉マン消しゴムが大好きな小学5年生の久田(番家一路)は、夫婦ゲンカばかりだが愛情深い両親や弟と暮らしている。ある日彼は、家が貧しく同級生から避けられている竹本(原田琥之佑)と、イルカを見るため海へ出かける。溺れそうになったり不良に絡まれたりと様々なトラブルに遭遇しながらも友情を育んでいく久田と竹本だったが、やがて別れを予感させる悲しい事件が起こる。

 

1980年代の長崎を舞台に、2人の少年が繰り広げる冒険と、それぞれの家族との愛情に満ちた日々を描いた青春ドラマです。丁度世の中バブル期だった筈ですが、逆に素朴で長閑で愛情溢れる物語にノスタルジーを感じてしまいます。

久田(草彅 剛)は売れない小説家。妻とは離婚し娘と月に一度会っています。ゴーストライターで生計を立てながらも小説を書くことを捨てきれない彼は、新作を書くため依頼を断ります。

娘と水族館でイルカショーを観て楽しい時間を過ごした久田は、長崎の海を思います。小説の執筆にとりかかった彼は、最初の一文に悩み、ふと目に入った“サバの缶詰”に子供時代を思い出します。「ぼくには、サバの缶詰をみると、思い出す少年がいる」・・・

場面は1986年の夏に。久田少年は父親のことを書いた作文を担任に褒められます。友達との会話の流れで一年中ランニングシャツ姿で、唾を消しゴム代わりに机に魚の絵ばかり描いている竹本というクラスメイトの家を見に行くことになり、彼の家が廃墟のようにボロボロな外観だったため、友達はゲラゲラ笑って帰って翌日教室で話題にしてバカにしましたが、竹本はいつもと変わらない様子で机に魚の絵を描いていて、「ジャッキー・チェンよりタフ」だと久田は思います。

久田家は怒らせたら“長崎一怖い”母(尾野真千子)と、ち〇こを掻いてばかりいて母にどつかれる父(竹原ピストル)と生意気な弟の4人家族。食卓での兄弟喧嘩の様子も何か懐かしいような郷愁を感じさせます。強面の父なのに母に頭が上がらずそれでいて仲がめっちゃ良いのが伝わってくる演出に 尾野さんと竹原さんの夫婦漫才のような演技も素晴らしかったです。

斉藤由貴とキン消し(キン肉マン消しゴム)が大好きな小学五年生の久田は、ガチャガチャで目当てのキャラが出ず悔しがっている時に、100円玉が落ちているのを見つけて持ち帰ります。天体望遠鏡が欲しくて貯金していた彼は、落とし物として届けなければという罪悪感がありますが、父親に尋ねた答えに安心して貯金箱に入れるんですね。ところが翌日、約束もしていないのに竹本が訪ねてきて、「大事な話がある」と近所の神社に連れていかれ、イルカを見に行こうと誘われます。ブーメラン島の辺りにイルカが来たとヤンキーが話していたのを聞いたというのです。(ヤンキーが言うなら本当だと信じるというのもよくわからんけど

イルカは見たいけど、ブーメラン島はタンタン岩(山)を越え海を渡らなければならないから門限の5時までに帰れないと断ろうとする久田に、竹本は100円ネコババをネタに脅して無理やり承諾させます。「刑務所入るかイルカを見に行くか」という脅しも大人の今なら笑い飛ばせますが、子供にとっては深刻な問題なのよね

翌朝5時。そっと家を抜け出て自転車の二人乗りで出発しようとした時、父が出てきて「どこへ行く?」と声をかけます。怒られて止められるかと思いきや、父は荷台にタオルを巻いて座りやすくし、お金も持たせて送り出してくれます。男の子の冒険心をわかっているこういう親、いいな~~

冒険の始まりにワクワクを抑えられない久田でしたが、タンタン岩へ向かう急勾配の道に早くも音を上げ始めます。山頂の景色に圧倒されたものの下り坂で転倒して自転車が壊れてしまうというアクシデントが発生、自転車を押しながら辿り着いた海沿いの店でラムネを買って休んでいると、バイクでやってきたヤンキーたちが久田に絡みます。竹本が助けようと彼らに石を投げ逆に袋叩きに遭ってしまうのですが、通りかかったヤンキーたちの先輩の金山(八村倫太郎)が助けてくれます。金山、超かっこよかった!!

ブーメラン島目指して泳ぎ出した二人。くらげに刺されないよう長袖のシャツを着るとか、竹本はとっても物知りなんですね それにしてもけっこう距離ありそうなのに小学生が泳いで渡れるって何気に凄いぞ!島に着く直前に足が攣った久田を助けてくれたのはバス停で見かけた女子高生の由香でした。イルカを探しますが結局見つけられず、浜に戻った二人は由香にサザエをご馳走になり、壊れた自転車と一緒に金山(由香の彼?)に送ってもらいました。竹本に自分を誘った理由を聞くと、「お前は(家を見て)笑わんかった(バカにしなかった)から」と答えます。

「じゃあね、またね!」と互いに何度も言い合い別れた二人は、この冒険をきっかけに「タケちゃん」「「ヒサちゃん」と呼び合い一緒に釣りをしたり、みかんを盗んで内田のじじい(岩松 了)に追いかけられたりして夏休み中過ごします。寿司が好きだけれど高いから滅多に食べられないと言ったヒサちゃんを家に誘ったタケちゃんは、サバの缶詰で寿司を握ってふるまってくれました。その美味しさに感激するヒサちゃんは、タケちゃんの4人の妹弟も一緒に食べようと誘います。みんなで食べたらもっと美味しいというヒサちゃんって良い子だよね。 亡くなった漁師だった父がよく作ってくれたと話し寿司職人になるのが夢だと言うタケちゃん。ボロボロの外観と違って家の中は綺麗に片付いているのをみても母(貫地谷しほり)と一家6人が貧しいながらも仲良く暮らしていることが伝わってきます。

とっくに「友だち」と思っていたヒサちゃんでしたが、タケちゃんの母の話を聞いて逆に彼から友だちと思われていなかったと誤解し、学校が始まるとタケちゃんを避けてしまいます。なんとも切ない誤解 何故避けられたのかわからず落ち込んで帰宅した息子の様子が気がかりな母が、その夜事故に遭い帰らぬ人になってしまうの。両親を亡くした竹本兄弟妹は、それぞれ親類に引き取られることが決まります。

それを知ったヒサちゃんが、ありったけの貯金でサバ缶を買って駅に走るんですね。ホームで電車を待つタケちゃんにそれを差し出し「友だちばい!おいたち友だちばい!」と言うと、彼は「知っとる」と答えます。そこにやってきた内田のじじいも袋一杯のみかんを渡します。憎まれ口をたたき合っていたけれど、じじいもタケちゃんのことを可愛がっていたのね

伯父と電車に乗り込んだタケちゃんを「じゃあね、またね!」と見送るヒサちゃん、タケちゃんも「じゃあね、またね!」と返します。あの冒険の日のシーンが蘇るなぁ!! 駅前には息子を追いかけてきた父が立っていて、たまらず懐に飛び込んで泣きじゃくる彼を黙って抱きしめます。家に帰ると、母も同じく抱きしめます。それを見て「僕も」という弟を父が抱きしめてやり・・・いつもと変わらない賑やかな夕食風景が繰り広げられます。

そして場面は再び現在へ。この夏の日の思い出を小説にした久田の本が出ました。それを読んだ元妻から、娘が長崎に行きたがっているとメールが来て、彼は「3人で行かないか」と返します。故郷の駅のホームのベンチに座る久田に声をかけたのは寿司職人になった竹本。二人はずっと友だちだったんですね 離れ離れになった竹本兄妹弟たちですが、年に一度は集まっていることが示され、親戚のところで厄介者扱いされていないというのも何だかホッとします。

竹本をバカにするクラスメイトたちや、3人組のヤンキーは別として、二人はそれぞれの親にちゃんと愛されて育っていたし、かけがえのないひと夏の思い出が育んだ友情をずっと保ち続けていたのも嬉しく思いました。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

SING シング ネクストステージ

2022年08月21日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2022年3月18日公開 アメリカ 110分 G

歌のオーディションを開催し、取り壊し寸前の劇場を見事に復活させたニュー・ムーン劇場の支配人バスター・ムーン。だが、彼の夢はそれで終わらない。次に目指したのは、エンターテインメントの聖地“レッドショア・シティ”での公演だった!
バスターは仲間たちを引き連れてショービズ界の超大物、ジミー・クリスタルのところへオーディションに行き、斬新なアイデアと持ち前のハッタリで超一流劇場であるクリスタル・タワー劇場での公演の契約を取り付ける!でも、その契約には15年間、人前から姿を消している伝説のロック歌手・クレイ・キャロウェイをキャストに迎えるという条件があった。
地元の小劇場を飛び出し、途方もなく大きな舞台に立つチャンスを手にしたバスターたち。
それは、数々の困難のはじまりだった――。いま、ネクストステージに挑む彼らの、笑いと感動の物語が始まる!(公式HPより)

 

ミュージカルコメディアニメ「SING シング」の続編です。声優にはマシュー・マコノヒー、スカーレット・ヨハンソン、タロン・エガートン、リース・ウィザースプーンら豪華キャストが集い、オオカミのポーシャにホールジー、伝説のロック歌手、ライオンのクレイ役は「U2」のボノが務めています。日本語吹き替え版も前作と同じバスター役の内村光良をはじめ、坂本真綾、斎藤司、MISIA、長澤まさみ、大橋卓弥、大地真央、田中真弓、クレイ役には「B'z」の稲葉浩志が声優初挑戦しています・・・が今回は字幕版で鑑賞してからクレイの歌だけ吹替版でもう一度

前作の楽曲も豪華でしたが、本作でも「THERE'S NOTHING HOLDIN' ME BACK」(ショーン・メンデス)、「BREAK FREE」(アリアナ・グランデ)、「GIRL ON FIRE」(アリシア・キーズ)、「I DON'T WANT TO MISS A THING」(エアロスミス)、「BOYFRIEND」(ジャスティン・ビーバー)、「I STILL HAVEN'T FOUND WHAT I'M LOOKING FOR」(U2)などの豪華な楽曲で、U2ボノをはじめ、プリンス、Yeah Yeah Yeahs、ビリー・アイリッシュ、ザ・ウィークエンドらの名曲・ヒット曲が全篇に溢れていて、デュエット曲や合唱曲が多いのも見どころ(聴きどころ)。ラストシーンはU2書き下ろしの新曲「YOUR SONG SAVED MY LIFE」(ユア・ソング・セイヴド・マイ・ライフ)です。

「クリスタル・エンターテインメント」のスカウト担当のスーキーの目に留まると期待していたムーンでしたが、彼女は途中で席を立ってしまいます。理由を問うムーンに「一流の場では通用しない」と言われ落ち込むムーンを、かつての伝説の歌姫でムーンの理解者のナナが励まします。これに勇気を得たムーンは、ロジータ、ジョニー、ミーナ、グンターや、ソロ活動をしていたアッシュとレッド・ショア・シティへ向かい、社長のジミーのオーディションに飛び込み参加をしますがあえなく落選。ところがグンターが提案した隠遁している伝説のロック歌手クレイを出演させるアイディアが気に入られ、ムーンが興行を任されることになります。

ムーンはグンターとSFミュージカル「この世界のかなたへ」の脚本を作りリハーサルを開始しますが順調とはいきません。ミーナは相手役と息が合わず、ジョニーもキッケンクローバーのダンス指導についていけずに自信を失います。更にジミーの娘のポーの横やりで、ロジータは主役から交代させられてしまいます。

クレイと知り合いとの嘘がジミーにバレたムーンは、1週間以内に出演交渉を成立させなければならなくなり、事務員のミス・クローリーに頼んでクレイとコンタクトを取ろうとしますが失敗に終わります。(彼女の目は取り外し自由なんだっけ?)焦ったムーンはアッシュと一緒にクレイに直談判を試みますが、音楽活動の全ては亡き妻のためだったと受け付けません。ムーンは一旦引き上げ、交渉の続きはアッシュに託します。クレイの歌を弾き語りしたアッシュの歌に心を動かされたクレイは出演を引き受けます。

ダンスが上達せず悩んでいたジョニーは街で見かけたヌーシーのストリートダンスに惹かれ彼女に教えを請います。ダンスの初歩から教わったジョニーはめきめき上達します。ポーシャが演技力に難があると主役から外されたことに激怒したジミーは、ムーン抹殺を部下に命じます。地元に逃げようとしたムーンの前にクレイが現れて、かつての自分のように「逃げ続ける人生」を選ぶのかと問い質します。思い直したムーンは「クリスタル・タワー・シアター」をジャックして一夜限りの公演を計画します。

ロジータの25匹の息子たちが劇場の警備を混乱させた隙に、仲間を引き連れたジョニーの父で元マフィアのビッグ・ダディが警備にとって代わり、ジミーに反発するポーシャも仲間となります。公演の幕が開くと、ダンスの練習の成果を存分に発揮したジョニーは乱入してきたクラウスとのダンスバトルを制し、ポーシャも与えられた役を歌唱力の高さで魅せ、相手役のダリウスと息が合わなかったミーナも初恋相手のアルフォンゾを思い浮かべてデュエットを成功させました。事態を知り劇場に駆け付けたジミーが、ムーンを高所から突き落としますが、それを見たロジータが、勇気を振り絞って飛び降りて助けます。そのままグンターと息の合ったパフォーマンスを披露し喝采を浴びます。トリはクレイとアッシュですが、直前で怖気づいたクレイでしたが、アッシュがアカペラで歌い出し観客も唱和する姿に勇気づけられてステージに進み出ていきます。

舞台は大熱狂のうちに幕を閉じ、妨害しようとしたジミーはスーキーの通報で逮捕されます。クレイ、ポーシャ、ヌーシーも加わった一行は地元に戻ることにしますが、超一流の「マジェスティック劇場」での公演を提され、喜んで承諾します。ラストシーンは「マジェスティック劇場」のレッドカーペットに立ちナナを迎えるムーンの姿です。

公演に向けて悩み努力する個々のメンバーの姿もしっかり描かれていますが、何といっても本番の舞台が素晴らしかったです

それにしてもグンターの溢れんばかりの創作イマジネーションは凄かった


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIE

2022年08月20日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年12月30日公開 119分 G

常に事実だけを追求し、99.9%逆転不可能と言われる事件で無罪を勝ち取ってきた深山(松本潤)。所属する斑目法律事務所の刑事事件専門ルームは、新所長となった佐田(香川照之)のもと、新米弁護士・穂乃果(杉咲花)も加わり、日々事件に挑み続けていた。
ある日、彼らのもとに舞い込んできたのは、15年前に起きた天華村毒物ワイン事件に関する依頼。その事件には、謎の弁護士・南雲(西島秀俊)とその娘エリ(蒔田彩珠)が関わっていた。一見善良そうな南雲だが、果たして彼は敵なのか、味方なのか?
深山たちは、村で出会った青年・守(道枝駿佑)の協力も得ながら、15年前の事件を徹底的に調べることに。やがてある可能性に行き当たり、奇跡の大逆転かと思われたが、それは巧妙に仕掛けられた罠だった…。事実だけを追求してきたはずの深山が、まさかの冤罪を生んでしまうことに!?斑目法律事務所に訪れた最大のピンチ!果たして深山たちは、0.1%の事実にたどり着くことができるのか―― ?(公式HPより)

 

2016年と18年にTBS「日曜劇場」で放送されたドラマ「99.9 刑事専門弁護士」の劇場版です。

型破りというより、変人と言った方がぴったりな深山のキャラはドラマの時から好きになれなかったので劇場鑑賞も避けましたが、DVDになったので一応観てみようかと・・・

事実を探るため、事件の当事者になりきって再現するというユニークな調査法はドラマから変わらずオープニングから登場しています。依頼人は東野颯太殺害容疑がかけられている漁師の加賀郁夫(R-指定)で、彼は正当防衛を主張しています。検証した結果新たな事実は出て来ず、逆に現場の目撃者の三田という男が現れます。東京地方検察庁の検察官・丸川貴久(青木崇高)から事件資料を受け取った深山は、警察が加賀の被害届に対して動かなかったことを隠すため、南雲に目撃者を仕立てさせて加賀を犯人にしようとしていると推測し、三田の行動を洗って証言の嘘を暴き事件の解決に至ります。深山たちは南雲の行動は自分たちに真相を暴かせようとしたのではと考えます。

その南雲から15年前の天華村毒物ワイン事件の再調査依頼が入ります。天才高校生ピアニストとして注目される彼の娘エリが、その事件の犯人山本貴信(渋川清彦)の娘だと暴露されたのです。エリは南雲を問い質しますが答えてくれなかったため、(SPドラマで名刺をもらった)佐田に15年前の事件を調べて欲しいと依頼します。

天華村でワイナリーを営んでいた山本が、村のワイン祭りでワインに毒物を混入して4人を殺害した容疑で逮捕された時、親友だった南雲が弁護人を務めて無罪を主張しましたが認められず、死刑判決を受けた山本は獄中死、彼の妻も心労から亡くなり、残されたエリを南雲が我が子として育てていました。

佐田は南雲から15年前の資料を受け取ります。(当時の裁判長は深山と因縁のある東京地方裁判所所長の川上憲一郎(笑福亭鶴瓶)でした。)

使われた毒物が山本が購入していた消毒剤であり、毒物を入れる機会が山本だけにあったという2点が決め手でした。祭りの一部始終を村人の太田保(ベンガル)が撮影していました。脱サラしてワイナリーを始めた山本に対して、当初歓迎していた村人たちが、ワインで金賞を獲った頃から疎んでいたことも判明します。太田や重盛寿一(高橋克実)ら村人たちは昔の終わった事件を蒸し返す深山たちに非協力的でしたが、重森の息子の守(道枝駿佑)の協力を得て、事件を徹底的に調査していきます。事件当時4歳だった守は記憶になかった事件でしたが、幼馴染で2年前に村を出ていった圭太の「犯人は山本ではないかもしれない」との言葉が気になっていたのです。

当時の映像をもとに、穂乃果の知り合いの劇団員を動員しての再現VTR(ここまでする必要ある??)を検証して、真犯人が他にいるとわかり、佐田は再審請求が可能と判断します。しかし犯人扱いされたと訴える太田が、ヤメ検弁護士の大友修一(奥田瑛二)を伴って班目法律事務所を非難する記者会見を開きます。村人たちが再審を妨害しようとして罠を仕掛けたのではないかと深山たちは疑いを持ちます。

事件当時よりも現場検証時の方がワインの量が入多くなっていることに穂乃果が気付きます。そこからいきなりまた劇団員を使っての再現検証が始まり、衝撃の?真実が明かされるのですが・・・それを隠すためにそんなに大人数が協力するものかしらん?村という閉鎖集団の自衛本能というには動機に疑問が残ります。そもそも事件ではなく事故だし、「彼ら」が罪に問われることはないのだから。

倒れた4人を救おうと病院に運んだ山本に罪を着せて死に追いやり、その家族を離散させて心が痛まなかったというのか?あまりにも身勝手で後味の悪い事件でした。

なので、いっそう深山と佐田のしょうもないギャグと穂乃果のパー子並みの高笑いが耳障りで苛々しました。このやりとりを笑えるセンスは自分には皆無だと改めて思いました。深山のドヤ顔も嫌! シリアス路線なら受け入れられるんだけどな~~


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東京リベンジャーズ

2022年08月19日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2022年7月30日放送 土曜プレミアム

負け犬フリーター・タケミチ(北村匠海)の元恋人・ヒナタ(今田美桜)が殺された。
事件を知った翌日、タケミチは駅のホームから転落。目覚めた先はなんと10年前だった。
負け犬人生を歩むきっかけとなった最悪の高校時代にタイムリープし、もう一度繰り返される「あの頃」。最悪の過去でようやく見つけたヒナタを救う唯一の方法は、ヤクザも恐れる危険な組織“東京卍會”を消滅させること。
熱い仲間たちとの出会いの中で、ヒナタを救うため、逃げ続けた人生を変えるため、タケミチは弱虫だった“過去”の人生にリベンジし“今”を変えられるのか――。(公式HPより)

 

マンガ『東京リベンジャーズ』の実写化映画ですが、原作読んだことありません。 「2」公開に当たり地上波で放送されていたので録画して観ましたが、やっぱり喧嘩シーンは早送りしてしまいました。出演俳優が今をときめく人気者揃いなのは眼福

冒頭、暴力団員を轢き殺す半グレ集団「東京卍會」のNo.2キサキ(間宮祥太朗)、車の後部座席に座っている醒めた目をした佐野万次郎(吉沢亮)の首には龍のタトゥーが入っています。いまいち状況がわからずにいると、次の場面に。

花垣武道(北村匠海)は、元カノのヒナタとその弟ナオト(杉野遥亮)が東京卍會と暴力団の抗争に巻き込まれて亡くなったことをニュースで知ります。バイト中もそのことを考えていたタケミチは店長に使えない奴と罵られ、帰りの地下鉄ホームで何者かに押され線路に転落、電車に轢かれる!と思った瞬間10年前の渋谷駅にタイムリープしていました。・・とここから現在と10年前を行ったり来たりの展開が始まります。

高校時代につるんでいたアッくん(磯村勇斗)、タクヤ、マコト、山岸と再会したタケミチは死ぬ前の走馬灯のようなものだと思い込んで一緒についていった先で、東京卍會のメンバーの3年のキヨマサ(鈴木伸之)にボコられる5人。そこから彼らの奴隷生活が始まり、逃げ出すために高校を中退したタケミチは、その後何をやってもうまくいかない人生を過ごしていたのです。

傷だらけで現れたタケミチに「君はいつも急に来るね」と傷の手当てをして「がんばって」と励ますヒナタ。別れたあと公園で考え事をしていたタケミチは、ヒナタの弟のナオトが恐喝されているのをみて思わず駆け寄ります。結局自分でブランコに当たって気絶してましたが タケミチはナオトに10年後のことを話し「姉ちゃんはお前が守れ」と話し握手した瞬間、現在に戻ってきます。

転落したタケミチを救ったのは、10年前のタケミチの話を信じて刑事になり東京卍會(トーマン)を追っていたナオトでした。彼はヒナタが亡くなったことと現在のトーマンのトップが佐野万次郎(マイキー)とメビウスの幹部だった稀咲鉄太(キサキ)であることを伝え、この二人が出会わなければ今のトーマンは存在せず姉も死なずに済んだと、再び過去に戻って運命を変えて欲しいとタケミチに頼みます。ちなみにタイムリープのきっかけは握手です

再び戻った場所はキヨマサ主催のケンカ賭博の会場で、キヨマサに挑んだタケミチは叩きのめされながらも諦めずに食いついていきます。そこへトーマン総長のマイキーとNo.2のドラケン(山田裕貴)が現れ場を治めると、タケミチを気に入ったマイキーからダチと認められます。

現在に戻ったタケミチがマイキーに接触したことを知ったにナオトは、「佐野を殺してきて下さい」と言います。

10年前に戻ったタケミチは、マイキーからタケミチが死んだ兄に似ていると言われ、ドラケンからも「強い奴はいくらでもいるが譲れないもののために戦う奴はそうはいない」と言われます。彼らの人柄を知るほどに悩みが生じるタケミチです。

トーマンの集会に颯爽と現れたマイキー、ドラケン、弐番隊隊長ミツヤ(眞栄田郷敦)。まさにヒーロー登場の図。キヨマサが参加していることに気付いたドラケンは彼を追放。(これが原因で恨みを買うんですね)メンバーの彼女がメビウスのメンバーに暴行され重傷を負ったことで、メビウスを潰すと宣言したマイキー。

再び現在(最早握手シーン不要?)に戻ると、アッくんが東マンの幹部になっていると聞いたタケミチは、現在のマイキーと話しがしたいとアッくんに接触します。外見は変わっても昔と同じアッくんに安心したのも束の間、彼は自分がタケミチをホームから突き落としたと告白し、キサキが怖い、ドラケンが死んでからマイキーが変わったと話して、過去に戻れるなら皆を助けて欲しいと言い残して屋上から飛び降ります。遺体に縋り泣き叫ぶタケミチをメビウスのハンマ(清水尋也)が見下ろしていました。

ドラケンが7月13日のメビウスとの抗争の際に死んだことを突き止めたタケミチは10年前に戻ります。

負傷したメンバーの彼女の病室前で、ドラケンが両親に頭を下げ、マイキーにも下げさせて彼に一般の人を巻き込んではダメだと諭す姿を見たタケミチはドラケンを殺させてはいけないと強く思います。ドラケンがマイキーの良心になっているのね

トーマンのアジトでメビウスとの抗争を止めるよう進言するタケミチでしたが、メビウスが奇襲を仕掛けてきます。リーダーの長内を倒し勝利宣言をしたマイキーに長内が後ろから襲い掛かり、庇ったドラケンが刺されますが手を怪我しただけで無事でした。でもね・・これはドラケンが死ぬ前日の出来事なのね。

当日、7月13日。神社でお祭りデート中のタケミチはメビウスのメンバーを見かけて追いかけ、キヨマサがドラケンを殺そうとしていると知りますが、直後捕まってしまいます。ぐるぐる巻きにされ転がっているところをヒナタに発見され何もできない自分を卑下したタケミチに「強いよ」と励ましキスするヒナタ。人を助けようとする心の強さを彼女はしっかり認めていたんですね

メビウスにおびき出され囲まれたドラケンは、一人で大勢を相手に戦いますが限界が見え始めた時、ハメられたと気づいたマイキーがトーマンを率いて駆けつけます。タケミチがドラケンを見つけた時、キヨマサにドラケンが刺されてしまいます。敵に囲まれドラケンの傍に近づけないマイキーはドラケンをタケミチに託します。ドラケンを背負ったタケミチの前に立ち塞がるキヨマサに、「これはオレの人生のリベンジだ!」とタケミチが挑んでついに倒します。

ドラケンは一命をとりとめました。歓声のあがるなか、ひとりメンバーから離れたマイキーが壁を背にへたり込んで泣いている姿を見たタケミチは静かに背を受け走り出しました・・・現在ではPCの中のマイキーのタトゥー(ドラケンのそれを模して入れていたのね)が消えていくのをナオトが見ています。

走り続けるタケミチはいつのまにか現在に戻っています。美容師(彼の将来の夢でした)となったアッくんとすれ違いますがお互い気づきません。ナオトの部屋のドアを開けたのはヒナタではした「君いつも急に来るね」と彼女は言いました。

喧嘩はからっきし弱いのに粋がって不良ぶっている高校時代のタケミチが、キヨマサに負けてから心が折れてダメダメ人生を送っている今の自分からのリベンジを決意し変わっていくお話です。タイムリープは安直ではあるけれど、やり直す設定としてはうまく機能しているかも。

ハンマやキサキが描き足りていないのは続編を見据えてのことでしょうか。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

時の渚

2022年08月18日 | 

笹本稜平(著) 文春文庫

元刑事で、今はしがない私立探偵である茜沢圭は、末期癌に冒された老人から、35年前に生き別れになった息子を捜し出すよう依頼される。茜沢は息子の消息を辿る中で、自分の家族を奪った轢き逃げ事件との関連を見出す…。「家族の絆」とは何か、を問う第18回サントリーミステリー大賞&読者賞ダブル受賞作品。(「BOOK」データベースより)

 

殺人犯に妻子をひき逃げされた茜沢は捜査に加われない腹立ちのまま刑事を辞めて私立探偵になっています。元上司の真田の紹介で余命半年の元池袋のヤクザ松浦から、35年前に池袋の公園で見知らぬ女性に託した息子を探す仕事を引き受けます。手掛かりはユキという名前と彼女が要町で「金龍」という居酒屋をやっていたことだけ。捜し人が茜沢と同じ35歳という点がまず引っかかってきます。

一方、茜沢の妻子の事件当時容疑者だった江戸川区議の駒井が新たな殺人事件の容疑者に浮上し、真田と情報協力することになります。駒井も35歳で、35年前の殺人事件の被害者夫婦の息子ですが、犯人の遺留品の毛髪と被害者の間の親子関係が否定されたため容疑者から外れていました。

ユキちゃんの本名は原田幸恵で、鬼無里の老舗旅館の娘、正確には嫁だったことがわかります。厳しい姑に辛い毎日を送っていた彼女は、客の絵描きと恋に落ちて駆け落ちしていました。働き者の彼女が自分の店を持ち、子供も授かろうとした矢先に不幸が襲い、失意の時に松浦と出会い子供を託されたのです。ここまで読むと、具体的に書かれていなくても彼女が流産したことがわかります。

託されたといっても、養子の手続きは簡単ではない。実子として届け出るために幸恵は旅館の元番頭の助けも借りてある工作をしていました。それを茜沢は彼女と縁のある人たちを訪ねて一つ一つ解きほぐしていくのです。彼らは皆暖かく善意の人たちで、ユキちゃんの人柄もおのずと偲ばれるようになっていました。だからこそ、彼女が育てた息子は駒井であってはならないという思いにさせられます。

並行して、駒井が覚せい剤の常習者であり、自らも麻薬商売に手を染めていることがわかってきます。金に困った彼が両親を殺害したのは状況的に明白ですが、実子と思われていた彼と茜沢の意外過ぎる衝撃の接点が最後に明かされるのは運命の悪戯にしては手が込んでるというか、偶然にもほどがあるというか・・・ 

松浦の息子がユキちゃん夫婦に愛情深く育てられ成長していたこと、松浦の存命中に再会を果たせたことがせめてもの救いでしょうか。

駒井・茜沢・松浦の息子、同い年の彼らの運命とその親子関係について考えさせられます。親を疑うことなく育った茜沢、実子でないことを告げられても変わらぬ情愛で結ばれている松浦の息子に対して、駒井は出生の秘密を知ったことで自身の核を持てずに転落していったのかなと想像しました。駒井自身の弱さと斬って捨てるにはほんの少し同情の余地を覚えました。

殺人事件を扱ってはいるけれど、血なまぐさいシーンはなく、どちらかというと人情に重きを置いた作品なのも好ましかったです。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

燃えよ剣

2022年08月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年10月15日公開 148分 G

江戸時代末期。黒船の来航により、外国から日本を守るため幕府の権力を回復させようとする佐幕派と、天皇を中心にした新政権を目指す討幕派の対立が深まりつつあった。武州多摩の農家に生まれた土方歳三(岡田准一)は「武士になりたい」という思いで、近藤勇(鈴木亮平)、沖田総司(山田涼介)ら同志とともに京都へ向かう。芹沢鴨(伊藤英明)を局長に、徳川幕府の後ろ盾で新選組を結成し、土方は「鬼の副長」と恐れられながら、討幕派の制圧のため京都の町で活躍を見せるが……。(映画。comより)

 

新選組副長・土方歳三の生涯を描いた司馬遼太郎の歴史小説の映画化です。新選組とは、江戸時代末期の京都で治安維持活動、特に尊攘派志士の弾圧活動をした浪士隊の名称です。(ウィキペディアより)

2021年の大河ドラマ『青天を衝け』で、元京都見廻組の旗本・大沢源次郎捕縛を命じられた渋沢栄一と近藤勇の接点が描かれていましたが、渋沢も農民の出から身を興したという点では似ていますね。

黒船の来航により日米和親条約が締結されると、佐幕派と倒幕派が対立し治安が急激に悪化していきます。井伊直弼が暗殺され(桜田門外の変)、討幕派による攘夷運動が各地で起こっていました。

“バラガキ”と呼ばれていた土方ですが、実家は豪農で、学問の機会も与えられていたようです。(その点は渋沢も同様で、農民でも未来への見識を得ることができる時代になってきていたのかな

近藤勇の天然理心流の道場「試衛館」で沖田総司らと共に剣の腕を磨いていた土方でしたが、なかなか人が集まらず運営が行き詰まっていた近藤が、一橋慶喜(後の徳川慶喜)の命で京都守護職に就いた会津藩主松平容保(尾上右近)が全国から腕に自信のある者を身分問わず集めていると知って、皆で京へ上ることになります。

会津藩と繋がりのあった芹沢鴨を仲間に壬生浪士組を発足した土方たちは、倒幕派の浪士を次々に殺害し京の治安回復に貢献します。会津藩を後ろ盾に、芹沢鴨と近藤を局長に「新選組」を結成して組織が拡大していくと、土方は憎まれ役を引き受け組織を統制します。逃げたり勝手に金策したら切腹といった厳しいルールを敷いた局中法度が有名ですね。

京に治安が戻ってくると、芹沢の商人に対する横暴な金銭要求や女性への暴行などの悪行が目立つようになり、松平容保から芹沢の始末を命じられた土方は、討幕派の犯行に偽装して芹沢を襲いこれを惨殺しました。このケースだけは全面的に許容できるかも

闇討ちで負傷した土方の手当てをした江戸生まれのお雪(柴咲コウ)と互いに惹かれ合う二人。お雪の情報から「池田屋襲撃事件」が起きた設定ですね。27人の攘夷派浪士を斬って倒幕作戦を未然に潰した新選組の名は世に轟きました。

新たに伊東甲子郎が参謀に加わりますが、新選組を尊王派に変えようと企てる伊東に惹かれた山南と新選組の武力向上だけを求める土方は対立し溝が深まっていきます。山南が隊を脱走すると、土方はこれを許さず切腹を命じ、さらに伊東を暗殺します。

しかし薩長同盟が成立すると、時流は一気に倒幕へ傾き始めていきました。1867年、徳川慶喜が大政奉還を宣言するに至り幕府は崩壊します。『青天を衝け』の慶喜は英明な将軍として国の未来のために英断したように描かれていましたが、本作では家臣を見捨てて逃げた暗愚な将軍として登場していました。 まさに立場が変われば見方も変わる見本のような

失意を抱えて鳥羽伏見の戦いに臨んだ新選組ら旧幕府軍ですが、総崩れとなります。近藤は重傷を負い剣を握れなくなり、沖田は結核の病床に。近藤と共に故郷へ逃げ延びた土方は、断髪して再起を誓いますが、自由を求める近藤は官軍に投降し後に斬首されます。病が悪化した沖田も病死すると、土方は同志やお雪と別れて江戸→会津→蝦夷・五稜郭へ。

折々挟まれる旧幕府軍の軍事顧問のフランス陸軍士官との会話の場面は、幹部だけに許される写真撮影の前のエピソードのようです。当時の列強諸国が日本を狙っていた時代背景の一端を垣間見るようでした。

小姓の市村鉄之助に写真と手紙を家族に届けるよう頼むと、土方は五稜郭の戦いで華々しく戦死し、その亡骸は函館で傷病者の手当てをするお雪のもとへ運び込まれましたとさ。

幕府が倒れ新政府になったことで今の日本がある、けれども、裏切りや血なまぐさい殺戮の果てに築かれた平和と繁栄でもあるのもまた事実でしょう。 自分の信ずる道をひたすら求めて生きた土方の心情はまさに武士。でもその血にまみれた人生を称賛することはできないかなぁ

山崎役の村本大輔の本業は才師なんですね。早口のキャラがはまっていました。岡田はじめ俳優たちの力演は流石ですが、斬り合いや暗殺場面が多いのはやはり好みではないかな とりあえず早回ししなかったのは自分を褒めてあげたい


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

モービウス

2022年08月15日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2022年4月1日公開 アメリカ 104分 G

天才医師のマイケル・モービウス(ジャレッド・レト)は、幼いころから血液の難病を患っている。同じ病に苦しみ、同じ病棟で兄弟のように育った親友のマイロ(マット・スミス)のためにも、一日も早く治療法を確立したいマイケルは、コウモリの血清を投与するという危険な治療法を自らの肉体を実験台にして試す。その結果、マイケルの肉体は激変し、超人的なスピードや飛行能力、周囲の状況を察知するレーダー能力が身につくが、代償として血に対する渇望に苦しむこととなる。自らをコントロールするために人工血液を飲み、薄れゆく人間としての意識を保つマイケル。そんな彼に対し、マイロも生きるためにその血清を投与してほしいという。同じころ、ニューヨークの街では次々と全身の血が抜かれるという殺人事件が頻発する。(映画.comより)

 

スパイダーマンの敵役のモービウスを主人公に描いたダークアクションです。不治の血液系疾患に苦しむ天才医師が、コウモリの血清投与という禁断の治療で吸血鬼になってしまい、苦悩する姿が悲劇的に描かれていました。

子供時代。血液の難病でギリシャの医療施設に入院していたモービウスは、新たに入院してきた同年代の患者ルシアンと出会います。彼を「マイロ(代々隣のベッドの患者を呼ぶあだ名)」と呼び意気投合しますが、ある時マイロの医療装置が故障し、モービウスがボールペンの部品を使って修理します。それを知ったニコラス医師(ジャレッド・ハリス)は彼の才能を見出しアメリカで教育を受けることを勧めます。

モービウスからの必ず病を治すと書いた手紙を地元の子供たちに見られてからかわれたマイロは松葉杖で殴り掛かり、駆けつけたニコラスに制止されても止めませんでした。彼の暴力的な面を示す伏線のエピソードですね。

25年後。NYの病院に勤務するモービウスは、天才医師となっていて、人工血液を発明してノーベル賞候補になります。しかし難解な性格(自ら称していた)のモービウスは賞を辞退してしまいます。そんな彼の理解者は、彼の才能を信じる同僚のマルティーヌ・バンクロフト(アドリア・アルホナ)と、資産家として成功し研究の出資をしているマイロです。

中南米コスタリカで吸血コウモリを捕獲した(冒頭シーンです)モービウスは、これを使って「キメラ細胞」の血清を創り出します。違法な研究と知りつつマイロは協力を申し出、彼が用意した貨物船でマルティーヌと共に法律適用外海域で実験を開始し自らの体に血清を投与します。超人的な能力を手にしたモービウスでしたが、吸血鬼のような怪人と化して傭兵たちを襲います。我に返って監視カメラの映像から事の次第を知ったモービウスは、映像を消して、SOSを発信した後、行方をくらまします。

船で起きた怪事件を担当するFBI捜査官ストラウド(タイリース・ギブソン)とロドリゲス(アル・マドリガル)は、モービウスを疑い一人助かったマルティーヌに尋問しますが、彼女は覚えていないと言います。

研究所に戻ったモービウスは、身体に起きた変化を分析して、コウモリと同じ能力(超人的なスピード、聴覚、レーダー)を得たと気付きます。喉の渇きを癒すため生き血を欲する彼は、自ら開発した人工血液を飲みますが、効果は6時間しか持たないことが判明します。

船の事件を知って研究所を訪れたマイロは、モービウスの姿を見て自分にも血清を投与するよう頼みますが、自分同様の怪人になることを恐れるモービウスは拒否します。その夜、モービウスが勤務する病院で看護師が失血死する事件が起こります。逮捕されたモービウスの面会に現れたのはマイロで、人工血液を差し入れて去ります。マイロが松葉杖なしで歩けると気付いたモービウスは、彼があの血清を使ったことを悟ります。留置所から脱走したモービウスはマイロを追い、彼が看護師を襲ったことや、新たに得た能力を使って大勢を殺そうとしていることを知ります。マイロの暴走を止めようと闘いを挑みますが、人工血液の効果が切れかけ退却を余儀なくされます。

モービウスを追っていたストラウドとロドリゲスも、監視カメラの映像から、マイロの存在に気付きます。この二人の役割は今作ではあまり意味を持たないような・・・

密かにマルティーヌと接触したモービウスは、彼女の協力を得て血清の効果を消す薬の開発に着手し完成させます。でもそれを使うことはモービウスやマイロにとって“死”を意味するのね。マルティーヌは彼の覚悟を受け止めます。

マイロを訪ねたニコラスが襲われ、瀕死の状態でモービウスに連絡してきます。モービウスをニコラスに引き付けておいて、マイロはマルティーヌを襲います。モービウスが彼女のところに駆けつけた時、既に虫の息でしたが、「私の死を無駄にしないで」と言います。その意を汲んだモービウスは彼女の血を飲んで能力を最大限に引き出してマイロと対峙します。大量殺戮で圧倒的な力を得たマイロはモービウスを追い詰めますが、大量の吸血コウモリを味方にしたモービウスは、マイロの胸に薬を打ちこんで彼を倒し、警察官の包囲網を気流に乗って吸血コウモリと空へ消えていきました。

ミッドクレジットには、ヴァルチャーことエイドリアン・トゥームス(マイケル・キートン):『スパイダーマン: ホームカミング』のヴィランが登場します。・・・って誰?な自分  さらに釈放された彼がモービウスにスパイダーマンに対して共闘を持ち掛けるシーンが出てきますが、本作ではマイロがヴィランでモービウスは“善人”の立ち位置なのに辻褄合わないような・・ 何か新作へ繋がるようですが、マーベルコミック複雑過ぎてわからん

調べてみたら、ドクター・オクトパスにより結成された犯罪集団「シニスター・シックス」への布石らしい。メンバーはヴァルチャー、エレクトロ、サンドマン、ミステリオ、ヴェノム他?


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

元彼の遺言状

2022年08月14日 | 

新川帆立(著) 宝島社文庫

「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」奇妙な遺言状を残して、大手製薬会社の御曹司・森川栄治が亡くなった。学生時代に彼と三ヶ月だけ交際していた弁護士の剣持麗子は、犯人候補に名乗り出た栄治の友人の代理人として、森川家主催の「犯人選考会」に参加することとなった。数百億円ともいわれる遺産の分け前を獲得すべく、麗子は自らの依頼人を犯人に仕立て上げようと奔走する。
他方で、彼女は元カノの一人としても軽井沢の屋敷を譲り受けることになっていた。ところが、軽井沢を訪れて手続きを行ったその晩、くだんの遺書が保管されていた金庫が盗まれ、栄治の顧問弁護士であった町弁が何者かによって殺害されてしまう……。

 

宝島社主催「第19回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作で、TVドラマ化もされています。

放映当時、綾瀬はるか演じるヒロインのあまりの傲慢さに嫌気がさして1~2回見てリタイヤしてしまった記憶が

本の方も、初めのうち麗子の唯我独尊なタカビーキャラに閉口し、逆にドラマで演じたキャラは小説に忠実だったんだと納得するほどでしたが、読み進めていくうちに、ヒロインがただの金の亡者ではなく、本当は優しい女性なのだとわかってきて、印象が好転します。

お金大好きな敏腕弁護士の麗子は、恋人の信夫のプロポーズを婚約指輪が安過ぎるという理由で断ります。彼の収入に見合う値段なのですが、自分はもっと価値あると考える麗子は侮辱と受け取るんですね。 なんというタカビー女!!更に、山田川村・津々井弁護士事務所のボス・津々井にボーナスをカットされたことに腹を立て「辞めてやる!」と飛び出します。お金が欲しいという気持ちに素直過ぎてむしろあっぱれかも。

暇を持て余していた麗子に、篠田から連絡があり、元カレの栄治が亡くなったこと、彼が森川製薬の御曹司=大金持ちなこと。「財産は自分を殺した犯人に譲る。死後3カ月以内に犯人が特定できない時は遺産は全て国庫に帰属させる。」という奇妙な遺言状を残していたことを知らされます。栄治の死因はインフルエンザということでしたが、篠田は自分が感染させたと犯人に名乗り出ようと麗子に相談してきたのです。麗子は自分の取り分が150億になると計算して引き受けることにします。

犯人かどうかを判断するのは、栄治の父の森川金治社長と伯父の定之専務、平井副社長であり、「犯人選考会」とは名ばかりの「新株主選考会」だと推察した麗子は三者に利益のあるプランを提示して社長・副社長の賛同を得て一次選考を通過します。専務の娘で栄治の従妹の森川紗英に元カノなのに代理人になって金儲けしようとしてると非難された麗子ですが、彼女に近づくことで唯一態度を保留していた専務を懐柔できると考え、元カノの遺産分与の会に参加することにします。軽井沢の別荘に集まった元カノは、栄治付きの看護師の朝陽と栄治から彼のいとこの拓未に乗り換えて結婚した雪乃と麗子の3人だけで、他の元カノは連絡がつかなかったと栄治の顧問弁護士・村山に告げられます。
村山の事務所に同行した麗子ですが、事務所は荒らされ遺言書の入っていた金庫が盗まれていました。そこに金治が津々井を伴って現れ遺言書の無効を主張してきます。この時麗子は津々井のプライドを傷つけて怒らせてしまいます。

金庫を盗んだ犯人や栄治の死の真相は、麗子にとってはどうで良くて、依頼人の利益を優先させようとしますが、篠田はお金が欲しいのではなく、友人の死の真相が知りたいから依頼したのだと言って依頼人の気持ちがわからないと麗子をクビにします。篠田の思わぬ反応にショックを受ける麗子でしたが、次第に自分も事件の真相を知りたいと思うようになり調査を始めるんですね。

関わる人物の誰もが怪しく見える中、朝陽や雪乃と協力し核心に近づいていく麗子。散りばめられた伏線が徐々に回収されていき、真犯人が浮かび上がる展開が鮮やかです。

栄治の兄の富治が語るポトラッチ論(贈り物を何度もし合って、最終的に返せない贈り物で相手をつぶす方法)も推理を混乱させる役割を担っていました。富治は拓未を疑っていて、麗子の兄の雅俊との接点も出てきます。凡庸だと思っていた兄やその婚約者から聞かされる自分でも忘れていた過去の話に、読む側も彼女の性質の本質について再考していくことになります。

栄治の叔父の銀治に依頼され、川に棄てられた金庫の回収に力を貸した麗子は、金庫のロックも村山の死に際の言葉から類推して解除します。遺言書と一緒に入っていた銀治の「書類」がヒントとなって彼女は真犯人を特定しますが、命を狙われた紗英を助けるために彼女らしからぬ行動に出るんですね。一文の得にもならないのに彼女を駆り立てたものは「人の役に立ちたい」という思いだったのかも。警察の厄介になった麗子を保釈してくれたのは、津々井でした。彼女の言葉に怒りはしたが、そのおかげで妻の病気に気付けたと津々井は感謝していたのでした。

栄治の死は毒殺と判明し、捕まった犯人に遺産は渡らずに、遺留分を除く財産は国庫に帰属することになります。指定暴力団絡みの会社の株式を買った拓海のミスをカバーし、彼が推し進めているマッスルマスターゼットを無事に商品化するために、栄治・拓未・村山が考えた奇想天外な遺言状だったというわけです。彼が殺されたのは、善意と思ってしようとしたことが犯人にとっては何としても隠したいことだったから。いわば自業自得で、犯人の心情に同情の余地ありですが、二人も殺しては・・ねぇ。一方で平井副社長が銀治の息子だという事実も判明し、森川一族も何だか丸く収まってめでたしな結末です。

麗子はその鋭敏な頭脳と観察力で他人を冷徹に評価しますが、決して冷たい人間ではないようです。例え見下した相手でも、その美点は正しく認めています。栄治のことは忘れていた麗子ですが、その遺言に関わることになってから彼の人となりを思い出し心が温かく丸くなっていくようにも感じられました。彼女は元の事務所に戻ることになり、恋人にも連絡してみようかと考えます。それにしても栄治は女好きなのにどこか憎めない人の好さがにじみ出ていました。

麗子が主人公のお話には続きがあるようなのでいずれ読んでみようかな。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

TANG タング

2022年08月12日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2022年8月11日公開 115分 G

ゲーム三昧で妻に家を追い出されたダメ男、健(二宮和也)。わけあって無色で人生に迷子中。ある日、家の庭に突然現れたのは記憶をなくした迷子のロボット、タング。初めは時代遅れの旧式のタングを捨てようとする健だったが、タングが失った記憶には、世界を変えるある秘密が隠されていた。謎の追手が迫る中、大人とロボット、ふたりの迷子が大冒険の先に見つけた人生の宝物とは?ある理由から、自分の夢も、妻・絵美(満島ひかり)との未来も諦め、人生を一歩も進めずにいた健だったが、記憶も感情もないはずのタングが「ともだち」や「優しい気持ち」を 少しずつ学習する健気な姿をみるうちに、次第に昔の自分を取り戻していく。ポンコツ同士の2人だけど、キミと一緒なら「きっと、大丈夫」。(公式HPより)

 

イギリスの小説「ロボット・イン・ザ・ガーデン」の映画化で、人生に迷うダメ男と記憶喪失のロボットが繰り広げる冒険を、日本風にアレンジして描かれています。・・・が、ストーリーとしてはイマイチだったかな。

でも、それを補って余りあるタングの可愛さとニノ演じる健のダメっぷりが良かったです。

少し先の未来、ドローンが飛び回り、AIロボットたちが日常のあらゆる場面でアシストしている日本が舞台です。

優秀な弁護士の妻に依存して毎日ダラダラ過ごしているダメ亭主の健が、庭に迷い込んできたタングと出会います。捨てようとしてもタングは勝手についてきちゃって、妻に愛想を尽かされた健とともに家を追い出されてしまいます。実は健は研修医時代、運ばれてきた危篤状態の父を前にパニックに陥って何も選択できなかったことで、“選択する”こと自体がトラウマになり医者への道も諦めかけていることが後に明かされます。だからといって、料理もゴミ出しも家のことは何一つしないというのはやはり「ポンコツ」だよな

タングの部品のメーカーを調べた健は、旧式と新型の交換キャンペーン中と知って、妻に新型をプレゼントしたら機嫌を直してくれるかもと本社がある福岡に向かいます。(飛行機に乗ったりホテルに泊まるお金(カード?)は持っているのね)ポンコツ同士の2人旅の始まりです。機内では、けなされて怒って蒸気を出したり、健の言葉を録音して勝手に再生したり、窓の外の眺めやTV画面にいちいち興味を示したり、まるで幼い子どもを見ているようです。本社の受付で、タングは対象品ではないと交換を断られてしまいますが、林原(京本大我)から彼が何か特別なロボットだと言われます。オイル漏れを起こしているタングの応急処置をしてくれた林原は、治すために中国・深せんにいるロボット学者の大槻(奈緒)を訪ねるよう助言します。そこまでする気がなかった健ですが、拾った100円硬貨を「おたから」と大事にしていたタングが、そのお金で健が飲みたがっていた珈琲を買って渡したその気持ちに打たれて中国に行っちゃうんですね。(ほとんど零れて一口しか残っていない珈琲というのがポイント高いです)タングは飛行機の中で観た「ワンフォーオールオールフォーワン」を学習していました。

大槻と会えた健ですが、2人を追ってきた謎の二人組(かまいたち)にまるで餌に引き寄せられた動物のようにタングが捕まってしまいます。タングは好奇心旺盛な人間で言えば幼稚園児のようなキャラなので、気を惹かれたものを追いかけてあっさり檻の中に入っちゃいます

タングを追いかけて倉庫までやってきた健ですが、そこへ妻から別れの電話が!夫婦の危機なのにタング優先なのね 

二人組と加藤(小手伸也)という謎の男から何とか逃げ出した健とタング。そこにタングの持ち主のロボット工学の第一人者・馬場(武田鉄矢)から電話がかかってきます。(何故番号を知ってる?と疑問に思わないのか)彼はタングを「ジェームズ」と呼び持ち主だと名乗ります。宮古島の馬場の家にタングを連れて行った健ですが、タングは残るのを嫌がり健にしがみつきます。それでも置いて出た健は、帰る途中で加藤と会い、彼から馬場の正体を聞きます。以前同じ研究所のプロジェクトチームだった馬場と加藤。タングは沢山のアンドロイドの中の1体でしたが、銃撃訓練で恐怖心が芽生えて暴走しました。パニックに陥った彼からチップを取り出して研究所を逃げ出した馬場は、そのチップを使って意志を持って成長するアンドロイドを作り軍事利用しようとしていたのです。

急いで馬場の家へ引き返した健は、タングからチップを取り出そうとしていた馬場と対峙します。ロックされた地下室で戦いになりますが何とか勝利し、タングを連れ帰ろうとしますが、事故でタングが壊れて動かなくなります。加藤の指示で配線を直しますが、入れる位置を間違えるとメモリーも失われ壊れてしまうと言われ、動揺する健。でも勇気を振り絞り選択した結果タングは生き返ります。(いや、外す前に場所確かめるでしょって話ですが

「タング」としての記憶を失ったかに見えたけれど、チップの学習能力のせいか馬場の所を出てからの記憶が蘇るタング。宮古島からどうやって?という疑問がこの過去の記憶シーンで解けます。トラックの文字がかすれて一部消えていたのが「TANG」の名前の由来だったのね

「タング健大好き」の言葉に「俺も大好きだよ」とタングを抱きしめる健 馬場は逮捕されますが、不敵な言葉を残します。歪んだ正義感の科学者ってホント質悪い!!

加藤から、タングの所有権は会社にあるけれど、タングの様子をレポートし続けてくれるなら一緒にいて良いと言われます。
タングと帰宅すると絵美が出て行こうとするところで、何も言えない健を見てタングが録音機能を使って健の本音を再生します。更にタングは絵美から心臓の音が2つ聞こえると言います。絵美が義妹の桜子(市川実日子)と会話するエピソードや、別れを告げた絵美が二人の出会いを振り返るシーンの中に「妊娠」の伏線もありましたね 二人が初めて出会った時のシャンパンのコルクが素敵な小道具になっていました。

エンドロールでその後の画(桜子と彼女の子供たちとのクリパ、絵美の出産、一家の家族写真)が流れます。

VFXは「白組」が担当していて、ちょっと先の未来感を華やかに表現していました。

身長84cm、体重30kgの設定は幼児を連想させ、レトロな外見も不思議な安心感を与えてくれます。

怒るとプシューっと湯気が出るところは予告でも登場していますが、それを利用して逃げるシーンもありました。

都合の悪いことを言われると休止モードで寝たふりをしたり、「おたから」を腹の中に隠していたり、興味を持つとふらふら寄って行ったり、タングの行動はまさに幼い子供そのもので、ロボットということを忘れさせてくれます。大人はもちろん、タングの様子を楽しむという点ではファミリー向けでもあります。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アダムス・ファミリー2 アメリカ横断旅行!

2022年08月11日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2022年1月28日公開 アメリカ 93分 G

長女のウェンズデー(クロエ・グレース・モレッツ:二階堂ふみ)が思春期を迎え、家族の食卓に顔を見せないことが増えたことから、家族の絆を深めようと考えたゴメズ(オスカー・アイザック:生瀬勝久)は、家族全員をキャンピングカーでのドライブ旅行に連れ出す。さまざまな騒動を巻き起こしながら、ナイアガラの滝、マイアミビーチ、グランドキャニオンと名所をめぐる旅を続けるアダムス家。しかし、そんな彼らの後を、怪しい男たちが追いかけてきていた。(映画.comより)

 

お化け一家のアダムス家が巻き起こす騒動を描いたチャールズ・アダムスのコミックをアニメーション映画化した「アダムス・ファミリー」の第2弾です。

丘の上にある洋館に住むアダムス一家。不幸とか邪悪、忌み、不気味大好きなお化け一家の家長はゴメズで、妻のモーティシア(シャーリーズ・セロン:杏)と娘のウェンズデー、息子のパグズリー(ジャヴォン・ワナ・ウォルトン:堀江瞬)、それから祖母(ベット・ミドラー:京田尚子)、伯父のフェスター(ニック・クロール:ロバート秋山)、執事のラーチ(コンラッド・ヴァーノン:大塚明夫)も大事な家族です。

科学者のサイラス・ストレンジ(ビル・ヘイダー:森川智之)が開催する夏休みの自由研究発表会で、ウェンズデーはフェスターにペットのタコ・ソクラテスのエキスを注入して知能を上げる実験をして優勝を狙いますが、「全員優勝」と言われ腹を立てます。でもストレンジは彼女の研究に目を付けます。

ゴメスとハグするのを嫌がり夕食の席に着こうとしないウェンズデーに悩むゴメスは、家族の絆を深めようとアメリカ横断旅行の計画を立てキャンピングカーでの家族旅行を思い立ちます。最初の目的地は魔女狩りのセイラムで、最終目的地はデスバレーです。

出発直前、弁護士のムステラ(ウォーレス・ショーン:多田野曜平)が現れて、ウェンズデーが取り違えられた子供なのでDNAのサンプルが欲しいと言い出します。ゴメスは取り合わず追い返しますが、ムステラはストレンジの指示で手下のポンゴ(スヌープ・ドッグ)と、アダムス一家を追いかけてきます。

ハンドに運転させ、セイラムを目指して出発した一家ですが、フェスターが道中にあった看板を見てナイアガラの滝に行きたいと行き先を変更します。ナイアガラの滝で、フェスターにナンパ術を伝授されたパグズリーですが、女の子に全く相手にされません。それを見たウェンズデーは操り人形でパグズリーを踊らせ注目を集めますが、最後に人形を滝に落とします。ムステラが追ってきていると知ったゴメスは樽を使って尾行をまきます。フェスターの左手はタコの手に変わってきます。プロポーズをするカップルが、ここだけではなく先々で一家の騒動に巻き込まれる小ネタも仕込まれていました。最後にプロポーズを受けてたけどね

一方、留守番のバァバは屋敷を貸してパーティーで一儲け中です。

スリーピー・ホロウで、焚き火を囲みながら、フェスターの昔話(生まれたウェンズデーを病院に見に行って無自覚にひと騒動起こした)を始めて聞いたゴメズとモーティシアはムステラの話が本当かもと心配になります。ウェンズデーも自分が実の子じゃないかもしれないと思い始めます。

マイアミでゴメズの従兄弟のカズンを呼んで一緒に旅することにした一家は、サンアントニオに向かいます。〝アラモ〟(地名ではなく「アラモーテル」)でムステラに見つかりそうになって何とか逃げだした一家は、グランドキャニオンで渓谷の景色を楽しみます。身体がどんどんタコ化するフェスターですが、皆に打ち明けられずにいます。カズンを迎えにきたジェット機は「トップガン」の1シーンみたい こういう小ネタがあちこちに仕込まれているのも楽しいです。ウェンズデーが「ビリー・アイリッシュによろしく」と言ったことからカズンはミュージシャンのようです。颯爽とジェット機に乗り込むカズンを見て、パグズリーは彼にモテる方法を聞けば良かったと思います。

モーティシアはウェンズデーに、アダムス家の女性に代々伝わるネックレスを渡します。でもウェンズデーは自分が貰っていいのか悩んで、ムステラを捕まえて問い詰め、真実を求めてサウサリートのストレンジの屋敷を訪ねていきます。ウェンズデーの置手紙をを読んだゴメズたちは、彼女を取り戻そうとサウサリートへ向かいます。心配して後をつけてきたラーチと一緒にストレンジの屋敷に向かう途中、暴走バイクの集団に乗せて行って欲しいと交渉する場面では、ラーチのピアノ演奏が一役かっていました。

ストレンジの屋敷に着くと、鳥のような妻のイングリッドと、豚のような娘のオフィーリアを紹介され、研究室に連れて行かれます。そこでDNA鑑定をすると親子関係が証明されます。そこへアダムス家がやってきますが、ストレンジを父だと信じているウェンズディを見てゴメズとモーティシアはショックを受けます。一晩泊まることになった一家。パグズリーはオフィーリアと意気投合しますが、豚の姿に戻った彼女にびっくり!

ストレンジは遺伝子を操作して動物を人間化させようとしていて、ウェンズデーの研究データを欲していたと話し、ゴメズたちを被験者にしようとします。彼の本当の狙いは、動物の特性を持った人間兵器を作って売り込むことでした。一家を助けるよう命じられたラーチの前にポンゴが立ち塞がりますが、同じ精神病棟仲間だった二人は、協力してストレンジを捕まえ、家族は助け出されます。

完成した薬を自らに打ったストレンジとタコ化したフェスターの戦いの末、ストレンジは敗れます。ウェンズデーはネックレスに入っている親族の血を使ってフェスターを元に戻します。ウェンズデーはゴメズとハグを交わし、アダムス家は帰路につきました。

屋敷では若者たちがパーティー中。一家も加わり、カズンもやってきてラップを披露します。

ゴメズの髪の毛でDNA鑑定をした時に親子でないと言う結果が出たと言ったウェンズデーに、ゴメズはかつらだとカミングアウトし疑問が解けました。ハグしようとするゴメズにウェンズデーは「こないだ一生分のハグをした」と拒みます。そこはやはり思春期の少女ってね

ゴメズは、今度は世界中を旅行して絆を深めようと考えましたとさ。

普通の家庭であっても、思春期の娘と父の悩みや、取り違えられたのではという不安や家族の絆といった問題は普遍のテーマ。個性を尊重するアダムズ一家の子育てや、子供への愛情に心があったかくなります。

一見フランケンみたいなラーチですが、愛情深くて見慣れると意外にハンサムだったり、姉に散々虐められているのにへこたれないパグズリーとか、冷静沈着だけど誰より家族を愛しているモーティシア、ハンドの人間くさい様子など、一家のキャラも馴染めば親しみが湧いてきますね。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

やめるな外科医 泣くな研修医 4

2022年08月10日 | 

中山祐次郎(著) 幻冬舎文庫

雨野隆治は三十歳の外科医。受け持ち患者が増え、大きな手術も任されるようになった。友人の癌患者・向日葵は相変わらず明るく隆治を振り回すが、病状が進行しているのは明らかだった。ある夜、難しい手術を終えて後輩と飲みに行った隆治に、病院から緊急連絡が入り…。現役外科医が生と死の現場を圧倒的リアリティで描く人気シリーズ第四弾。(「BOOK」データベースより)

 

隆治の成長と比例するように、手術の描写も具体的で詳細になっていっているような。外科医が手術中に何を考えどんな会話をしているのかなども興味深く読みました。いや、術中に別のこと考えるってどうよ!とも思うんだけど 診断書や紹介状などのデスクワーク(書類仕事)についても、けっこう大変なんだなぁとか

バイト先の病院での事務長と看護婦長のエピソードはイマイチ着地点がわからず??でしたが、本編の中心は勤務先の牛の町病院で受け持った患者の話です。

当直の夜に二台の救急車が同時に到着してしまいます。どちらも高齢の女性で、ベテラン看護師の吉川が、「79歳の普通そうな上田さん、78歳の下品な下澤さん」と見分けますが、その印象通りに、上田さんは身なりもきちんとして応対も丁寧ですが、見た目も派手な下澤さんは態度も横柄です。二人ともに腸閉塞の診断で入院することになります。

その翌日、久しぶりに恋人のはるかとレストランで食事をしますが、彼女の誕生日を忘れていたことを指摘され気まずい中、病院からの呼び出しがかかり、彼女を置いて病院に戻ります。仕事とプライベート、どっちが大事と言うのはよくあるパターンですが、隆治とはるかの間に生まれた溝はゆっくり深くなっていき、『走れ外科医』で登場した癌患者の向日葵という若い女性と一緒にいたところを目撃されたことで決定的になります。土砂降りの上野公園での別れの場面は、はるかの怒りと悲しみを印象付けます。結局、隆治のはるかに対する気持ちは本物じゃなかったってことで、それも何だかな~~

大学時代の同級生の遠藤が消化器内科に入ってきて、新たに隆治の周囲の人間関係が動いていきます。

手術の腕に自信を覚え始めた矢先、星野という患者の手術で隆治が結紮した糸が緩んで出血を起こし再手術となります。「患者を殺す気か」と岩井に叱責され外科医を続けることに迷いを生じた隆治ですが、実家で母が歌う出身地の奄美大島のシマ唄を聞いて再起します。

若い頃に不倫をして産んだ我が子を死なせてしまったことに罪悪感を抱え、手術を拒否して孤独に生きることを選んで死んでいった上田さん、壊れた家庭で孤独のまま「治してよ!」と泣きながら死んでいった下澤さん。誰からも見舞われず独りきりで死んでいった二人の話は辛い。

葵とは受け持ち患者ではないこともあり、医者と患者ではなく友人として関わっていく隆治と凛子ですが、それでもちょっと深くかかわり過ぎているような。 葵の病状が重くなっていくのを会話から感じ取って余命を察するなど、医者としての知識が逆に隆治を苦しめます。葵は薄々は気付いていただろうけれど、それまで元気に動けていたこともあり死を自覚したのは死の数か月前からのように思えます。身体の異変を受け止めきれず死から助けを求めるように隆治に電話をしていたのかな?彼女の葬儀の後、凛子を誘って献杯しながら「辛い、外科医は辛い。でも続けるんだ」と改めて思う隆治なのでした。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする