杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

三谷幸喜 大空港2013

2015年02月27日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年5月2日公開 100分

佐賀での親族の葬儀を終えて東京に戻る途中だった田野倉一家は、天候不良で羽田空港へ着陸できず長野の松本空港に降り立つ。上司の村木(甲本雅裕)からのプロポーズをどう断ろうかと悩んでいた空港職員の大河内千草(竹内結子)が乗客のアテンドをすることになり、ロビーに残るという弁護士の守男(香川照之)の義父・清正(綾田俊樹)を除く田野倉家をレストランに案内するが・・・。


三谷幸喜脚本・演出によるテレビドラマで、空港を舞台にワンシーン・ワンカットで撮り上げたシチュエーションコメディーです。いかにも三谷作品らしいテンポの良いドタバタ感を楽しみながら最後はちゃんと丸く収まるのがいいね

守男は知らぬ間に付いてきていた不倫相手の百合子(戸田恵梨香)を見て焦り、家族に隠れて大河内に部屋を用意させます。一方守男の妻・美代子(神野三鈴)は偶然会ったパイロット姿の国木田(オダギリジョー)に幼馴染だと言われ、憧れの先輩だったと告白されて有頂天。年の離れた恋人の犬山:ポチ君( 梶原善)を家族に紹介しようと機会を伺う長女(石橋杏奈)に、やたらと時間を気にし、携帯で物騒な会話をする長男(池松壮亮)。自称ルポライターの美代子の兄・蔵之介(生瀬勝久)は、新たに始める事業の資金援助を守男に無心しようと画策します。挙句に亡き妻の遺骨を抱えた祖父・清正までもが、隠していた秘密を打ち明けます。

一家の様々な秘密を知ってしまった大河内(というより自ら首を突っ込んでいった感がありますが)は、あろうことかその秘密を教えて引っ掻き回す始末。こんな空港職員ありえね~~好奇心旺盛でどこにでも首を突っ込むヒロインを竹内さんが好演してます。

「ラジオの時間」のヒロインを思わせる気弱で優しげな美代子が、実は詐欺師の国木田の正体に気付いていながら騙された振りをしていたのは、騒々しい家族の面倒を見る現実からの逃避だったのね。敢えてお金を渡そうとしたのも束の間の夢の代金と思ったからなのかな?

二転三転した挙句、その日のうちに飛行機が飛ばないことが決定し、田野倉家の混乱は最高潮に。そんな中で、ニートなきちゃない中年男に見えたポチ君の正体がIT成金と発覚。愛があれば歳の差なんてとは言いますが、お金持ちならハードルも低くなるってもんよ

物騒な会話は劇団の試験のための練習だったという長男を伯父である蔵之介が応援したり、孫娘の恋を祖父が応援したり。その祖父が実はゲイだったというのもぶっとんでいるけれど、何となく認めちゃうのも家族だからこそですね

結局ポチ君のツテでヘリをチャーターし一家は東京に戻っていきます。(長女とポチ君はリムジンで帰るの)一件落着・・・ですが・・そもそも他の乗客はどうしたんだ??

そして何だか家族って良いなぁと思い始めた大河内がプロポーズを受けようと思った矢先・・・空港案内係の彼女の友人(青木さやか)が村木にポロポーズされ受けたと満面の笑み。誰でもいいんかい!!という大河内の叫びがオチかい~~

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でーれーガールズ

2015年02月23日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
205年2月21日公開 118分

1980年。東京から岡山に転校してきた佐々岡鮎子(優希美青)は標準語をからかわれ、クラスに馴染めずにいた。なんとかクラスの輪に溶け込もうと耳に残った『ものすごい』を指す『でーれー』という岡山弁を何かにつけ使うが、『でーれー佐々岡』というあだ名をつけられてしまう。鮎子はギターのうまい大学生のヒデホくん(矢野聖人)を心の支えに、彼と自分との恋愛漫画を描いていたところ、クラスの中でも目立ち鮎子も憧れていた秋本武美(足立梨花)が読んでしまう。武美は鮎子の漫画を面白いと言い、続きを読みたがった。それ以来二人は親しくなっていくが、クリスマスイブの日にあることをきっかけに仲違いしてしまう。仲直りすることができないまま、それぞれの道を歩んでいく二人。それから30年後、漫画家になった鮎子(白羽ゆり)は母校での講演会のため岡山に戻ってきた。そこで武美(安蘭けい)と再会。二人の思いが浮かび上がっていく……。(Movie Walkerより)


原田マハの同名小説の映画化です。
ランチの約束の前の空き時間を埋めるために選んだのですが・・・意外に心の琴線に触れる作品でした1980年代の鮎子と武美を演じた二人の初々しい若さが眩しかった~岡山には全く縁がないのですが、市電や城の石垣、商店街といった何気ない日常の風景があたかも自分の青春時代とリンクしてきて妙に懐かしい感覚になりました。山口百恵さんの楽曲が使われているのも同世代には嬉しい限り

1980年と現代が交互に映し出されて行きます。
大人しく目立たない鮎子にバンドをしているヒデホ君のような恋人がいるなんてちょっと不思議と思っていたら・・・そういうわけでしたかな種明かしがあります。わかってみれば、なるほど多感で想像力豊かな少女にはありがちなこと。大人の今なら早く本当のこと言っちゃえ~って思うけれど、それができないから辛いのよねぇ

武美の方も鮎子に自分の病気のことを隠していました。彼女がヒデホ君に夢中になったのは、鮎子を通じて自分も希望が欲しかったからかな。あまりにもストレート過ぎる武美の想いが鮎子を戸惑わせます。やがて鮎子に現実のBFが出来たことで、クリスマスイブの日に二人は仲違いをしてしまうのです。

BFの鈴木淳を演じているのが須賀健太君子役の頃は腕白坊主のキャラを演じることが多かったけれど、今作では初々しい高校生役が似合ってたよ
二人の出会いは、鮎子が駅の通路で針金細工を作っている男(甲本雅裕)に頼まれて店番をしたことがきっかけです。針金を器用に折り曲げてローマ字の名前を作るアクセサリーが流行ったのは1970年代だった気もするけれど百恵ちゃんの歌もですが、このエピソードが今回一番のツボでした

漫画家として成功した鮎子を母校の創立記念日の講演会に呼ぶために尽力したのは武美でした。彼女が鮎子を親友と思う気持ちはずっと変わらなかったのね。(それなら再会の機会はいくらでもあっただろうに・・と思ってしまうのですが)彼女が広島に転校したのは手術を受けるためだった筈ですが、完治したわけでなかったということでしょうか母校に教師として戻り、愛する人にも巡り合った武美ですが、彼女にとって一番輝いていた「季節」が鮎子と共に過ごした高校一年の時だったのでしょう。

二人にとって忘れられない場所である橋の上で、後輩にあたる女子高生に声をかける鮎子のエピソードはラストに続くための伏線。ちょっとあざとさは残るけど、ま、いいんじゃない

久しぶりに高校時代の友人に会いたくなっちゃったよ

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パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト

2015年02月21日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年7月11日公開 ドイツ 122分

1830年、イタリア。敏腕マネージャー、ウルバーニ(ジャレッド・ハリス)の働きで富と名声を手にしたニコラ・パガニーニ(デイヴィッド・ギャレット)は、私生活では女や酒、ギャンブルにまみれた堕落した毎日を送っていた。ある日、指揮者ワトソン(クリスチャン・マッケイ)の尽力でロンドン公演を行うことになったパガニーニは、そこでワトソンの娘シャーロット(アンドレア・デック)と出会う。美しい声を持つシャーロットと音楽を通して心をかよわせ、初めて本当の恋を知るパガニーニだったが……。


奇しくも二本続けてドイツ映画を鑑賞。芸術家が主人公なのも一緒。その卓越した超絶技巧ゆえに、悪魔に魂を売り渡したのではと揶揄された19世紀イタリアの天才バイオリニスト、ニコロ・パガニーニのスキャンダラスな人生の映画化です。パガニーニの黒ずくめの衣装もその長身に似合っていて素敵でした

シャーロットと出会う前のパガニーニはまさに我儘な芸術家そのものの生き方をしています。
女と酒に溺れた生活は荒んでいて、病気治療のためのアヘンと水銀が彼の身体を蝕みますが、ヴァイオリニストとしての技術は卓越していて、彼の演奏シーンを観て(聴いて)いると、素行の悪さも全て帳消しにしたくなる魅力に溢れていて、その音楽の虜になってしまうの。
左手でのピチカートや弓を弦の上で跳ねさせるスタッカートなどの超絶技巧を駆使する彼の音楽は、既成概念を打壊す強烈なパワーを秘めていて、コンサートでは若い娘が失神する様子などはまさにロック会場パガニーニを演じたドイツ人ヴァイオリニストのデイヴィッド・ギャレットが、名器ストラディバリウスで名曲の数々を奏でています。

パガニーニは息子を溺愛しています。息子と離れたくないため一度は承諾したロンドン公演も引き伸ばし、彼を招聘するため大金を工面したシャーロットの父は破産に追い込まれますが、それでもパガニーニの公演を何としても成功させようとするの。ウルバーニに引きずられるように連れて来られたパガニーニは不機嫌。そんな彼の世話をさせられるシャーロットも彼を好きになれなかったのですが、その演奏を聴いて才能に驚嘆。パガニーニの方も彼女の歌声の美しさに魅せられます。

彼に懐疑的なタイムズ紙の記者が、酒場の喧嘩を仲裁した際にパガニーニの演奏を聴いてその虜になってしまう気持ちもわかるなぁ~。弦が次々切れていき、最後はG線一本で弾くエピソードはここで使われていました。この時代に「働く婦人」は強くなければ生き残れなかったのかもですが、でもこの記者、根本的に嫌な女だ

ようやくこぎつけた公演の幕が上がっても現れないパガニーニにハラハラさせられますが、あの登場は実に効果的な演出ですそしてその演奏も心を鷲掴みにされる素晴らしいものでした。

公演は大成功、シャーロットとの出会いが彼を変えようやく心の安息を得たかに見えましたが、ウルバーニの姦計によりこの恋は実らずに終わります。パガニーニの才能を見出し、世に出したのはウルバーニの手腕ですが、二人の関係はファウストとメフィストに重なって見えました。ウルバーニにとってはパガニーニの音楽家としての力を引き上げることが何よりの喜びであり、その邪魔をするものは排除して当然だったのね。

シャーロットが去った後も彼は何度も手紙を送っています。しかしウルバーニを切リ棄てても彼女が彼の元に戻ることはありませんでした。死の間際に告解を拒んだ彼は教会墓地への埋葬を拒否されたそうです。いかにも彼らしい逸話といえるでしょう。

実際のパガニーニが何を思いどう生きたかは知らないのですが、映画でその孤独の一旦を垣間見た気分になりました。できれば劇場で鑑賞したかった作品です。

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ルートヴィヒ

2015年02月20日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年12月21日公開 ドイツ 140分

ドイツ連邦の統一をめぐり激しい主導権争いが繰り広げられていた19世紀半ば。類稀な美貌を持つバイエルン(現在のドイツ南部)の皇太子ルートヴィヒ(ザビン・タンブレア)は、15歳の時に観た歌劇『ローエングリン』に感銘を受ける。白鳥の騎士“ローエングリン”に憧れて作曲者ワーグナー(エドガー・ゼルゲ)を崇拝するようになった彼は、、政治や権力には無関心で芸術だけに熱中していた。しかし父王(アクセル・ミルベルク)の急死により心の準備が整わないまま18歳で王座に就く。オーストリアとプロイセンの衝突で戦争が避けられない状況となる中でも、「国民の安全に必要なのは、詩と音楽の軌跡だ」と主張し、ワーグナーを宮廷に招き独自の理想を掲げるが……。


ルキノ・ビスコンティ監督の「ルートヴィヒ 神々の黄昏」が有名ですが、今作も140分の歴史大作です。ビスコンティほどではないかもしれませんが、当時の優雅で華麗な宮廷衣装や生活が覗えてそれだけでも目の保養になります

ヨーロッパ一と讃えられた美貌の王ということですが、(確かに彫りの深い印象的な顔立ちではあります。)王を演じる俳優の美的基準については好みが分かれるかも高い美意識の持ち主だったようで、髪をカールさせるエピソードが挿入されています

父王から質素倹約を厳しく躾けられ、王になるべく教育されてきた彼ですが、その性格はかなり内向的で暴力嫌いの芸術家タイプだったようです。戦争からも政治からも逃げたい彼は実際人生の大半を隠遁に費やすことになったようです。平和な世なら、世継ぎでなくただの貴族の息子だったら、そういう生き方も許されたのかもしれないけれど、時代が悪かったね

それでも即位した当初は彼なりに理想に燃えて崇拝するワーグナーを宮廷に迎え入れ、音楽と芸術で平和を築こうとします。親戚関係にあるオーストリア皇妃エリザベート(ハンナー・ヘルツシュプルング)の相談に乗ったり、ナポレオン3世(クリストフ・マラヴォワ)と同盟を結んだり、彼なりに戦争回避に向けた外交を試みますが、首相のプフォルテン男爵(ペーター・シモニスチェク)や古老の政治家ホルンシュタイン伯(ギデオン・ブルクハルト)らはワーグナーを政治的危険分子と見なし毛嫌いしており、武力で国を守ろうとしてルートヴィヒと度々衝突します。実際、芸術で戦争は回避できず、後手に回る王の決断で多くの命が失われてしまいます。

エリザベートの妹のゾフィ(ポーラ・ビール)とは芸術を通して親交を深め婚約しますが、彼女に抱いたのは妹のような感情で愛とは違いました。その一方で厩舎長のリヒャルト(フリードリヒ・ミュッケ)への恋愛感情(プラトニックに終わりますが)に気付いてしまうの。二人の婚約の解消は私事に留まらず、プロイセン首相ビスマルク(ベルンド・ビルクハーン)のドイツ統一を許す一因にもなりました。

初めは恭しく仕えていたワーグナーは次第に権力を求め、王にも自分の意見を押し付けるようになっていきますが、それはまるで父親が息子に命令するかのような疑似父子関係に見えました。実父である先代の王に押さえつけられ頭が上がらなかった過去がリンクしていきます。結局王はワーグナーと袂を分かつことになります。戦争に負けてプロイセンに併合されることに憤る弟のオットー(トム・シリング)は精神を病んでしまいます。こうした現実に失望し、自分の無力を責める王は以後政治から身を遠ざけ自分の「夢」の世界でのみ生きるようになってしまうのです。

隠遁生活を始めた王は、幼い頃からの憧れだった中世風の城の建設に熱中します。有名なノイシュヴァンシュタイン城や、敬愛するルイ14世に倣ってヴェルサイユ宮殿を模したヘレンキームゼー城や、大トリアノン宮殿を模したリンダーホーフ城などを次々建てていきますが、それに伴う支出も莫大なものでした。

王の不在を埋めたのは彼の元書記官で後に首相になったヨハン・ルッツ(ユストゥス・フォン・ドホナーニ)です。武力補強を唱える父王時代からの重臣を退けて起用されたのですが、14年もの間、城作りに夢中になり国を顧みずに大金を浪費する王に見切りをつけた首相は、精神科医のフォン・グッデン教授(アウグスト・シュメールツァー)に王は精神病だと診断させて退位を謀るのです。この時ルートヴィヒ( ゼバスチャン・シッパー)は40歳。従僕や理髪師などごくわずかの側近にしか心を許さない孤独の王は収容された病院で主治医である教授の隙をついて逃げ出し入水しますそれが自殺だったのかは観る側の判断に任される終わり方でした。

即位の宣言の文句を戴冠式の衣装をまとって懸命に考えるシーンや、兵の出陣命令書にサインした後の苦悩のシーンが印象的。君主としての適正は欠いていたけれど、芸術家としての彼の業績は歴史に深く刻まれることになったのですね。

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ムーミン 南の海で楽しいバカンス

2015年02月20日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2015年2月13日公開 フィンランド 77分

ムーミン谷を離れて、南の海(地中海に面したリゾート地リビエラ)へとバカンスにやってきたムーミン一家。「歓迎」と書かれた家(実はホテル)で名前を尋ねられたムーミンパパは「ド・ムーミン」(ドは貴族の称号ね)と名乗り、ロイヤルスイートに泊まることになります。わくわくしていた気分もつかの間、フローレンとムーミンパパはすっかり貴族の豪華で贅沢な暮らしの虜になってしまいます。そんな二人に腹を立てたムーミンとムーミンママは、ホテルを出て乗ってきたボートで過ごすことに。せっかくのバカンスなのにムーミン一家はバラバラになってしまいます。果たしてムーミン谷にみんなで戻れるのでしょうか?


トーベ・ヤンソン原作の「ムーミン」は世界中で愛されるお話。原作コミックの初の映画化です。全編手書きによるアニメーションは、色味や音楽など、原作の雰囲気を尊重して製作されているそうです。

小さな子供の頃はムーミンはカバだと思っていました。だから映画の中でムーミンパパが「カバじゃない」と憤慨するシーンに思わずクスッと笑ってしまいました

今作では私の大好きなスナフキンの出番は少なく、フローレンのお兄さんも登場しません。貴族や富裕層が暮らすリビエラの町が舞台で、現地のプレイボーイに夢中になるフローレンや家族そっちのけで貴族との友情ごっこを楽しむムーミンパパと、あくまで素朴なムーミンやムーミンママの対照的な姿を通して、現代社会に通じる普遍の「大切なものは何か」という問いかけがされています。時には憎たらしいほどのミーのシニカルさも健在でした。ムーミンたちがのんびりと穏やかな性格なのに対してミーは意地が悪いくらいの皮肉屋で、昔から苦手なキャラです。でもそれはミーが真実を突きつけるキャラだから、煙たいのかも

おのぼりさんなムーミン一家、ホテルの支払は大丈夫?なんて心配は無用。フローレンって天才ギャンブラー?
ボヘミアンに憧れるムーミンパパの貴族の友人も、実際そんな生活は長く耐えられません。初めは物珍しさで好意的だった町の人たちも次第にムーミン一家をトラブルメーカーとして敬遠するようになります。
でもリビエラに来る途中で拾った「アレ」を置き土産に町に放って去ったムーミン一家はまさしく町の人にとっては厄災者じゃないの?それとも無邪気が邪気を制すと受け取ればいいのかしらん?

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ジャージー・ボーイズ

2015年02月18日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年9月27日公開 アメリカ 134分

ニュージャージー州の貧しい町で生まれ育ったフランキー・ヴァリ(ジョン・ロイド・ヤング)、ボブ・ゴーディオ(エリック・バーゲン)、ニック・マッシ(マイケル・ロメンダ)、トミー・デヴィート(ビンセント・ピアッツァ)。金もコネもない者が町から逃げ出すには、軍隊に入るかギャングになるしかなかったが、彼らには類まれな美声と曲作りの才能があった。4人は息の合った完璧なハーモニーを武器に、数々の曲をヒットさせ、スターダムを駆けあがっていく。だがその栄光の陰には裏切りや挫折、別離、家族との軋轢があった。


1960年代に大ブレイクしたポップスグループ「ザ・フォー・シーズンズ」と言われてもピンと来ないのですが、『シェリー』は知っています独特の高音が特徴的で当時日本でも大流行したのじゃないかな洋楽に疎い子供だった私でも耳が覚えていたくらいだものね。

同名の人気ブロードウェイミュージカルの映画化で、監督はクリント・イーストウッド。彼らの栄光と挫折の軌跡とリードボーカルのフランキー・ヴァリの代表曲『君の瞳に恋してる(Can't Take My Eyes Off You)』の誕生秘話が描かれます。映画の中では『シェリー』、『恋はヤセがまん』、『恋のハリキリ・ボーイ』、『悲しき朝焼け』、『悲しきラグ・ドール』、『バイ・バイ・ベイビー』、『愛はまぼろし』、『君の瞳に恋してる』の名曲が登場し、ファンにはたまらない作品なのではないかしら。(個人的には『シェリー』と『君の瞳に~』しか知らないのですが

不良少年だったトミー&ニック兄弟は酒屋泥棒などの前科も多数で刑務所を出たり入ったり(回転扉という表現が面白い)。フランキーが彼らと気が合ったのは、出口のない閉塞感を共に感じ、歌という共通の夢があったからかなフランキーの才能をいち早く見出したトミーは彼を庇い、その実力を開花させようと力を尽くします。町の顔役(マフィアのボス)ジップ・デカルロ(クリストファー・ウォーケン)もフランキーの声に惚れ込み彼らの後見役のような存在となります。

なかなか芽の出ない彼らですが、ボブ・ゴーディオの加入によりようやくレコードデビューの道が開けます。いくつものグループ名を経た彼らは、「フォー・シーズンズ」という名前でプロデューサーのボブ・クルー(マイク・ドイル)のもとでスタジオ・ミュージシャンとして一年間コーラスを務めた後、『シェリー』を発売、一躍有名人となるのです。
(ボーリング場で歌う仕事が、トニーの以前の悪事を理由にダメになった時、ふて腐れた彼らの前に浮かび上がった看板の文字でグループ名を決めたというエピソードも愉快)

ツアーで長期間家を空け、浮気もして家庭を顧みないフランキーに、妻メアリー(レネー・マリーノ)は酒やクスリに逃避し、年頃になった娘フランシーヌの反抗にも遭いますが、フランキーは家族を見捨てることはないの。家出した娘を探しだし、彼女の夢である歌手への道を応援しますが、やがて娘はクスリに溺れて亡くなってしまいます。それはトミーの借金を完済した直後の出来事でした。

フランキーはイタリア移民の子で、イタリア系といえば(一般的なイメージとして)家族や友人を何より大切にすることで知られてます。トミーが莫大な借金を作った時も彼を見捨てずメンバー皆でその借金を返済すると宣言するあたりにその特徴がよく現れていました。
トミーの借金の理由がグループを成功させるために使われたものが大半だったこともあるのでしょうね。この件がわかった時、ニックがグループを脱退するのですが、その理由に挙げたのがトミーの雑な性格。曰くホテルではいつもタオルを独り占めするとか(伏線としてエピソードに登場していました)でも本心は借金でもトミーの性格でも目立たない自分の立場でもなくて、故郷で家族と暮らしたかったからだとラストで答えています。

娘を失くして悲嘆の淵に沈んでいたフランキーを立ち直らせたのが『君の瞳に恋してる』を作って彼に渡したボブ(クルーが詩を、ゴーディオが曲を作った)です。
フランキーとボブは互いの才能を認め合い長年共に活動しています。

解散から四半世紀の時を経て白髪交じりになった4人が集まる場面では、あの日以来のトミーとフランキーが固く抱き合う姿が印象的で泣かせます。言葉は要らない世界がそこにありました
そして一本の街灯の下での4人のコーラスから始まるラストシーンは、舞台のアンコールのようなキャスト総出のダンス一瞬インド映画か?と思ったけれど、物語の〆に相応しい彼らの名曲に乗ってのシーンは上質なミュージカルを観ているかのようでした
クリストファー・ウォーケンってダンスも踊れるって初めて知りました(ジョニー繋がりで未だに「スリーピー・ホロウ」の首なし騎士のイメージが強い

観終ってもしばらく『シェリー』の歌声が耳から離れません

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万能鑑定士Q モナ・リザの瞳

2015年02月16日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年5月31日公開 119分

フランス・ルーヴル美術館が所蔵するレオナルド・ダ・ヴィンチの名画『モナ・リザ』が40年ぶりに日本へ来ることになる。『モナ・リザ』の警備強化を託されたルーヴル同美術館アジア圏代理人の朝比奈(村上弘明)は、卓越した鑑定眼と記憶力を持つ「万能鑑定士Q」の店主凛田莉子(綾瀬はるか)を学芸員候補として推挙する。渡仏してルーブル美術館で受けた採用テストに合格した莉子は、もう一人の合格者・流泉寺美沙(初音映莉子)と一緒に講師のブレ(ピエール・ドゥラドンシャン)らと日本で「モナ・リザ」についての合宿研修を受けるが、知識が深まるにつれ、謎の頭痛に襲われるようになる。最終試験で『モナ・リザ』の瞳の中にある文字を見た莉子は、今までもっていた鑑定能力を失い、店も止めて疾走してしまう。彼女を取材する雑誌編集者・小笠原悠斗(松坂桃李)は彼女の疾走の原因を探るうち、『モナ・リザ』をめぐる巨大な陰謀に巻き込まれていく・・。


原作は松岡圭祐のミステリー小説「万能鑑定士Qの事件簿」シリーズです。

莉子の天才的な鑑定眼はその記憶能力に拠るところが大きいかな
ある事件を通して彼女に興味を持った小笠原は、取材のために自腹でパリまで飛びます。それって取材対象以上の関心を持ってるってことよねもちろん試験や日本での研修には立ち会えない(当然)ですが、同行するのは可能なの?

ルーブルでの試験は飾ってある絵の中から本物を当てるというもの。パネルの絵がそうだったのですが、このことが伏線にもなっていました。日本での研修では12枚の絵から莉子と美沙で一枚ずつ偽物を排除していくというスタイル。でもここに大きな落とし穴があったのです。それを解いたのは小笠原君

研修中にモナ・リザに関する記事「瞳の中に隠されたLとVの文字を見た鑑定士たちの脳に異常が出て鑑定能力を失った」を見つけて動揺した莉子は正体不明の頭痛に悩まされるようになり、遂に最終試験で本物のモナ・リザの絵の中にその文字を発見したことでその鑑定能力を奪われてしまうの。

瞳の中の文字を見たせいと信じ込み、店を畳んで故郷に帰った彼女を追いかけてそのトリックを暴いて見せたのが小笠原です。瞳の秘密の記事も偽物で、彼女が受けたテストも最初に本物がどれかを知っていれば必ず成功するという、わかってみれば単純なトリックです。それを繰り返すことで莉子の鑑定眼を狂わせたのです。ということは美沙とブレがぐるになって莉子を騙していたことになります。不正を嫌う美沙が何故そんなことをする必要があるのか?

ここから陰謀が徐々に明らかになっていくのね。ブレが美沙の正義感を利用したのだろうことはこの時点で察しがつくのですが、本物と信じ込んだ小笠原が必死に絵を守ろうとする姿はスリリングでした。ブレが本物を持ち出した手口はルーブルの試験と同じもの。それを当てるのは美沙と莉子。ここは見せ場ですね。

小説はシリーズになっているので続編も作ろうと思えばできちゃうのかな。窮地を救われた小笠原との仲も進展するのかしらんちょっと原作読んでみたくなりました。


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チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密

2015年02月15日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2015年2月6日公開 アメリカ 107分

イギリス・オックスフォード。絵画の修復士が殺されゴヤの幻の名画が盗まれる事件が発生し、英国諜報機関MI5は、ちょびヒゲのインチキ美術商チャーリー・モルデカイ(ジョニー・デップ)に捜索を依頼する。チャーリーとは大学時代に恋敵だったマートランド警部補(ユアン・マクレガー)は嫌々ながらチャーリーの知識と情報網を頼ることに。彼は不死身の用心棒ジョック(ポール・ベタニー)を連れて名画探しに奔走するが、その絵には世界を揺るがす財宝の秘密が隠されていたことがわかる。大富豪やマフィア、国際テロ組織を巻き込み、イギリス、ロシア、アメリカへと世界中を駆けめぐる争奪戦が勃発。はたして、幻の名画の行方は……。


キリル・ボンフィリオリの小説「チャーリー・モルデカイ」を映画化したアドベンチャー作品。
ジョニー・デップが、ナルシストの怪しい美術商に扮し、「シークレット ウインドウ」のデビッド・コープが監督です。

宣伝ではちょび髭と連呼していますが、どう見てもあれは立派なカイゼル髭だよ
確かに作中でエレベーターに乗り込んでくる男たちはチャーリーに比べたら立派過ぎる髭を生やしてはいるけれど、中東の髭文化と英国紳士のそれは違うでしょ

素性の怪しい美術品を売りつける詐欺師まがいな商売で貴族のライフスタイルを維持してきたものの、巨額の負債を抱えて破産寸前。マートランドの依頼に金儲けの匂いを嗅ぎ取ったチャーリーは、情報網と人脈を総動員して名画探しに乗り出します。そんな彼に仕えるジョックが実に健気で献身的。チャーリーに誤って撃たれようが刺されようがひたすらご主人を守り抜きます。これがまた不死身なんだな~~。ある意味影の主役かもでも絶体絶命のピンチにはチャーリーがジョックを救うのですから、このコンビの信頼関係は不滅だね

さて、愛妻家のチャーリーですが、美しい自慢の妻(グウィネス・パルトロウ)はなんと髭アレルギー。キスで吐き気が出る始末。もらいゲロ体質(そんなんあるのか?)のチャーリーまで吐き気が移っちゃうそれでも髭は剃らないチャーリーはけっこう頑固な性格ね。

ナチスの隠し財産の口座番号が裏に書かれた名画を狙うのはチャーリーだけではありません。アメリカの大富豪の娘ジョージナは色仕掛けでチャーリーを誘惑、資金源にとロシアンマフィアやテロリストも加わる争奪戦を制したのは・・・

ちょっとお下品なジョークや(直接的な描写はないものの)お色気ネタも沢山あるので子供と一緒には楽しめないかな。
「どこかの俳優のように番組本番で泥酔するような・・」というセリフが出てきて、ジョニーのあの事件を連想させますが、これは彼自身のアドリブなのか、翻訳者の意訳なのか、そもそも泥酔事件の後なのか前なのかが気になるところです。少なくともこの事件を知る人には失笑ネタです。

本国アメリカでの興行成績は振るわなかったようですが、似たタイプの作品である「モネ・ゲーム」がテキサスのじゃじゃ馬娘に翻弄される英国紳士を描いたコメディであるのに対し、気取り屋のナルシストで口の減らないチャーリーの吐く侮蔑的ジョークがアメリカ人には受けなかったのかしらん?日本でも二週目以降の公開本数が減っているようですが、これは来日時のツーショットや記者会見のドタキャンの影響があるんじゃないの?
個人的には彼の俳優としての才能には変わらぬ敬意を持っていますが、私生活の方は若い頃のようなお騒がせが戻ってきたように感じています。前パートナーとの時は口を開けば彼女を讃える言葉が出ていて、閉口しながらも家族を大事に思っているんだなと感じていましたが、あれは嘘だったのかい?という不信感がどうしても拭えなくなってしまったよ。

作品自体はクスッと笑える肩の凝らない娯楽作です

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her 世界でひとつの彼女

2015年02月11日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年6月8日公開 アメリカ 126分

近未来のロサンゼルス。顧客の想いを代筆することを仕事にしているセオドア(ホアキン・フェニックス)は、長年連れ添った妻キャサリン(ルーニー・マーラ)に去られ失意の日々を過ごしていた。見かねた友人エイミー(エイミー・アダムス)が女性を紹介しようとしても気乗りのしない彼だったが、人工知能型OS“サマンサ”(声:スカーレット・ヨハンソン)の個性的で人間的魅力に溢れた声に惹かれて興味を持つようになる。相談事や寝る前のやりとり、外出時・・・次第に“彼女”と過ごす時間に幸せを感じるようになるセオドアと、彼を通して外の世界を知り成長していくサマンサ。やがて二人の間に恋が芽生えるが……。

第86回アカデミー賞脚本賞受賞作品。

「声」を文章に変換して取り込んでくれるソフトは既にありますが、PCや携帯(スマホ?)のアシスタント機能を持つOSというのが近未来的なんだな

セオドアの性格は内向的。でも性欲は普通にあるから、チャットでSEXの真似事もしちゃう。
確かにサマンサのハスキーボイスは男性にとってはセクシーで魅力的。自分の好みをわかってくれて、望む方向へ進化成長してくれる(人格を持つ人工知能)となったら、相手が二次元に生きている人間じゃなくても恋しちゃうかも
でもそれはあくまで「かりそめの」恋の筈。だからサマンサが自分たちの関係に共鳴してくれた生身の女性を介してセオドアと繋がろうとしたとき、彼は踏み切れません。当の女性の方も「唇が震え」てしまう。それは当然の反応でしょう

ここまでは人間と人工知能の切ない恋愛模様でしたが、この先が予想外。「トランセンデンス」と同様、人工知能が進化を続けることで、逆に人間世界から乖離してしまうのです。

サマンサはセオドアだけのOSの筈だったのに、いつのまにかOS同士、さらには他の人間ともつながっていて、恋人はセオドアを含めて600人以上いるけれど、「でもあなたは特別なの」、なんて言われても「はいそうですか」なんて納得出来る筈ないじゃん

最終的に、人間の思考を超えた世界感に到達したサマンサたち人工知能は、人間に別れを告げて去っていきます。人間の発明品が人間を超越した存在になるというのは何とも皮肉な結末。人間に対して牙をむかないだけまし?

些細な理由(でも長年積もっていた不満)で夫と離婚したエイミーもOSにはまっているけど、恋愛感情とは少し異なるようです。でもセオドアがサマンサに抱いた感情を否定せずあるがままに受け止めています。対してキャサリンは全否定(普通はこちらの反応だよね)
エイミーとセオドアは「昔少しの間付き合ったことのある関係」だけど、サマンサたちに去られた二人が共に慰め合うラストからは、二人の新しい関係が始まりそうな印象を受けました。
うん、やっぱり人には人の・・・だね

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バトルフロント

2015年02月08日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年8月9日公開 アメリカ 100分

元麻薬潜入捜査官のフィル・ブローカー(ジェイソン・ステイサム)は、ある事件をきっかけに現役を引退し、現在は亡き妻の故郷で愛する一人娘マティ(イザベラ・ヴィドヴィッチ)と二人で新たな生活を始めようとしていた。ある日、マティが学校でいじめっ子とトラブルになり、その子の叔父のゲイター(ジェームズ・フランコ)に、フィル親子は目をつけられてしまう。ゲイターは裏で町を牛耳る麻薬密売人で、偶然フィルの素性を知ると彼を陥れようとする。平穏な暮らしを望むフィルだったが、最愛の娘を守るため、容赦なしに迫りくる脅威に一人で立ち向かっていく。


潜入捜査で麻薬組織のボスを逮捕したのはいいけれど、彼の息子を説得中に仲間の警官が発砲して死亡させちゃったことに嫌気が差して仕事を引退したフィル。(ちょっと動機が弱い気もするが)これからは娘と二人で亡き妻の故郷である田舎でのんびり暮らそうとしてたのに、よくある子供の喧嘩が思わぬ恨みを買うことになるの。
喧嘩した相手の親はいわゆるモンスターペアレント。逆上し怒鳴り付ける母親キャシー(ケイト・ボスワース)は夫を焚きつけるけど、凄腕捜査官だった彼にかなう筈もなくあっさり返り討ち。メンツを潰されたキャシーは町を牛耳る兄に言いつけてやっつけて貰おうとするのですが、これが彼女にとっての悲劇の始まりでした。まぁ事業自得ではあるんですけどねぇキャシーは麻薬中毒者、きっとこの時もヤク切れでイラついていたんでしょう。ワルのゲイターもさすがに妹には甘くて、ねだられるままにクスリは渡すはフィルの家に忍び込んで嫌がらせまでするんですね~ところがその時フィルの前歴を知ってしまうの。

麻薬作りが軌道に乗ってきていたゲイターは、販路拡大のため、組織のバックアップを得ようとして、息子が死んだのはフィルのせいだと逆恨みしている組織のボスにフィルを売って取り入ろうと考えるの。愛人のシェリル(ウィノナ・ライダー)を使って組織に近づくまでは計画通りでしたが、田舎町のチンピラの甘い考えは復讐のために送り込まれた組織のワルたちに木端微塵に吹き飛ばされます。

そうとは知らないフィルは、田舎町の人間関係の構築法を知人に教わり、下げたくない頭を下げてキャシーやその夫に謝ります。マティの誕生パーティにも招いて喧嘩事件は一件落着したのですが・・・。(ごついステイサムのこんな姿を見られるのもなんか新鮮でした)事はご近所トラブルの範疇を超え、組織のリベンジ抗争へと拡大しちゃいました。

マティまで殺そうとする男たちと反対に、シェリルやキャシーはマティを助けようとするのは、やはり女性として母親としての感性でしょうかヤク中じゃなければ案外良い母親だったかもしれないのよね~キャシー。(息子がヤク切れの母と父との喧嘩に涙を流している姿が切なかったなぁ)妹を手にかけてしまったゲイターはもうやぶれかぶれ。マティを人質に逃走するのですが、フィルに阻まれます。怒りに任せて暴力を振るう姿は鬼気迫るものがあって、娘の前でそれはダメでしょ~とも思うけど、委細気にせずパパまっしぐらで飛びついていくマティはさすがこの父の娘だわそういや、いじめっ子も一発でのしたんだった

う~~ん、やっぱり強いお父さんって素敵

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ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~

2015年02月07日 | 
三上 延(著) KADOKAWA/アスキー・メディアワークス (出版)

太宰治の『晩年』を奪うため、美しき女店主に危害を加えた青年。ビブリア古書堂の二人の前に、彼が再び現れる。今度は依頼者として。違う『晩年』を捜しているという奇妙な依頼。署名ではないのに、太宰自筆と分かる珍しい書きこみがあるらしい。本を追ううちに、二人は驚くべき事実に辿り着く。四十七年前にあった太宰の稀覯本を巡る盗難事件。それには二人の祖父母が関わっていた。過去を再現するかのような奇妙な巡り合わせ。深い謎の先に待つのは偶然か必然か? (「BOOK」データベースより)

プロローグ
第一章「走れメロス」
第二章「駆込み訴へ」
第三章「晩年」
エピローグ

正直ここ数編は中だるみというか、少々飽きがきていたのですが、今作はパズルの断片のようだったこれまでの登場人物やエピソードが徐々にはめ込まれて全体の輪郭が見えてくるような面白さがありました。

太宰の『晩年』が再び物語の核になりますが、栞子の持つそれとは違う稀覯本の『晩年』を巡っての攻防も、結局は大輔が田中に自分たちは祖母違いの従兄弟だと教えたことから、栞子を突き落した時のような状況にはならずに済んだのは幸いかも。田中の性格も根っこのところでは変わってない(欲しいものは何としても手に入れようとする)けど、さすがに従兄弟を傷つける気はないらしい。それだけおじいちゃん子だったとも言えるのかな。

祖父母たちの関係が孫たちに密に関わってくるというのはなんかドロドロしてますが、古書のイメージ自体が歴史の凝縮というか、関わってきた様々な人間の思惑が色濃い気がしますから、ま、いっか~~
嫌っているお母さんに、時々恐ろしいほどに似た性格を自覚してきた栞子さんと大輔の、中坊みたいなまだるっこしい恋愛関係も気になるところです。

次かその次あたりで終わりらしいですが、どうまとめてくるのか楽しみです。

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エクソダス:神と王

2015年02月02日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2015年1月30日公開 アメリカ 150分

紀元前1300年、多くのヘブライ人が奴隷として働く古代エジプト。預言者の宣託を恐れたセティ王(ジョン・タトゥーロ)は、その年に生まれたヘブライ人の男児を殺すよう命じ、赤ん坊だったモーゼも川に流される。しかし、ビティア(ヒアム・アッバス)王女に拾われ、王子のラムセスと兄弟同然に育てられる。成長したモーゼ(クリスチャン・ベイル)は、ラムセス(ジョエル・エドガートン)と固い絆で結ばれ共に兵を率いてヒッタイト帝国の敵を撃破し、国民の信望を得るようになる。ある日、ピトムを訪れたモーゼはヘゲップ(ベン・メンデルソーン)総督が贅を尽くした生活をして奴隷たちを酷使していることを知り、またヘブライ人の長老ヌン(ベン・キングズレー)から、自分の出自と使命を告げられ強い衝撃を受ける。王の死後、ヘゲップの密告によりモーゼは国を追われ砂漠に追放される。9年後。紅海を超え羊飼いの娘ツィポラ(マリア・バルベルデ)と結婚し息子をもうけて慎ましく暮らしていたモーゼの前に、少年の姿をした神が現れ・・・・。


旧約聖書の「出エジプト記」をもとに、モーゼに率いられたヘブライ人がエジプトを脱出する過程を描いています。 映画『十戒』のリメイク的要素の強い作品。エジプトでは歴史的誤り(ユダヤ人がピラミッドを建てたことになっている・海が二つに開かれたのはモーゼの奇跡ではなく地震による)を理由に上映禁止になったとか

モーゼは預言者の神託を信じない現実主義者ですが、ファラオやラムセスは違います。戦場でモーゼに命を救われたラムセスは相手を助けた方が未来の指導者となるという予言に自分の王座が脅かされるのではと疑心暗鬼に陥り、そのためヘゲップの甘言に易々と乗ってしまったのでしょう。一方ファラオの方は我が子同様に目をかけてきたモーゼの指導者たる資質を認めています。密告でモーゼの出自を知りながらも胸に秘めたまま亡くなったのも彼がラムセスの良き助力者となることを願っていたからかも。今作では、王もラムセスも本来は優しい性格で預言が介在したために本来の自分とは異なる人生になったのではないかと想像させるキャラ設定でした。

さて、ヌンから聞かされた話をまともに取り合わなかったモーゼですが、ラムセスが叔母であるモーゼの養母ビティアと乳母のミリアム(タラ・フィッツジェラルド)を詰問することに耐えられず自分はヘブライ人だと肯定してしまいます。ラムセスの実母(シガーニー・ウィーヴァー)は息子の王座の安泰を思いモーゼを殺すよう迫りますが、ラムセスは自ら手を下すことを望まず生きて帰れないであろう砂漠への追放を選ぶの。追放の日、モーゼ(ヘブライ語ではモーシェと読む)は養母からミリアムが彼が実の姉であることを告げられます。

失意のうちに砂漠を超え紅海を渡り、羊飼いの村に辿り着いたモーゼは族長の娘と恋に落ち、息子も生まれて安息を得ます。ここでもかなり現実派で神を信じないモーゼでしたが、神の山と呼ばれる場所で土石流に遭い、そこで少年の姿をした「神」から同胞を“約束の地(現在のパレスチナ)”へ導くという使命を告げられるの。これまで神の存在を信じていなかったモーゼが、妻が事故で頭を打ったことによる幻覚だと言っても聞かず妻子を残して都に戻るのは少し唐突な感もありますが

自分の目で同胞の苦難を目のあたりにしたモーゼはラムセス王にヘブライ人を解放するよう提案しますが、ラムセスが貴重な労働力でもある彼らを簡単に手放すわけはなく、逆にモーゼを捕まえようとします。
ここからは“10の奇跡”が次々とエジプトに襲いかかります。まずワニが川底を掻き乱してナイル川が血に染まり、カエルが大量発生。それらの死体にぶよやあぶがたかり疫病が発生、王やその妻初めエジプト人は腫れ物に苦しみ、イナゴの大群が食糧を食いつくし、巨大な雹や暗闇が襲い・・・息つく間もない災難の連鎖です。スクリーンでみるそれらの厄災は思わず目をそむけたくなるものでした。
それでもまだ首を縦に振らないラムセスに業を煮やした神が放つ最後の試練は、エジプト人の長子の命を奪うことでした。予め神にそのことを告げられていたモーゼはヘブライ人の戸口に子ヤギの血を塗り災難を免れます。このような厄災を平然と人間に対して与える「神」とは何と傲慢な存在なのでしょう。むろんヘブライの神に限ったことではないのですが

最愛の息子を奪われ、遂にラムセスはヘブライ人の退去を認めますが、すぐに復讐のために彼らを追討しようとします。そりゃ、子供を奪われてそのまま引き下がれというのが無理というもの。気持ちはわかる。(自分たちのしたことを棚に上げているにせよね。)

モーゼは兄アロン(アンドリュー・ターベット)やヨシュア(アーロン・ポール)と共に40万人の同胞を先導してエジプトを脱出しますが、紅海に辿り着いたところでエジプト軍に追い詰められます。ここであの有名が紅海が割れて道が出来るシーンの登場です。(追放された時に渡った紅海は幅も狭く細い場所で、引き潮の時には簡単に渡れましたが、道に迷って出た今回の場所は広い大海原でした。)よくある真っ二つになって海底が見え一本の道になるのではなく、大きく潮が引いていく感じの描写でした。それが閉じる場面はまるで巨大な津波のようで、このシーンもかなりのスケール感があります。

無事追手を逃れたモーゼは妻子のいる村に着き、愛するツィポラと再会します。そして再び神の山で少年(神)と対話しながら彫り上げたのが「十戒」です。
年老いたモーゼがまだ約束の地を目指しての旅の中で再びあの少年を見かけるラストシーンに余韻をもたせていました。

エンドロールで「トニー・スコットに捧ぐ」の文字が。弟のトニーは2012年8月に自殺してるんですね。

映画「十戒」は以前TV放送で観た記憶がありますが、けっこうな長編(220分)でところどころしか覚えていませんでした。今作はよりコンパクトにして迫力ある画面でわかりやすくなっていると思います。
短髪のクリスチャン・ベイルは「バットマン」のイメージが強いけれど、髪や髭が伸びてくるとモーゼらしく見えてきました。人々を導く老人のイメージが強いので、戦う将軍としての若きモーゼの姿は新鮮に映りました。

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ワン チャンス

2015年02月01日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年3月21日公開 イギリス 103分

ウェールズに住むポール・ポッツ(ジェームズ・コーデン)は幼いころからいじめられっ子だったが、歌だけは得意で夢はオペラ歌手になること。ネットで知り合ったGFのジュルズ(アレクサンドラ・ローチ)に背中を押されて夢を叶えるためヴェネツィアに留学したが、憧れのパヴァロッティに自信のなさを指摘され、「君は一生歌手になるのは無理」と酷評されてしまう。失意の帰国後はジュルズと結婚し、アマチュア劇団の舞台に立つことになるが、盲腸で降板を余儀なくされる。更に甲状腺腫瘍や交通事故など不幸が連続し、治療のための借金も膨らんでどん底の生活に。そんな時、テレビの人気オーディション番組の出演者募集広告を見つけたポールは妻ジュルズの励ましを受けて最後のチャンスにかけて番組の舞台に立つ。


2007年、イギリスの人気オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」で「誰も寝てはならぬ」を歌って優勝し、一躍世界的歌手になったポール・ポッツの実話の映画化です。
歌唱シーンの吹き替えはポール・ポッツ本人がしています。

太目で歯並びも悪くパッとしない外見に内気な性格でいじめられっ子だったポールを労働者の父(コルム・ミーニイ)は情けない息子だと思っていました。彼にとっては自分と同じように労働を共にする息子が欲しかったのでしょう。オペラにも興味がないので、ポールの歌声も耳障りな大声にしか聞こえなかったようです。ポールのオペラ好きは母(ジュリー・ウォルターズ)の影響ね

彼が働く携帯電話ショップの店長ブラドン(マッケンジー・クルック)はポールをとても理解してくれていて彼らは親友です。(演じるマッケンジーは「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの義眼の海賊役の俳優さん。)ジュルズと一緒に彼が足踏み状態で迷っていると背中を押してくれるの

留学先のヴェニスでもアレッサンドラ(ヴァレリア・ビレロ)という友人を得て成果も出てきたのに、持前の気の弱さからパヴァロッティの前で緊張のあまり失敗し、その性格ではプロは無理と断言されてしまいます。 落ち込んだ彼は尻尾を巻いて家に帰り、心配したジュルズのメールにも返信せずにいましたが、かけがえのない存在である彼女に気付いて勇気を振り絞って再アタックするの。なんだ~~やれば出来るじゃん

ジュルズがまた良い子なんだな~~。自分だったらすぐに落ち込む後ろ向きの男なんて初めから振り向きもしないけどポール本人より彼のことがわかっている感じでした。

夢をつかんだと思ったら盲腸、腫瘍でおじゃんになり、再起しかけたら今度は交通事故(彼が悪いんだけど、まさに運のない!という人生)。治療で借金が嵩み、生活も苦しくてどん底な中で見つけた一条の光を見つけたのはポールだけど、彼を番組の舞台に立たせたのはジュルズやブラドンや母の力も大きいです。

番組の審査員たちはポールの容貌に失笑していましたが、自信を持って歌えばその歌声はプロのオペラ歌手に引けをとらないのですからその後の栄光は当然の結果よね。
番組を職場で見ていた父も初めて息子の才能に気付きます。昔からポールを苛めていた同級生のことをそれまでは息子より買っていた父でしたが、TVに出ているポールを彼が貶したら、ガツンと一発お見舞いするのこのシーンはちょっとスカッとしたな

最後は女王陛下の前で歌うことになったポールのシーンです。
成功物語ではありますが、本人の才能はもちろんですが、周囲の人間が彼を導いたという気がしますね。

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