杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

古本食堂

2024年01月29日 | 
原田ひ香(著) 角川春樹事務所

かけがえのない人生と愛しい物語が出会う! 神保町の小さな古書店が舞台の絶品グルメ×優しい人間ドラマ。 大ベストセラー『三千円の使いかた』『ランチ酒』の著者による熱望の長篇小説。 美希喜は、国文科の学生。本が好きだという想いだけは強いものの、進路に悩んでいた。そんな時、神保町で小さな古書店を営んでいた大叔父の滋郎さんが、独身のまま急逝した。大叔父の妹・珊瑚さんが上京して、そのお店を継ぐことに。滋郎さんの元に通っていた美希喜は、いつのまにか珊瑚さんのお手伝いをするようになり……。カレーや中華やお鮨など、神保町の美味しい食と心温まる人情と本の魅力が一杯つまった幸せな物語。(内容紹介より)

.第一話『お弁当づくりハッと驚く秘訣集』小林カツ代と三百年前のお弁当
第二話『極限の民族』本田勝一著と日本一のビーフカレー
第三話『十七歳の地図』橋口譲二著と揚げたてピロシキ
第四話『お伽草子』とあつあつカレーパン
第五話『馬車が買いたい!』鹿島茂著と池波正太郎が愛した焼きそば
最終話『輝く日の宮』丸谷才一著と文豪たちが愛したビール

学生時代に足を延ばした神保町の本屋さん。といっても古書店ではなく三省堂などの新書を扱う大型書店ばかりだったけれど、軒を並べる古書店が町に独特の風情を添えています。

そんな古書店の一つ、鷹島書店の店主の滋郎さんが亡くなり、妹の珊瑚さんが後始末のために北海道から上京してきます。彼女は両親の介護をしているうちに婚期を逃しています。両親の死後、介護ヘルパーとして、東山さん宅に通ううちに彼を慕うようになりました。彼の妻の死後、東山さんから好意を打ち明けられますが、自分の思慕への罪悪感から彼を避けるように東京に出てきています。

国文科の大学院生の進路進路は大叔父の滋郎が好きで、店にもたまに顔を出していました。彼女の母の芽衣子は滋郎が遺した財産の行方が気になるようで(神保町で自社ビルですからそれなりのお値段ですね)美希喜に大叔母が店をどうするのか監視報告するよう言いつけます。芽衣子はリアリストとして描かれますが、パンのシールを集めて食器を貰うことに心血を注いでいたりとどこか可愛らしいところもあります😁 

古書店の経営は素人の珊瑚ですが、読書家の彼女は客が求める本を察することができます。
お弁当作りに悩む女性や、世の中を全部分かった気になっている青年、息子との対話に悩む父親、執筆に悩む作家志望の青年などなど・・

珊瑚を手伝うようになった美希喜は、次第に自分が本当にやりたいことに気付いていきます。ビルの階上に入っている辻堂出版の社員の建文君と作家志望の奏人が彼女を巡って密かに恋のバトルをしていたりしますが、当の美希喜は進路の悩みで全く気付いていなくて、そんな若者たちを温かく見守る珊瑚さんも、東山さんへの想いに揺れています。

滋郎兄が不倫していたのではないかと考えて、相手の女性が働く戸越銀座の総菜屋の前の喫茶店で観察したりする珊瑚さんは、自分と重ね合わせてしまいます。ところが上京してきた東山さんが意外な真相を明らかにしてくれるのね。
彼は滋郎さんとも接点があったので、その「嗜好」についても察していたわけです。
うん・・・生きにくかっただろうな~滋郎さん😲 
愛の形は様々と珊瑚さんに語り掛ける東山さん、素敵です😍 

教授の後藤田先生は美希喜に厳しい叱責をしますが、彼もまた滋郎さんと交流のある人でした。そして彼女に古書店を継ぐことを勧めます。その頃には美希喜も自分が本当にやりたいのは研究者の道ではなく鷹島古書店を継ぐことだと気付いているのね。
珊瑚さんの方も本当は美希喜に跡を継いでもらいたいと思っていて、物語は大団円。

お話に登場する神保町のボンディやランチョンといった名店に、ロシア料理店のピロシキ、揚子江菜館の上海式焼きそばなどなど、読んでいるだけでお腹が鳴りそう。
おっとりした珊瑚さんを取り巻く神保町の人々の温かさも加わりとても優しい気持ちになりました。😀 


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キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩

2024年01月29日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年7月7日公開 ウクライナ=ポーランド 122分 G

1939年1月、ポーランドのスタニスワヴフ(現ウクライナ、イヴァーノ=フランキーウシク)にあるユダヤ人が住む母屋に店子としてウクライナ人とポーランド人の家族が引越ししてくる。ウクライナ人の娘ヤロスラワは音楽家の両親の影響を受け歌が得意で、特にウクライナの民謡「シェドリック」=「キャロル・オブ・ザ・ベル」は、歌うと幸せが訪れると信じ、大事な場面でその歌を披露する。第2次大戦開戦後、ソ連による侵攻、ナチス・ドイツによる侵攻、再度ソ連によって占領される。ポーランド人とユダヤ人の両親は迫害によって離され娘たちが残される。ユダヤ人の娘ディナ、ポーランド人の娘テレサの3人の娘たちをウクライナ人の母であり歌の先生でもあるソフィアが必至に守り通して生きていく。
 戦況は悪化し、子どもたちを連行しようとソ連軍が家探しを始めるが、ソフィアが機転を利かせて最悪の事態は免れる。ナチスによる粛清によってウクライナ人の父の手に及び処刑されてしまう。残されたソフィアは、ウクライナ人である自分の娘、ポーランド人の娘、ユダヤ人の娘に加えて「この子には罪はない」と言ってドイツ人の息子を匿うことになるのだった…。(公式HPより)



ウクライナ民謡をもとに生まれたクリスマスソング「キャロル・オブ・ザ・ベル」をモチーフに、ウクライナ、ポーランド、ユダヤ人の3家族が戦火に翻弄されながらも子どもたちを守り抜こうとする姿を描いた戦争ドラマ。
監督は、ウクライナ出身のオレシア・モルグレッツ=イサイェンコ。(映画.comより)
映画自体は2022年2月24日以前に撮られているので、今回の戦争に対する政治的プロパガンダっではないようですが、作品中のソ連兵の無慈悲で残虐な描写はつい現実に重ねてしまいそうです。😱 

1939年。ユダヤ人一家が暮らすアパートにウクライナ人とポーランド人の家族が引っ越してくるところから物語が始まります。
ウクライナ人のソフィアは歌の先生、夫のミハイロは演奏家で、娘のヤロスラワも歌が得意で皆が幸せになる歌”キャロル・オブ・ザ・ベル"が得意です。彼女の透き通るような歌声は本当に素晴らしかった✨
初めはぎくしゃくしていた3家族も、ヤロスラワの歌がきっかけで次第に打ち解けていきます。

戦争が勃発し、ソ連軍が侵攻してきたある日、ソ連兵によりポーランド人のワンダが連行されます。(軍人の夫は既に・・・と推察されます。)たまたまソフィアの家で眠っていた娘のテレサは、ソフィアが自分の娘だと嘘をついて守られます。ワンダが隠したテレサの出生証明書を見つけ、以後は自分の姪と偽ることになるの。

1941年。ナチスが台頭してくるとユダヤ人一家は出頭を命じられます。
ミハイロから「出頭したユダヤ人のバンドマンは帰ってきていない」と聞かされた夫婦は、娘のディナとタリヤを預けて夫婦で出頭し帰ってきませんでした。

ドイツ兵がやってくると、ユダヤ人のディナとタリヤは部屋に据えられた時計の裏の棚に隠れて息を潜めます。ミハイロは棚を取り除いて空間を広げてやります。
ソフィアは4人の子供たちに家の外に出ることを禁じますが、幼いタリヤが「外で遊びたい」と部屋を出てしまいます。タリヤを探しに出たヤロスラワ がドイツ兵に見つかって部屋に入って来られる場面では、ドアの影で息を潜めるディナに心臓バクバクです。無事に切り抜けたものの、タリヤがネズミに噛まれ、その傷がもとで亡くなってしまいます。夜間外出禁止令の出ている中、医者の家の扉を叩いて往診を求めるミハイロでしたが、すげなく追い返され、帰った時にはタリヤは・・・彼がレジスタンスに身を投じたのはこの頃からだったのかな?

アパートにはドイツ人の夫婦が越してきます。ドイツ人一家に『キャロル・オブ・ザ・ベル』を歌って「殺さないで」と頼むヤロスラワ。いや~それはダメだろ!と冷や冷やしましたが、ウクライナ語を解しなかったため事なきを得ます。
ドイツ人から貰ったお菓子を投げ捨てきつく叱るソフィアでしたが、子供たちはそのお菓子を拾って食べちゃうの。甘いお菓子なんて久しぶりだろうし何と言っても子どもだものね~。ヤロスラワの歌の上手さに感心したドイツ人の妻は息子のハインリヒの歌の練習をソフィアに頼みます。ドイツ人なんて大嫌いだけど背に腹は代えられないので引き受けるものの夫に愚痴るソフィア😁 

ある日、記念日を祝うため久しぶりに劇場に出かけたソフィアとミハイロでしたが、突然ドイツ兵が現れて女性は外に出るように言われ、男性は皆連行されます。翌朝、ミハイロは政治犯として処刑(射殺)されてしまいます。

処刑を目撃したソフィアは家に戻ると服を脱ぎ、子供たちのも脱がせて洗濯をします。何かしていないとどうにかなってしまいそうなソフィアの悲しさ・憤りが伝わってくるようでした。娘たちの存在が彼女の唯一の慰めになります。

再びソ連が侵攻してきて、ドイツは撤退します。
ドイツ人一家も逃げるようにアパートを立ち去るのですが、ボロボロになったハインリヒがソフィアの家のドアを叩きます。おそらく彼の両親は殺されてしまったのだと察したソフィアは彼も引き取ることにするのです。反対するディナに「子供に罪はない」と諭すソフィア。

町はまたまたソ連の支配下に置かれ、ソフィアは政治犯の妻として連行され子供たちは施設に入れられることになります。この時、逃げようとしたハインリヒは射殺されてしまうの。ソフィア自身も政治犯と決めつけられてシベリアに送られそこで亡くなったように描かれていました。

冒頭とこの場面の少し前に数十年後のNYが登場し、大人になったディナとテレサらしき女性が出て来るので娘たちは無事なんだなと安堵させられましたが、あれ?ヤロスラワは?

ソ連の施設に送られた3人でしたが、ヤロスラワは『キャロル・オブ・ザ・ベル』を歌ったことで別の施設に送られてしまいます。ディナとテレサは自由を与えられ(追放ともいう)ますが、それを伝える施設長?の無慈悲な酷薄さがたまらなく醜悪です。

ポーランド人のテレサは有名な歌手になっているようです。空港でディナと会い、2人でヤロスラワを待ち3人が再会して抱き合い、そこに子供時代の3人の姿がオーバーラップします。やっと彼女たちの中で戦争が終わったのだと感じられるラストでした。

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丘の上の本屋さん

2024年01月27日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年3月3日公開 イタリア 84分 G

イタリアの風光明媚な丘陵地帯を見下ろす丘の上にある、小さな古書店。店主のリベロ(レモ・ジローネ)はある日、店の外で本を眺めていた移民の少年エシエン(ディディー・ローレンツ・チュンブ)に声を掛ける。好奇心旺盛なエシエンを気に入ったリベロは次々と店の本を貸し与え、エシエンは、リベロが語る読書の素晴らしさに熱心に耳を傾ける。本の感想を語り合ううちに、2人は年齢や国籍を超えた友情を築いていく。(映画.comより)


ユニセフ・イタリアが共同製作として参加していて、「イタリアの最も美しい村」と言われるチビテッラ・デル・トロントが物語の舞台です。幕間のように挿入される美しい景色に癒され、老人と少年の年齢や国籍を超えた本を通しての交流に心温まります。

小さな古書店の店主リベロは、隣のカフェ店員のニコラ(コッラード・フォルトゥーナ)と毎朝挨拶を交わし、ちょっと風変わりな客たちを迎える毎日を送っていました。
ある日、店の外に置かれた本をじっと見つめる移民の少年エシエンに気付いて声を掛けたリベロは、「本は買えない」と言う彼に「貸してあげるから明日返しにおいで」と好きな本を選ばせると、彼はミッキー(ディズニー)のコミックを一冊持っていきます。
翌日約束通りに本を返しにきたエシエンは、本に興味津々の様子。彼を気に入ったリベロは今度はコミックではなく「ピノキオの冒険」の物語を貸します。
その後も、リベロは次々と店の本をエシエンに貸し与えます。
本を返しにきたエシエンに読んだ本の感想を聞きながらその内容を読み解くリベロにエシエンは熱心に耳を傾け、いつしか二人は友情で結ばれていきます。

リベロが貸し与えたのは「イソップ寓話集」「星の王子さま」「白鯨」「シュヴァイツァーの伝記」「アンクル・トムの小屋」「白い牙」「ロビンソン・クルーソー」「ドン・キホーテ」などコミックから始まり、児童文学、小説とジャンルは広がっていきます。

エシエンは「ピノキオ」の感想を聞かれてキツネたちが面白くコオロギは煩わしいと答えましたが、これはとても子供らしい視点の感想です。「イソップ」では肉を落とした犬の話が面白いと言ったり・・本の感想を通して、リベロは善と悪の存在や、困難に立ち向かう智恵や勇気、自由を求めて差別と闘う人々 の存在を教えていきます。彼らの関係は友であると同時に師弟のようにも映りました。

古書をゴミ箱から捜し出して売りにくる男性(せどり屋みたいな感じ?)に、 今では絶版になっている自分のかつての著書を探し求める大学教授や、革命に傾倒している客、古書の収集家(モーニ・オヴァディア )など、店には様々な人がやってきますが、リベロはどの客にも穏やかに対応していました。

何やら病気を抱えている様子のリベロは、最後に「世界人権宣言」をエシエンに贈ります。閉店を告げる張り紙を見つめるエシエンに声をかけたのは二コラです。

二コラもまたリベロの大切な友人でした。いつもリベロを気遣い、彼に恋の相談をもちかける、いかにも陽気なイタリア男です。彼の恋するキアラ(アナマリア・フィッティパル)は金持ちの家の家政婦をしていて、二コラの求愛を婚約者がいると嘘をついて逸らしていましたが、それは彼の愛情が本物かどうかを試していたわけで・・ちょっと小粋な恋物語も挿入されていました。

特に何かが起こるわけでもなく、淡々とした日常の中でのリベロとエシエンの本を通じた交流がさりげなく描かれるだけなのですが、とても穏やかな気持ちにさせられます。それでいて、本を読むことで人生が豊かになっていくことをこの作品はしっかり伝えてもいます。

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片見里なまぐさグッジョブ

2024年01月26日 | 
小野寺史宜(著) 幻冬舎(発行)

俺は、なまぐさといえども、坊主だ。殺生なしで、仕返ししてやる! 「あの男」のせいで自殺してしまったかつてのマドンナのために、へなちょこ男子が立ち上がる!

地方の中途半端な規模の街・片見里。ここで200年の歴史を刻む善徳寺の住職・徳弥・29歳。父の急逝で若くして、急遽、住職となってしまった、合コン好きの「なまぐさ」坊主だ。彼の元を、小学6年生のとき一瞬だけクラスメイトだった、フリーターの一時が東京から訪ねてきた。善徳寺に預けっぱなしの父の遺骨を引き取るためだ。無理矢理クラス会に出席させられた一時は、かつての「マドンナ」美和の自殺を知る。どうやらその原因は、元ガキ大将、今や県会議員に立候補しようとしている丈章のひどい「謀略」にあるようだ。徳弥と一時は、美人で優しかった美和のために、「仕返し」を企てる。「俺は坊主だ、殺生はしない。でもあいつを痛い目に遭わせてやる」熱くてやんちゃな徳弥は、クールな草食男子一時、美和の妹・多美と策略を練るのだが、どうやら敵は一枚上手で……!? 心優しき人たちの、爽快でちょっと泣ける「仕返し物語」。(作品紹介より)


「片見里荒川コネクション」で知って早速読んでみました。
徳弥と一時の友情の始まりが描かれています。

谷田一時は、小さい頃に父を亡くしてから、母に連れられて各地を転々とし、小学校で5回、中学で3回の転校を経験しています。男性遍歴を繰り返す母と音信不通の現在ですが、その母と小学校卒業前の4ヶ月だけ滞在した片見里の寺に預けたままの父親の遺骨を引き取りに17年ぶりに片見里を訪れますが、人生に絶望している彼は、遺骨をどこか林の中に埋めて自分も消えようと考えていたようです。

ところがそんな一時を、寺の現住職となっていた当時の同級生・村岡徳弥が歓待して中学の同窓会に誘います。一時は中学の時はもう転居していますが、小さな町故中学も小学校からのメンバーだからと無理矢理引っ張り出したの。😁 
そこで、一時が元同級生の堀川丈章と彼の腰ぎんちゃくの後藤の不審な会話を耳にしたことで、彼らの復讐作戦が始まるのです。

小学校のクラスで人気のあった倉内美和は、一時が盗難事件の犯人と疑われた際に、きっぱりと「あなたは犯人ではない」と彼に言ってくれた唯一の子でした。優しかった彼女が3年前に自殺したと知った一時は、堀川らの「結果オーライの手ちがい・写真・保険・脅しの材料」という会話が彼女の死に関係していると気付きます。

この堀川という男がまた実にサイテーな人間なのね。😡 市会議員選挙に出馬を目論んでいる彼は、自分の益にならない人間はバッサリ切り捨てる利己的な奴です。美和と交際しながら二股も平気で、美和の父親がリストラされた途端彼女を捨てた上に、妊娠した彼女が産むつもりだと知ると、別れさせ屋を雇った事実を彼女に突きつけ、さらに卑劣な手段で入手した画像で脅して自殺に追い込んでいたのです。

一時が徳弥に話したことで、美和の妹の多美も加わり、まずは事実かどうかの確認をすることになります。美和の友人だった乙恵や、堀川の同僚だった関根敏代の協力を得て、堀川の悪行が明らかになると、どうやって復讐するか頭を悩ませることに。
何しろ直接手を下したわけではないし、そもそも殺人が復讐の目的でもない。
彼らの考えたリベンジ作戦は生ぬるいとも思えますが、プライドの高い堀川にとっては致命的な屈辱であり脅しにもなりうるのだから、結果上々というわけですね。

小学校時代の一時の「棒高跳び」の逸話は「片見里荒川コネクション」にも引き継がれていましたね😁 今作ではそれが堀川家を脱する際に使われ、さらに堀川に気付かれる結果にもなっていました。まさに犯罪スレスレ・・いや、犯罪だし😅 

消防士の哲蔵さんと関根敏代が「その筋」の若頭とお嬢を演じて後藤の口を黙らせるエピソードが愉快で、小学校での盗難事件の犯人が明かされるおまけもありました。ここでも堀川の卑劣な人間性が明かされます😠 

基本的に徳弥の大らかな性格が強調され、コミカルに進んでいくので楽しく読めます。後に結婚する彼と多美のなれそめにもなっていました。
徳弥は一時の音信不通の母親の居所を探して彼に教えさり気なく肩を押します。なまぐさ合コン坊主であっても友情に篤い男です。
一時が自分の道を見つけるきっかけにもなっているようです。😀 

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劇場版 ソードアート・オンライン プログレッシブ 冥(くら)き夕闇のスケルツォ

2024年01月25日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2022年10月22日公開 100分 G
2023年1月21日放送 フジテレビ

世界初のVRMMORPG(仮想大規模オンラインロールプレイングゲーム)「ソードアート・オンライン」のプレイヤー1万人がゲームの世界に閉じ込められてから1カ月以上が過ぎた。鋼鉄の浮遊城アインクラッドの第一層を攻略したアスナはキリトとコンビを組んだまま、最上階を目指して旅を続けていた。情報屋アルゴの協力もあり攻略は順調に進んでいるかに見えたが、トッププレイヤー集団「ALS(アインクラッド解放隊)」と「DKB(ドラゴンナイツブリゲード)」という2大ギルドの対立が勃発。死と隣り合わせの日々の中、アスナとキリトは攻略とはまた別の脅威に巻き込まれていく。(内容紹介より)


川原礫のライトノベルを原作とするアニメ「ソードアート・オンライン」シリーズの劇場版「ソードアート・オンライン プログレッシブ 星なき夜のアリア」の続編で、リブート小説「ソードアート・オンライン プログレッシブ」シリーズを基に、ヒロイン・アスナの視点から物語を再構築して描かれているそうです。

何しろTVアニメは観ていないので、話についていくのがなかなか大変。とはいえ、基本ゲームの中で敵キャラを倒すという意味では問題なく筋を追えます。😁 

前作「星なき夜のアリア」で第一層から第四層までが描かれているようですが、本作は第4層のボス戦から始まります。アスナとキリトは共に協力し連携して戦うパートナーの位置づけです。

攻略の2大ギルドとして登場するキバオウ率いる「ALS」とリンド率いる「DKB」の関係は主義が相容れずに反目していていますが、それを利用して潰し合いを目論むヤツも出て来ます。それを知ったキリトたちは、アスナの親友ミトや情報屋アルゴの協力を得て 自分たちがボスを倒すことで防ごうとするわけです。

「SAO オーディナルスケール」も観ましたが、前後が飛んでしまっているので、そこを埋めるべきかどうか迷い中😔 
特にゲーム好きでもないので、はまるまではいかないかなぁと・・

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アクアマリンの神殿

2024年01月24日 | 
😓 海堂尊(著) 角川書店

桜宮市にある未来医学探究センター。そこでたったひとりで暮らしている佐々木アツシは、ある深刻な理由のため世界初の「コールドスリープ」技術により人工的な眠りにつき、五年の時を超えて目覚めた少年だ。“凍眠”中の睡眠学習により高度な学力を身につけていたが、中途編入した桜宮学園中等部では平凡な少年に見えるよう“擬態”する日々を送っていた。彼には、深夜に行う大切な業務がある。それは、センターで眠る美しい女性を見守ること。学園生活に馴染んでゆく一方で、少年は、ある重大な決断を迫られ苦悩することとなる。アツシが彼女のためにした「選択」とは?先端医療の歪みに挑む少年の成長を瑞々しく描いた、海堂尊の新境地長編!(「BOOK」データベースより)


「バチスタ」シリーズの桜宮ワールド に触れるのは久しぶりです。一通り完結したと思っていましたが、今作はあれからまた時間が流れているのね。「モルフェウスの領域」を踏まえた物語のようですが、肝心の「モルフェウス~」未読です。😥 

アツシ君はどうやら「ナイチンゲールの沈黙」に登場した男の子が「コールドスリープ」から目覚めた後の話で、医学ミステリーというより学園青春モノでした。
彼は「ナイチンゲールの沈黙」では、レティノブラストーマで小児病棟に入院している患者であり、「医学のたまご」ではスーパー高校医学生になっています。そして「モルフェウスの領域」で再び9歳の患者として登場するようで、時系列では前後していますが、キャラは一貫しています。

「佐々木アツシ問題」って何?と思いつつ読み進めていくと、どうやら「コールドスリープ」の間の個人情報の取り扱いについて政治的議論があるようで・・・
田口先生が彼のケースをちゃっかり論文発表して教授になっている時点でそもそも個人情報云々は解決してそうなものなのですが😓 そういえば、アツシ君の思考は田口センセにそっくりな気がしました😁 

こ難しい医学用語やらでひねくり回してはいても、根っこは思春期男子の揺れ動く感情がメインで描かれます。睡眠学習で膨大な知識は得られても、感情は学べないので、社会に適応し人として成長させるために西野は彼を二学年下の中学に編入させたわけです。

成績も含め平凡な生徒を装っていたアツシの正体を麻生夏美という少女が見抜きます。彼女の父親が有名なシンクタンクの上層部だったとしても、その観察眼は中学レベルじゃないけどね😝 
半ば強引にドロン同盟に入れられ、ボクシングバカで真っ直ぐな性格の蜂谷一航 と、悲劇のヒロイン願望の破綻的文学少女の北原野麦と4人の中学生活が、担任の門間 や日野原奈々、彼女の腰巾着の豊崎豊 とのいざこざを交えて面白おかしく進んでいきます。

中学高校でアツシはボクシング部に入りながら試合出場は頑なに拒否します。それは彼が義眼だからで、そもそも出場できないのね。高校の対抗試合で最初で最後のリングに上がり東雲高校の天才ボクサー神倉と拳を交えて彼の中で何かが変わります。(神倉がまた絵にかいたような気障なイケメンで逆にいつの時代だよ!と突っ込んでしまいました😙

西野がアツシの住むセンターでの合宿を夏美に許可したのも同年代の友人と交わることで心の成長を期待していたわけですね。蜂谷と野麦のバカップルぶりはともかく、夏美と野麦の立場が目まぐるしく移り変わったりのドタバタなど、高校生活もそれなりに楽しんでいるアツシです。

やがて涼子の凍眠の目覚めの時期が迫ってきます。涼子はアツシが凍眠中のメンテナンスをしていた元未来医学探求センター非常勤職員 でアツシが思慕する女性です。

涼子は西野に目覚め後の選択を聞かれ「佐々木アツシ問題が解決していたなら新しい記憶を、していなければ今までのままで」と答えています。その決定権はアツシに委ねられることになり悩む彼に的確なアドバイスをするのが夏美です。
夏美にも仄かな好意を抱いていたアツシでしたが、彼は涼子の記憶を消さないという最終決定をします。それは彼の個人情報が晒されることでもあるようですが、その辺の事情はよく理解できずに読了。😓 西野はアツシに飛び級で東城大医学部進学の道を示し去って行きます。西野と涼子は恋人関係だったように思えますが、だとしたら彼が涼子の記憶の消去を望んだ理由がよくわかりません。あるいは凍眠を選択した時点で涼子は西野ではなくアツシを選んだわけですから、アツシに嫉妬していた面もある?

田口先生の元を訪れたアツシは彼と一緒に現学長となっている高階 を訪ねます。立場が変わっても相も変わらず高階先生の掌で転がされてしまう田口先生でした。
そういえば、アツシがメールのやり取りをしている曾根崎伸一郎の名も登場し、シリーズの奥深さを感じさせてくれます。

いずれにしてもまずは「モルフェウス~」読まなきゃね😞 

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海の見える理髪店

2024年01月23日 | 
荻原浩(著) 集英社(出版)

伝えられなかった言葉。忘れられない後悔。もしも「あの時」に戻ることができたら…。母と娘、夫と妻、父と息子。近くて遠く、永遠のようで儚い家族の日々を描く物語六編。誰の人生にも必ず訪れる、喪失の痛みとその先に灯る小さな光が胸に染みる家族小説集。(「BOOK」データベースより)

6つのお話の短編集ですが、それぞれに胸に沁みました。

・海の見える理髪店
腕に惚れた大物俳優や政財界の名士が通いつめたという伝説の床屋に予約してやってきた「僕」に店主が問わず語りに話す彼の過去。
そういえば、床屋には小学校まで通っていたっけ。(今は幼児でもキッズ専用美容院に通うらしいが😅 )仰向けじゃなくて洗面台に頭を突っ込むスタイルや、散髪後の産毛剃りを懐かしく思い出しました。
「僕」のつむじが伏線になっていて、最後に二人の関係がわかるのですが、だからといって互いに名乗り合うわけでもなく店を出るのがまたしみじみとさせます。

・いつか来た道
自我の強い母の抑圧から逃れるように家を出た「私」は、弟から連絡をもらい16年ぶりに実家に帰ってきます。
この「母」が自分の親だったら、やっぱり反発しちゃうだろうな~と思わされます😔 老いた自分を認めたくなくて必死に娘の前で虚勢を張る姿を滑稽に思った娘でしたが、やがて母の病状に気付くと、過去の母への怒りを超えて切なさと慈しみの気持ちが芽生えてくるのね。反発の裏に隠されていたのは母に愛されたいと思う気持ちです。母の好物の桃を手土産にする時点で既に彼女は「母に認めてもらいたい子供」に戻っているんだよね😊 切なくて優しいお話です。

・遠くから来た手紙
仕事ばかりの夫と口うるさい義母に反発して子連れで実家に帰った祥子の元に届き始めた不思議なメールは・・・。
育児や義母の口出しに苛々が募っても、夫が話しを聞いてくれたらやり過ごせるけれど、その夫は仕事優先とくれば不満が溜まるのもわかるわかる😁 
でも祥子は離婚したいわけじゃなくて、ちょっと夫にお灸を据えたかっただけみたい。メールも電話もして来るなと言いながらも夫からの連絡を本当は待っているあたりが可愛いね。やけに時代がかった夫からのメールの正体は祖父が戦時中に祖母に送った手紙。亡き祖母が孫を心配して見せてくれた幻です。実家の机に隠していた初恋の相手だった夫との手紙を読み返した祥子はあの時の気持ちを思い出して・・・
まさに「犬も食わない」なんとやらで微笑ましいやら可笑しいやら。

・空は今日もスカイ
親が離婚して母の実家に連れられてきた茜は、家出をして海を目指します。
父親が夢に破れて酒に溺れたことが原因で離婚し、その父は酔って転落死しています。実家は既に弟夫婦が実権を握り居場所がなく肩身の狭い中、母は早く仕事を見つけて出なければと焦っていて、子供を振り返る余裕がないのね。茜は敏い子で、自分たち母子が疎まれていることを察しています。まだ両親仲が良かった頃の思い出の海に行こうと飛び出してきた彼女が、神社でやせ細った男の子と出会って一緒に海を目指すのです。独りでは出来なくても二人なら思い切った行動が取れるのは大人も子どもも変わらないかな。
森島陽太というその男の子をフォレストって呼んだり、茜が覚えたての英語を使いたがるのも子どもらしい微笑ましさがあります。
夜になり、知らない男の人に見つかって彼の「家」に泊めてもらう件はちょっとした冒険談です。でも翌朝、その人(ホームレスのようです)は警官に犯罪者扱いされてしまいます。おそらくは茜の母が捜索願を出していたのでしょう。
フォレストは、初め幽霊なのかと思いましたが、ポテチやビーフン汁を食べる描写があるので生身の人間ですね。とても12歳には見えない痩せ細った背中には酷い傷跡があり、食べ物もろくに与えられず犬のケージに入れられたりと親に虐待されていた様子で知的障害もあるようです。茜の訴えに耳を傾けようとしない警官たちでしたが、陽太が救われることを思わず祈ってしまいました。

・時のない時計
父の形見の腕時計の修理を頼んだ時計屋で、「私」は忘れていた父との思い出の断片が蘇ってきます。店内には沢山の時計。まぁ時計屋ですから当たり前ですが。腕時計を修理しながら店主はレトロな時計にまつわる話を語り始めます。鳩時計にディズニー時計、フリップ時計(パタパタと板が動いて時間を示す)、アニメの美少女戦士が描かれた目覚まし時計など、懐かしい時計たちが指している時間は店主の妻や娘の思い出の時間なのです。時計の針を巻き戻したいと思うかと尋ねられた私がないと答えると、彼は腕時計は高価なものではなく偽物だと言います。店主こそが後悔の中で生きていて、同調しなかった私に意地悪を言ったわけね。
ごく普通の父親と思っていた父が意外に見栄っ張りだったこと、その性格が「私」自身の中に受け継がれていることに気付いた「私」は、前に進むことを選択するんですね。

・成人式
5年前に中学生の娘を交通事故で亡くして以来、悲嘆に暮れる日々を過ごしてきた夫婦。父は過去の娘を映した映像を繰り返しみては思い出に浸り、母は娘の分の食事を食卓に並べ・・互いに悲しみを乗り越えようとしていたある日、成人式の晴れ着の案内が送られてきたことで再び悲嘆の淵に沈みそうになった彼らでしたが、娘に代わって成人式の替え玉出席を思いつきます。さすがに無理があるのだけれど、目標ができたことで妻は若返っていき、つられるように夫の気持ちも高揚します。
式当日、若者に交じって現実を直視せざるを得ない彼らは委縮する気持ちを奮い立たせて会場へ。当然「ご父兄の入場」を断られますが、そこに居合わせた娘の友人たちの協力で式に参加することができるのね。夫婦にとって、成人式は彼らなりの踏ん切りであり前に進むための儀式でもあります。突拍子もない行動ではありますが、夫婦の悲しみ、苦しみの靄が晴れることを願わずにはいられません。

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波紋

2024年01月22日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年5月26日公開 120分 G

須藤依子(筒井真理子)は「緑命会」という新興宗教を信仰し、祈りと勉強会に励みながら心穏やかな日々を過ごしていた。そんなある日、十数年前に失踪した夫・修(光石研)が突然帰ってくる。自分の父の介護を依子に押しつけたままいなくなった修は、がんになったので治療費を援助してほしいという。さらに息子・拓哉(磯村勇斗)は障害のある恋人(津田絵理奈 )を結婚相手として連れ帰り、パート先では理不尽な客に罵倒されるなど、自分ではどうしようもない苦難が次々と依子に降りかかる。湧きあがってくる黒い感情を、宗教にすがることで必死に押さえつけようとする依子だったが……。

「かもめ食堂」「彼らが本気で編むときは、」の荻上直子が監督・脚本を手がけ、震災、老々介護、新興宗教、障害者差別といった現代社会が抱える問題に次々と翻弄される家族の姿を描いた人間ドラマ。(映画.comより)

ホームレス役でムロツヨシも少しだけ登場しています😁 

ごく普通の専業主婦だった依子。マスクや水の本数限定売りなど原発事故が起こった直後と思われ、TVで流れる放射能のニュースに胡散臭気にケチをつける夫と、ダラダラしている一人息子を映し出します。
寝たきりの舅のおかゆは水道水で作り、自分たちは買ってきた水なところに、彼女の非頃の舅に対する鬱屈した感情が読み取れます。この舅、隙あらば胸に手を伸ばしてくるしな~~😖 きっと元気な頃も色々迷惑かけてたんだろうなと。

綺麗に手入れされた庭には美しい花々と鉢の中のメダカ。ところが庭で水まきをしていたはずの夫が突然いなくなります。口では放射能なんかと言いながら、実はビビッて一人逃げたらしい。😓 

場面は変わりそれから数年後。
枯山水に作り替えられた庭の手入れをしながら、新興宗教“緑命会”に入信し、祈りと勉強会に勤しむ依子の前に、失踪していた夫が現れます。
舅の介護を押し付けたまま姿を消した夫は、癌になったと言って当然のように家に上がり込み高額な先進医療費をせがみます。半年前に亡くなった舅の遺産の権利は自分にあると言い出す始末です。(依子さん、実は舅が亡くなる前に遺言してもらっていてしっかり遺産は自分のものになってるらしいが)
もし自分だったらこんな夫は即叩き出しますが、依子は失踪以前と変わりなく世話をします。目線は冷たいし最低限の会話しかしないけどね😓 

隣人(安藤玉恵 )の飼い猫が庭を荒らし、パート先では、難癖をつけて商品を半額に値切る客(柄本明)に大声で怒鳴られ、帰省した息子は障害のある彼女を結婚相手として連れてきます。息子に頼まれて彼女を東京名所に案内した後で、依子は「息子と別れて」と彼女に言いますが、逆に弱みを突かれてしまいます。(母親って息子には嫌われたくないのよね~~😣

湧き起こる黒い感情に苦しむ彼女に、“緑命会”の「師」(キムラ緑子)は修行と思って我慢するよう諭した上で特別な効果があるという高額な「水」を勧め、依子は飛びつきます。(完全にマインドコントロールされてるなあ)依子の家には会から購入した「水」が溢れていて祭壇にも水が置かれ舅の位牌などは引き出しに仕舞われたままなの。😅 

ホットフラッシュで辛そうな依子にパート先の同僚(木野花)が声をかけてきます。体を動かした方が良いと水泳を勧めた彼女とプールで会って話をするようになり、「師」の教えとは逆に、自分の気持ちを溜め込まないで発散させる方が良いと助言されます。この彼女、プールで倒れて入院するのですが、独り暮らしの家に残してきた二匹の亀の世話を依子が引き受けて部屋を訪れたところゴミ屋敷状態。地震で荒れた部屋にショックを受けて以来片付けられなくなったんだそうな。依子は彼女に部屋の片づけをさせて欲しいと申し出ます。年は違うけれど、二人はきっと心を許せる友人になっていくよね。💛

会の主催するホームレスへのボランティア活動の場で、メンバー(江口のりこ、平岩紙 )から夫への献身を称賛され複雑な胸中の依子。
夫の治療費を出す代わりに彼を会に連れていきますが、夫はその場をうまく取り繕ってしまいます。(会の歌とその振り付けが何とも怪し気で、本人たちが真面目で真剣なだけに余計に笑えます。)

夫の病状は悪化していき依子は介護に追われることに。そんな彼女に師は新たな「水」を勧めようとします。決して商売としてでなく善意から出ているだけに始末に悪いのよね。この時の無表情の依子がこ・・こわいぞ。😱 

夫が亡くなり、出棺の際に葬儀屋が誤って棺を枯山水に落としてしまいます。大変な失態なのに棺から腕が出てしまっている図は笑えます。固まる息子の横で彼女は遂に声を出して笑ってしまうのです。

息子が依子に「もう自由になればいい、昔やってたフラメンコとかまたやれば」的言葉を残して戻っていった後、依子は押さえつけていた感情を爆発させたかのように、雨の中、喪服姿でフラメンコのステップを踏みます。白の襦袢が次の瞬間赤に変わっていたのが印象に残りました。

枯山水の庭は依子の心の平安を保つための一種の儀式でありストッパーでもあった気がします。それが崩された時、夫や息子の呪縛から解き放たれて一人の女としてリセットしようと決意した姿がこの踊りに込められているように見えました。

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片見里荒川コネクション

2024年01月21日 | 
小野寺文宣(著) 幻冬舎

寝坊で卒論を出しそこね、留年が決定した22歳の海平。片見里の実家に報告に戻ると、ばあちゃんからこづかいとともに頼まれた。東京に出た同級生・中林継男を探してくれと。一方、大学入学で片見里から上京して、一人で生きてきた荒川在住の75歳の継男。同郷の次郎から「オレオレ詐欺」の受け子の代役を頼まれ、老女の家を訪ねることに。同じ片見里出身ということ以外接点がなかった継男と海平が荒川で出会った。継男はある〈ヤバい〉ことを海平に相談する。当たり前に正しく生きることの大切さが、優しく染みる、長編小説。(作品紹介より)


老人と青年の荒川での出会いが、足踏みしていた自分たちと、周りの人たちの人生を少しずつ動かしていく。人生を優しく肯定してくれる物語。(紹介文より)

75歳の継男と22歳の海平(サザエさんに出て来るような名前だな😉 )の接点は片見里出身であること。で、片見里というのはどうやら架空の地名のようですが、継男が住む荒川区東尾久は実在しています。というか、都電荒川線(さくらトラム)や尾久銀座商店街は知ってるし😁 

物語は、一月から十二月まで継男と海平の話が交互に語られる形式で進みます。

旧友の葬儀に出た継男は元カノの小本磨子と再会します。

海平は卒論提出締め切り当日に二度寝で出しそこねてまさかの留年となり、内定していた就職も取り消され、その翌日には彼女にも振られてしまうのですが、元はと言えば、彼のルーズさが招いたことで同情できません。前々から海平の甘さに気付いていた彼女にとって、留年自体が問題だったというより、彼の生き方が相容れなかったのよね。
この時点で海平はものすごく未熟な若者でした。

実家に帰って両親に事の次第を報告し留年の許可をもらった海平は、ばあちゃんから人探しを頼まれます。(半分は仕送りを減らされた孫への小遣いだけど。)その探し人が継男です。

荒川区東尾久に住む片見里出身の75歳の中林継男。それだけの情報で探し出すのは無理だよな~と思いつつも、東尾久に出かけて歩いてみる海平君。根は真面目で優しいのよね。でもただ歩き回るだけじゃ見つかりっこない・・のだけれど、たまたま入った焼き鳥屋であっさり情報GETしちゃうんですね。

ここから二人の交流が始まります。
継男は友人の次郎から頼まれたのが詐欺の受け子だと気付いて牛島しのい(83歳)さんが被害に遭うのを防ぎます。お金に困っていた次郎が報酬に釣られて引き込まれたのですが、一度目も失敗していたと知った継男はもう詐欺グループと手を切れと諭します。
それから二か月ほど経った頃、しのいさん宅に強盗が入ったという記事を新聞で読んだ継男は、詐欺と関連していると直感します。
しのいさんは詐欺未遂のことを警察に話していませんでしたが、強盗事件が起きたことで、刑事が継男を訪ねてきます。その翌日、継男の口の堅さや機転を評価した詐欺グループの元締めの男が勧誘に訪れます。😓 顔を曝して自ら勧誘ってちょっと?ですけど、それだけ継男を認めて仲間に欲しいと思ったということだと解釈。

次郎が脅されたりしたこともあり、このままでは済まないと感じた継男が海平に詐欺グループのことを調べて欲しいと頼んだことから、菩提寺の住職の徳弥とその友人で探偵の谷田といった片見里の「仲間」の協力の輪が広がっていくのです。結局、詐欺グループが彼らに再び接触することなく終わるのですが、捕まったわけでもないところが少しモヤモヤしますが、逆にリアルなのかもとも思いました。それにしても高齢者が被害者になるばかりでなく加害者にもなり得る現実ってなかなかシビアです。

お話に登場するお寺さんと門徒の関係は地方ならでの濃さとも思えるのですが、徳弥という住職の人間性によるところも大きい気がします。
徳弥が主人公の『片見里、二代目坊主と草食男子の不器用リベンジ』という前日譚も出ているようなので後日読んでみようかな。

妻は離婚後に亡くなり愛娘と疎遠になっていた次郎でしたが、本当は片見里に帰りたいと思っています。そんな彼の気持ちを察した継男は次郎の娘に会いに行き、さり気なく次郎の肩を押します。

海平と継男は血縁はないけれど祖父と孫のような関係になっていきます。自分の進む道が見えなかった海平でしたが、一年後、やりたい仕事を見つけてその門を叩こうとするのです。プーマのスニーカーと革靴が伏線になっていました。
うん、人生何がきっかけになるか、本当にわからないものですね。

年齢的には継男の方に親近感を持ちます。体力は若い頃と同じとは行かなくても気力は保ち続けたいなぁ😀 

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ウィ、シェフ!

2024年01月20日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年5月5日公開 フランス 97分 G

一流レストランでスーシェフを務める女性カティ(オドレイ・ラミー)は、シェフと大ゲンカして店を飛び出してしまう。やっとのことで見つけた新しい職場は移民の少年たちが暮らす自立支援施設で、まともな食材も器材もない。施設長ロレンゾ(フランソワ・クリュゼ)は不満を訴えるカティに、少年たちを調理アシスタントにしようと提案。料理がつないだ絆は少年たちの未来のみならず、天涯孤独で人づきあいが苦手だったカティの人生にも変化をもたらしていく。

孤独なシェフと移民の少年たちが料理を通して交流する姿を、実在のシェフであるカトリーヌ・グロージャンをモデルに描いたフランス製コメディドラマです。
(映画.comより)


カティの夢は、いつか自分のレストランを開くこと。でも、彼女が考案したレシピの料理の味を巡って口論となり店を飛び出します。ようやく見つけた職場は移⺠の少年たちが暮らす自立支援施設です。施設⻑のロレンゾが書いた募集の文面に騙された感じね😁 
厨房の場所を聞いても言葉が通じていないのか無視。やっと案内されても缶詰ばかりでまともな食材もなく器材もない・・・
大勢の食事の準備を一人でしているので、昼食が出来上がった時は14時を過ぎてます。そりゃ、高級店のように一皿ずつ盛り付けてたら当たり前だ!

質より量というロレンゾに不満をぶつけると、彼は少年たちを調理アシスタントにしてはと提案します。
それを受け入れたカティでしたが、逆に足手まといになり、思わずキツイ言葉を投げつけて傷つけてしまいます。
ロレンゾから、彼らは親元から遠く離れて慣れない異国で強制送還を恐れながら暮らしているとその過酷な環境を指摘されて、カティは考えを改めることになります。

実は彼女も施設出身者だったということが後に明かされます。
人付き合いが苦手で個人主義のカティでしたが、不器用なりに少年たちと交流するようになり、次第に彼らの信頼を得ていくと同時に自身の教育者としての資質に気付いて、夢を違った形で実現していきます。

フランスでは同伴者のない移民児童が18歳までに何かしらの資格や教育を受けなければ国外追放となります。映画の中で、施設にいる少年が骨の状態から年齢を推定されて国外退去となるエピソードに、その過酷な現状が示されています。

少年たちが大好きなをサッカーチームに例えて料理のチームを構成し教える様子が何とも愉快で微笑ましくもあります。元の職場である一流レストランに予約を入れて少年たちを連れて行く場面も楽しかったな😀 

料理の対決番組に出演したカティは勝ち残って最終決戦に臨むことになるのですが、何とそこにいたのは施設の少年たち。TVで生中継されている番組の中で彼らは料理をしながら自分たちの現状を話して支援を訴えるのです。
料理人としての栄光より少年たちの未来を優先したカティの選択に拍手を送りたくなりました。
TVリポーターの傲慢な態度が業界を皮肉っていたのも滑稽でした。😂 

映画に登場するカティ考案の料理がとっても芸術的で美しいのですが、これは彼女に料理の楽しさを教えてくれた人との思い出の料理なのね💛


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劇場版 ソードアート・オンライン オーディナル・スケール

2024年01月19日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2017年2月18日公開 119分 G
2023年1月10日放送 フジテレビ

VR(仮想空間)世界へのダイブ機能を排除した代わりに、AR(拡張現実)機能を最大限に広げた最先端ウェアラブル・マルチデバイス「オーグマー」が発売され、「オーディル・スケール」と呼ばれる専用のARMMO RPGによって、オーグマーは瞬く間に世間に広まっていく。アスナたちもプレイしているそのゲームに、キリトも参戦しようとするのだが……。(あらすじ紹介より)


謎の次世代オンラインゲーム「ソードアート・オンライン」の仮想空間に閉じ込められた少年キリトが、仲間と共にゲームクリアを目指す姿を描いたテレビアニメ「ソードアート・オンライン」の劇場版で、原作は川原礫のライトノベルですが、劇場版は川原の書き下ろしオリジナルストーリーです。といっても、たまたまTV録画していたのを観ただけなので、内容がイマイチ頭に入ってません😓 

予備知識
オーグマーは、覚醒状態の人間に視覚・聴覚・触覚情報を送り込むことが可能で、フィットネスや健康管理をゲーム感覚で楽しめる代物です。
オーディナル・スケール(OS)の特徴はランキング・システムにあり、ランク上位のプレイヤーに圧倒的な力が与えられます。

SAO(ソードアートオンライン)事件のサバイバーとして学校に通うアスナは、今はオーグマーを装着した新しいゲーム「オーディナル・スケール(AS)」でポイントを稼いでいますが、キリトは生身の肉体を使って、キャラを倒すことに抵抗を感じ冷めています。
そのASに旧SAOの各階層のボスモンスターが出るという噂を聞いてキリトが呼び出されボーナスステージに駆け付けますが、ゲームと生身のギャップにうまく対応できずにいると、歌姫ユナが現れて場が盛り上がる中、アスナが元SAOの攻略組としてボスキャラを仕留めます。

ASでナンバー2のエイジは、クラインらを襲い恐怖を上書して病院送りにします。エイジは元SAOの血盟騎士団「ノーチラス」では影の薄い存在でしたがASでは強いのね。一人ASの練習をしていたキリトの前に白服の少女が現れるとある方向を指さして消えます。

翌日、アスナ、シリカ、リズが「AS」イベントに参加しますが、ボスモンスターとの戦闘でシリカを庇って恐怖に襲われたアスナは戦闘不能になり、それ以後旧アインクラッドの記憶がぼやけてしまいます。

アスナの病院に付き添ったキリトは、SAOの2年間の記憶部位に衝撃を受けて記憶障害を起こし、今後も進行する可能性があると聞かされます。入院中のクラインも同様に旧SAOの記憶がないことに気付いたキリトは、例の少女が指さした場所を検索させて東都工業大学の重村教授を訪ねるとオーグマーと記憶障害の関係性を指摘しますが、はぐらかされてしまいます。

アスナの家を初めて訪問したキリトは、彼女を抱きしめ記憶を絶対に取り戻すと誓います。
キリトに感づかれた重村はエイジに計画を急がせ、一方キリトは白服の少女が旧SAOにいたユウナであり彼女がユナと似ていることを思い出します。 ユウナにランクを上げないとオーグマーに近づけないとアドバイスされ、キリトは「AS」のイベントに全参加してボス戦をこなしポイントを一桁にランクアップします。

ユナのライブが新国立競技場で始まります。キリトは地下駐車場でエイジと対決し倒します。重村教授の真の目的は、旧SAOで亡くなった娘ユウナをAIとして再構築するために彼女の記憶を持つSAO帰還者のSAO内での恐怖記憶を奪うことでした。(って、よくわからんけど😓
ライブ終了後に無数のボスキャラが現れ、閉じ込められたSAO帰還者の恐怖を利用して記憶を高出力でスキャンしようとしますが、それを行うと全員脳死してしまうのです。ユウナが止めても重村は聞く耳を持たず、エイジからも記憶を奪おうとします。

アインクラッド百層のモンスターのドロップアイテムで全モンスターを倒せると、ユウナはキリトたちを百層へ送り込みアスナも参戦します。
このボス戦はいわゆる仲間と一致団結しての戦いで、ヒーローものによくあるパターンですね。😁 

ボスを倒すと、実体化されたユウナが旧SAO生還者から取得した恐怖の記憶を返却し、エイジに感謝して消えます。重村の計画は失敗に終わり連行されます。
SAOサバイバーの本には2版からユウナの項目が追加されました。

キリトとアスナは堂平山で流星を眺め、改めてキリトはアスナの指に指輪をはめます。

で・・まだ続くらしいぞ😔 

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カラオケ行こ!

2024年01月17日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2024年1月12日公開 107分 G

中学校で合唱部の部長を務める岡聡実(齋藤潤)は、ある日突然、見知らぬヤクザの成田狂児(綾野剛)からカラオケに誘われる。戸惑う聡実に、狂児は歌のレッスンをしてほしいと依頼。組長(北村一輝)が主催するカラオケ大会で最下位になった者に待ち受ける恐怖の罰ゲームを免れるため、どうしても歌がうまくならなければならないのだという。狂児の勝負曲は、X JAPANの「紅」。嫌々ながらも歌唱指導を引き受ける羽目になった聡実は、カラオケを通じて少しずつ狂児と親しくなっていくが……。(映画.comより)


変声期に悩む合唱部の男子中学生と歌がうまくなりたいヤクザの交流をコミカルに描いた和山やまのコミックの実写映画化です。
ヤクザが中学生に歌を教わるという設定がまずぶっとんでますね。😁 

観賞特典に原作コミックのポストカード(裏はカレンダー)を貰いました。

冒頭、雨の中ずぶぬれになった男の白いワイシャツから透けて見える背中から腕にかけて「もんもん」が浮かび上がります。明らかにヤクザのその男、祭林組若頭補佐 の成田狂児がふと足を止めたのは岡たち中学生の合唱コンクールが行われているホールの前でした。
組のカラオケ大会で最下位になると罰ゲームで組長から下手くそな刺青を入れられてしまのですが、これまで歌下手王だったハイエナの兄貴(橋本じゅん)がとうとう歌の教室に通い始めたことを知り絶望した狂児の耳に入ってきたのが岡たちの美しい歌声だったのです。

ももちゃん先生(芳根京子)が置き忘れたトロフィーを取りに戻った聡実の前に現れた狂児は「カラオケ行こ!」と誘います。
カラオケ店の個室で、聡実に名刺を差し出した狂児は“ブラック企業”に勤めていると言いながら(組長を社長と誤魔化すけれど誤魔化しきれないのが笑えます。しまいに開き直るし)事情を説明した彼は歌を教えて欲しいと頼みます。
一曲だけでいいから聴いてくれとX JAPANの「紅」を歌い始めた狂児に、聡実は「裏声が気持ち悪い」とダメ出しをして(真面目だけど毒舌なキャラなのね)逃げるように帰ってしまいます。

ところが翌日、聡実が忘れて行った傘(見ようによってはハワイのブランド品にも見えますが何とも奇抜な亀の柄です。)をさした狂児が学校に現れます。
(聡実の両親(宮崎吐夢、坂井真紀)はごく普通の関西人って感じで、「新しい傘を買って」という聡実に同じブランドの「鶴」柄の傘を買ってきて笑えます。😁

渋々狂児のカラオケに付き合うようになった聡実は、狂児の優しい人柄にふれ、彼とのカラオケが楽しみになっていきます。
狂児はX JAPANの「紅」が十八番ですが、音域が合っておらず上手とは言えません。
「好きな歌と得意な歌は違う」とアドバイスする聡実は、彼の音域に合った曲をリストアップします(寺尾聡の「ルビーの指輪」とか)が、狂児は決めかねている様子。
狂児役の綾野さんの「紅」を始めとする歌(絶妙に下手なのはもちろん芝居だよね😥 )の熱唱が見所の一つです。

聡実が部長を務める合唱部は前年優勝したコンクールで今回は3位でしたが、その原因の一つにソプラノパートを務める彼が変声期に入ったことがあるように見えます。天然キャラの顧問(代理?)のもも先生はわかっていなかったみたいだけど。😅 優勝を逃した原因を追究しようとする後輩の和田(後聖人)の空回りする熱意のお守り役は副部長の中川(八木美樹)です。
次の大会でソロパートを任されている聡実でしたが、声が変わっていくことに動揺する彼は練習をさぼって幽霊部員として所属している「映画を見る部」で栗山(井澤徹)に狂児のことを相談しながら昔の名画を観て過ごします。

ある日、狂児から他の組員へのアドバイスも求められ、ハイエナの兄貴や唐田(やべきょうすけ)ら強面の面々を前に辛口の評価をする聡実。組員たちの個性あふれる歌とそれに対する容赦ない聡実の指摘(突っ込み)が笑えます。「リズムに乗れていないのでちゃんと聴いてください」「息が続いていないので体力をつけてください」までは良いけれど、最後は「カスです」だもんな。😓 そりゃ怒るわ!
怯えながらも「録音して自分の声を聴いてください。」とアドバイスをした聡実は、車で送ってもらった帰り道、狂児に「もう付き合いきれない」と言います。狂児は「聡実くんはまだ中学生だもんな」と素直に引き下がります。この時の狂児のちょっと寂し気な表情にキュン😍 

練習の付き合いを断ったものの、寂しさを感じて「狂児さんだけなら」と自分からカラオケに誘う聡実。二人のレッスンが再開します。「紅」の英語の歌詞を関西弁に和訳する場面が最高です!このエピソードがあるからこそ、後に聡実が歌う「紅」に気持ちを持っていかれちゃうのね。

部活に顔を出さなくなった聡実を探して「映画を見る部」にやってきた和田が、デッキを壊してしまいます。代わりを探してミナミ銀座(狂児にあぶない場所と禁じられていました)にやってきた聡実は、ヤクザ風の男(組の御法度に触れて破門された元組員)に絡まれたところを狂児に助けられます。今までの優しい雰囲気から一転、ヤクザの顔になる狂児が恐カッコイイ!!
聡実にデッキを買ってあげた狂児は「二度とこんなところ来るなよ」と言いました。(この展開は、奴の報復を予感させますね。)

カラオケ大会の日と合唱祭の日が重なると知りお互い頑張ろうと言う狂児に、聡実はソプラノが綺麗に出せなくなったことを話します。すると彼は「綺麗なもんしかあかんかったらこの街も俺らも消えてしまう」と言うのね。それを聞いて聡実の心が軽くなるの。うん、良いこと言うな~~惚れてまうやん😍 

両親それぞれからお守りを貰った聡実は狂児にもあげようとLINEを送りますが、学校にやってきた狂児が、聡実が和田や中川と話しているのを見て茶化したことに怒って渡すはずだったお守りを投げつけます。LINEで謝る狂児に「もう練習付き合わない」と返すと狂児はあっさり引き下がり、ちょっと寂しくなる聡実です。(なんか恋人どうしの痴話げんかみたいだぞ😁

合唱祭の会場に向かうバスの中から、カラオケ店の前で車の衝突事故現場を目にした聡実は動揺します。それは狂児の車で、担架で運ばれた人の顔は見えなかったけれど、近くに彼の音叉が落ちていたからです。
会場に着いても気もそぞろな聡実は「ごめんなさい、歌えません」と会場を飛び出し、カラオケ大会が催されているスナックに乗り込むと狂児のことを聞きます。すると組長は「あいつは地獄に行った。」と答えます。平然とカラオケを続けようとする彼らにショックを受け「やっぱりヤクザは最低だ!」と叫ぶ聡実に組長はマイクを突きつけます。「紅」を歌い始める聡実。失った人を想う歌 だということをこの時思い知らされます。サビの高音はうまく出ませんが、思いのこもった熱唱に泣きそうになりました。コメディでまさか泣かされるとは!!ももちゃん先生の口癖の「最後は愛や!」が実感になります。

ところがそこに「ええもん見せてもらったわ」と聞き覚えのある声が!狂児が死んだというのは組長のジョークで、彼はピンピンしていました。担架で運ばれていたのは、聡実に絡んできたアイツで、車で突っ込んできた彼を逆に狂児がボコっていたのでした😁 

カラオケ大会が終わって狂児と会うこともなくなり連絡も取れなくなります。卒業式の日、狂児とのことは「幻だったのかも」と栗山に言われ、思わずミナミ銀座に彼の姿を探す聡実。ふとポケットを探ると、狂児の名刺が出てきて、「ちゃんといたじゃん」と安堵したようにつぶやく聡実なのでした。

数年後、ミナミ銀座の跡地に建つビルを眺める狂児の姿がありました。

観終わっても頭の中に「紅」がリフレイン😀 

何と言っても狂児のキャラが際立っています。本当は「京二」だったのに実父に勝手に書き換えられた出生届が彼の運命を変えたのは悲劇なの?喜劇なの?😥 
それでも家族仲は良いみたいだし、ヤクザなのにとっても優しいし、穏やかだし(切れると怖いけど)で、愛情溢れる人情家を綾野さんが見事に演じていました。

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マンション フォンティーヌ

2024年01月16日 | 
小路幸也 (著) 祥伝社 

逃げて辿り着いたその〈場所〉が守ってくれる
小説家になった羽見晃が入居を決めたのは、墨田区鐘ヶ淵にある築六十年、二階建ての〈マンション フォンティーヌ〉だった。真っ白いアーチの入口、中庭には噴水と少女像、花壇もあって、フランスにありそうな建物。管理人嶌谷さんの腕には本物の入れ墨があったり、大家のリアーヌさんは七十八歳のフランス人だったり色々変わっている。三十年もいる教授や生まれた国を追われたハーフの男性とかワケありな人が多く住んでいるけれど、みんな優しくて仲がいい。ガーデンパーティ中、三号室の三科さんが元DV夫から追われていることを知り、住人たちで役割分担をして守ることに。でも同時に、思わぬ人物がマンションを訪れていて……。(内容紹介より)

住むと幸せになれる不思議な場所?
ワケあり住人と強面の管理人で繰り広げられる心温まる人間ドラマ。

単行本の表紙の温かな

・羽見晃 29歳 小説家
難病を発症して退職するが、初めて書いた小説が受賞して作家デビューをした晃が不動産屋の野木と下見に訪れたのがマンション フォンティーヌ です。
表紙絵からも温かで心安らぐ雰囲気が伝わってきます。
一目で気に入って即決した晃がまず紹介された管理人さんの腕には明らかに筋者と思しき刺青が・・・あらら😓 

・嶌谷拓次 45歳 管理人
刑務所を出たり入ったりしていた嶌谷ですが、本当は優しい人柄のようです。
二か月前に紹介されてこのマンションの管理人になった彼は、これまでに身につけた技能を生かして殆どの修繕をこなしています。

・貫田慶一郎 33歳 海外送金所勤務・通訳
フランス生まれの慶一郎はわけあって3年前に知人の日本を訪れ、知人の紹介でこのマンション住み始めました。
彼も何だかわけありで日本に悪感情を抱いているようです。
仕事帰り、同じマンションに住む坂上麻美奈と偶然出会い夕食を共にした帰り道、トラブルに冷静に対処する嶌谷に遭遇します。空手の有段者の麻美奈は嶌谷が筋者だと見抜きます。

・坂東深雪 58歳 M大学文学部教授
日本文学兼文芸メディアの教授をしている坂東は住人歴30年。
羽見の引っ越しを手伝い仲良くなります。物書きという他に、共通の編集者の知人がいたりするので、その後の物語にも関わってきそう。
リアーヌの部屋で引っ越し蕎麦ならぬパスタをご馳走になりながら、羽見はリアーヌの家族の物語を聞くことになります。

・野木翔 44歳 花丸不動産ロイヤルホーム部長
野木は先輩からこのマンションの担当を受け継いでいます。大家のリアーヌは住人と家族のように暮らすことを望んでいるので、紹介する人間についても彼なりに責任を持って臨んでいます。実は野木は嶌谷の後輩に当たり、中学生の時に高校生に絡まれた野木を助けてくれた恩を感じており、嶌谷が決して悪人ではないことを知っていたので、管理人として再会したことを喜んでいるのです。

・鈴木幸介 35歳 大日印刷株式会社第一課営業
 鈴木菜名 38歳 株式会社集円社出版校閲部
鍵を忘れて帰宅した幸介が合鍵を借りようと嶌谷の部屋を訪ねたことから一緒に夕食を共にすることになります。会話の中で嶌谷が何かわけありの過去を持つことを察しますがそこに触れて欲しくない様子。幸介も自分たち夫婦は子供ができないことを話します。合流した菜名は二人が仲良くなりそうな空気を感じて喜びます。嶌谷の話の中に出てきた「妹」「千葉」の言葉を聞いて菜名は何かに気付いた様子・・。

・一谷倫子 28歳 蓼凪建設庶務一課勤務
 坂上麻美奈 23歳 ファッションブランドショップ店員
倫子と麻美奈は同性愛者です。リアーヌさんは二人の関係を知っていますが、外では公にしていません。
貫田と食事をした数日後に今度は菜名と食事をすることになり、嶌谷の話が出た時に、奈名から知り合いが嶌谷の長い間会っていないという妹なのではないかと相談され・・・

・三科百合 27歳 いとファクトリー縫製・パタンナー
 三科杏 5歳 幼稚園年長さん
夫からDVを受けていた百合に友人の佐々木慈美が気付いて彼女を逃がします。慈美から相談を受けた彼女の上司の野木から弁護士を紹介してもらい離婚してこのマンションに引っ越していました。ところが、リアーヌから事情を聞かされていた嶌谷が最寄り駅で元夫が待ち伏せしているのに気付きます。

・リアーヌ・ポネ(如月理亜音) 78歳 大家
リアーヌの戸籍上の夫は彼女の父親の親友で、母娘の窮地を救い日本に連れて来た人でした。彼はリアーヌたちのためにこのマンションを建ててくれていました。如月もリアーヌの父も軍人でおそらくは二重スパイだったと思われ、彼女自身ちょっと危ない、でも悪人ではない男性に惹かれる傾向があったようです。嶌谷の過去を承知で、いえ、だからこそ彼を管理人に選んだのね。そして百合のためにマンションの住人一同に協力を求めることに・・・。

・橋本杏子 35歳 株式会社祥殿社文藝編集
羽見との次回作の打ち合わせのためにマンションを訪れた杏子は、23年前に分かれた兄が嶌谷拓次だと知ります。
彼女が訪れたこの日、百合の元夫に諦めさせるための作戦が住民一同の協力のもと決行されていました。

嶌谷の発案で彼が百合の夫として振舞う姿を元夫に見せて諦めさせる計画が進行していました。嶌谷のガタイの良さと醸し出す雰囲気に怯んでつき纏いを諦めるだろうというのです。この日、駅で元夫の姿(前もって画像を共有していました)を見かけた麻美奈が一斉ラインで知らせ、嶌谷と百合が睦まじげに改札を通って見せつけるという計画は、麻美奈がこっそり撮影していた動画を皆で検証して成功と判断されます。でももうしばらくは監視の目を続けることに。

20数年ぶりに兄妹の再会を果たし、杏子も空いている5号室に引っ越してくることになります。野木と杏子、嶌谷と百合も何だか良い感じになりそうな気が・・・

不思議な縁で繋がっていく住民たち、ちょっと出来過ぎな感もありますが、こんなアットホームなマンション、住んでみたいと思わされ、心もほっこりします。😀 








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不思議の国の数学者

2024年01月14日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年4月28日公開 韓国 117分 G

学問と思想の自由を求めて脱北した天才数学者ハクソン(チェ・ミンシク)。彼は自分の正体を隠したまま、上位1%の英才が集まる名門私立高校の夜間警備員として生きている。冷たく不愛想なため学生たちから避けられているハクソンはある日、数学が苦手なジウ(キム・ドンフィ)に数学を教えてほしいとせがまれる。正解だけをよしとする世の中でさまよっていたジウに問題を解く「過程」の大切さを教える中で、ハクソンは予期せぬ人生の転換点を迎えることとなる。(公式HPより)

脱北した天才数学者と挫折寸前の劣等生。現実に失望しかけた2人が出会い、数学を通して人生を見つめ直していく物語です。
数学の美しさを音楽で表現した円周率から作られた「πソング」のピアノ演奏シーンは秀逸です。


ソウルの進学校・ドンフン高校に特例入学したハン・ジウは、授業のレベルについていけずに落ちこぼれ、担任で数学教師のグノ(パク・ビョンウン)から「転校」を仄めかされています。ここでビリになるより一般の高校で一番になる方が将来のためでもあるという彼の言い分には一理あるのですが、ジウにも事情があるようです。

そんなある日、寮生活のジウは、同室の仲間の使い走りで酒を買ってきたところを夜間警備員のハクソンに見つかってしまいます。仲間を庇ったジウは一か月の退寮を言い渡され家に戻りますが、息子を誇りにしている母に言えずに学校に戻ってきます。行き場もなく雨宿りしていたジウを見つけたハクソンは仕方なく彼を警備員室に泊めてやります。
 
翌日、グノから出された宿題を警備員が全問解いていたと知ったジウは、彼に数学を教えて欲しいと懇願します。ハクソンは秘密を守る・数学以外のことを尋ねないなどのルールを守ることを条件に渋々ジウに数学を教えることにします。授業料はハクソンが愛飲するイチゴ牛乳で、数学者とイチゴ牛乳のギャップが面白いです。

彼の最初の授業は直角三角形の面積を問うものでした。実は問題自体に誤りがあるのですが、ジウは最初気付きません。問題の数字自体を疑う事をせず答えを出そうとしたからです。ハクソンは数学本来の面白さや奥深さをジウに教えていきます。
性急に答えを求めるのではなく、それを導き出すための過程こそが大事でそこに数学の面白さがあるということを映画は改めて教えてくれました。

ジウの行動を怪しんで尾けてきたクラスメイトのポラム(チョ・ユンソ)と演奏したπの曲が本当に美しく心に染み入ります。まさか音楽と数学がこのように重なるとは想像もしていませんでした。
ハクソンはクラシック音楽好き。ラジカセで聴くバッハのチェロ組曲第1番プレリュード は音が悪いのですが、ジウがスマホで流した曲に感動しながらも素直に喜びを見せないところが何だか可愛いの。😁 
(後日、ポラムから貰ったチケットでジウとコンサートに出かけたハクソンが、生の演奏に感動して涙する場面も良かったです。)

学校の皆から「人民軍」、ジウからおじさんと呼ばれているハクソンの正体は学問と自由のために脱北してきた天才数学者です。
ドイツの数学者ベルンヘルト・リーマンが提唱したリーマン予想の証明にあと一歩というところで、息子シクを連れて脱北したハクソンでしたが、数学に興味を持てないシクは北の生活(おそらく上級国民として何不自由なく生きていたのでしょう)が忘れられず、数学の研究に没頭する父との間に溝が広がります。北に戻ろうと川を渡るシクが射殺され、韓国にも絶望したハクソンでしたが、それでも数学への想いは変わらなかったのですね。

超難問ばかりを出題する「ピタゴラス・アワード」が開催され、期末テストの代わりに評価されることになります。
グノは数学の過程ではなく結果を重視する塾型の教師で、特例入学の生徒(家庭環境や貧困といった社会的弱者)に偏見を持ち、落ちこぼれると容赦なく転校を勧めます。高1で既に一般の高3の範囲をこなすのですから、特例とはいえ賢くなければ入学できない中、多くが裕福な家庭に育ち塾にも通っている生徒たちとはどうしても学力の差が出て来るのは当然なのに、グノは裕福な家の生徒にしか目を向けられません。更にジウが問題の不備を指摘した際には、出題者の意図に沿った回答こそが正解だと逆切れする始末です。しかも塾の講師と結託してテスト問題の漏洩に加担するのですから人としても最低だな。😡 ある意味、試験の結果で将来が決まる韓国の学歴社会を体現しているキャラでもありました。

「ピタゴラス・アワード」の問題がグノに紹介された塾で出されたものと同じと気付いたポラムは白紙回答で教室を出ます。学校の裏サイトに試験問題の漏洩を告発しますが、グノはジウに罪をなすりつけて転校を強要します。

脱北団体の代表でハクソンを支援しているギチョル(パク・ヘジュン)からスマホを貰って数学の論文を検索して読んでいるハクソンを見て、ジウは学校のPCから論文をプリントアウトして渡していましたが、その行為を疑われ利用されたのです。

転校を条件に罪を不問にするということになり、失意のまま学校を去ろうとしたジウを引き留めたのはポラム。彼女の行為に巻き込まれた結果なのだから当然といえば当然ですが。
ポラムから事情を聞いたハクソンが学校に現れスピーチを始めます。
ハクソンの正体が公にされると、南北の政治的な駆け引きも起こり、嫌気がさした彼は姿を消そうとしていましたが、そこにポラムから連絡を受けたようです。
ハクソンは北で自分の研究が軍事利用されることに堪えられずに脱北したこと、自分の行為が息子を死に追いやったことを告白し、試験の結果だけを問う南の教育を批判した上で、ジウの無実を証明します。いきり立つグノの態度は不信感しか生まず、自ら疑惑を肯定する結果となるのは皮肉ですね。

実はギチョルはハクソンの監視役(彼に渡したスマホにはGPSが仕込まれていました)でもあったのですが、悩んだ末に、ハクソンに航空券とパスポートを渡し彼を逃がします。

3年後、ドイツのオーバーヴォルファッハ研究所に招かれたジウたち学生一行。そこにはハクソンがいました。微笑み合いハグをする二人を映した後、”QED(証明終了)”の文字で締めくくられます。

難しい数式はさっぱりわからないけれど、数学に擬えて人生で大切なことは結果ではなくそこに至る過程だということを伝えてくれる作品でした。

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わたしの幸せな結婚

2024年01月13日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年3月17日公開 115分 G

文明開化もめざましい近代日本。特殊な能力【異能】を受け継ぐ家系の者たちが代々、国を治める帝(石橋蓮司)と共に、様々な災いから人々を守り続けてきた。帝都に屋敷を構える異能家系の長女・斎森美世(今田美桜)は、能力を持たずに生まれたことで、継母と異母妹から虐げられて生きてきた。すべてを諦め、耐え忍んで生きる彼女に命じられたのは、若くして異能部隊を率いる、冷酷無慈悲な軍人・久堂清霞(目黒蓮)との政略結婚だった。数多の婚約者候補が三日も持たずに逃げ出したという噂の通り、清霞は美世に冷たく言い放つ。
「ここでは私の言うことに絶対従え。出ていけと言ったら出ていけ。死ねと言ったら死ね−− 」
辛く当たられようと逃げ帰る場所のない美世は、久堂家で過ごすうち、清霞が悪評通りの人物ではないことに気づいていく。そして清霞もまた、美世の心遣いに触れ、いつしか2人は互いに心を通わせるようになる。幸せなど到底ないと思われた政略結婚に光が差し込む。
『望んでしまった。少しでも長くこの人と居たいと−− 』
しかしその頃帝都で、不穏な【災い】が次々に人々を襲う事件が発生。清霞はその最中で国民の盾となることを命じられる。命を賭して戦う清霞。その身を案ずる美世。【災い】の影には、思いもよらぬ陰謀が渦巻いていた。任務を全うする清霞の背後で、美世にも魔の手が迫る。
やがて残酷な運命が、容赦なく二人を切り裂いていく−−(公式HPより)


顎木あくみの和風ファンタジー小説の映画化で、明治・大正期を彷彿とさせる架空の世界を舞台に、心を閉ざしたエリート軍人と、家族に虐げられて育った少女の政略結婚から始まるラブストーリーです。 

美世の両親は政略結婚でしたが、彼女が2歳の時に母親(土屋太鳳)が亡くなります。父親(高橋努)が香乃子( 山口紗弥加)と再婚して異母妹の異能を持つ香耶(髙石あかり)が生まれたことで、異能を持たない美世は家族から疎まれて教育も満足に受けさせて貰えず虐げられて育ちます。

香耶が美世の理解者だった辰石幸次(小越勇輝)と婚約すると、美世は異能者の名家・久堂家の当主・清霞の婚約者候補として斎森家から追い出されます。

「ここでは私の言うことに絶対に従え」と言う清霞に美世は「かしこまりました」と答え、翌朝は早くに起きて朝食の支度を整えます。席について先に食べるよう言われて躊躇う美世に「毒でも盛ったのか」と言い席を立つ清霞でしたが、些細なことにも謝罪を繰り返す美世が今までの令嬢たちとは違うことに気付きます。
清霞から掛けられた言葉に嬉し涙を流したり、古びた着物を纏いあかぎれだらけの手をした痩せ細った美世の様子から、清霞は彼女の生い立ちを調べさせます。

美世を伴い町に出かけた清霞は、久堂家御用達の呉服店で美世の着物を見繕い、櫛を贈ります。ゆり江(山本未來)に化粧をしてもらった美世は美しく、櫛のお礼を口にし嬉しそうに微笑む姿に心惹かれていく清霞。
報告書を読み、美世が些細なことで謝罪を繰り返し、笑うことさえできなくなった理由を知った清霞は斎森家を訪ねると、美世との結婚の条件に彼女に謝罪することを要求します。この時清霞を見かけた香耶は彼に一目惚れします。

櫛のお返しに組紐を作ろうと材料を買いに出た美世でしたが、香耶に出くわし恐怖でパニックを起こしたところを鶴木家の御曹司・新(渡邊圭祐)に助けられます。

斎森家で唯一自分の味方をしてくれた使用人・花( 小林涼子)が突然訪ねてきます。幼い美世を庇ったために解雇された花は、清霞から手紙を受け取って会いにきたのでした。
全てを打ち明け謝罪し、せめてものお詫びと感謝の気持ちとして組紐を差し出した美世に、清霞は「正式に婚約したいと思っている」と言います。

初夏の頃、呉服屋から母親の形見に似た桜色の着物が届けられます。喜ぶ美世の姿に清霞の心も華やぎますが、そんな中、清霞は美世が悪夢にうなされているのに気付きます。

清霞に一目惚れした香耶の願いを聞き入れた両親は、薄刃家の血筋を狙う辰石家当主実(平山祐介)を抱き込むと、美世を拉致して斎森家の蔵に閉じ込めます。
手足を縛られ香乃子と香耶に暴力を振るわれて、清霞との縁談を断るよう責められながら、美世はきっぱり拒絶します。幸次から連絡を受け斎森家に駆け付けた清霞は、その能力で門を破壊し、止めようとする実の異能の炎は清霞の結界に阻まれて屋敷内に燃え広がります。蔵に辿り着いた清霞は美世を抱き上げ斎森家を出ます。
屋敷が全焼した斎森家は別邸に移っていき、辰石家は久堂家の監督下に置かれます。

美世の母は鶴木家の出で新の祖父・鶴木義浪(火野正平)から美世も異能の持ち主であることを告げられます。悪夢を抑えるため鶴木家に留まることを求められます。

冒頭で「災い」が何者かによって解き放たれますが、それは帝の専属医師の枢木忠則(尾上右近)の仕業でした。重い病に冒された未来予知能力を持つ帝(石橋蓮司)が皇子の堯人(大西流星)の地位を安泰にするために異能者同士を戦わせようとしていたのですが、帝を裏で操っていたのが枢木であり、さらに彼の後ろにいる人物の存在が示唆されて続編ありな印象を残します。

災いが陸軍特殊部隊の隊員に憑りついて、殺し合いが始まります。
五道佳斗(前田旺志郎)、望月東弥(佐藤新)、須藤嗣治(浜田学)らと清霞が結界の中で必死に戦いますが、絶望的な状況を迎える中、美世がその異能を発揮して事を終息させます。戦闘シーンが見所ではありますが・・・戦い好きじゃないんだよな~~😞 

めでたく二人は婚約の結末ですが、これにて一件落着とはいかないようですね。😧 

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