2015年8月29日公開 97分
新宿・箱根間を結ぶロマンスカーで、車内販売を担当しているアテンダントの北條鉢子(大島優子)。仕事の成績も常にトップで、今日もつつがなく業務をこなすつもりだったある日、鉢子は怪しい映画プロデューサーの桜庭(大倉孝二)と出会う。ふとしたきっかけで桜庭に母親からの手紙を読まれてしまった鉢子は、桜庭に背中を押され、何年も会っていない母親を探すため箱根の景勝地を巡る小さな旅に出ることになる。(映画.comより)
タナダユキ監督の 小田急線のロマンスカー60000形MSEを舞台に描かれたオリジナル脚本作品で、小田急電鉄の全面協力のもと撮影が行われたとか。公開当時、冒頭に秒単位で登場するだけの窪田君を観に行こうか迷って結局止めてしまった記憶が 内容も興味なかったというのもありますが、思い出してレンタルしてみたら・・・あら~~けっこう好きかも
噂通り、窪田君はほんのちょっとの出番でしたが、エンドロールでは3,4番手のクレジットなのがちょっとツボです
冒頭すぐに登場する恋人の直樹(窪田正孝)君はだらしなく部屋を散らかしたまま朝寝を決め込んでいます。(萌え袖だ~!服を着てても寝返りシーンで逞しい背筋がわかっちゃうぞ見事過ぎてキャラ的に合わないから裸はNGなのか??)呆れ顔?で見つめる鉢子は「私、なんでこんな男に引っ掛かっちゃったんだろう」とか思ってそう なんだか今夏ドラマ「ヒモメン」の役柄とかぶって見えてきます 目を覚ましたと思ったら「お金貸して」だもんな~~「一万円」と言って返事がないのを見て「五千円」・・それでも反応がないと「千円」そして諦めたのかまた寝てしまう直樹。この時の表情の変化が実に見事。そしてカットが変わると寝ている直樹の枕元に二千円が置かれていてたった数十秒の出番なのに彼らの関係がしっかり伝わってきます。
職場での鉢子は成績優秀。コネ入社の新人・久保美千代(野嵜好美)は逆に要領が悪く失敗が多くて、カバーするのも限界に近付きつつあるようです。おまけにこの日は出がけにポストにあった手紙に余計にイラついていました。というのも、鉢子が小学生の時に離婚してから人が変わったように男にだらしなくなった母親(西牟田恵)から、また男に振られたという内容だったから。
そんな時、客の万引きを目撃した鉢子は口論となります。話し合いのために下車した途端、その中年男・桜庭は逃げ出し、追いかけて捕まえたものの、乗る予定のロマンスカーは出発してしまい、桜庭もお咎めなしということになり、彼女のイライラはMAXに。おまけに破り捨てた母からの手紙を桜庭が読んで「あなたとの思い出の場所から遠い旅に出る」とはお母さんは死ぬつもりかもしれないから探しに行こうと強引に連れ出されることになります。内心気になっていた鉢子は強く抗うこともせず、二人は彼女の思い出の地である箱根を小旅行することにというのが筋書です。
映画プロデューサーを名乗った桜庭は、追いかける時に破れたスカートに気付いてまず鉢子に洋服を買ってあげます。(彼女は制服のまま無一文の状態でしたからね)レンタカーで小田原城や大涌谷、芦ノ湖、仙石原を回りながら、やけに調子の良い桜庭に冷静な突っ込みを入れる鉢子。この二人の会話が面白いのその中で互いの身の上が少しずつ語られていきます。母親を探すという割には全く真剣に探してないけれど、そもそも二人とも本当に見つかるとも思ってないのよね夜になり道に迷った末に辿り着いたラブホで、彼らの本音が交差します。これは傷を抱えた二人が出会って現実と向き合うためのきっかけを掴む、一種のファンタジーなんだね 「マイ・フェア・レディ」を初め懐かしい映画の題名が登場しますが、映画に全く関心のない鉢子がスルーするのも可笑しかったです。彼女が唯一反応したのが「いい日旅立ち」の歌。これは昔母が機嫌よい時によく口ずさんでいた曲だったから。
翌朝。新宿駅での別れ間際に桜庭が鉢子に渡したのは大涌谷の土産店で買ったキーホルダーです。子供の時の家族旅行では見つけられなかった「はちこちゃん」の名前の入ったもの。桜庭は別れた妻子の名前入りのものも買っていた筈。鉢子はそれを察して「いつか渡せるといいね」と言います。このシーン好き
出社して上司から厳重注意を受けた鉢子を、これまで自分がフォローする一方だった久保が懸命に庇うシーンも良かったです。これをきっかけに、この二人も良いコンビになりそうだと思わせてくれます。
ラストは、乗務に戻った鉢子が、客席で「いい日旅立ち」を口ずさむ客が母親だと気付くシーン。彼女は父親似の男と楽しそうに乗っています。だよね~簡単に死ぬタマじゃないよね
でも鉢子はもう幼い子供ではありません。母親の悲しさや苦しさに思い至れるようになった大人です。それがはっきり示されるとびきりの笑顔で映画は幕を閉じるのでした
大島優子のツンデレぶりも可愛いけれど、桜庭役の大倉さん、上手い!!この二人の掛け合いがまた楽しくて、公開時に見逃したことをちょっと後悔しちゃいました。