杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ノイズ

2022年06月29日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2022年1月28日公開 128分 G

時代に取り残され過疎化に苦しむ孤島・猪狩島。島の青年・泉圭太(藤原竜也)が生産を始めた黒イチジクが高く評価されたことで、島には地方創生推進特別交付金5億円の支給がほぼ決まり、島民たちに希望の兆しが見えていた。しかし、小御坂睦雄という男の登場によって、島の平和な日常が一変する。小御坂の不審な言動に違和感を覚えた圭太と幼なじみの猟師・田辺純(松山ケンイチ)、新米警察官の守屋真一郎(神木隆之介)の3人は小御坂を追い詰めていくが、圭太の娘の失踪を機に誤って小御坂を殺してしまう。3人はこの殺人を隠すことを決意するが、実は小御坂は元受刑者のサイコキラーであり、小御坂の足取りを追って警察がやってきたことで、静かな島は騒然とする。(映画.comより)

 

筒井哲也の同名コミックを実写映画化したサスペンス作品です。一つの綻びがやがて大きな破綻に結びついていく様子が、島の閉塞感を背景に描かれます。

フェリーから降りて来た車に乗っていたのは、保護司の鈴木賢治(諏訪太郎)と元受刑者の小御坂睦雄(渡辺大知)ですが、この時点では二人の関係も素性も明かされません。訪ねて行った泉という家は留守で、役場に向かう途中、突然後部座席の小御坂が鈴木の首を絞めて殺害します。・・・意味わかんね~~

泉圭太は幼馴染の加奈(黒木華)と結婚して娘の恵里奈(飯島梨央)をもうけ、黒イチジクの生産で島の希望となっている存在。同じく幼馴染の
猟師・田辺純とは親友で彼もイチジクの出荷を手伝っていて家族ぐるみの付き合いをしています。岡崎(寺島進)に代わって島の警察官に着任した守屋真一郎も彼らの幼馴染です。  とまぁ、大体の人物紹介がされたところで事件が起こるんですね~~

イチジクの無人直売所で、勝手にイチジクを食べていた小御坂を見かけた圭太と純は注意しますが無視されます。圭太が帰宅すると、娘の姿がなく、男が持っていたペットボトルが落ちていたことで、妻や純、真一郎と手分けして探していると、農園のビニールハウスで娘の自転車に乗り卑猥な動画を見ている男を発見します。(この男、幼児性愛のサイコパスなんですね)純と共に男を問い詰めると揉み合いとなり、圭太が突き飛ばして死なせてしまうんですね。圭太が島の希望を一身に背負っている状況から、三人は「全部なかったこと」にしようとします。

死体を純の倉庫の冷蔵庫に隠そうとするところを横田庄吉(柄本明)に見られた三人は猪だと言って誤魔化し、真一郎の着任祝いで何事もなかったように振舞います。町長・庄司華江(余貴美子)は、圭太のイチジクのおかげで島に国からの交付金5億が入る予定だと言い町の皆が大喜びします。交付金で病院や役場の改築ができ暮らしが豊かになるからです。

一方、鈴木の娘が捜索願いを出したことで県警が動き島に刑事の畠山努(永瀬正敏)と青木千尋(伊藤歩)がやってきます。執拗な捜査を繰り返す警察に、圭太たちは追い詰められていきます。弱気になる真一郎を叱咤し小御坂の死体を運ぼうとしているところに、町長が押し入ってきて殺人がバレてしまうのですが、島を守るために純が罪をかぶるよう強制し、農園は自分が引き継ぐから圭太にも島を出ていくように言います。この町長、本当は自分の利益しか考えていないのね。そこへ事情を知った庄吉が町長を鉈で襲い、町長もスタンガンで応戦、咄嗟に純が町長をスコップで殴り殺してしまうんですね。庄吉は死に際に「島を守ってくれ」と言います。こちらは電気ショックで心臓がいかれたらしい。

ここからが、閉鎖的な島ならではの展開。町長の死体は部下の野毛二郎(迫田孝也)の協力で、小御坂が彼女を殺して島外に逃げたように細工されます。庄司の死も彼の息子夫婦と島の医師に頼み込んで心不全で葬儀を出します。

でも、不自然さは否めず畠山の捜査の手は緩みません。とうとう追い詰められた真一郎は自分が罪を被って拳銃自殺してしまいます。

その後、島民全体の携帯に、〈死体はイチジクの下。殺したのは泉圭太。〉というメールが町長の消えた携帯から届きます。
警察が圭太の畑の捜索を始める中、焦る圭太と純。メールを送ったのは純ではと疑う圭太に、純は「俺が信用できないのか」と怒り、自分が自首すると言います。それを聞いて圭太は「島と加奈と恵里奈を頼む」と言い、罪を認め逮捕されました。死体は冷蔵庫から移されビニールハウスの中に埋められていました。

場面が変わり、イチジクの収穫をする加奈を手伝う純に、彼女は「私はずっと圭太を待つ」と言います。真一郎の墓前で、畠山から「お前はそれで幸せか?」と問われます。純の部屋の壁には一面に加奈の写真が貼られています。

彼らの過去(演じる俳優の背の高さが「今」を演じる二人と逆なので混同してしまいます)がところどころに挿入されていた意味が、ここではっきり形になるんですね。純は加奈のことがずっと好きだったけれど、彼女が好きだったのは圭太。黒イチジクを生産して島の救世主と持ち上げられている圭太への嫉妬もずっと抱えていたのね。小御坂の死をきっかけに、純は圭太を陥れる計画を考え付いたのかな。町長の携帯を密かに持ち帰ってメールを送ったのは純で、無人販売所で小御坂の履歴書を見つけて、刑事たちの目につくようにわざと圭太の家の前に置いたのも純。その全てを畠山も、それから圭太も察しているようです。

拘置所に面会に来た加奈に、圭太は「純を信じてやってくれ」と言います。冒頭で読み上げられる娘が書いた絵日記の内容が終わりに繰り返されることで、彼らの深い絆が表現されているように思えました。

そもそも、何故保護司を突然殺すのか、単にサイコパスだからというなら、何故釈放されるのか、一番気になったところですが、とにもかくにも一つの「ノイズ」が大勢の人生を狂わせる様子は確かに怖かった!! そして真面目さ故に死を選んでしまった真一郎君が可哀そう過ぎ 岡崎の一言がなければまた違っていたんじゃないだろうか?とも考えちゃいますね。


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走れ外科医 泣くな研修医3

2022年06月27日 | 

中山祐次郎(著) 幻冬舎文庫

若手外科医・雨野隆治のもとに急患で運ばれてきた二十一歳の向日葵(むかい あおい)。彼女はステージⅣの癌患者だった。
自分の病状を知りながらも明るく人懐っこい葵は、雨野に「人生でやっておきたいこと第一位」を打ち明ける。
医者として止めるべきか 友達として叶えてあげるべきか
現役外科医が生と死の現場を圧倒的リアリティで描く、シリーズ第三弾。(あらすじ紹介より)

 

シリーズも三作目、アメちゃんも牛ノ町病院外科医四年目となり、だいぶ経験も積んで一人前の医者らしくなってきました。彼女とデートの時に心肺停止の病人に的確に蘇生措置を施すなど、すっかり一人前の医者です。外科医になりたくて再び研修医としてやってきた西桜寺凜子先生は相変わらずの語尾を伸ばす話し方ですが、頭の回転と呑み込みの速さも変わりません。

かかりつけの病院に断られて救急でやってきた向日葵は、21歳という若さで大腸、肺、肝臓に転移のあるステージⅣのがん患者。急性症状の治療の後はまたかかりつけに戻すのですが、入院中も明るく、アメちゃんと強引にフェイスブックで繋がる彼女が、自分の状態を告知されているのか気になるアメちゃんです。ところが、いつのまにか仲良くなっていた凜子ちゃん先生と3人で富士山登山することに!いやいや、医者としてあり得ない判断じゃないの?しかも、ご来光登山なのにヘッドライトを忘れてきたり、非常食を早々に消費していたり、登山者としてもお粗末過ぎです。医者の二人が足を痛めたり高山病になったりでヘロヘロになる中、死ぬまでにしたいことの第一位にあげている葵ちゃんは気力で登頂を果たします。普段手術で使う体力・集中力と登山に必要なそれは違うのか、それとも日々の仕事の疲れが蓄積していてこんな時に出てしまうのか・・・いずれにしても情けないぞ 自分が10代で登った時はこれほどの辛さは感じなかったと記憶していますが、とにかく読んでいてこちらまで苦しくなりました。何とか無事に下山できてはいますが、後日仕事に支障が出るのは確実だし、葵の病状が悪化した後、家族から訴えられるリスクはないのかなぁと余計な心配までしちゃうよ

他には議員で横柄な態度の患者が、凛子の父親が有力者と知ると掌を返したり、異物を肛門に挿入して緊急手術になる患者などが登場します。

アメちゃんは初めての学会発表に向けての資料作成に四苦八苦。同期の川村君(東京生まれの私大出身の設定で天野が密かにコンプレックスを抱いているような印象があります)がさり気なく協力してくれます。良い奴だ~~! 学会では他の発表者の内容も上の空で耳を素通りしていきますが、何とか落ち着いて自分の発表をこなし、また一つ医師の階段を上がったようです。

アメちゃんとはるかさんの交際は順調のようで、鹿児島旅行で、実家の薩州あげ屋の母親に紹介して兄と父の墓参りに行きますが、老いて小さくなった母への対応に戸惑う気持ちも描かれていました。年老いていく親を心配しながらもどう手を差し伸べて良いのか悩むのは多かれ少なかれ誰しも経験するのではないかしら。

今作では、一つの事例に対して天野先生だけでなく、凛子先生や佐藤玲先生の視点でも語られているのが面白かったかな。

特に、優秀な先輩医師である佐藤先生が、一人の女性として恋人との関係に悩む姿が新鮮でした。恋人は彼女に結婚したら仕事を辞めて自分をフォローして欲しい気持ちが強く、それは彼の家庭環境(母親が専業主婦)が強く影響しているようです。でも佐藤先生は外科医としてのキャリアをまだまだ磨いていきたいし、生き甲斐を感じている。二人はどこまで行っても平行線だろうなと予感させられます。妊娠出産の年齢的な限界と、仕事を秤にかけても彼女の気持ちは現時点では揺るがない。裏返せば、恋人に仕事を捨てさせるほどの魅力がないってことなのかもね。


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ドリームプラン

2022年06月26日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2022年2月23日公開 アメリカ 144分 G

リチャード・ウィリアムズ(ウィル・スミス)は優勝したテニスプレイヤーが4万ドルの小切手を受け取る姿をテレビで見て、自分の子どもをテニスプレイヤーに育てることを決意する。テニスの経験がない彼は独学でテニスの教育法を研究して78ページにも及ぶ計画書を作成し、常識破りの計画を実行に移す。ギャングがはびこるカリフォルニア州コンプトンの公営テニスコートで、周囲からの批判や数々の問題に立ち向かいながら奮闘する父のもと、姉妹はその才能を開花させていく。(映画.comより)

 

ウィル・スミスが主演・製作を務め、世界最強のテニスプレイヤーと称されるビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を世界チャンピオンに育てあげたテニス未経験の父親の実話を基に描いたドラマです。2022年・第94回アカデミー賞主演男優賞受賞しましたが、ビンタ事件でも有名になっちゃいましたね。

治安の悪い地域で5人の娘を抱え、狭い住居で暮らす一家。公営の荒れたテニスコートで練習していると、地元の若いギャングに絡まれ、娘たちの盾になってリチャードが殴られることもしばしば。彼は誰からも敬意を払われなかった自分の半生を振り返り、娘たちを敬意を払われる人間に育てようと強く決意していました。妻のオラシーンと二人での熱心な指導のもと、ビーナスとセリーナはテニスの腕をあげていきます。次の段階へ進もうと夫婦で話し合い、雇うお金も高価なトレーニング機器を買うお金もないため、リチャードはプロモーションビデオを作ってプロコーチの依頼に回りますが、引き受け手は現れません。そこで、リチャードはビーナスとセリーナを連れてある豪邸を訪れ、テニスコートで練習していたジョン・マッケンローが席をはずした際、有名コーチのポール・コーエンに娘たちのプレーを観てほしいと強引に頼みます。娘たちの実力を認めたコーエンはビーナスだけという条件で無料コーチを引き受けます。リチャードはビーナスの練習をビデオに撮り、それを参考にオラシーンがセリーナの指導を続けます。

裕福な白人ばかりのジュニア大会で相手を次々打ち破り優勝を決めたビーナス。大喜びする子供たちを見てリチャードは「自慢はいけない」と叱ります。「なぜ家族の喜びに水を差すの?」と言う妻と口論になり、『シンデレラ』のアニメを見せてヒロインの「謙虚さ」を教えようとして妻を呆れさせます。大雨の日にも練習をさせるなど厳しい指導に近所の人から通報されると、リチャードは役人に「子どもを危険から守るのが親の役目だ。テニス会場にいた異常な親たちこそ逮捕すべきだ」と怒りをぶつけ、オラシーンも通報した人に母親の立場での一言を投げつけます。

ジュニア大会を次々ビーナスが勝ち進む中、母親にエントリーしてもらったセリーナも実力を発揮します。ビーナスの記事が新聞に掲載されると契約したいというエージェントが現れますが、その態度に不快感を持ったリチャードは断ってしまいます。相談もなく断った夫に妻は「私たちはチームよね?まずは相談すべきでは?」と不満を持ちます。話を持ってきたコーエンに対してもこれまでの好意に感謝しつつここまでと断ってしまいます。娘にプレッシャーを与えたくないというリチャードの気持ちもわかりますが、やりかたは下手よね~~ 

リチャードは、新たにジェニファー・カプリアティのコーチだったリック・マッチと無料でコーチする代わりに将来の稼ぎの15%を取り分とする条件で契約を交わし、更に家族全員でのフロリダ移住とリチャードをコーチ・スタッフに入れる条件を追加します。

上達著しいビーナスをリックはジュニアの大きな大会に出場させようと考えますが、リチャードはリックとの練習を続けて学校に通い、普通の子として過ごさせたいと反対し、これは自分が練りに練ったプランだと引きません。

3年が過ぎ、もう準備は万端だとビーナス自身が試合に出たがりますが、他のジュニア選手が麻薬に溺れ失敗する例を見て、娘を守ると固く決意しているリチャードは許しません。娘の意志も尊重すべきと夫に迫るオラシーンは、あなたは「しくじることを恐れている。ビーナスの人生なのよ」と諭します。娘と話し合い、14歳でプロとして初めてコートに立つことになったビーナスの対戦相手はベテランばかりです。

試合の前日、Nikeが300万ドルの独占契約を持ちかけてきますが、「まず私のプレーをみてもらいたい」と言うビーナスに、一家は契約を受け入れず、リックは頭を抱えます。初戦に勝利し、二戦目の相手はセンターコートで世界王者アランチャ・サンチェス・ビカリオです。

当日、センターコートを凝視するセリーナに「お前はこれまで辛抱強く待った。次はお前の番だ。」と言って抱き締めるリチャード。姉の影で我慢してきた妹のこともちゃんと考えてるんだぞ!というシーンです。

試合が始まり、序盤優位に試合を進めたビーナスでしたが、ビカリオが9分間のトイレ休憩を取った(相手のリズムを狂わせるためによくやる手だそう)せいで調子を崩して逆転負けします。技術だけでない精神力も重要なファクトなんだというのがよくわかるエピソードですね。

「契約もリスペクトも失った」と失意のビーナスに、家族は「ナンバーワンプレイヤーにショックを与えた」「これほど誇らしいと思ったことはない」と励まします。会場の外では、大勢の人々が待ち構えていて歓声を上げて彼女の健闘を讃えます。

その後、Nikeの他続々スポンサーの話が舞い込みます。9ヶ月後、ビーナスはリーボックと1200万ドルの契約を交わし、セリーナもプロ選手になり後を追いかけました。

とにかく、リチャードの揺るがない信念に圧倒されます。それでも彼一人の力ではなく、父を夫を信じてついていった家族の強い絆があったからこそ実現したシンデレラストーリーですね。


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ゴーストバスターズ アフターライフ

2022年06月25日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2022年2月4日公開 アメリカ 124分 PG12

30年間にわたり原因不明の地震が頻発する田舎町。そこで暮らし始めたフィービー(マッケンナ・グレイス)は、祖父が遺した古びた屋敷で見たこともないハイテク装備の数々と〈ECTO-1〉と書かれた改造車を発見する。科学者だった祖父イゴン・スペングラーは〈ゴーストバスターズ〉の一員で、30年前にニューヨークを襲ったゴースト達をこの町に封印していた。地震の原因がゴーストの仕業だと突き止めたフィービー。「なぜこんな場所に封印を?おじいちゃんが死んだとき一体なにが?」…祖父がこの町に隠した秘密に迫ろうとしたその時、ゴースト達の封印が解かれ、町中にあふれかえる。いま、ゴースト達の復讐劇が始まる――祖父の意志を継ぎ、ゴースト達を再び封印するため立ち向かうフィービー。世代を超えた戦いは、一人の少女に託される――。(公式HPより)

 

幽霊退治に挑む冴えない科学者たちの奮闘をユーモラスに描いた「ゴーストバスターズ」「ゴーストバスターズ2」の続編です。前2作の監督アイバン・ライトマンの息子のジェイソン・ライトマンがメガホンをとっています。

家賃滞納でアパートを追い出されたシングルマザーのキャリー(キャリー・クーン)はトレヴァー(フィン・ウルフハード)とフィービーを連れて父イゴン・スペングラーが遺したオクラホマ州サマーヴィルの荒れ果てた農家に引っ越して来ます。彼女は家族を顧みなかった父親を恨んでいる様子で、科学にも関心がありません。

ところがフィービーは根っからの科学っ子なのね。血筋ですね~~ 彼女は祖父がどんな人だったか知らなかったのですが、床下に隠してあった不思議な装置を見つけます。それを見たサマースクールの教師で地震学者のゲイリー・グルーバーソン(ポール・ラッド)から、ゴーストバスターズの話とこの町で長年起きている不思議な地震のことを聞きます。

家の中で起こる不可解な現象(照明が勝手についたりチェスの駒が動いたり)の謎を解こうと、クラスメイトで陰謀論系の配信を行っているクラポッドキャスト(ローガン・キム)と一緒に調べ始めた矢先、納屋の地下にあったラボでハイテク装備の数々を発見したフィーヴィーは、祖父がかつてニューヨークを救ったゴーストバスターズの一員だったと知りますが、「ゴーストトラップ」を誤って開けてしまい、中に封じられていたものが逃げ出してしまいます。ポッドキャストはイゴンの資料から町の廃坑にかつてゴーストバスターズに倒された破壊神ゴーザを祀った遺跡があることを突き止めます。

一方、ダイナーで働くラッキー(セレステ・オコナー)に一目惚れしてアルバイトを始めたトレヴァーは、納屋に隠されていたキャディラックECTO-1を見つけます。その車を修理して街へ出かける途中で、フィービーとポッドキャストに出会い、3人でゴースト(マンチャー:鉄を食べる)を追いかけ捕まえるのですが、そのために町を破壊してしまい、更にトレヴァーが無免許だったため警察に捕まって留置所に入れられてしまいます。

留置所から<ゴーストバスターズ>の番号に電話したフィーヴィー。電話に出たのはレイ(ダン・エイクロイド)でしたが、仲間を捨てて姿を消したイゴンに腹を立てていた彼は話を聞こうとしませんでした。

トレヴァーがラッキーと行った鉱山で、「ゴーザ」と叫ぶ声を聞いた話から、釈放された3人とラッキーは鉱山の奥を訪れ祭壇を発見します。イゴンは30年前、封印していたゴーザが復活を企んでいると気付き、それを阻止するために家族も仲間も捨てて農場に移り住んで、地下から這い上がろうとするゴーストを抑え込む装置を仕掛けていて、地震はその装置から引き起こされていたのです。ちなみにオカルティストで建築家で医者だったイヴォ・シャンドア(j・k・シモンズ)がこの鉱山で採掘したセレニウムでシリーズ2の事件が起きているらしい。眠りについていたイヴォでしたが復活したゴーザにあっけなく殺されてしまいました。

その頃町では、超常現象が頻発し始めていました。ゴーザ復活に必要な<鍵の神ビンツ>と<門の神ズール>がキャリーとグルーバーソンに憑依してしまい世界的な危機が迫る中、フィービーら4人はゴーストバスターズの装備(プロントパック)を手に立ち向かいます。留置所で取り上げられていた装備を取り戻すためにマンチャ―を解放するなど、なかなか賢い子供たち。 (キャリーとゲイリーがくっつくのは二人が出会った瞬間から展開が想像がついたけどね

家の周囲の畑が、実はゴーザ捕獲のためのトラップだと知ったフィービーはゴーザをここにおびき寄せようと考えます。ところが、トラップが動作不良で作動しません。これ、冒頭でイゴンが陥った状況の再現だなぁ。窮地に陥った彼らを救ったのは、かつてのゴーストバスターズのレイ、ピーター(ビル・マーレイ)、ウィンストン(アーニー・ハドソン)でした。以前よりパワーが増しているゴーザに苦戦する中、フィービーを助けに現れたのはイゴンの霊(ハロルド・スミスのCG)でした。トレヴァーがトラップの動作不良を直して形勢逆転。ゴーザやゴーストたちは封印されました。

イゴンは再会したゴーストバスターズたちと勝利を喜び合い、父への誤解が解けたキャリーと抱き合います。(ラボにあった沢山の自分が写った写真を見て愛されていたことに気付いたのね)思い残すことがなくなって満足の笑みを浮かべながらイゴンは消えていきました。

ウィンストンはキャデラックを引き取ってゴーストバスターズ本部へ保管します。そこにはトラップも保管されていてランプが赤く点滅していました。

エンドクレジットでは2014年に亡くなった「ハロルドに捧ぐ」という一文がありました。

鉄喰いのマンチャ―やお馴染みのマシュマロマンなど、可愛いゴーストもいるけど、ズールやビンツ、ゴーザは子供が怖がりそうね

メガネのフィービーが素顔は絶対可愛い(美人) 元メンそれぞれの孫じゃなくてイゴンの孫だけだったのね


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ザ・ロストシティ

2022年06月24日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2022年6月24日公開 アメリカ 112分 G

恋愛小説家のロレッタ(サンドラ・ブロック)は、新作であるロマンティックな冒険小説の宣伝ツアーに強引に駆り出される。作品の主人公を演じるセクシーなモデル、アラン(チャニング・テイタム)の軽薄な態度にいら立ちを募らせるロレッタの前に、謎の大富豪フェアファックス(ダニエル・ラドクリフ)が出現。アビゲイル・フェアファックスはロレッタの小説を読んで彼女が伝説の古代都市の場所を知っていると確信し、彼女を南の島へと連れ去ってしまう。ロレッタを救うべく島へ向かったアランは彼女を発見し、ともに脱出を目指すが、大自然の過酷な環境の中で思わぬトラブルに次々と見舞われる。(映画.comより)

 

豪華キャストが集結したアクションアドベンチャー作品ですが、お下品な下ネタもあり限りなくB級なので、頭空っぽにして楽しむ系かな。 

考古学者の夫の死から立ち直れない冒険ロマンス小説家のロレッタは、親友で広報担当のベス(ダバイン・ジョイ・ランドルフ)に急かされ最新作を渋々書き上げます。その宣伝ツアーに駆り出され、派手派手ショッキング紫スパンコールのジャンプスーツを着せられたロレッタは、本の表紙モデルを務めているアランとイベントに参加させられますが、うっかり彼の金髪ロン毛のかつらを引っ掛けてイベントは滅茶苦茶に。

そもそも、ロレッタは自分の理想の主人公が見かけだけ良くて頭空っぽに見えるアランのことが好きじゃないのね アランと口論になり、外に飛び出したロレッタを億万長者のアビゲイルの部下が拉致します。後を継いだ弟への劣等感と、財宝への野心が理由ね

彼女が連れ去れれるところを目撃したアランは、ヨガトレーナーのジャック・トレーナー(ブラッド・ピット)に救出を依頼し、自身も加わりますが、これが全く使えないという ジャックは超かっこよくロレッタを救出したまでは良いけれど、あっさり撃たれて退場しちゃうしな~~。なんてもったいない使い方だろ!と思っていたら・・・ありえね~結末が待っていましたが。

以後はロレッタ&アランの凸凹コンビが、ロレッタが持ち逃げした秘宝の在処を示す羊皮紙を追うフェアファックスたちから逃げ回るなかで、互いへの距離をちょっとずつ縮めていく展開。並行して、ベスがロレッタ救出に向かう様子も描かれます。目的の島へのフライトに苦労したり、領事館の役人を説得したり、困難をタフに乗り越えていく姿が頼もしく見えるのはその体型も影響しているかしらん 

村に辿り着いた二人は、警察に保護を求めます。シャワーを浴びて服を着替えた二人はダンスを楽しみますが、歌の歌詞がヒントとなって本当に古代都市があったことを確信します。そこへ現れたフェアファックスたちにまたまた捕まったロレッタを、これまた追いかけるアラン。

洞窟を抜けた先にあった神殿?に眠る伝説の王妃の髪には、貝殻で作った冠が。秘宝は宝石ではなく、王が王妃に捧げた「愛」でした。

火山の噴火が迫る中、フェアファックスによって棺に閉じ込められた二人ですが、彼の部下がそっと入れてくれたバールで難を逃れます。ちなみにフェアファックスとこの部下以外は皆途中で死んじゃってます

海に逃れた二人は、船でやってきたベスに救出され、フェアファックスも捕まります。

この冒険談を書いた小説はヒットし、二人の仲も進展しハッピーエンド。・・・の後は蛇足のヨガシーンとジャックの復活

愛する人を失って人生後ろ向きだったヒロインが、冒険を通じて新しい恋と前向きな明日を手に入れるお話でしたとさ。


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刑事に向かない女

2022年06月20日 | 

山邑圭(著) 角川文庫

警察行政職員を目指していたはずが、意図せず警察官となった椎名真帆。交通課で思わぬ優秀さを発揮した真帆の異動先は、なんと刑事課だった―。都内で、女性の刺殺体が発見された事件の捜査を担当することになった真帆は、先輩の古沢とともに現場周辺の聞き込みに向かう。被害者の関係先をあたるなかで、浮び上がる孤独な女性像。容疑者の影が見えた矢先、真帆は捜査から外れるよう命じられ…。新鋭による書き下ろし警察小説。(「BOOK」データベースより)

 

女性刑事・椎名真帆が、昭和世代のおっさん刑事の古沢とコンビを組んで殺人事件の捜査にあたります。このヒロイン、交通違反切符を切るのが楽しくて仕事に邁進した結果取り立てられて刑事になったという そもそも事務職のつもりで応募したら警察官だったって何だよ!

若い今時女性目線なので、先輩おっさん刑事や、同僚の若手で何かと突っかかって来る吾妻刑事に対して、顔で笑って心で毒づいてストレス発散してます。警察学校の同期で一足早く巡査部長になった芦川には密かに憧れと好意を感じているあたりも「女の子」テイスト。

真帆には8歳以前の記憶がなく、伯母の曜子と二人暮らし。洋装店を営みながら占いに凝っている伯母からの水晶玉占いを信じないといいつつ無意識に信じているところも「女の子」 

ショカツの刑事は地取り=聞き込み主体で、上の命令通りに動くことが鉄則なようですが、事件現場になった家の中にあったフィギュアに違和感を持った真帆は独自に捜査を始めます。同僚が無視する中、芦川だけが話を聞いて応援してくれるのですが、被害者の肩にあるタトゥーの情報が漏れたことで真帆が疑われ捜査から外されてしまいます。

真帆は自分が外された理由はもっと別にあると考え、新たな犠牲者との繋がりを追います。実は今回の事件には真帆の過去が絡んでいました。交通事故で両親が亡くなったと聞かされていたけれど、母は殺され、そのショックで記憶を失くしていたのです。更に警官だった父が事件のあと失踪していて、今回の事件の被害者がその時の犯人であると推察されることから、真帆の父親が疑われていたのです。

一連の事件の裏に、もう一人の存在が浮かび上がり、犯人を追ってネットカフェで張り込みをする真帆の前に現れたのは・・

父親が犯人なら真帆は警察官でいられないわけで、シリーズになっていることからも父=犯人の図式は成立せず、憧れていた芦川は出世のために真帆を利用していて、何かと突っかかってくる吾妻は実は真帆に気があるんじゃないかとも窺わせるあたりは安直だなぁ

真犯人のふてぶてしさは取り調べ室で罪悪感なくベラベラ喋る様子からも伝わり、これも何だか典型的な犯人像だなと

警官なのに妻子を護れなかったことへの罪悪感から職を辞し、酒に溺れる・・・これ、ダメじゃん。路上生活を送っていた時、娘とすれ違ったことから再起し、犯人と目を付けた「彼ら」を追い続けた執念は凄いけど、もっとやり方あったんじゃね?父娘対面のシーンが敬礼ってコテコテ過ぎて笑えてきますが

型にはまらない今時刑事枠で軽く楽しめるシリーズになるのかな?


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世界の涯ての鼓動

2022年06月19日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年8月2日公開 ドイツ・フランス・スペイン・アメリカ合作 112分 G

ノルマンディーの海辺に佇むホテルで出会い、わずか5日間で情熱的な恋におちたダニー(アリシア・ヴィキャンデル)とジェームズ(ジェームズ・マカボイ)は、別れの朝の引き裂かれるような痛みに、互いに生涯の相手だと気付く。だが、生物数学者のダニーには、グリーンランドの深海に潜り地球上の生命の起源を解明する調査が、MI-6の諜報員であるジェームズには、南ソマリアに潜入し爆弾テロを阻止する任務が待っていた。やがて恐れは現実となり、ダニーの潜水艇が海底で操縦不能に、ジェームズはジハード戦士に拘束されてしまう。果たして、この極限の死地を抜け出し、最愛の人を再びその胸に抱きしめることができるのか──?(公式HPより)

 

ロマンティックな美しさをたたえたノルマンディーの海岸、人類の原風景のようなグリーンランドの広大な海、砂に包まれた峻厳な南ソマリアを舞台に描く、狂おしくも切ない極限下のラブサスペンス。(公式HPより)

正直、全くピンと来ない映画でした。 捕らわれて極限の精神状態にあるジェームズが恋人を思って耐え抜くのはともかく、仕事に集中できずに悶々とするダニーはな~~ 彼女を優しく、時に厳しく見守り励ます同僚君、良い人過ぎ

危険な任務に挑んだものの、初っ端から捕らわれてしまったジェームズ。暗くて狭い監禁場所で、腐った食べ物で命を繋ぐ描写は観ていて気持ちの良いものではなく、必死に精神を保とうとする姿は鬼気迫るものがあります。

一方のダニーは彼の正体も知らないわけで、本来は一夜のアバンチュールだった筈の相手に心を持っていかれた状態で、ひたすらジェームズからの返信を期待して待ち続ける・・・なんかうざい。

水道敷設の技術者ということで一時解放され(といっても拘束下に変わりない)、ドクター(アレクサンダー・シディグ)の治療を受けるジェームズでしたが、改宗を拒んだことで、再び移送されます。その地の近くに米軍が潜んでいるという情報を得たジェームズは歯に仕込んだGPS?を作動させ(最初の監禁場所で何故しない??と思ったけど、送信できない環境だったのかな)、米軍を呼び寄せるんですね。海に飛び込んだ彼が救出されたシーンは出てきませんが、おそらくは助かったのでしょう。

ダニーも深海調査に挑み、一時操船不能となったものの、無事浮上することができるようで・・・トラブルの前に不吉な詩を披露するあたり、マジ嫌な女だぞ

特にジェームズは極限状態をダニーの存在が支えになって切り抜ける展開で共感できるところもありますが、ダニーはなぁぁと何故か彼女には反感しか覚えなかったという

どうせなら、無事生還した二人の再会まで描いて、メロドラマ調で〆れば良かったのに


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さだまさしコンサートツアー2022~孤悲~

2022年06月18日 | ライブ・コンサート他

2022年6月18日 16時開場 17時開演 

国際フォーラム ホールA

6分遅れで始まった今年のツアーのタイトルは「孤悲」切ない片恋ですね。満席の客席に「日常」が戻ってきた感があります。

オープニングの3曲はこれまでにないロック調。さださん本人が奏でる赤いエレキギターはALFEEのタカミー(高見沢俊彦)に貰ったそうで、せっかくだからサインしてと言ったら表は恥ずかしいからと裏にしてくれたそうだ。

・偶成

・抱擁

・破

今年のアルバムからの2曲の後は「破」・・・これ、好きだったな~~とテンション上がりました。

MC 

アルバム作りにあたっての方針(今回はリズム先行だった)、早くも緞帳が下りてきそうな曲があと数回あるとかいつもと違う激しい曲はここまでだとか、軽妙な語り口は変わりません

・パンプキンパイとシナモンティー

・道化師のソネット

・療養所

MC 

染みの曲が続いたのは、久しぶりに聴くお客さんに応えるためだとか

老後の孤独についての受け止め方の男女差(別)や、お父様の骨折時の話をユーモアたっぷりに披露。何度聞いても笑ってしまう

ここでさだ工務店メンバー紹介がありました。

7月8日22時放送開始のTBSドラマ「石子と羽男-そんなコトで訴えます?」に出演されるそうで、役柄は「エヴァのペンギン」的発言に受けたけど、年齢層高い客席の反応はいまひとつでした。でもその後「必殺仕事人の菅井きんさん」的にはけっこうな反応あり 人情ドラマで弁護士役だそうです。 楽しみだな~~

グッズ(会場限定販売の「あ、さだ飴檸檬味」)と風に立つライオン基金宣伝

ウクライナでの戦闘の話から音楽家として自分ができること、銃を持たない者にできることは、「戦争を始めさせないこと」であり、そのために歌っていきたいと話されていました。

・キーウから遠く離れて

・フレディもしくは三教街~ロシア租界にて~

個人的には「あと1マイル」も歌って欲しかったな。

MC 

今年はグレープ結成50年だそうで、何かしたいなぁと考えていると

70年代の安保、学生運動話・・・当時の若者の方が真剣に国の将来を考えていたんじゃないかと・・確かに今の若者にそんな気力も夢もないよね~~

・詩人

・舞姫

MC

太宰府天満宮で行われる神事「鷽替え」と「鬼すべ」話

・鷽替え   照明と交互に迫って来る音響効果が独特でした

・孤悲

一旦引けたあとすぐにAcとなりました

・歌を歌おう  去年の日テレ「24時間テレビ」のチャリティソング

終演は19:26

すぐに規制退場となり、出口で基金とタイアップした「ソイジョイ」が配られました。


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あの日、君は何をした

2022年06月17日 | 

まさきとしか(著) 小学館文庫

北関東の前林市で平凡な主婦として幸せに暮らしていた水野いづみの生活は、息子の大樹が連続殺人事件の容疑者に間違われて事故死したことによって、一変する。深夜に家を抜け出し、自転車に乗っていた大樹は、何をしようとしていたのか――。
15年後、新宿区で若い女性が殺害され、重要参考人である不倫相手の百井辰彦が行方不明に。無関心に見える妻の野々子に苛立ちながら、母親の智恵は、必死で辰彦を探し出そうとする。
刑事の三ッ矢と田所が捜査を進めるうちに、無関係に見える二つの事件をつなぐ鍵が明らかになる。
『完璧な母親』で最注目の著者が放つ、慟哭のミステリー。(「BOOK」データベースより)

 

「彼女が最後に見たものは」 (2022年4月22日UP)の三ツ矢&田所コンビの最初の物語です。

一部は平凡な主婦・いずみの視点で語られます。

娘と息子が第一志望の大学・高校にそれぞれ合格し、お祝いの食卓を囲みながら自分の幸せを噛みしめた夜が彼女にとって人生最大のハイライトでした。翌朝にもたらされた息子の突然の死が彼女の運命を狂わせていきます。

自慢の息子が何故夜中に家を抜け出して、挙句逃走犯と間違われて警察に追われて事故死するに至ったのか?根本的な謎は謎のままで、いずみは息子の死を受け入れることができず心が病んでいきます。母親としてその心情にはある程度共感できるのですが、娘や夫の存在も彼女の中で消えてしまったかのような振る舞いはどうしても理解できません。彼女に追い打ちをかけたのは、自称彼女な息子の同級生・鞠香の振る舞いでした。後になって鞠香は嘘つきの目立ちたがり屋だと判明しますが、当時のいずみは鞠香の言動を信じ込んだ挙句に常軌を逸した行動に出てしまいます。

二部は、15年後に起きた新たな殺人事件。全く無関係に見えた二つの事件が三ツ矢という変わり者の刑事と相新人刑事の岳人の側から語られていきます。

一部の登場人物が出てこない中、どう繋がっているのかという興味で一気に読ませてしまう筆力は凄い!

疾走した容疑者・辰彦の妻・野々子は、その無関心にも見える態度から夫の母・知恵に妻が息子を殺したのではないかという疑惑をもたらします。元々息子の結婚相手として気に入らなかったという素地があるので、知恵の疑惑はどんどん膨らんでいき、とうとう孫の凛太を「守ろう」と誘拐騒ぎまで起こしてしまうのね

一部に登場する脱走犯を検挙したのは三ツ矢でした。彼はその事件の影で犠牲?になった少年が「何故死ななければならなかったのか、彼はあの夜何をしていたのか」という疑問をずっと抱えていました。超人的な記憶能力(母親の死がその能力に関係している)と鋭い洞察力で、彼は二つの事件にある繋がりがあると気付くのです。

後半は怒涛の謎解きが展開されます。その中で、容疑者の妻でしかなかった野々子の存在が真犯人の重要な動機として浮かび上がっていくのです。何とも身勝手で病的な思考がもたらした殺人事件でした。

大樹と辰彦の母親たちは、ごく平凡な過程の普通の主婦ですが、野々子の母・遥子は水商売をしているシングルマザーで男にもだらしない女性です。母親たちは子供を守ろう、信じようとの思いで常軌を逸した行動に走り、嘘を付きます。でもその裏には自分自身のプライドを守ろうとしたり、自分の子育てを正当化しようという気持ちが潜んでいます。

物語は徹底して夫である男性の存在について掘り下げられていないのも興味深いところです。

結局大樹の死の真相はわからないままか?と思ったら、最後に野々子の回想で真実が明かされます。まさに衝撃のラストです。

犯人の逃亡から幕を開けた事件が様々な人間の人生を狂わせていく、まさにバタフライ効果 その発端は野々子??

もし大樹が生きていたら・・もし彼の罪が暴かれることなく成長していったらと思うと背筋が寒くなるような


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漁港の肉子ちゃん

2022年06月16日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年6月11日公開 97分 G

明石家さんまの企画・プロデュースで、直木賞作家・西加奈子の同名ベストセラー小説をアニメ映画化。漁港で暮らす食いしん坊で脳天気な肉子ちゃん(声:大竹しのぶ)は、情に厚くて惚れっぽく、すぐ男に騙されてしまう。しっかり者でクールな11歳の娘キクコ(声:Cocomi)は、そんな母のことが少し恥ずかしい。やがて母娘の秘密が明らかになり、2人に最高の奇跡が訪れる。(映画.comより)

 

西加奈子の同名小説を、原作に惚れ込んだ明石家さんまが自ら企画・プロデュースを手掛けて映画化したアニメーション作品です。さんまの元妻の大竹しのぶや、木村拓哉の長女のCocomi、『鬼滅の刃』の花江夏樹が声優として参加していることも話題となっていたので興味はありましたが、劇場鑑賞はしませんでした。 

外見は肥満で不細工だけど、底抜けに明るい肉子ちゃんは、男に騙されては借金を背負わされ、その度せっせと働いて借金を返し、恋の終わりと共にキクコを連れて他の土地に流れ着く日々を送っていました。3年前、置手紙を残して姿を消した小説家を名乗る男を追いかけ、小さな港町に流れ着いた肉子ちゃんたちでしたが、結局男は見つからず、途方に暮れた二人は焼き肉屋「うをがし」の大将サッサン(中村育二)と出会います。サッサンは、キクりんを連れて現れた肉子ちゃんを見て「肉の神様が現れた」と思い込み、行くあてのない肉子ちゃんを「決しておなかを壊さないこと」を条件に店で雇って、所有する小さな漁船を母娘の住処として提供します。こうして二人は新たな生活を始めました。

地元の小学校に転入したキクコは、マリア(石井いづみ)と仲良くなり、町の暮らしに溶け込んでいきました。でも最近、“マトリョーシカ”のようだと噂される肉子ちゃんのことを少し恥ずかしがるようになっています。また、クラスの女子グループの揉め事に巻き込まれ、マリアとも気まずくなります。

時々変な顔をする風変りな同級生の二宮(花江夏樹)が気になっていたキクコは、肉子ちゃんと出かけたバスで二宮を見かけ、後日思い切って彼に話しかけます。二宮は、水族館よりひとつ先のバス停にある公共センターで模型作りをしていることを明かし、キクコに見せてくれます。意志とは関係なく突発的に顔を動かす癖を心配した両親の勧めで通っていたのです。また、港町の美しい光景が一望できるとっておきの場所も教えてくれました。女子の揉め事を二宮に愚痴っているうち、キクコは自分の狡さに気付き、マリアと仲直りします。この場面、女子なら大抵経験あるんじゃないかな~~

運動会の日、張り切って豪勢なお弁当を作り、嬉々として保護者の借り物競争に出て注目を浴びる肉子ちゃんを呆れながらも応援していたキクコは、お昼におにぎりを持って「トイレ」に行く肉子ちゃんの挙動不審な様子や、誰かが自分を隠し撮りしていることに気付きます。

ここでずっと暮らしたいと思い始めていたキクコでしたが、惚れっぽい肉子ちゃんが新しい恋をしているように感じ不安が頭をもたげます。

そんなある日、腹痛を我慢して倒れたキクコは病院で目を覚まします。付き添っていたサッサンから盲腸で手術したと告げられ、痛みを我慢していた理由を聞かれたキクコは自分が抱えている不安を自覚します。

肉子ちゃんに新しい恋人が出来たんじゃないかと聞いて「私ってお母さんの本当の子ども?」とずっと抱いていた疑問をぶつけたキクコに、一瞬表情をこわばらせながらも、真実を語り始める肉子ちゃん。妹のように可愛がっていたみう(吉岡里帆)が妊娠したものの男に逃げられ、キクコを生んだ後に育児の重圧から娘を置いていなくなった・・おぃおぃ!しかも、二人は定期的に電話で連絡を取り合い、実母は運動会にもやってきていたのに、娘に会おうともせず帰っています。彼女には新しい家庭があるという、なんともシリアスな話なんですが、肉子ちゃんが語ると実にあっけらかんとしているんだな~~。ちなみにキクコが疑った相手は男じゃなくてみうだったのね。

「私は本当のお母さんに捨てられたの?」と尋ねるキクコに、「それは違うんだよ」と当時のみうの心境を思い遣る肉子ちゃん。キクコは「肉子ちゃんは不細工で不器用で太っていて、うちは肉子ちゃんみたいになりたくない。でも、そんな肉子ちゃんが大好きや」と慰めるのです。いやいや、11歳の女の子だよね?どっちが親やねん

退院したキクコが、ある日初潮を迎え、嬉し涙で「おめでとう」と言う肉子ちゃん。供え物の紅白饅頭が「紅紅」だったというオチ付き。

ラストシーンは、TVに映った明石家さんま(本人)を見て「よう喋る男やな」とテレビの電源を切る肉子ちゃんです。

う~~ん・・これって美談なのかな?思春期を迎えた少女が自分の置かれた状況を確認したことで大人の階段を上った的な?

関西のお笑い好きなら、面白いと笑えるツボがたくさん散りばめられているのだと思いますが、どうもそのノリについていけず、肉子ちゃんのキャラの強烈さに引き気味で見てしまいました。善人だというのはわかるけど、もう少し生き方ってあるんじゃないの?とか。でもそんな肉子ちゃんだからどこに行っても愛されるのかも。


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ビブリア古書堂の事件手帖II ~扉子と空白の時~

2022年06月15日 | 

三上延(著) メディアワークス文庫

ビブリア古書堂に舞い込んだ新たな相談事。それは、この世に存在していないはずの本――横溝正史の幻の作品が何者かに盗まれたという奇妙なものだった。どこか様子がおかしい女店主と訪れたのは、元華族に連なる旧家の邸宅。老いた女主の死をきっかけに忽然と消えた古書。その謎に迫るうち、半世紀以上絡み合う一家の因縁が浮かび上がる。深まる疑念と迷宮入りする事件。ほどけなかった糸は、長い時を超え、やがて事の真相を紡ぎ始める――。(「BOOK」データベースより)

 

ブックカフェで祖母の智恵子と待ち合わせをしている扉子。ここは友人の戸山圭の両親が経営しています。前作に登場した大輔の日記マイブック『2012、2021』を持参するよう祖母に頼まれた扉子は、智恵子を待つ間にそれに目を通します。両方とも横溝正史の『雪割草』事件について書かれていて・・・と掴みはOK。

今回はまるまる横溝正史の作品で、ファンにはたまらないかも

第一話 横溝正史「雪割草」Ⅰ

栞子と大輔が結婚したばかりの2012年。井浦清美から盗まれた本を取り返して欲しいと依頼された横溝正史の『雪割草』は、出版されていない幻の作品でした。清美の伯母の上島秋世が所有していたもので、彼女の死後妹の春子が相続するはずになっていて、春子は双子の姉・初子が盗んだと主張しますが初子は否定。身内の恥だと警察に届けなかったため未解決のままだったのです。犯人とその目的は?そもそも雪割草は存在するのか?二人は犯人とその目的を解き明かすのですが、事件は完全に解決されないまま終わりを迎えていました。

第二話 横溝正史「獄門島」

9年後の2021年。小学生になった扉子が大輔と古書店のもぐら堂の二階のブックカフェで店主の帰りを待っています。

表紙に惹かれた扉子が両親の許可をもらって取り置きをしてもらっていた『獄門島』ですが、そのことを知らない店員が他の人に売ったことが判って、ショックを受ける扉子でしたが、対応した店員の反応から誰が買ったのか推察するあたりはさすが栞子の娘!

この本は店主が大事にしていたもので、それを知っている妻が買い戻していたことがわかり、更にひと騒動を経て扉子の手に渡ることになります。前出の戸山圭ともこの事件がきっかけで友人となるんですね。

第三話 横溝正史「雪割草」Ⅱ

初子が亡くなり、遺言でビブリア古書堂に蔵書を買い取ってもらうよう指示されたと再び清美から依頼を受けます。懇意にしている古書店ではなく、わざわざビブリアに依頼した理由が9年前の事件と関係があるのではと考えた栞子たちは、前回の事件で盗まれたままだった横溝正史の直筆原稿の行方を追います。犯人はやはり身内、それも「獄門島」など金田一シリーズの熱烈なファンでした。

本好きに悪い人はいないという概念はこの本を読んでいると度々ひっくり返される思いになるけれど、今回もまた・・

清美という人はごく普通の優しい女性ですが、家族には恵まれていないなぁ それとも本への執着が人を変えてしまうのかしら?

本作は、横溝正史の作品はもちろん、当時の彼を取り巻く状況・環境も知ることが出来て、特にファンではなくても興味を惹かれてしまいます。

扉子が買った「獄門島」は少年少女向けにリライトされた作品ということで、そういえば昔その手のシリーズを読んだことを思い出しました。とはいえ、横溝正史や江戸川乱歩じゃなくてルパンやホームズのシリーズの方でしたが

扉子が読み終わるのを待っていたかのように声をかけたのは智恵子。というか、待っていて扉子の反応を見ていたんですね。

二つの事件をどう思うか聞かれた扉子の答えは智恵子を十分満足させたようです。それにしても発端が智恵子であることを見抜き、その裏書が真実かどうかまで疑う扉子は、栞子をも凌ぐ才を秘めているような…末恐ろしいわぁ

でも、扉子には大輔の遺伝子も受け継がれているわけで、やはり智恵子の思惑通りには運ばない気もしますが


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劇場版 きのう何食べた?

2022年06月13日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年11月3日公開 120分 G

街の小さな法律事務所で働く雇われ弁護士・ 筧史朗 【シロさん】 (西島秀俊)とその恋人で美容師・矢吹賢二【ケンジ】(内野聖陽)。同居する二人にとって、食卓を挟みながら取る夕食の時間は、日々の出来事や想いを語り合う大切なひととき。ある日、史朗の提案で、賢二の 誕生日プレゼントとして「京都旅行」に 行くことになる。しかし、この京都旅行をきっかけに、二人はお互いに心の内を明かすことができなくなってしまう…。そんななか 、史朗が残業を終え商店街を歩いていると、偶然、賢二を目撃する。その横には見知らぬ若いイケメンの青年(松村北斗)が…!さらに小日向大策(山本耕史)から井上航(磯村勇斗)が居なくなったと相談を受け…。

穏やかであたたかい毎日が一変。当たり前だったはずの平凡でゆっくりとした日常を取り戻すことはできるのか―
シロさんとケンジの今後の人生を揺るがす、物語が始まります。(公式HPより)

 

よしながふみの漫画のドラマ化で話題となった「きのう何食べた?」を、ドラマ版のキャスト&スタッフで映画化した劇場版です。といっても4ドラマは全く見ていないのですが 2LDK男2人暮らしのほろ苦くもあたたかい毎日と日々の食卓を描いた物語です。

シロさんから京都旅行に誘われ大喜びのケンジでしたが、あまりにも至れり尽くせりの豪華な旅行に逆に「シロさんが死んでしまうのではないか」「別れを切り出されるのではないか」と疑心暗鬼になります。その気持ち、わかるなぁ~~幸せが大きすぎると逆に不安になるものよね

実は、正月にシロさんの実家に一緒に行った時、歓待はしてくれたものの、帰った後で母親(梶芽衣子)がストレスで体調を崩したので、今年の正月は連れてこないで欲しいと両親から言われたシロさんがお詫びの気持ちで旅行を計画したのでした。それを知って病気や別れじゃないと安心したケンジは「そんなこと気にしない」と答えますが、本当はやっぱり傷ついているんですよね。

ケンジの働く美容室のイケメン美容師・田渕剛(「SixTONES」の松村北斗)ははっきりものを言う子。同棲している彼女への言動もデリカシーを欠いていて、やんわりと店長(マキタスポーツ)やケンジに注意されてもピンと来ない様子です。まさに今時の若者って感じ、といったら失礼かな でも彼女から二股かけていたけど相手の方を取ったと別れを告げられても、自分の非を素直に認めてあっさり受け入れるところはちょっと見直したかな。

冷蔵庫が壊れたのでと食材を持って訪れた小日向(山本耕史)と航(磯村勇斗)のカップルとの夕食はローストビーフとアクアパッツァ。スーパー友達の富永(田中美佐子)さんのレシピと指導の下、小日向とシロさんが仲良くキッチンに立つシーンも絵になるなぁ (この二人、過去に何かあったのか、ケンジは二人で会うのを嫌がる様子を見せていて、だから航も呼ばれてるらしい・・ドラマ見たらわかるんだろうな。)出来上がった料理もとっても美味しそう。富永さんに孫が出来る話に航は「気に入らないなぁ」と言いますが、子供というのは同性カップルには痛い急所なんですよね。 それでも誰かの幸せを自分も幸せと感じるようになりたいとシロさんたちは思うのです。

美味しそうといえば、京都での食べ歩きも、宿の食事も、黒豆などのお節料理も、普段の食卓に並ぶものも、み~~んな美味しそうでお腹が鳴りそうでした。 レシピをメモっておけばよかったかな。

シロさんは、両親に、もしお嫁さんでも「家に連れて来るな」と言えるのかと問い、正月はケンジと過ごすと伝えます。そして自分が孤独ではないと知らせたかったのだが、親の気持ちを慮ることをせず自分の事しか考えていなかったと謝るのです。頭では理解し、受け入れているつもりでも、息子が男性と仲睦まじい姿を目の前で見せられると複雑な胸中になる母親の気持ちもとても理解できるので・・・お互いに辛い。それでもこの親子は、互いに想い合い、幸せを願っていることが伝わってきました。

ケンジの方も、自分たちを捨てていった?父が死んだと知らされ葬儀のために実家に行きます。ケンジの家族は彼をありのままに受け入れていますが、母親が自分の美容室を継がないかとケンジに提案したのは、彼らの関係がずっと続くかどうかを懸念し、息子の将来を案じていたからでもあります。これもまさに母心、親心です。

ケンジは田渕君の遠慮のない指摘で頭頂部の薄さが気になり、脂ものを控えたり発毛外来を受診したりします。そんないつもと違う様子のケンジにシロさんは彼が病気なのかとか浮気?とか心配になるんですね。冒頭のエピソードの逆バージョンです。

誤解が解けてよりいっそう仲良しになる二人が、桜の花びらが舞う中でお弁当を食べながらずっと一緒と手を重ねるラストにもほっこりです

そういえば直接的な愛情表現は極端に少なく、そういうことになりかけるとシロさんがのけぞって避けるのもお約束なのかな?

同性に限らず男女でも普通に起こる何気ない日常の営みが美味しそうな料理に彩られて展開されていました。


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静かなる情熱 エミリ・ディキンスン

2022年06月12日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2017年7月29日公開 イギリス 125分 G

19世紀半ばのマサチューセッツ州。家族と離れ、マウント・ホリヨーク女子専門学校に通っていたエミリ・ディキンスン(シンシア・ニクソン)は、学校での福音主義的な教え方に神経質になっていた。そんなエミリを家族が迎えにやってくる。(公式HPより)

 

北米の小さな町の屋敷から出ることなく、生前にわずか10編の詩を発表したのみで、無名のまま生涯を終えたアメリカの女性詩人エミリ・ディキンスン(1830-1886)の半生を描いた作品です。死後に約1800編の詩が発見され、後世の芸術家たちに大きな影響を与えたと言われるディキンスンの少女時代から晩年、死までを約20篇の彼女の詩を織り込んで描かれていて、撮影はアマストにあるエミリが実際に暮らした屋敷とスタジオで行われています。監督はテレンス・デイヴィス。

エミリは清教徒主義の影響を受けるアメリカ東部の上流階級の家庭に生まれました。女子校での生活と信仰を強要する方針に馴染めない彼女を心配した弁護士の父親エドワードは、兄オースティン、妹ラヴィニア(ジェニファー・イーリー)を伴って学校を訪れエミリを家に連れ帰ります。ボストンから来たおばのエリザベスは保守的な考え方の女性で、兄妹の機智に富んだ会話は彼女を大いに困惑させますが、両親の愛情に満ちた家庭です。エミリはこの家と家族を心から愛していることが伝わってきます。

エミリは夜中に詩を書くことを父に許され、父のツテで地元の新聞に詩が掲載されます。(当時、女性が詩を書くことは世間に認知されていないので匿名扱いですが

エミリは、美人でウィットに溢れ、進歩的なヴライリング・バッファム(キャサリン・ベイリー)と意気投合し親友になります。大学を卒業した兄が父と弁護士の仕事をすることになり、花嫁スーザン(ジョディ・メイ)と隣の家に住むことになると、彼女とも親しくなります。

南北戦争が始まりますが、父は一人息子が戦争に参加することを許しませんでした。上流階級はお金で招集を免れることができたのね。

男として戦いに身を投じたい気持ちを止められ、長男の責任として家に留まることを渋々了承した兄ですが、この時の鬱屈が後の振る舞いに影響したのかしらん?と思ってしまったぞ

教会に批判的なエミリでしたが、素晴らしい説教をするワズワース牧師に心をときめかせます。彼の妻はとても禁欲的で、お茶に招待しても水しか飲まず、庭の散歩も断り、ブロンテ姉妹の作品も受け容れない堅物ですが、牧師はエミリの詩を気に入ってくれます。しかしバッファムの結婚と、牧師のサンフランシスコ赴任、さらに父親の死が彼女を孤独に追いやります。父の葬列にも加わらず自室に閉じこもり、白いドレスを喪のしるしに着用するエミリをラヴィニア(ヴィニ―)は心配します。

新聞社のボウルズや、詩の崇拝者のエモンズ青年に対しても階段の上から応対し、辛辣な言葉を投げて傷つけるエミリ。自分の気持ちを素直に出すことのできない人なのね。 おまけに、自分の容姿にコンプレックスを抱いているので余計厄介な性格です。

さらに、ブライト病という腎臓の病がエミリを襲います。腎臓の血管の炎症により尿中にアルブミンタンパク質が見つかる慢性腎疾患で、根治は見込めない病でした。やがて母が病で亡くなります。この母親はうつ病だったんじゃないかなという描写でしたが、死因はそれとは別みたい。

ディキンスン家を夫と来訪したトッド夫人(バッファム)の歌声に心を動かされたエミリでしたが、親友だった彼女と兄の情事を目撃し、スーザンへの裏切りを強く非難します。兄との仲は悪化していきましたが、ヴィニーはエミリが兄に対して不当に厳しく批判していると指摘します(いやいや、浮気はダメでしょ!非難されて当然と思うけど、当時の上流社会の感覚は違うのかしらん?)孤独を嘆く姉にヴィニーだけは理解を示して優しく寄り添うんですね。
 
エミリの病は悪化していき、55歳で亡くなります。
教会の教えを強要されたり、男尊女卑の考え方が納得できず、周囲から孤立していったエミリは、純粋過ぎたとも言えます。しかし、そう声を上げることはとても難しく勇気の要ることです。それでも自分の心に忠実に生きようとした彼女は詩の中に全ての思いを込めたのでしょう。劇中に登場する約20扁の詩はまさにエミリの心情を表しています。彼女の詩は、自然・信仰・愛・死がテーマになっていて、繊細な感性と深い思索のなかで強い信念を持って作られているとのことです。

とはいえ、「長いものには巻かれろ」な事なかれ主義者としては、やはり彼女のような生き方はとても孤独で息苦しいだろうなぁと思ってしまいますね。


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はい、泳げません

2022年06月10日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2022年6月10日公開 113分 G

大学で哲学を教える小鳥遊雄司(たかなしゆうじ)は、泳げない。水に顔をつけることも怖い。屁理屈ばかりをこねて、人生のほとんどで水を避けてきた雄司はある日、ひょんなことから水泳教室に足を運ぶ。訪れたプールの受付で、強引に入会を勧めて来たのが水泳コーチの薄原静香(うすはらしずか)だった。静香が教える賑やかな主婦たちの中に、体をこわばらせた雄司がぎこちなく混ざる。
その日から、陸よりも水中の方が生きやすいという静香(綾瀬はるか)と、水への恐怖で大騒ぎしながらそれでも続ける雄司(長谷川博己)の、一進一退の日々が始まる。泳ぎを覚えていく中で雄司は、元妻の美弥子(麻生久美子)との過去や、シングルマザーの恋人・奈美恵(阿部純子)との未来など、目をそらし続けて来た現実とも向き合うことになる。それは、ある決定的な理由で水をおそれることになった雄司の、苦しい再生への第一歩だったーー。(公式HPより)

 

ノンフィクション作家、高橋秀実の同名エッセー「はい、泳げません」を渡辺謙作が監督・脚本で映画化。水泳教室を舞台に“泳げない男”と“泳ぐことしかできない女”の希望と再生が描かれます。

頭でっかちな言い訳ばかりするカタブツな大学教授を演じる長谷川博己は、2015年のフジテレビのドラマ「デート~恋とはどんなものかしら~」のプライドの高いオタク気質の谷口 巧を彷彿とさせるキャラで、まさにはまり役 水を怖がってジタバタする姿を水泳教室のおばちゃんズ(伊佐山ひろ子、広岡由里子、占部房子、上原奈美)に何かといじられながら、それでも教室を続けるのには実は理由があることが次第にわかってきます。何かと男女の考え方の違いを主婦・出産経験のある母親目線であげつらうおばちゃんズの会話が笑えるけどなるほどな~!と共感できました。

そんな小鳥遊を時に優しく、時に厳しく導く水泳コーチの静香は、泳ぎ以外は不器用な女性。過去に交通事故に遭ったトラウマから道を歩くのが怖くて、傘を盾代わりに歩いているという設定でした。 

冒頭の妻との仲睦まじい会話から5年が経過し、独り暮らしになっている小鳥遊。帰宅して覗く子供部屋は時が止まっているように見えます。

彼が泳ぎを習おうと思ったのはシングルマザーの恋人に息子がいたからのようです。実は、5年前に彼は息子を川で亡くしていたんですね。しかもその時の記憶を失っていて、息子の死と向き合えていなかったのです。一緒に泣いてくれない夫との間に溝ができ、妻は家を出て行きました。彼女の気持ちも、実感を持てずに苦しむ夫の気持ちも痛いほど伝わってきます。

小鳥遊が泳ぎを覚えたいと思ったのはしかし、今のままではいけないという思いもあったのでしょう。鴨下教授(小林薫)に相談する姿は、苦しみながらも必死に前を向こうとする実直さが現れているように感じました。

頭でっかちな彼はいちいちコーチの言葉を反芻し、おばちゃんズのアドバイスを素直に取り入れて泳ぎます。初めはガチガチに固かったフォームも、次第に柔らかくしなやかになっていくのですが、無心に近づくほどに、亡き息子の声が聴こえてくるようになります。でもそれは事故の直前までで途切れてしまうのです。思い出さないという選択もあると言われても、そこを乗り越えなければ道は拓けないんだよな~~と思いながら観ていたら・・・やっぱりそういう展開になるよね

事故当日の記憶が戻った時、初めて小鳥遊は泣くことができます。そんな彼を水中で抱き締める静香。(あ、でも二人は恋人関係にはならないのよね

息子の思い出の品を手に、美弥子の前でも涙を流した小鳥遊。元夫婦の間にわだかまっていたしこりも一緒に流されたようでした。

辛い過去を告白したことで一時は奈美恵に別れを告げた小鳥遊でしたが、改めてプロポーズをします。(美弥子は既に再婚しています

泳げない男が屁理屈をこねながら必死に水中で格闘する姿はコメディですが、その背景には涙させられます。まさに笑って泣いて希望が湧いてくる作品でした。


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スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム

2022年06月08日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2022年1月7日公開 アメリカ 149分 G

前作でホログラム技術を武器に操るミステリオを倒したピーター(トム・ホランド)だったが、ミステリオが残した映像をタブロイド紙の「デイリー・ビューグル」が世界に公開したことでミステリオ殺害の容疑がかけられてしまったうえ、正体も暴かれてしまう。マスコミに騒ぎ立てられ、ピーターの生活は一変。身近な大切な人にも危険が及ぶことを恐れたピーターは、共にサノスと闘ったドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)に助力を求め、魔術の力で自分がスパイダーマンだと知られていない世界にしてほしいと頼むが……。(映画.comより)

 

「スパイダーマン ホームカミング」「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」に続く、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の「スパイダーマン」シリーズ第3弾です。・・って、このシリーズは観てなかった ミステリオって誰??

ドクター・ストレンジの魔術で引き寄せられたサム・ライミ監督版の悪役グリーン・ゴブリン(ウィレム・デフォー)やドック・オク(アルフレッド・モリーナ)やサンドマン( トーマス・ヘイデン・チャーチ)、マーク・ウェブ監督版の悪役エレクトロ(ジェイミー・フォックス)と各シリーズのピーター・パーカー/スパイダーマン(トビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールド)も登場します。

ミステリオの策略により正体を明かされ、ミステリオ殺害の容疑をかけられたピーター。親友のネッド( ジェイコブ・バタロン)、恋人のMJ(ゼンデイヤ)、メイおばさん(マリサ・トメイ)も尋問されますが、盲目の弁護士マット・マードック(チャーリー・コックス)の尽力で不起訴になります。しかし世間の評価は二分され、その余波で、ピーターだけでなくMJとネッドも受験したMIT(マサチューセッツ工科大学)から落とされてしまいます。

ピーターはドクター・ストレンジに泣きつきます。ストレンジは、全世界の人々からスパイダーマンの正体を忘れさせる呪文を使うことを提案しますが、途中でピーターがあれこれ願いを追加して邪魔したため、失敗してしまいます。まさにガキの甘えそのものだけど、安易に呪文を行使しようとしたストレンジもどうかと思うぞ

ストレンジから叱責されたピーターは、自力で何とかしようとMIT副学長に直談判を試みますが、その最中にドック・オクの襲撃を受けます。副学長を助け、何とか勝利したピータの前に、今度はグリーン・ゴブリンが現れます。直後にストレンジの魔術でサンクタムに転移したピーターは、彼から魔術の失敗により「ピーターがスパイダーマンだと知る者達を、他の並行世界から呼び寄せてしまった」ことを告げられます。彼らを捕まえ元の世界に帰すため、ピーターはMJ、ネッドと共に戦うことになるんですね。この時点で、ストレンジが捕まえていたリザード( リス・エヴァンス)、ドック・オクが囚われています

グリーン・ゴブリン追跡中に、エレクトロとサンドマンを捕縛し、メイを通じてノーマン(グリーン・ゴブリンの元の人格)もサンクタムへ連れてきますが、彼らを元の世界に戻すことはその死を意味すると知ったピーターは、彼らを救おうと提案します。力を失わせて普通の人間=善人に戻してから元の世界に送ろうというのです。ストレンジから運命は変えられないと拒絶されたピーターは、呪文を逆転させる装置を奪って逃げだし、追ってきたストレンジからスリング・リングを奪いグランドキャニオンに閉じ込めてしまいます。数学が魔術に勝った 

装置とリングをMJとネッドに託したピーターは、訪問者たちを治療するため、ハッピー (ジョン・ファヴロー)のアパートで、ノーマンと一緒にまずドック・オクを本来のオクタビアスに戻す事に成功します。しかし、エレクトロの治療の途中でノーマンにゴブリンの人格が出て、彼に唆されたエレクトロが反旗を翻し、サンドマンとリザードまで逃亡。さらに、ゴブリンとの戦いでメイが殺されてしまいます。メイの最期の言葉は「大いなる力には大になる責任が伴う」これはスパイダーマンのどのシリーズでも出てきますね

MJとネッドはスリング・リングでピーターを呼び寄せようとしますが、現れたのは各シリーズのピーターたちでした。ピーター2とピーター3です。 失意のピーターに、二人はそれぞれが愛する者と離別したことを話してメイの遺志を継いで訪問者たちを治療して元の世界に帰すための協力を申し出ます。

デイリー・ビューグルの放送を利用して改装中の自由の女神にヴィラン達を誘い込むことに成功したスパイダーマン達は、サンドマンとリザードを本来のフリントとコナーズに戻すことに成功。さらにオクタビアスがスパイダーマン側に加勢して、エレクトロを本来のマックスに戻します。ミラー・ディメンションから帰還したストレンジは、その様子を見てピーターを褒めますが、直後ゴブリンの急襲に遭って封印呪文が解き放たれてしまいます。ストレンジがマルチバースの扉を閉じようとする一方、憎しみにかられたピーターはゴブリンを殺そうとします。しかしゴブリンに刺されながらも彼をかばうピーター2を見て我に返ったピーターはピーター3の投げた治療薬を受け取りノーマンを取り戻させます。

制御不能に陥ったマルチバースの侵蝕を止めるには、自分の記憶を消し去る他ないと決意したピーターはストレンジに伝え、共に戦ったピーターたちやMJやネッドに別れを告げます。魔術は行使され、世界は再び元の平穏を取り戻します。

2週間後。約束通りに自分を思い出させようとMJが働くドーナツカフェを訪れたピーターでしたが、MJの額に残る傷を見て翻意し、名前を告げただけでその場を去ります。メイの墓で出会ったハッピーともメイを悼む会話を交わしますが、やはり自分が誰かは知らせません。

新しく借りたアパートの一室で警察の通信をチェックしながら、手作りのスーツを着て窓から雪の降るニューヨークへと飛び出すピーター。スパイダーマンとして孤独に生きる選択をしたということかな?

エンドロールの後は、ヴェノム。次の作品の予告ですね。

初めはあまりにもお子ちゃまな甘さに呆れながら観ていましたが、愛する者の死を乗り越えて、なおヴィランたちを死から救い治療して元の人格に戻そうという強い意志は称えられるべきですね。とはいえ、失意のあまり自暴自棄になって投げ出そうとしたり、怒りに任せて殺そうとするあたりの人間臭さにも共感できちゃうんですが そんな時、仲間の存在が救いになり、導きになるという。

思い返せば、各ピーターたちもそれぞれ愛する人を奪われ殺されていて、ピーター3がMJを救った後に見せた表情は、別の世界の別のMJだけど、救えたことで「あの時」の後悔がほんのわずかでも慰められたのかなと思わせてくれました。ここが一番個人的に印象に残ったかな

何より歴代スパイダーマンとヴィランが総登場で懐かしかったかな。


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