2022年1月28日公開 128分 G
時代に取り残され過疎化に苦しむ孤島・猪狩島。島の青年・泉圭太(藤原竜也)が生産を始めた黒イチジクが高く評価されたことで、島には地方創生推進特別交付金5億円の支給がほぼ決まり、島民たちに希望の兆しが見えていた。しかし、小御坂睦雄という男の登場によって、島の平和な日常が一変する。小御坂の不審な言動に違和感を覚えた圭太と幼なじみの猟師・田辺純(松山ケンイチ)、新米警察官の守屋真一郎(神木隆之介)の3人は小御坂を追い詰めていくが、圭太の娘の失踪を機に誤って小御坂を殺してしまう。3人はこの殺人を隠すことを決意するが、実は小御坂は元受刑者のサイコキラーであり、小御坂の足取りを追って警察がやってきたことで、静かな島は騒然とする。(映画.comより)
筒井哲也の同名コミックを実写映画化したサスペンス作品です。一つの綻びがやがて大きな破綻に結びついていく様子が、島の閉塞感を背景に描かれます。
フェリーから降りて来た車に乗っていたのは、保護司の鈴木賢治(諏訪太郎)と元受刑者の小御坂睦雄(渡辺大知)ですが、この時点では二人の関係も素性も明かされません。訪ねて行った泉という家は留守で、役場に向かう途中、突然後部座席の小御坂が鈴木の首を絞めて殺害します。・・・意味わかんね~~
泉圭太は幼馴染の加奈(黒木華)と結婚して娘の恵里奈(飯島梨央)をもうけ、黒イチジクの生産で島の希望となっている存在。同じく幼馴染の
猟師・田辺純とは親友で彼もイチジクの出荷を手伝っていて家族ぐるみの付き合いをしています。岡崎(寺島進)に代わって島の警察官に着任した守屋真一郎も彼らの幼馴染です。 とまぁ、大体の人物紹介がされたところで事件が起こるんですね~~
イチジクの無人直売所で、勝手にイチジクを食べていた小御坂を見かけた圭太と純は注意しますが無視されます。圭太が帰宅すると、娘の姿がなく、男が持っていたペットボトルが落ちていたことで、妻や純、真一郎と手分けして探していると、農園のビニールハウスで娘の自転車に乗り卑猥な動画を見ている男を発見します。(この男、幼児性愛のサイコパスなんですね)純と共に男を問い詰めると揉み合いとなり、圭太が突き飛ばして死なせてしまうんですね。圭太が島の希望を一身に背負っている状況から、三人は「全部なかったこと」にしようとします。
死体を純の倉庫の冷蔵庫に隠そうとするところを横田庄吉(柄本明)に見られた三人は猪だと言って誤魔化し、真一郎の着任祝いで何事もなかったように振舞います。町長・庄司華江(余貴美子)は、圭太のイチジクのおかげで島に国からの交付金5億が入る予定だと言い町の皆が大喜びします。交付金で病院や役場の改築ができ暮らしが豊かになるからです。
一方、鈴木の娘が捜索願いを出したことで県警が動き島に刑事の畠山努(永瀬正敏)と青木千尋(伊藤歩)がやってきます。執拗な捜査を繰り返す警察に、圭太たちは追い詰められていきます。弱気になる真一郎を叱咤し小御坂の死体を運ぼうとしているところに、町長が押し入ってきて殺人がバレてしまうのですが、島を守るために純が罪をかぶるよう強制し、農園は自分が引き継ぐから圭太にも島を出ていくように言います。この町長、本当は自分の利益しか考えていないのね。そこへ事情を知った庄吉が町長を鉈で襲い、町長もスタンガンで応戦、咄嗟に純が町長をスコップで殴り殺してしまうんですね。庄吉は死に際に「島を守ってくれ」と言います。こちらは電気ショックで心臓がいかれたらしい。
ここからが、閉鎖的な島ならではの展開。町長の死体は部下の野毛二郎(迫田孝也)の協力で、小御坂が彼女を殺して島外に逃げたように細工されます。庄司の死も彼の息子夫婦と島の医師に頼み込んで心不全で葬儀を出します。
でも、不自然さは否めず畠山の捜査の手は緩みません。とうとう追い詰められた真一郎は自分が罪を被って拳銃自殺してしまいます。
その後、島民全体の携帯に、〈死体はイチジクの下。殺したのは泉圭太。〉というメールが町長の消えた携帯から届きます。
警察が圭太の畑の捜索を始める中、焦る圭太と純。メールを送ったのは純ではと疑う圭太に、純は「俺が信用できないのか」と怒り、自分が自首すると言います。それを聞いて圭太は「島と加奈と恵里奈を頼む」と言い、罪を認め逮捕されました。死体は冷蔵庫から移されビニールハウスの中に埋められていました。
場面が変わり、イチジクの収穫をする加奈を手伝う純に、彼女は「私はずっと圭太を待つ」と言います。真一郎の墓前で、畠山から「お前はそれで幸せか?」と問われます。純の部屋の壁には一面に加奈の写真が貼られています。
彼らの過去(演じる俳優の背の高さが「今」を演じる二人と逆なので混同してしまいます)がところどころに挿入されていた意味が、ここではっきり形になるんですね。純は加奈のことがずっと好きだったけれど、彼女が好きだったのは圭太。黒イチジクを生産して島の救世主と持ち上げられている圭太への嫉妬もずっと抱えていたのね。小御坂の死をきっかけに、純は圭太を陥れる計画を考え付いたのかな。町長の携帯を密かに持ち帰ってメールを送ったのは純で、無人販売所で小御坂の履歴書を見つけて、刑事たちの目につくようにわざと圭太の家の前に置いたのも純。その全てを畠山も、それから圭太も察しているようです。
拘置所に面会に来た加奈に、圭太は「純を信じてやってくれ」と言います。冒頭で読み上げられる娘が書いた絵日記の内容が終わりに繰り返されることで、彼らの深い絆が表現されているように思えました。
そもそも、何故保護司を突然殺すのか、単にサイコパスだからというなら、何故釈放されるのか、一番気になったところですが、とにもかくにも一つの「ノイズ」が大勢の人生を狂わせる様子は確かに怖かった!! そして真面目さ故に死を選んでしまった真一郎君が可哀そう過ぎ 岡崎の一言がなければまた違っていたんじゃないだろうか?とも考えちゃいますね。