杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

燃えよ剣

2022年08月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年10月15日公開 148分 G

江戸時代末期。黒船の来航により、外国から日本を守るため幕府の権力を回復させようとする佐幕派と、天皇を中心にした新政権を目指す討幕派の対立が深まりつつあった。武州多摩の農家に生まれた土方歳三(岡田准一)は「武士になりたい」という思いで、近藤勇(鈴木亮平)、沖田総司(山田涼介)ら同志とともに京都へ向かう。芹沢鴨(伊藤英明)を局長に、徳川幕府の後ろ盾で新選組を結成し、土方は「鬼の副長」と恐れられながら、討幕派の制圧のため京都の町で活躍を見せるが……。(映画。comより)

 

新選組副長・土方歳三の生涯を描いた司馬遼太郎の歴史小説の映画化です。新選組とは、江戸時代末期の京都で治安維持活動、特に尊攘派志士の弾圧活動をした浪士隊の名称です。(ウィキペディアより)

2021年の大河ドラマ『青天を衝け』で、元京都見廻組の旗本・大沢源次郎捕縛を命じられた渋沢栄一と近藤勇の接点が描かれていましたが、渋沢も農民の出から身を興したという点では似ていますね。

黒船の来航により日米和親条約が締結されると、佐幕派と倒幕派が対立し治安が急激に悪化していきます。井伊直弼が暗殺され(桜田門外の変)、討幕派による攘夷運動が各地で起こっていました。

“バラガキ”と呼ばれていた土方ですが、実家は豪農で、学問の機会も与えられていたようです。(その点は渋沢も同様で、農民でも未来への見識を得ることができる時代になってきていたのかな

近藤勇の天然理心流の道場「試衛館」で沖田総司らと共に剣の腕を磨いていた土方でしたが、なかなか人が集まらず運営が行き詰まっていた近藤が、一橋慶喜(後の徳川慶喜)の命で京都守護職に就いた会津藩主松平容保(尾上右近)が全国から腕に自信のある者を身分問わず集めていると知って、皆で京へ上ることになります。

会津藩と繋がりのあった芹沢鴨を仲間に壬生浪士組を発足した土方たちは、倒幕派の浪士を次々に殺害し京の治安回復に貢献します。会津藩を後ろ盾に、芹沢鴨と近藤を局長に「新選組」を結成して組織が拡大していくと、土方は憎まれ役を引き受け組織を統制します。逃げたり勝手に金策したら切腹といった厳しいルールを敷いた局中法度が有名ですね。

京に治安が戻ってくると、芹沢の商人に対する横暴な金銭要求や女性への暴行などの悪行が目立つようになり、松平容保から芹沢の始末を命じられた土方は、討幕派の犯行に偽装して芹沢を襲いこれを惨殺しました。このケースだけは全面的に許容できるかも

闇討ちで負傷した土方の手当てをした江戸生まれのお雪(柴咲コウ)と互いに惹かれ合う二人。お雪の情報から「池田屋襲撃事件」が起きた設定ですね。27人の攘夷派浪士を斬って倒幕作戦を未然に潰した新選組の名は世に轟きました。

新たに伊東甲子郎が参謀に加わりますが、新選組を尊王派に変えようと企てる伊東に惹かれた山南と新選組の武力向上だけを求める土方は対立し溝が深まっていきます。山南が隊を脱走すると、土方はこれを許さず切腹を命じ、さらに伊東を暗殺します。

しかし薩長同盟が成立すると、時流は一気に倒幕へ傾き始めていきました。1867年、徳川慶喜が大政奉還を宣言するに至り幕府は崩壊します。『青天を衝け』の慶喜は英明な将軍として国の未来のために英断したように描かれていましたが、本作では家臣を見捨てて逃げた暗愚な将軍として登場していました。 まさに立場が変われば見方も変わる見本のような

失意を抱えて鳥羽伏見の戦いに臨んだ新選組ら旧幕府軍ですが、総崩れとなります。近藤は重傷を負い剣を握れなくなり、沖田は結核の病床に。近藤と共に故郷へ逃げ延びた土方は、断髪して再起を誓いますが、自由を求める近藤は官軍に投降し後に斬首されます。病が悪化した沖田も病死すると、土方は同志やお雪と別れて江戸→会津→蝦夷・五稜郭へ。

折々挟まれる旧幕府軍の軍事顧問のフランス陸軍士官との会話の場面は、幹部だけに許される写真撮影の前のエピソードのようです。当時の列強諸国が日本を狙っていた時代背景の一端を垣間見るようでした。

小姓の市村鉄之助に写真と手紙を家族に届けるよう頼むと、土方は五稜郭の戦いで華々しく戦死し、その亡骸は函館で傷病者の手当てをするお雪のもとへ運び込まれましたとさ。

幕府が倒れ新政府になったことで今の日本がある、けれども、裏切りや血なまぐさい殺戮の果てに築かれた平和と繁栄でもあるのもまた事実でしょう。 自分の信ずる道をひたすら求めて生きた土方の心情はまさに武士。でもその血にまみれた人生を称賛することはできないかなぁ

山崎役の村本大輔の本業は才師なんですね。早口のキャラがはまっていました。岡田はじめ俳優たちの力演は流石ですが、斬り合いや暗殺場面が多いのはやはり好みではないかな とりあえず早回ししなかったのは自分を褒めてあげたい


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする