懲役病棟
2023年10月29日 | 本
垣谷美雨(著) 小学館文庫
神田川病院の“金髪女医”太田香織と看護師・松坂マリ江は、ひょんなことから女子刑務所に派遣される。当初は、受刑者との距離を感じていたが、同僚から授かった不思議な聴診器を胸に当てると――
惣菜四三〇円の万引きで懲役二年を科せられていたり、夫からの執拗なDVに耐えきれず殺害に及んでいたり、はたまた悪い男にそそのかされ、クスリに手を出していたり、と彼女たちの切実な事情が見えてきた。
二人は受刑者たちとは個人的に接してはならないという禁を破り、あっと驚く方法で解決に乗り出してゆくが……。(あらすじ紹介より)
「受刑者は私だったかもしれない――
そんな想像を読者に抱かせる本書を心からお勧めします」
村木厚子さん(元厚生労働事務次官)
惣菜四三〇円の万引きで懲役二年を科せられていたり、夫からの執拗なDVに耐えきれず殺害に及んでいたり、はたまた悪い男にそそのかされ、クスリに手を出していたり、と彼女たちの切実な事情が見えてきた。
二人は受刑者たちとは個人的に接してはならないという禁を破り、あっと驚く方法で解決に乗り出してゆくが……。(あらすじ紹介より)
「受刑者は私だったかもしれない――
そんな想像を読者に抱かせる本書を心からお勧めします」
村木厚子さん(元厚生労働事務次官)
「後悔病棟」「希望病棟」に続くシリーズ第三弾ということですが、いきなり本作から入りました。😁
同じ房にいる4人の受刑者が発熱して診察を受けたことから、彼女たちの境遇を知った香織とマリ江が、医者と看護士の立場を超えて支援しようとするお話です。
初めは受刑者に対する偏見を持っていた香織でしたが、不思議な聴診器とマリ江の指摘で、実は彼女たちも何ら変わらない普通の女性であることに気付きます。罪を犯した事情は様々だけど、環境や男が悪いのだと結論付けた香織は、彼女たちを救うために行動を起こすのですが、同僚たちを使っての探偵まがいの行為をさせたり、受刑者の家族を呼びつけたりとかなり強引な手法です。でもそれが痛快なの。
金髪でため口の香織はおよそ医者らしくありません。何しろ元ヤンの過去があります。😁 実家もお医者さんのお嬢様な香織は世事に疎い所もあるのですが、マリ江が教育係的な立場でフォローしてくれていて、なかなか良いコンビになっていました。マリ江が作る晩御飯の美味しそうな描写も楽しかったし、病院に戻ってから作る(作らされる)お弁当の中身も美味しそう😋
第一章 万引き犯 谷山清子 62歳
貧しさから万引きを繰り返している
手紙も面会もない一人息子を呼び出して母親の状況を伝えたことで面会に来るようになり身元引受人になったことで模範囚でいれば刑期が短縮
第二章 殺人犯 児玉美帆 40歳
夫のDVに耐えきれず殺した
夫の両親に子供たちが引き取られ手紙を出しても返事が来ていない
同僚の岩清水先生に頼んで夫の両親に子供たちの状況を聞いてもらうが、その際彼らが高齢で子供を可愛いと思えないことや息子が殺されたことで美帆を憎んでいることを知り、美帆の両親に子供を引き取ってもらうよう説得したことで子供たちや実家の親から手紙が来るようになった
第三章 覚醒剤事犯 山田ルル 26歳
両親からネグレクト状態で育ったため、自分の居場所を求めて悪い男に引っかかり覚醒剤を常習して収監
同僚の摩周湖先生に調べてもらい、男が実は結婚していて5人の子持ちであることを伝えたことで男と別れる決心がついた
出所後は同じ房の仲間と暮らすことになる
第四章 放火犯 秋月梢 80歳
孫が虐めで自殺した際、学校や教育委員会が事実を認めず隠そうとしたことで教育委員長の家に放火し収監
生き甲斐もなく死にたいと思っていることを知り、高齢の受刑者の現状を見せることで元気で出所したいと思うようになる
第五章 受刑者からの手紙
香織とマリ江が半年の派遣期間を経て病院に戻った後に4人の受刑者たちからそれぞれ手紙が届きます。本人が知らないところで動いてくれた二人への感謝が綴られていました。
解説 村木厚子
3つのリアルを丁寧に説明・解説しています
罪を犯す人のリアル:受刑者=悪人ではなく、それぞれに事情があり時に被害者でもあること
刑務所の中の暮らしのリアル:番号で呼ばれ8時間労働などの日常
世間のリアル :受刑者に対する偏見や差別の目は出所後もつきまとう現実
香織先生たちのお節介が功を奏す形ですが、同じ房の年齢の異なる4人が家族のような関係になっていく様子もほっこりしてきます。もし親身になってくれる家族や友人がいたら、彼女たちは罪を犯さずに済んだのかもとも思いました。やっぱり人は独りでは生きていけないんだな~~😊