杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ニューヨーク東8番街の奇跡

2019年11月30日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

1987年12月25日公開 アメリカ 106分

ニューヨークの下町にも再開発の波が押し寄せ、イーストサイドの最も古いアパートでも立ち退きをめぐって、不動産業者と住民達の争いが続いていた。亡くなった息子がまだ生きていると信じる老女フェイ・ライリー(ジェシカ・タンディ)を世話する夫のフランク(ヒューム・クローニン)は、年老いて疲れを感じ始めていた。妻の世話やアパートの立ち退き問題に疲れ果て眠り込んだフランクの部屋に、空の彼方から空飛ぶ円盤の形をした夫婦の宇宙生物が飛来してきた。アパートの屋上の小屋で暮らし始めた宇宙生物の存在は、またたく間にフランクら5人の住人に知れわたった。それから何日かが過ぎたある夜、宇宙生物の1匹が小屋で3匹の子を産んだ。2匹は元気だが、1匹の様子がおかしい。全然動かない1匹を奪い去るように、ボクサーくずれの管理人ハリー・ノーブル(フランク・マクレー)は部屋に持ちかえった。心優しいハリーは自分で大切にしていたテレビを壊し、部品で死にかけた宇宙生物を救ってやるのだった。宇宙生物たちはフランクのコーヒーショップで、手伝いをしてくれるまでになる。そんなある夜、地上げ屋の1人、カルロス(マイケル・カーマイン)がアパートに侵入し、斧で水道管や電気施設を叩き壊す。それに気づいた父親の宇宙生物は、カルロスに見つかり壊されてしまった。ヒステリックになったフェイに驚いて、宇宙生物の子供たち3匹は姿を消し、母親の宇宙生物は壊れた1匹の修理に没頭する。姿を消した3匹を呼び戻そうと、ハリーは近くの建物のネオン塔から笛を吹き始めた。するとどこからともなく3匹が現れ、修理を終え元気になった親たちと空の彼方に飛び去ってしまう。その頃アパートでは、どうしても住人を立ち退かせようと、悪徳不動産屋が自動発火装置をセットしていた。それを知ったカルロスは止めようとするが間に合わず、アパートは火の海に。1人アパートの中にいたフェイをやっとの思いで助け出したカルロスだったが、誤解されるのを恐れて逃げ出してしまった。カルロスは入院していたフェイが退院する時姿を見せたが、すぐにまたいなくなる。退院を喜び合うフェイたちの所へ警察官が、瓦礫の山となったアパートでたいへんなことが起きていると呼びに来た円盤一家が飛来してきて、一夜にしてピカピカのアパートを建ててしまったのだった。(MovieWalkerより)

 

旧作レンタルを探していて見つけた作品。古いアパートから立ち退きを迫られた住人が、宇宙人に助けられる姿を描いたSFファンタジーです。

外見はUFOそのもの。ということは乗り物ってことなんですが、それ自体が生物のように自我や感情がある設定です。小さくて可愛い二体を最初に見つけたのはフェイ。彼女は認知症のようで(当時はもの忘れという認識でしょうか)、同じアパートに住む長年の友人夫婦が手助けをしてくれていましたが、カルロスたちの執拗な嫌がらせに負けて出て行ってしまいます。フェイの言葉を始めは信じなかったフランクや、管理人のハリー、マリサやメイソンら他の住人たちも、前日に滅茶苦茶に壊された店内が綺麗に直っているのを見て、UFOの存在を認めます。二体は夫婦で、やがて三体の子供を生み出すの 仮死状態だった三体目をハリーが修理して救ってあげたこともあり、UFOたちはフランクの店を手伝い、店は繁盛します。

そうなると地上げ屋のカルロスや彼に仕事を依頼した悪徳不動産会社は都合が悪いわけで、何とかアパートの住民を追い出そうと画策。その結果フェイが火災に巻き込まれてしまうのですが、カルロスに助け出されるという・・・彼も本当の意味での悪人ではなかったのが救いになっています。

フェイはカルロスを事故死した息子と思い込んで親身な言葉をかけていましたが、身寄りもない孤独な境遇の彼の心に温かいものが届いていたのかもね。

身勝手な恋人を待つ妊婦のマリサと恋人に去られた画家のメイソンの間にも、この事件を通して恋愛感情が生まれ、フェイとフランクの間にわだかまっていた息子に対する思いの誤解も解けて、ハリーも他人に心を開くことができ、アパートの住人たちにも幸せな変化が訪れます。

崩れ落ちたアパートをあの小さなUFO一家が一晩で綺麗に復活させたのは、まさに「ありえへん」奇跡ですが、こんな奇跡なら大歓迎ですね。

鶴の恩返しならぬUFOの恩返し

ラストシーンは大規模に都市開発された近代的なビルの谷間に残された、趣きのある「アパート」の映像で、あたたかな余韻が残りました


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ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた

2019年11月24日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2018年製作 アメリカ 97分

フランク・フィッシャー(ニック・オファーマン)はブルックリンのレッドフックでレコードショップを17年に渡り営んでいた。かつてはミュージシャンだったフランクの人生は、妻の事故死により自分と娘だけ残されたことで一変する。フランクはシングルファーザーとして娘サム(カーシー・クレモンズ)を育て、成長したサムはLAの医大へ通う事が決まっていた。娘の進学後の生計を立てるにはレコードショップは赤字続きだし、フランクはお店の貸主で友人のレスリー(トニ・コレット)に夏の終わりにお店を閉めることを告げる。古くからの友人デイヴ(テッド・ダンソン)が経営するバーに行ったり、年老いて痴呆症の母親マリアンヌ(ブライス・ダナー)の面倒を見たり、彼の人生の未来には心が踊るものがあるわけでもなかった。ある夜、勉強中のサムの邪魔をして一緒にセッションするよう無理やり誘う。サムは書きかけていた歌詞を引っ張り出し、二人は夜通し曲をレコーディングする。翌日サムはフランクに「私たちはバンドじゃないわよ」(“We’re not a band!”)と告げ、昨晩の共同作業により喜び興奮しているフランクを鎮めようとするが、フランクは娘の才能に感心し、一緒に作った曲を衝動的にSpotifyにアップロードしていたのだった。“We’re Not a Band.”というバンド名で。フランクもサムも驚いたことに、その曲はSpotifyで人気の曲を集めた”New Indie Mix”にリストインされ、たくさんの人の耳に届くことになる。フランクにとっては急に未来の扉が開かれた気分になり、サムとライブやレコーディングをする将来を描き始めてしまう。サムを説得できればの話だが。 しかし、サムには彼女の人生があった。出会ったばかりの恋人ローズ(サッシャ・レイン)との関係や、進学予定の医学部など、向き合わなければならない人生の課題は山積みだ。音楽で人生の冒険を始めるなんて不可能なことに思えた。夏は終わりに近づき、大学ももうすぐ始まる中、フランクもサムも人生の決断を迫られる。二人が新たな人生に一歩踏み出すために。(公式HPより)


元バンドマンの父と医大を目指す娘がそれぞれの人生へ踏み出そうとする姿を描いたヒューマンドラマですが、好みじゃなかったな。そもそも、これをレンタルしようと思った理由が思い当たらない時点で相性は良くなかったという 作品の出来がどうとかではなく、この父親に共感できなかったのが大きいかも。

妻に先立たれてから娘の成長が生きがいだったフランクが、大学進学で離れていく娘に音楽の才能を見出し、再び夢を描くと言うのは、少々大人げないというか・・。

自分の果たせなかった夢を娘に負わせるのはどうよ? しかも、娘の方が自分というものをしっかり持っていて父親よりよほど大人なんだよなぁ。

痴呆気味の母親の存在や、経営不振の店の状態などの問題を抱えていたフランクは、現実逃避したかっただけじゃないの?と思ってしまいました。

映画では、そんな父と娘が、一歩先の未来へ踏み出すまでが描かれています。安易に父親の夢に乗っからずに進学を選んだサムですが、音楽への情熱は捨てていないのも良い感じ。サムの良き理解者であり恋人でもあるローズとの関係も変に恋愛っぽくならずに、互いを認め合っているのも素敵でした。


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フォルトゥナの瞳

2019年11月23日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年2月15日公開 110分

幼少期に飛行機事故で家族を失った【木山慎一郎】(神木隆之介)は、友人も恋人も作らず仕事のみに生きてきた。しかしある日、「死を目前にした人間が透けて見える能力」―フォルトゥナの瞳―を持っていることに気づき、生活が一変してしまう。自分の力に苦悩する日々の中、偶然入った携帯ショップで【桐生葵】(有村架純)に出会う。明るく、自分に夢や自信を与えてくれる彼女に心惹かれていき、孤独だった慎一郎の人生に初めて彩りが生まれる。互いに惹かれ合った2人は幸せな日々を過ごしていくが、それもつかの間、突然街ゆく人々が次々と透け始めてしまう。そして、ついには葵までもが― 
「人は朝起きてから夜寝るまで9000回何かを選択している―」(劇中より)
愛する人の“死の運命”が見えた時、慎一郎は何を選択するのか。心震えるラストが待ち受ける―(公式HPより)


原作は、他人の死が見えてしまうという不思議な力を持ってしまった青年が、最愛の女性の「死」に立ち向かう姿を描いた百田尚樹の小説です。

冒頭に登場する飛行機事故の現場シーンは、そのあとも回想で何度か登場するのですが、実は重要な伏線になっているんですね

両親も多くの搭乗者も亡くなった中で、自分が助かった理由を考え悩んで生きてきた慎一郎は、仕事に没頭する時間が何よりの慰めでした。そんな彼が葵と出会ったことで、生活に彩りが生まれます。彼女の手が透けて見えたことに驚き、思わず声をかけたことで、その運命が変わるのですが、その反動は彼自身の身体に跳ね返ってきます。続いて親代わりの存在の社長(時任三郎)を救った彼は、倒れてしまいます。担ぎ込まれた病院の医師(北村有起哉)は、慎一郎の能力を見抜き、その力(死を目前にした人間が透けて見える能力)は「フォルトゥナの瞳」だと指摘し、他人の運命を変えることは自分の命を縮めると忠告します。

社長を逆恨みして襲った金田(志尊淳)が後に慎一郎の下で働くエピソードはベタですが、慎一郎の人柄が伝わります。

葵と順調に愛を育む様子はまさに青春恋愛映画 カット割りで流れていく中で季節が過ぎていくのがわかります。

かつての同僚の真理子(松井愛莉)の転落人生のきっかけを自分が作ったのではないかと思った慎一郎は、直接の原因である横柄な客(DAIGO)の運命に気付きながら関わらないことを選びましたが、その死を前に激しく動揺します。

悩む慎一郎に、さりげなく助言を与える社長の妻(斉藤由貴)がまた良いんだな

再び葵が透けて見えることに愕然とした慎一郎は、自らの命を代償に彼女を救おうとします。しかし、彼女は慎一郎との約束を破り・・・どうしてなのかは最後で明かされるのですが・・・ここで、冒頭の少女が伏線だったことが明かされるんですね

正直、その能力を持った人間がそんなにいるのってどうよ?とも思いますが、このどんでん返しこそが究極の愛というわけですね


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決算!忠臣蔵

2019年11月22日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2019年11月22日公開 125分

元禄14(1701)年3月14日。江戸城・松の廊下。清廉潔白な赤穂藩藩主・浅野内匠頭(阿部サダヲ)は、賄賂まみれの吉良上野介の態度に腹を据えかね、斬りかかる。通常なら喧嘩両成敗となるはずが、幕府が下した結論は、浅野家のお取り潰しと内匠頭の即日切腹。突然、藩主を亡くし、お家断絶となった赤穂藩士たちは路頭に迷うことに。これはすなわち、江戸時代の優良企業倒産事件。現代に置き換えると、藩は会社、武士はサラリーマンということになる。筆頭家老・大石内蔵助(堤真一)は嘆く間もなく、勘定方・矢頭長助(岡村隆史)の力を借り、ひたすらリストラに励む日々。その努力や幕府への取次も虚しく、お家再興の夢は断たれてしまう。それでも一向に討ち入る様子のない内蔵助。しかし、江戸の庶民は、赤穂浪士による吉良上野介への仇討を熱望していた。いつの時代も物事を動かすのは、なんとなくの空気感。それは現代も同じこと。ただ、そこで発覚した重大な事実。実は、討ち入りするにも、予算が必要だったのだ。その上限は9500万。討ち入るのか、討ち入らないのか、迷っているうちに予算はどんどん減っていく。とはいえ、世間の空気的に、仇討回避は許されない気配。どうする大石内蔵助!?予算の都合で、チャンスは一回。果たして彼らは予算内で、一大プロジェクト“仇討”を無事に決算することができるのか……!?(moviewalkerより)

 

「忠臣蔵」を題材に、限られた予算の中で仇討を果たそうとする赤穂浪士たちの苦労を描いた時代劇コメディです。監督・脚本は「殿、利息でござる!」の中村義洋ということで、これはもう面白さはお墨付き ただ、正統派「忠臣蔵」のファンにとっては許せないかも だって、本編には吉良邸内への討ち入りの様子は一切描かれていないし、世間の目を欺くために演じている筈の大石内蔵助の廓通いは、マジ女好きのなせる業にしか見えないときては・・・ねぇ 金欠に悩まされるリーダー・内蔵助と、ワーキングプアなそろばん侍・矢頭のコンビが絶妙で、なんといってもセリフが関西弁なのがコメディ感を強くしていました。堅苦しい侍言葉で金勘定のお話は似合わないものね ただ、序盤は少し冗長だったかも

赤穂浪士=苦難を耐え忍んで主君の仇を討ったヒーローの図式は一旦置いておいて、現実にはこんなものだったかも~と思わせてしまうリアルな金勘定のお話に、笑いながらも考えさせられるところがありました。コメディ部分だけじゃなく、内蔵助と妻の間にある互いへの愛情とか、竹馬の友である長助とのちょっとわかりにくい友情話とか、思わず涙腺が緩むエピソードも織り交ぜてあって、不意をつかれる分、ちょっと感動もあります。

赤穂浪士については、大石親子以外は、堀部安兵衛(荒川良良)、不破数右衛門(横山裕)くらいしか名前を思い出せないのですが、堀部役が荒川良良ってだけで笑えるぞ 主役の二人以外では、大高源五(濱田岳)のキャラが際立っていました 特に遊郭に関する大石との約束にまつわるエピソードがせこくて人間らしくて

女性陣も負けてません。大石の妻・理玖(竹内結子)は、勝気だけど夫を愛していることが伝わってきましたし、浅野内匠頭の妻の瑤泉院(石原さとみ)の凛とした美しさに似合わぬ現実的な性格もけっこう好きかも

戦担当の番方と、後方支援の勘定方にある溝というか意識の違いも描かれていて、浪士たちのお金の使い方を知らないおバカさ加減も浮き彫りになっています。

藩の再興が叶わぬことを知り、長助をも喪った内蔵助は、初めて本気で仇討ちを決意するという筋書きですが、それに伴い出費という「敵」と戦うことになります。

特に討ち入り前の相談で、軍師の菅谷(妻夫木聡)を筆頭に浪士たちがその身支度や武器について勝手なことを言い始めるシーンでは、現代の相場に換算した値段やそろばん勘定が飛び出して、大石じゃなくても頭を抱えたくなる気持ちがわかるぞ

赤穂浪士たちに期待する江戸の庶民の眼差しという点でも、引っ込みがつかなくなった彼らの様子が伝わってきます。これは、マスコミ情報に踊らされる現代でも十分ありえる展開なのですね。 自分たちの幕府に対する不満を、彼らを煽ることで晴らそうとする、ある意味身勝手な期待や妄想です。

映画では、大石は瑤泉院の持参金を使い果たしてしまいますが、その中で100両だけは討ち入りの後始末用にと彼女に返しています。そこで終われば美談ですが、瑤泉院は「それで足りるわけありまへん」とバサッと切り捨てているのも何だか愉快 でも彼女はちゃんと赤穂浪士の労に報いていましたしね。

武士の美談としてのお話ではない、裏話的なコメディではありますが、人間模様もしっかり描かれていて後味も良い作品です。


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2019年11月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年4月5日公開 アメリカ 132分

1960年代半ば、酒癖の悪い青年だったチェイニー(クリスチャン・ベール)は、後に妻となる恋人リン(エイミー・アダムス)に叱責されたことをきっかけに政界の道へと進み、型破りな下院議員ドナルド・ラムズフェルド(スティーブ・カレル)の下で政治の裏表を学んでいく。やがて権力の虜になり、頭角を現すチェイニーは、大統領首席補佐官、国務長官を歴任し、ジョージ・W・ブッシュ政権(サム・ロックウェル)で副大統領の座に就くが……。(映画.comより)

 

ジョージ・W・ブッシュ政権でアメリカ史上最も権力を持った副大統領と言われ、9・11後のアメリカをイラク戦争へと導いたとされるディック・チェイニーを描いた映画です。クリスチャン・ベールは、体重を20キロ増やし、髪を剃り、眉毛を脱色するなどの役作りをしてチェイニーを演じています。

アメリカの現代史の講義を受けているような感覚です。日本史だって現代史は駆け足で教わり、殆ど記憶に残ってないのに、アメリカ現代史に登場する名前は、ほんの数十年前のことなのに、尚更誰が誰やら・・・な歴史音痴にはちょっと厳しいものがありました。

それにしても、ジョージ・W・ブッシュって、無能な大統領だったのね 

そもそも、素行の悪かったチェイニーが、恋人と別れたくない一心で政界入りって、そんな簡単にホワイトハウスの中で働く人間になれるものなの?

ラムズフェルドとの出会いが彼の運命を変えていきます。頭の回転の良い彼は、ラムズフェルドに取り入り、お気に入りとなって出世の道を駆け上がるんですね。

もちろん、政治的才能があったからこその成功ですが、その人間性はどうかと・・・。まるでゲームのように国を動かし、結果世界情勢まで変えてしまったのですからね。

指導者の素質次第で国や世界が変わってしまうというのはとても恐ろしい現実ですが、そういう人物を選んでしまったのもまた国民というわけで・・・


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居眠り磐音

2019年11月16日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年5月17日公開 121分

3年間の江戸勤番を終えた坂崎磐音(松坂桃李)は幼なじみの小林琴平(柄本佑)、河井慎之輔(杉野遥亮)とともに九州・豊後関前藩に戻った。琴平の妹・舞(宮下かなこ)は慎之輔に嫁ぎ、磐音もまた、琴平と舞の妹である奈緒(芳根京子)との祝言を控えていた。しかし、妻の舞が不貞を犯したという噂を耳にした慎之輔が舞を斬ってしまい、それに激高した琴平が慎之輔に噂を吹き込んだ彼の叔父と慎之助本人をも斬るという事態に発展。磐音は罰せられた琴平を討ち取るよう命じられてしまう。2人の友を1日にして失う悲劇に見舞われた磐音は、許婚の小林奈緒を残したまま関前を後にし、たどり着いた江戸の長屋で浪人に身をやつすこととなる。昼は鰻割きとして働き、夜は両替商・今津屋で用心棒稼業を始めた磐音だったが……。


佐伯泰英の時代劇小説「居眠り磐音」シリーズの映画化で、監督は「超高速!参勤交代」シリーズの本木克英。

冒頭に登場する道場での稽古シーンで、幼馴染の三人の性格がある程度示されます。磐音は優しく穏やかな佇まいですが、実は剣の達人です。

三年ぶりに帰藩となり、揃って故郷・関前に戻ってきた早々に悲劇が起こります。叔父の言葉を真に受けて妻の不貞を疑い手打ちにした慎之輔の行いは常軌を逸しているように見えますが、体裁を重んじる武士ならではの感覚であり、妻への想いの強さの裏返しとも受け取れます。 知らせを聞いて駆け付けた琴平は、変わり果てた妹の亡骸にこれも取り乱して、悲劇に追い打ちをかけてしまうのです。

磐音は、舞に横恋慕した男が仕組んだことだと自分の妹から事の真相を聞き、琴平のところに駆けつけるのですが、結局彼を斬らざるを得なくなります。親友を斬った自分がその妹と幸せになることはできないと、脱藩し江戸にやってきた磐音は、長屋の大家の金兵衛(中村梅雀)や、その娘・おこん(木村文乃)の世話を受け、両替商・今津屋の用心棒として働くことになります。(いやいや、それじゃぁ残してきた家の者や奈緒はどうなっちゃうんですか? 結局彼は自分の罪悪感の苦しさから逃げ出したんじゃないの?)

時は老中・田沼意次(西村まさ彦)の時代。政治腐敗・賄賂政治の代名詞として認識されることが多いけれど、実は商業資本による印旛沼や手賀沼の開拓などの農地改革や、通貨制度の安定のための新貨の鋳造など、思い切った政策を打ち出した人でもあります。 (結局失敗しちゃったんだけどね~)

南鐐二朱銀という新貨を巡り、推進派の今津屋(谷原章介)を邪魔に思う反対派の阿波屋(柄本明)が嫌がらせを仕掛け、遂には主人・吉右衛門の命まで狙われます。磐音は用心棒としてだけでなく、裏でうごめく陰謀に知恵の面でも立ち向かっていきます。

魚河岸の親分、芝居小屋の座元(早乙女太一)、吉原遊郭の主人(陣内孝則)など今津屋の贔屓客らの協力を得ての阿波屋取り潰しの場面は痛快です。

一件落着し、道場を訪ねた磐音は、師範(佐々木蔵之介)から、吉原から預かったという一通の手紙を渡されます。そこに書かれていたのは・・・

その展開ってありですか!!武家の娘の決意とはいえ、思い切り過ぎというかなんというか・・・。おこんの忠告も受け流していた磐音もさすがにこの時ばかりは飛んでいくのですが、奈緒の決意に満ちた表情の前に自分の無力を思い知るのね。

長屋でのその日暮らしを続けているように見える磐音に、金兵衛はおこんと一緒になればいいのにと思うは親心 でもおこんは彼が奈緒を身受けするために働いていることを知っています。1200両という大金はおそらくは一生かかっても彼には作れないかもしれませんが、彼にとっての救いであり希望なのだと感じました。

関前藩で起きた事件の裏に、磐音の許嫁である舞への横恋慕を利用して、藩の権力図を塗り替えそうな若い人材を潰そうという陰謀があったのではないかと思って観ていたのですが、そちらは少々肩透かしで終わってしまいました。江戸での事件がメインなのね


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エンド・オブ・キングダム

2019年11月16日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2016年5月28日公開 イギリス=アメリカ=ブルガリア 99分

ホワイトハウス陥落の悪夢から2年。イギリスの首相が不可解な死を遂げ、ロンドンで行われる葬儀に各国首脳が出席することに。しかし、史上まれにみる厳戒態勢の中でも各国首脳を狙った同時多発テロが起こってしまう。米大統領と身辺を警護するシークレットサービスは、命からがらに危機から脱するのだが……。(映画.comより)


米大統領専属シークレットサービスとテロリストとの激しい攻防を描いたアクションサスペンス「エンド・オブ・ホワイトハウス」の続編は、舞台をホワイトハウスから、イギリスの首都ロンドンへと移しています。見所はやはり、壮絶な銃撃戦と、マイクの超人的な活躍 絶体絶命の状況にあっても大統領はテロリストに決して屈しません ある意味ヒロイズムの極みですね。正義は勝つ!なお決まりの展開なので安心して観ることができます。

今作でのテロ行為の原因は、二年前にアメリカが行った武器商人のアミール・バルカウィ(アロン・モニ・アブトゥブール)へのドローン攻撃です。作戦は失敗しましたが、この時バルカウィの妹が巻き添えで亡くなったことで、復讐のテロ計画が始まったわけ。

急逝した英首相の葬儀に参列するベンジャミン・アッシャー大統領(アーロン・エッカート)に同行したマイク・バニング(ジェラルド・バトラー)はシークレットサービス長官(アンジェラ・バセット)と共にロンドンへ。ところが、葬儀会場へ向かうカナダ首相を乗せた車が爆発、同時に他の首脳たちも警官や救急隊、近衛兵に紛したバルカウィの手下により攻撃を受けます。大統領を守って車で逃走したマイクとジェイコブズは追手と銃撃戦の末、大統領専用ヘリコプターに乗り空港へ向かいますが、ミサイルの攻撃を受けて墜落、ジェイコブズが死亡します。(ヘリの墜落でもほぼ無傷な二人がある意味凄いぞ)地下鉄チャリングクロス駅に逃げ込み、敵を倒しながらMI6のエージェント・ジャクリーン(シャーロット・ライリー)の隠れ家に辿り着いたものの、ここにも敵の手が!で、またまた派手な銃撃戦です。

ホワイトハウスにはバルカウィからの脅迫メッセージが届き、英首相の死因が毒物による暗殺だったこと、その死が世界の指導者を集めるための罠だったことが判明します。前作からついつい副大統領のトランブル(モーガン・フリーマン)を疑ってしまうぞ 

テロリストの攻撃で、ロンドン中心部は停電、通信機能もダウンする中、救出チームが出動しますが、その前に敵が来ちゃうんですね~~。これはテロリストに通じている裏切者がいる!ってことで、ジャクリーンはスコットランドヤードに向かいます。

マイクと大統領は車で米国大使館へ向かいますが、途中でテロリストに大統領を拉致されてしまいます。直後、救出チームと合流したマイクは、アメリカ政府が見つけた、大統領が捕まっているビルに突入し、大統領の死を全世界に中継しようとしていたカムラン・バルカウィ(ワリード・ズエイター)の手から救い出します。ビルの爆破シーンもかなりの迫力ですが、ここでもほぼ無傷な二人

ここからは、英米の反撃開始です。

ジャクリーンはMI5長官(パトリック・ケネディ)が内通者と突き止め、殺します。トランブル副大統領はアミールに電話をかけ、ドローン攻撃で抹殺

ん~~確かにテトリスとは壊滅させたけど、そもそも自らの手は汚さず、暴力で解決しようとする大国の姿勢こそが問題なんじゃないかと思うのだが・・・

実はマイクは、妻レア(ラダ・ミッチェル)の出産を前に、危険な今の仕事を辞めようと考えていたのですが、大統領との会話や、事件解決後のトランブルのテレビメッセージを聞いて、書きかけていた辞表を削除。世界を救うためにできることをするべきというのはまさにアメリカが掲げるヒロイズムですね

そもそも平和主義者がこの手の作品を好んで観ることもないでしょう。 娯楽作と割り切って楽しむのが良いかと。


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小さい魔女とワルプルギスの夜

2019年11月15日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2019年11月15日公開 スイス=ドイツ 103分

森の中の小さな一軒家に暮らす小さい魔女(カロリーネ・ヘアフルト:吹替版 坂本真綾)。口は悪いが気は優しいカラスのアブラクサス(山寺宏一)が相棒だ。彼女の夢は年に一度ブロッケン山で開かれる魔女の祭り〈ワルプルギスの夜〉で踊ることだが、参加できるのは大きい魔女だけ。127歳の小さい魔女はまだまだ半人前で、今年も招待状は届かない。あきらめられない小さい魔女は、こっそりと祭りに忍び込み、踊りの輪に入ることに成功。だが、喜んだのも束の間、ルンプンペルおばさん(ズザンネ・フォン・ボルソディ)に見つかり、つるし上げられてしまう。大目玉を食らいながらも、何とか一番えらい大きい魔女から、来年の〈ワルプルギスの夜〉で〈良い魔女〉のテストに合格したら、踊ってもいいと約束してもらう。ただし、もし出来なければ、恐ろしい罰が待っている。帰宅した小さい魔女は、さっそく大きい魔女から渡された〈魔法辞典〉を開き、1年で7892個の呪文をすべて覚えるという宿題に取りかかる。果たして、小さい魔女は無事に〈良い魔女〉になれるのか……。(公式HPより)

 

半人前の“小さい魔女”の成長を描いたオトフリート・プロイスラーの児童文学「小さな魔女」の実写映画化です。

劇場で予告編を観た時、妙に懐かしいような気持ちになったのは、おそらく、子供の頃にこの本を読んだことがあるからでしょう。詳細は忘れてしまったけれど、半人前の魔女が一人前(大人)の魔女になろうと頑張るお話だったと思います。すっかり大人になった今、実写版で観ると、子供の頃には気付かなかった深い教訓があったことに気付かされました。

小さい魔女は楽しいことが大好きでいつも笑っています。絵本にあるような鷲鼻ではあるけれど、なかなか可愛い顔立ちの彼女は、127歳といってもまだまだ子供のように無邪気で好奇心に溢れています。呪文もなかなか覚えられず、雨を降らそうとして、スプーンや洗濯ばさみが降ってくるような半人前の彼女ですが、飛ばないカラスのアブラクサスと森の奥で仲良く暮らしています。彼女の一番の願いは、ブロッケン山の魔女の祭りに招待されて、一晩中踊りあかすこと!そこに招待されることは一人前の魔女と認められることでもありますが、彼女はとにかくの「お祭り」で踊りたいの

アブラクサスに忠告されていたのに、とうとう家を抜け出してお祭りにこっそり忍び込んだものの、ルンプンペルおばさん(親戚らしい)に見つかってしまいます。このおばさんはとにかく意地悪 普通、血縁の姪っ子なら庇うとか見逃すとかしそうなものだけど、逆に小さい魔女を追い詰めるんですからね。

一番偉い魔女から、大きな魔法辞典を全部覚えるよう命じられた上に箒を燃やされて、重い辞典を担いでやっと家に戻った彼女は、必死に呪文を覚えます。

屋外シーンの多くは、バラエティ豊かな景観で観光客に人気の高いハルツ地方で撮影したそうです。バイエルン州フィヒテル山地のルイーゼンブルク・ロック・ラビリンスの魔法のような風景も見所の一つ。小さい魔女の家は、6mの高さで、フィヒテル山地の苔むした二つの岩の間に本物の木で建てられていて、家の中には、中世の大釜から近代のピアノ、木製のかまどと石のシンクがあるキッチン、陶製ストーブ、凹んだバスタブ、森で見つけた謎めいたハーブや植物など、愉快な“魔女グッズ”が溢れています。 

魔法を覚える傍ら、彼女は森や村に出かけて、薪拾いの女性たちを助けてあげたり、道に迷った人間の子供たちを家に入れて、もてなして仲良くなったり、苛めっ子にはそうなった理由を聞いて力を貸してあげたりします。でも、そんな彼女を意地悪なおばさんはこっそり観察していました。

一年かけて覚えた甲斐あって、呪文のテストに合格し喜んだのも束の間、魔法を使ってはいけない金曜日に魔法を使ったこと、人間の子供の前で魔法を使い、人間を助けるという悪い行いをしたとのおばさんの告発で小さい魔女は大ピンチに陥ります。

小さい魔女が思い描く「良い魔女」と大人の魔女たちが考える「良い魔女」の間には大きな違いがありました。人間と仲良くするなんてとんでもない!悪いことをして困らせるのが「良い魔女」だというのです。それでもどうしてもお祭りで踊りたかった彼女は、大きい魔女から大変な課題を与えられてしまいます。それは人間の子供を石に変えたら良い魔女と認めるが、出来なかったら魔法を取り上げるというものでした。

動揺した彼女は、アブラクサスに八つ当たりして追い出してしまうのですが、やっぱり彼らを石に変えるなんてできません。「何が良くて、何が悪いかは自分で決める!」と決意した彼女はブロッケン山に向かいます。このセリフこそが作品の主題でしょう

この物語におけるアブラクサスの役割は、小さな魔女が自分の頭と心で考えるよう導くことでしょう。例えば、人間の子供たちに魔法を見せて得意になっている彼女に、もしこれがばれたら子供たちに危険が及ぶかもしれないと諭したりね。自分の行いがどう跳ね返ってくるのかを考えることも「大人」には必要なんです。でも彼自身も、外の世界を恐れて閉じこもっています。小さい魔女と喧嘩して出て行った彼ですが、彼女のピンチを知るとブロッケン山に飛んで駆けつけるんですね。彼にとっても大きな成長です。

年を経た事だけに満足し、呪文は本任せの大きな魔たちの弱点をついて、小さい魔女は彼女たちから箒と魔法の本を取り上げ燃やそうとします。火の呪文を忘れてパニックになりながらも、大きな魔女たちをヒキガエルに変えて(あの意地悪なおばさんも遂に「あの姿」にされてしまうの)、アブラクサスが運んできてくれたマッチで箒と本の山に火を付け一晩中踊る小さい魔女は、本当に楽し気でした。 


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億男

2019年11月14日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2018年10月19日公開 116分

兄が三千万円の借金を残して失踪して以来。4図書館司書の一男(佐藤健)は、夜もパン工場で働きながら借金を返済している。妻・万左子(黒木華)は度重なる借金の返済にに苦心し窮屈に生きることしか選んでいない一男に愛想を尽かし、離婚届を残して娘・まどかと一緒に家をでてしまうのだった。そんな踏んだり蹴ったりの一男だったが、突然宝くじが当たる。当選金額三億円!これで借金を返せるだけでなく、家族の絆を修復することができるはず。だが、ネットを見ると、宝くじの高額当選者はたちはみな悲惨な人生を送っているという記事ばかり・・。怖くなった一男は大学時代の親友であり、起業して億万長者となった九十九(高橋一生)にアドバイスを求めることにする。久しぶりの再会と九十九プロデュースの豪遊に浮かれて酔いつぶれた一男が翌朝目を覚ますと、三億円と共に九十九は姿を消していた。

三億円と親友のゆくえを求めて、一男のお金と幸せをめぐる冒険が始まった。九十九の家のパーティで出会ったあきら(池田エライザ)と名乗る女性を頼りに、かつて九十九と起業した仲間=”億男”と呼ばれる億万長者たちに九十九の手掛かりを探る。ギャンブル好きの実業家:百瀬(北村一輝)、マネーセミナーの教祖:千住(藤原竜也)、10億円を隠し持つ主婦:十和子(沢尻エリカ)・・・。クセ者ぞろいの億男たちを渡り歩く”地獄めぐり”に翻弄される一男。お金、友情、そして家族。すべてを失った男が最後にたどりつくのは?お金とは何か?幸せはどこか・・・(公式HPより)

 

川村元気の小説を大友啓史監督のメガホンで映画化。

高額な宝くじが当選し、これで全てが良い方向に変わると喜ぶ一方で、分不相応な大金を持つことへの不安に慄く、ごくごく平凡な男を佐藤健が上手に演じています。

久しく会っていなかった九十九を頼ったのは、彼が億万長者になったと知っていたことも大きかったでしょうが、やはり学生時代に落研で過ごし、旅も一緒に行った親友だったからですね。回想シーンに登場する旅先の風景や些細な出来事、ことに砂漠での会話が印象的です。ロケはモロッコで行ったそう。無意識にせよ、何十億を動かす男の前では「たかが3億」だという計算も働いたのかも。ところが、一晩のどんちゃん騒ぎの翌朝、九十九は3億円と共に姿を消してしまいます。え?本当は九十九は借金まみれなの?鴨葱と思って持ち逃げしたの? と思ってしまいますよね

状況が呑み込めずに、とにかく九十九を知る人間を探し出そうとする一男は、パーティで無理やり連絡先を交換させられたあきらをまず尋ねます。(演じるエライザちゃんは中性的で不思議な魅力がありました。)意外に親切な彼女は、九十九の起業仲間を引き合わせてくれるんですね 地獄巡りという表現が可笑しいです。

最初はギャンブル好きの百瀬。100万を渡して賭けてみろとけしかけ、当たると次は一億と唆しますが、結果はハズレ。唖然とする一男に、本当は実際に賭けなかったことをばらして、お金に対する価値観を説きます。

次に会った千住はマネーセミナーと称して詐欺のような商売をしていました。でも千住には彼なりの理論があるわけ。藤原竜也の声の張り方についつい「ダイナー」を連想してしまったぞ 

平凡な亭主を持つ十和子は、家に大金を隠しています。彼女にとって、お金は人を狂わせるものでありがなら、その執着から逃れられずにいるんですね

お金はもうすぐ戻ってくるからそうしたらもう一度やり直そうと訴える一男に、妻は「あなたは変わってしまった。お金があなたの身体に棲みついて生きるための欲を奪ってしまった」「どんなに借金まみれでも年に一度一緒に娘の発表会を見ることができれば」と返します。これは深い!!グサッとくるセリフです。

更に電車に乗っている一男の前に、九十九が3億の入ったバッグを持って現れます。彼はお金を盗ったのではなく、舞い上がっている一男に今一度お金の価値について考えて欲しかったのです。自分自身が起業の成功で得たものと失ったものの価値を肌で感じていたから。

いわば、一種ファンタジーのような作品です。

一円玉も一万円札も重さは同じ1gというセリフが心に残りました。


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ちいさな独裁者

2019年11月13日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年2月8日公開 ドイツ・フランス・ポーランド合作 119分

第二次世界大戦末期の1945年4月、敗色濃厚なドイツでは兵士の軍規違反が相次いでいた。命からがら部隊を脱走したヘロルト(マックス・フーバッヒャー)は、道ばたに打ち捨てられた車両の中で軍服を発見。それを身にまとって大尉に成りすました彼は、ヒトラー総統からの命令と称する架空の任務をでっち上げるなど言葉巧みな嘘をつき、道中出会った兵士たちを次々と服従させていく。かくして“ヘロルト親衛隊”のリーダーとなった若き脱走兵は、強大な権力の快楽に酔いしれるかのように傲慢な振る舞いをエスカレートさせるが……。(公式HPより)


ロベルト・シュベンケ監督が母国ドイツでメガホンをとり、第2次世界大戦末期に起きた実話をもとに描いたサスペンスドラマです。偶然の成り行きと言葉巧みなウソにより将校の威光を手に入れた脱走兵の若者が、怪物的な独裁者に変貌していく様に、人間の弱さや負の部分をまざまざと見せつけられる気がしました。

脱走兵として獲物のように追われ必死に逃げる中で、偶然ナチスの空軍将校の軍服を見つけたヘロルト。そこに遊兵のフライターク(ミラン・ぺシェル)がやってきて指揮下に入りたいと請われます。なりゆきで将校のふりを続ける道中で、言葉巧みにキビンスキー(フレデリック・ラウ)ら兵士たちを指揮下に加えていく彼は、どんどん傲慢になっていきます。まさに虎の威を借る狐そのものですが、彼が身に着けている将校の軍服が象徴する権力の魔力が、出会う兵士たちを操っているんですね。権力にあやかり盲従する者もいれば、そのパワーをかさに暴力を振りかざす者もいます。彼が偽物じゃないかとは誰も疑わないのが怖い

おそらくはフライタークやキビンスキーもヘロルトと同じ脱走兵ではないかと思います。それなのに同じ脱走兵たちに対する非道な振る舞いをする理由が理解できません。同じであることがばれるかもしれないという不安や恐怖がそうさせるのでしょうか?

権力の味を知ったヘロルトは、その行為をどんどんエスカレートしていきます。脱走兵収容所の指揮官を任された彼は、法の下で公正な裁きをという者を退け、規律維持を名目とした大量殺戮を行うのです。地面に穴を掘り、一度に三十人ずつを入れて銃殺する光景は酷くて目を背けたくなります。

収容所が空襲を受けて壊滅した後も、即決裁判所を自称して、自分の部下たちをも次々処刑し続ける行為は狂人にしか見えませんが、当人にとっては「正義」なのだとしたら・・・戦争の悲惨さ、人の醜さがこれでもかという衝撃で迫ってきます。

一体、正義って何だろう?何を正義というのか、そこにいきつくための手段は何をしても良いのか?彼がこの残虐な行為をしたのは18,9~21歳。死刑になった時、彼は何を思ったのでしょう。


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天才作家の妻 40年目の真実

2019年11月10日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年1月26日公開 アメリカ 101分

現代文学の巨匠ジョゼフがノーベル文学賞を授与されることになり、ジョゼフ(ジョナサン・プライス)と妻のジョーン(グレン・クローズ)は息子デビッドを伴い、ノーベル賞の授賞式が行われるストックホルムを訪れる。しかし、そこでジョゼフの経歴に疑いを抱く記者ナサニエル(クリスチャン・スレーター)と出会い、夫婦の秘密について問いただされる。実は若い頃から文才に恵まれていたジョーンは、あることがきっかけで作家になることをあきらめた過去があった。そしてジョゼフと結婚後、ジョーンは夫の影となり、世界的作家となる彼の成功を支えてきたのだが……。(映画.comより)

 

 原作は、アメリカの作家メグ・ウォリッツアーの小説『The Wife』で、夫婦の絆や人生の意味とは何かを描いたヒューマンドラマになっています。

念願のノーベル文学賞受賞の知らせに喜ぶ夫妻にはある秘密がありました。それは長年夫のジョゼフの発想を妻のジョーンが表現して本を作り上げてきた共著関係にあったことです。ジョーンが学生だった時代、作家として脚光を浴びるのは男性ばかりで、女性はいくら才能があっても売れないという事実がありました。妻帯者だったジョゼフと不倫関係を経て結婚したジョーンは、自分の名前で本を出すことを諦めてしまいます。代わりに夫が作家として世に出るために進んで協力してきたのです。

この関係は長年上手く続いてきたのですが、ノーベル文学賞という作家として最高の栄誉を手にした時から、少しずつジョーンの中でやり場のない怒りや不満が生まれていきます。いや、当初は世間に評価されたことだけで満たされていた思いが、評価が高まっていくほどに二人の間でずれが生じていたのでしょう。彼女は自分には想像力はないけれど表現力はあると自覚していて、夫もそれを認めています。しかし、彼の中にも世間を欺いているという罪悪感や不安、妻への劣等感があり、それが浮気やお喋りに暴飲暴食といった行動に現れてもいます。

ストックホルムへ向かう機内で記者のナサニエルに伝記本の執筆許可を匂わされ拒絶する夫の態度にジョーンは一抹の不安を覚えます。案の定、ナサニエルはジョーンに接触してきて夫婦のことを調べていること、本当はジョーンが書いているのではないかと聞いてくるんですね。

ナサニエルには否定したジョーンですが、受賞に有頂天になり、無遠慮な態度や言動を繰り返す夫に疲れ、夫が発した「妻は書けない」という言葉に傷つきます。彼女の中にも共犯者としての罪悪感や不安は当然あったでしょうし、その裏には夫への屈折した優越感もあった筈。広報担当の若い女性へ向けた、夫が女性を口説くときの常套手段である、愛の言葉を書いたくるみ(ジェームス・ジョイスの詩の引用も)を見つけ心乱れるジョーン。夫が浮気するたび、彼女はその怒りや悲しみや絶望を本を書くことで昇華させてきたのですね。でも夫はそれを理解してはくれなかった・・ 息子デビッド(マックス・アイアンズ)に対する夫の態度にも非難の目を向けます。母親にとって息子はある意味夫より大事な存在ですから 正しく認め導いて欲しいと願うのは当然ですよね。ナサニエルはデビッドにも近づき自説を話して彼を混乱させます。

夫を支える寡黙な妻を演じながら、ジョーンの中で長年蓄積されてきた怒りが、授賞式後の晩餐会で、「妻」としての最大の敬意を込めた夫のスピーチを聞いて頂点に達します。夫の制止を振り切りホテルに戻った彼女は「離婚する!」と叫びますが、直後夫は心臓発作を起こして帰らぬ人になってしまいます。

アメリカに戻る機内で、ナサニエルは再び接触してきますが、ジョーンは再度きっぱりと否定します。隣で眠ったふりをしていたデビッドにもね。もし夫が存命だったら違っていたのかもしれませんが、彼女は今度こそ筆を折るんじゃないかな?と思いました。

ジョゼフが作家デビューした当時はともかく、時代が変わっていく中で、彼女の決意次第で違った未来があったかもしれません。それを選択しなかったことそのことが全てではなかったのかと思いました。夫妻は二人で一つの存在だったのだと。


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英雄は嘘がお好き

2019年11月06日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2019年10月11日公開 フランス 91分

1809年、フランス。ブルゴーニュに住むボーグラン家の人々は、次女・ポリーヌ(ノエミ・メルラン)の縁談がまとまり大喜びしていた。だがその婚約者のヌヴィル大尉(ジャン・デュジャルダン)は戦争へ駆り出されてしまう。必ず手紙を書くと約束したにも関わらず、待てど暮らせど戦地からはなんの音沙汰もない。傷心のポリーヌは、とうとう病に臥せってしまう。心配した長女のエリザベット(メラニー・ロラン)は、大尉のふりをして自身で書いた手紙を妹に届けることに。手紙のおかげでポリーヌは回復するが、調子に乗ったエリザベットはヌヴィル大尉の活躍話を次々とでっち上げ、最後は「勇敢に戦って戦死した」ことにしてしまう。手紙の英雄譚は「英雄・ヌヴィルの銅像」まで建てられるのだった。それから 3年。エリザベットはある日、街を歩くヌヴィルと思しき人物を偶然見かける。以前とは打って変わって貧相な姿になった彼を見て、自分がついた大きな嘘がバレることを危惧しお金を渡して街から離れるよう懇願するエリザベット。しかしその翌日、なんと以前のように華やかに正装したヌヴィルが颯爽と現れたから、さあ大変。かつての恋人の帰還にときめくポリーヌ、噂の英雄に近づこうとする社交界の人々。ヌヴィルはエリザベットの創作した偉大なる英雄という立場を利用し、新たな人生に一花咲かせようと目論むのだった…。(公式HPより)


公開からかなり経っているので、上映回数も少なく、観た回は私を含めて2人しかいなかったけれど、豪華絢爛なロマンティック・コメディという謳い文句がぴったりな作品で終始クスクス笑いで楽しく観れました。

煌びやかな軍服でおめかししてやってきた大尉を苦々し気に睨みつけるエリザベット。彼女は大尉の人間性を見抜いていることが見て取れるのですが、そう値踏みした理由は明かされません。それでも、このシーンの二人のやり取りだけで、その後の展開は予想がつくというもの

求婚された本人より両親が舞い上がっている様子も滑稽ですが、次の瞬間、大尉に戦場への招集がかかります。「毎日手紙を書くよ」と颯爽と出ていく後ろ姿に「絶対嘘!」と呟くエリザベット。彼女の予想は当たり、待てど暮らせど手紙の一通も届きやしない!とうとうポリーヌは肺炎になり、医者から「生きる希望が必要」と言われた姉は妹のために大尉の手紙を偽造します。それを渡した途端元気を取り戻した妹に気を良くして、嘘八百の武勇伝を綴った手紙を書き続け、遂には名誉の戦死で幕を閉じ、妹に想いを寄せる二コラ(クリストフ・モンテネーズ)とくっつけてしまいます。

ところが3年後、町で落ちぶれた姿の大尉とばったり!嘘がばれることを恐れてお金を渡して町を出るよう言い渡したエリザベットですが、彼はエリザベットの嘘を利用して一儲けしようと企んでボーブラン家の人々の前に現れたからさあ大変!

ポリーヌが、内面に嗜虐性を秘めている情熱的なキャラで、帰還した大尉に激しく迫ったり、大尉の嘘のダイヤモンド鉱山話に釣られた社交界の紳士たちが我先に投資話を申し出たりで、エリザベットは気が気じゃない! 二コラを煽って大尉に決闘を申し込ませるけれど、ポリーヌに邪魔され不発に終わります。次にコサックを追い払うためにやってきた将軍を屋敷に呼び、大尉の嘘を暴こうとします。実は脱走兵である大尉は「洒落にならない」と青ざめますが、事の重大さに気付いたエリザベットは、今度は彼を庇おうと必死になり、何とか事なきを得るのです。将軍を招いた会食の中で、戦争の悲惨さが大尉の口から語られるこのエピソードは唯一シリアスなシーンで心に響いてきます。

エリザベットが作った彼の武勇伝の中で、溺れる子供を二人まで助けたが三人目はダメだったという話を聞いた大尉が、「自分なら三人とも助ける、見捨てはしない」というくだりに彼の本当の性格が出ていると思いました。それ以外は女好きの天性のペテン師ですが

将軍が去った後、屋敷の近くの森にコサック兵が現れたという情報に慌て、応戦態勢をとる中、エリザベットに「二人で逃げよう」という大尉。クズです(でも、戦争の悲惨さを身をもって知っているからこその言葉でもあるのよね。)

きっぱり断るエリザベット、当然ですね しかしこの後、コサック兵が近づく中、一人銃で応戦する大尉の姿はまさに英雄そのもの!絶体絶命の次の瞬間、将軍率いる軍隊が敵を蹴散らすのもお約束ですね

結局嫌いは好きの裏返しというわけで、この二人、結婚しちゃいます。しかしまたまた届く軍への復帰命令。そしてラストの大尉の取った行動にはエリザベットと同じく笑ってしまいました。現実は別として、こんな終わり方はコメディならではですね 実はこの二人、案外良く似た性格なのかもしれません。

実際のお城でのロケーションも素晴らしく、ドレスや大尉の華麗な軍服も美しく楽しめました。


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アリータ バトル・エンジェル

2019年11月04日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年2月22日公開 アメリカ 122分

天空に浮かぶユートピア都市“ザレム”と、そこから排出された廃棄物が堆積する荒廃したクズ鉄町“アイアンシティ”。ある日、サイバー医師のイド(クリストフ・ヴァルツ)

はクズ鉄の山から少女の頭部を発見し、新しい機械の身体を与えアリータ(ローサ・サラザール)と名付ける。記憶を失ったままのアリータだったが、襲ってきた敵からイドを守るために戦った際、自分に驚異的な戦闘能力が備わっていることに気づいてしまう。彼女は、300年前に創られた“最強戦士”だったのだ。自分と世界の運命に立ち向かうアリータの戦いが今、始まる!(公式HPより)


木城ゆきとのSF漫画「銃夢(ガンム)」を、ジェームズ・キャメロン脚本・製作で実写映画化したアクション作品です。実写で撮影した映像をベースにVFXを組み合わせていく手法が取られていて、サイボーグであるキャラたちの表情がまさに人間的でした

イドは亡くした娘に与える筈だった身体を与えてアリータと名付けます。自分の過去について一切の記憶が失われている彼女の素性は、300年前に失われたはずの最終兵器の最後の一体という真実がやがて明かされます。

アリータは初めはあどけない少女のように見えます。町でヒューゴ(キーアン・ジョンソン)と出会い仲良くなって、モーターボールという競技を教わります。この「新しい世界」を大きな瞳を輝かせて吸収しようとする少女が彼に好意を寄せていく様子はまさに初恋 

夜中に出ていくイドを不審に思い尾行したアリータは、彼がハンターウォーリアーという賞金稼ぎであることを知るのですが、その相手グリュシカ(ジャッキー・アール・ヘイリー)に襲われたイドを助けようとして、機甲術を使った驚異的な格闘スキルを発揮するんですね 自分のずば抜けた身体能力のルーツを知りたい欲求にかられていくのも自然な成り行きでしょう。

ヒューゴたちに連れられて行った300年前の没落戦争(ザ・フォール)と呼ばれる地球と火星の戦いの残骸の宇宙船の中で、アリータはボディと記憶を見つけます。このボディに付け替えてと頼むアリータでしたが、イドは拒絶。でもグリュシカとの二度目の戦いでアリータのボディは破壊され、結局使うことになるのですが、この展開は見え見えだなそしてボディ交代で、アリータは少女から女性に変容していくんですね。

ヒューゴがベクターの裏の仕事をしていたことを知りショックを受けたアリータですが、彼の夢であるザレムに行くという願いを叶えるため、モーターボールに優勝して賞金を手に入れ、共にザレムへ上がろうとします。しかし、ザレムの支配者ノヴァの指令を受けたモーターボールの主催者のベクター(マハーシャラ・アリ)は、アリータを狙って刺客を放ちます。イドの元妻のチレン(ジェニファー・コネリー)はベクターと組んでいましたが、アリータに母性を感じ協力を断り出ていこうとするのですが・・・ 

モーターボールの描写もスリリングですが、ヒューゴがグリュシカに襲われて助けを求めたため、その戦いは町の中へ。 グリュシカ、しつこい割に雑魚キャラです。 お金ではザレムへ行けないという事実を知り、ヒューゴを止めようとするアリータ。彼女に惹かれていたヒューゴは受け入れ戻ろうとするのですが、そこに残酷な運命が・・・このあたりはメロドラマ調 睨みつける彼女の強い視線の先にはザレムが!

え?ここでおしまいですか 結局壮大な前振りだったんですか 続編・・・出るんだよね? 


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X-MEN:ダーク・フェニックス

2019年11月03日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年6月21日公開 アメリカ 114分

X-MENは人類と共存し平和を守っていた。ある日、主要メンバーのジーン・グレイ(ソフィー・ターナー)が、宇宙でのミッション中の事故によって謎の熱放射を浴びてしまう。そして、心の闇に潜んでいた彼女のもう一つの人格“ダーク・フェニックス”が覚醒。仲間たちは彼女を救おうと手を差し伸べるが、彼女の解き放った力が予期せぬ悲劇を引き起こしてしまうのだった。そんな中、謎の女(ジェシカ・チャステイン)がジーンに近づき彼女の力を利用しようとしていた…。暴走するジーンの強大な力により絶体絶命の危機が迫る中、彼女を殺すべきか否かで意見を対立させるミュータントたち。果たして、最強の敵“ダーク・フェニックス”に立ち向かう術はあるのか——。(公式HPより)


「X-MEN」シリーズの7作目で最終章の本作は、原作コミック「ダーク・フェニックス サーガ」からです。

冒頭、ジーンが能力を抑えられずにその力が暴走し、その結果両親が亡くなってしまうというシーンが流れます。 彼女はプロフェッサーX:チャールズ・エグゼビア(ジェームズ・マカヴォイ)に引き取られX-MENとして活躍することになるのです。ここまでは今までのシリーズで語られてきた通り。でも本当はチャールズは彼女の記憶を封印し真実から遠ざけていたのですね。それが宇宙での事故をきっかけに心の闇を呼び覚ますことになったというのが今回の筋書きです。

どうもシリーズの時系列が頭の中で混乱してきたので整理しないと。

まず旧三部作が公開され、新三部作は旧三部作の前日譚なのね。(個人的にはウルヴァリンに惹かれて観始めているので、彼が登場しない作品はピンと来ないんだよなぁ)新シリーズの二作目「フューチャー&パスト」で過去を変えてしまったことが作品全体の繋がりを乱してしまっているんですね

本作では、チャールズと マグニートー:エリック(マイケル・ファスベンダー )は互いに棲み分けをしていて、ミスティーク:レイブン(ジェニファー・ローレンス) と ビースト:ハンク(ニコラス・ホルト )はX-MENのメンバーになっているのね。 

ジーンは、死んだと思っていた父親が生存していることを知り、家族と信じていたチャールズに裏切られたと思い、怒りと悲しみでパニックになり、感情と力の制御ができずに、助けようとしたレイブンを殺めてしまいます。居場所を亡くしたジーンはエリックの助けを求めますが、彼女を捕えにきた兵士たちをその強大なパワーで蹴散らし姿を消します。エリックにとってもレイブンは特別な存在でしたから、彼女の死を知ると逆にジーンを殺そうと追います。

一方、姿を変えることができるダバリという宇宙人種族のリーダーのヴーク(マーガレットという女性に姿を変えています)たちもジーンを狙ってきます。故郷の惑星を破壊した宇宙エネルギー:フェニックス・フォースを追ってきた彼らは、この力を吸収したジーンの能力を利用して地球を乗っ取ろうとしていたのです。 言葉巧みにジーンを取り込もうとしますが、そこにチャールズとX-MENのメンバー、エリックがやってきて対峙します。チャールズはジーンに自分の非を認めて詫びるのですが、そこにミュータント制圧部隊が割り込んで、彼らを捕えて列車で収容所へ送ろうとします。まさにとんだお邪魔虫

ジーンを追ってヴークたちが襲い掛かる中、チャールズやX-MEN、エリックたちが必死に戦います。目覚めたジーンはヴークを宇宙に連れ出しエネルギーを解放します。その結果、ジーンは・・・。彼女は自分が仲間たちやひいては地球の脅威となることを自覚し、自ら滅ぶことを選択したのね。

学園を引退しパリで暮らすチャールズの元にエリックがチェス盤を持って現れるラストシーンで、エリックは「君は僕の命を救い居場所をくれた人だ」と言います。

共に過ちを犯してきた二人だからこそ、より強い絆で結ばれているのかも。 

正直、ジーンの怒りの根底が少し浅いのではないかとの思いは消えません。自分の意に添わないことに対しての怒りに見えるから。意識的にではないにせよ、自分を思い愛してくれたレイブンを死なせてしまったことや、物事をここまで滅茶苦茶にしてしまったらあとは消えるしかできないよなぁと・・・フェニックスという形で地球の救世主扱いはいかがなものかとも思いますが・・・ スコットが最後までジーンを信じ助けようとしていたのが印象的でした。愛は強いね


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