杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ゲーテの恋 ~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~

2012年09月30日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年10月29日公開 ドイツ 105分

1772年、ドイツ。法律を学ぶ23歳のヨハン・ゲーテ(アレクサンダー・フェーリング)は、博士号取得の試験に落ちて父親から田舎町ヴェッツラーの裁判所で実習生として働くように命じられる。上司のケストナー参事官(モーリッツ・ブライブトロイ)は、ゲーテに厳しく接するが、陽気で自由奔放なゲーテは、同僚のイェルーザレムとすぐに仲良くなり、舞踏会でシャルロッテ・ブッフ(ミリアム・シュタイン)と出逢う。彼女の印象は最悪だったが、ミサで歌うロッテに再会した瞬間、恋に落ちる。イェルーザレムとロッテの住むヴァールハイムを訪ねたゲーテは、彼女の弟妹たちとも打ち解けて楽しい時間を過ごす。舞台に憧れる文学好きのロッテと作家になることを諦めきれないゲーテは、魂の深い部分でも共鳴し合う。しかしロッテを見染めたケストナーが、彼女の父に縁談を申し込み、家族のためにロッテはこの縁組を受け入れる。ロッテへの贈り物を届けに彼女の家を訪れたゲーテは彼女がケストナーと婚約したことを知り打ちのめされる。そこへ追い討ちをかけるように、人妻との恋に破れたイェルーザレムが自殺。口論からケストナーと決闘することになったゲーテは投獄され、獄中で小説を書き上げ、ロッテに贈る。「若きウェルテルの悩み」という題名のその物語を読み終えたロッテは、ある決意を胸にゲーテのもとへ向かう……。

文豪ゲーテの若き日の物語ということで、「若きウェルテルの悩み」そのままの秘めた恋が描かれます。
若き日のゲーテは陽気な自信家で友人と酒場に繰り出しては酔い潰れて帰るような奔放な毎日を送っています。作家になろうと作品を出版社に送る、ということは試験勉強なんてしてないでしょうから落第も当然でも当の出版社からは才能無しと突き返され、父からは作家の夢は諦めて田舎でまじめに弁護士になるための修行をしろと命じられます。

元々頭は悪くないので、裁判所での仕事は卒なくこなすゲーテは次第にケストナーから認められ片腕と頼りにされるようになるの。まさか二人の想い人が同じ人物であるとは思いもせず、ケストナーのプロポーズの言葉の相談にのるゲーテ。しかし、婚約祝いの場に鉢合わせした瞬間、二人は悟ってしまうのです。若いゲーテが打ちのめされ憔悴する様子は可哀想ではありますが、ケストナーの苦しみもきちんと描かれているのがです。
ロッテの愛がゲーテにあると知りながら、ケストナー自身もロッテを諦められない、これこそが愛の切なさですもんね

それにしてもロッテは、一見奔放な性格に見えるしゲーテより年下かと思われますが、自分の置かれている立場を冷静に把握し、恋の激情に流されることなく判断のできるとても聡明な女性なのね。彼女の選択によってゲーテという作家が世に出ることができたのですもの。現実に叶わぬ二人の恋が、物語となることで永遠に読み継がれ人々の記憶に残っていく。これこそがロッテにとっての夢の実現ということなのかもしれません。その気持ちはわかるなぁ

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バトルシップ

2012年09月29日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2012年4月13日公開 アメリカ 130分

ハワイ沖。アメリカをはじめとする世界各国の自衛艦が集結して大規模な軍事演習が行われるなか、沖合に正体不明の巨大な物体が出現する。それは、地球からの友好的な呼びかけに応じて飛来したエイリアンの母船だった。しかし、呼びかけを行った科学者たちの意図とは裏腹に、エイリアンは次々と未知の武器を繰り出し、激しい攻撃を仕掛けてくる。その戦いの最前線に立たされたのは、演習に参加していた米海軍の新人将校アレックス・ホッパー(テイラー・キッチュ)と、彼がライバル心を燃やす自衛艦の指揮官ナガタ(浅野忠信)だった。弱点も戦略も読めないエイリアンに対し、知力と体力の限りを尽くして立ち向かう海の精鋭たち。果たしてエイリアンの攻撃の目的は何なのか。アレックスとナガタはそれを阻止することができるのか。そして、彼らは地球を壊滅の危機から救うことができるのだろうか……。(goo映画より)

浅野さんが準主役級で出ているけれど、作品自体は限りなくB級かなぁ
ただ、戦いシーンや武器はハイテクっぽくて面白かったです。戦艦好きには楽しめるかも。

大体、宇宙に向けて能天気に「お友達になりましょ」と電波送ったあげく、侵略に来られるなんて馬鹿丸出しじゃないですか、アメリカ
しかも、あんなにハイテクな宇宙船でも戦い方は地球人と変わらない、いやむしろ頭脳戦では負けてるってのもお気楽過ぎ。
しかも接近戦では銃持ってるのに素手で殴り合うって・・あほらし

主人公のアレックスも、戦略的なセンスは認めますが、自由奔放ないまどきの若者キャラであまり好きなタイプじゃないのも原点 対するナガタのキャラも立ってないのも残念。

ブルーレイの特典では戦艦ミズーリの内部を紹介してましたが、先の大戦の勝者を連想させて日本人的にはいまいち楽しめない内容かも

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白雪姫と鏡の女王

2012年09月26日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2012年9月14日公開 アメリカ 106分

国王(ショーン・ビーン)が森で行方不明になった後、白雪姫(リリー・コリンズ)の継母(ジュリア・ロバーツ)は、娘を部屋に閉じ込めて世間知らずに育て、自らは女王となって、贅沢三昧の暮らしをしていた。おかげで国の財政は破綻し、国民は飢えていた。外出を禁じられた白雪姫は心身とも美しい娘に成長したが、18歳の誕生日を迎えたある日、女王の目を盗んで城の外に出る。森で盗賊に襲われて吊るされていた男性を助けた後で村へ行った姫はそこで村人たちの惨状を知る。一方助けられた男性は隣国のアルコット王子(アーミー・ハマー)だった。城に参上した王子がリッチでハンサムと知った女王は彼と結婚しようと策を練るが、王子は白雪姫と恋におちる。怒った女王は姫の殺害を側近のブライトン(ネイサン・レイン)に命じる。森に逃げ込んだ白雪姫は、7人の小人のギャング団に仲間入りして様々な戦術や知恵を教えられ、女王に反撃を開始するが・・。


先に公開された『スノーホワイト』がダークファンタジーなら、こちらはコメディファンタジーと言えばいいのかしら? 

ジュリア演じる女王は我儘な浪費家ですが、自分の欲に対して純粋なまでに忠実な姿は邪悪というよりむしろ無邪気にさえ映ります。宝石やドレスが大好きで若い男に目がなくて、辛辣な目を持つ彼女がなんか憎めないのよね
18年も引きこもっていれば肌も白くなるなどの女王のセリフには思わず噴き出してしまいます。こういうの好き

一方の白雪姫は太すぎる眉がイマイチですが、オードリー・ヘプバーンを連想させる愛らしい容姿はまずまずかな。
世間知らずの姫が現実を知り王国の民のために立ち上がる、と書けば勇ましいですが、そこはコメディタッチな作風もあり、気の強い女の子くらいの描写になっています。

『スノーホワイト』の王子?は完全に添え物でしたが、こちらではしっかり正統派の王子様が登場。小人たちに打ち負かされたり、女王にいいようにあしらわれたりとヘタレにみせておいて、本当は剣の名手だとわかるのが白雪姫との戦いのシーンです。女性相手にあくまでも礼儀正しく優雅にあしらうそのピンと伸ばした背筋に萌え~~そして女子供と侮った隙を相手に突かれてヘタこくのも可愛げがあって大変よろしい

森の魔物の正体は予想通りでしたが、リンゴのエピソードをラストに持ってきたのは斬新なアイディアです
鏡の精が女王の影の部分だというのも面白い解釈です。欲をかくと結局自分に跳ね返るって教訓でもあるのかな?

ファンタジーならではの豪華絢爛な衣装も楽しめます。(石岡瑛子氏の遺作となった作品ということでエンドロールで追悼の言葉が入っていました)冒頭の人形劇や女王が操り人形で小人の家を襲うシーン、森の魔物のCGも凝っていて楽しめました

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鍵泥棒のメソッド

2012年09月19日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2012年9月15日公開 128分

貧乏役者の桜井(堺雅人)は自殺を考えたが失敗し、銭湯に行き、羽振りのよさそうな男が転倒し頭を強打し気絶するのを目撃。そのどさくさに紛れて、鍵を自分のものと取り換え、彼になりすます事にする。がしかし、その男は伝説の殺し屋、コンドウ(香川照之)だった。桜井は彼をコンドウだと思い込んでいるチンピラ(荒川良々)から殺しの大金の絡んだ危ない仕事を受けるハメに…。一方、婚活中の香苗(広末涼子)は記憶喪失で途方に暮れているコンドウに出会い好意を抱くが…。

主役の三人共好きな俳優さんで前評判も上々ということで、期待して観に行きました。
はい、期待通りの面白さでした
大人のためのエンターテイメント・ムービーと銘打つだけあって、笑いありスリルありトキメキありの幕の内弁当的内容詰め込み娯楽作です

出来心ですり替えたロッカーの鍵、羽振りの良さそうな男の所持品の中には大金の入った財布がありました。お調子者の桜井は喜んで借金の清算に使っちゃいます。それから所持品を返そうと男が入院している病室まで行くのですが、彼が記憶を失くしていると知るとちゃっかり入れ替わったままなりすましちゃうの。溜まった家賃の清算をして、男のマンションに上がり込み散財するその行動はかなり能天気です。しかも奇麗に片付いているその部屋も桜井が暮らし始めると途端に雑然と散らかり放題。あぁ、人って環境が変わっても性格変わらんのねぇと思わせるシーンです。

一方記憶のない男・コンドウは自分を桜井と思いこみます。お金がないので逃げるように病院を出た彼とばったり出会ったのがVIP専門誌(これが後にピンチ脱出の鍵になります)の編集長をしている独身の香苗。(良く言えば世間知らずですが、凡人とはかなりずれた感覚の女性です。)それが縁で彼女はコンドウの世話を焼くようになります。さて、本来真面目な性格のコンドウはボロアパートの部屋を奇麗に片付け、役者として成功するため勉強も始めるの。あぁ、人って・・・以下略
同じく真面目な香苗がコンドウに惹かれていくのも自然の道理と妙に納得してしまいました。

こうして桜井とコンドウの人生はまた離れていくように見えたのですが、コンドウにきた危ない依頼を大金目当てに引き受けてしまった桜井が大ピンチになり、そこへ記憶の戻ったコンドウが現れ・・・コンドウに逆プロポーズした香苗も巻き込んでの二転三転する大騒動にハラハラしながらも最後はスッキリな結末にちょっぴりときめいたりして

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あのころのデパート

2012年09月17日 | 
長野まゆみ 著、 新潮社 刊

大食堂でお子様ランチを食べたら、屋上遊園地へ。かつて家族の贅沢な楽しみだったデパートも、時代と共に変わってきました。百貨店の成り立ち、包装紙のオキテ、店員のおじぎの角度や独特の言葉遣い、店内アナウンスや雨が降った時にかかる曲名まで、勤務経験者でないと知り得ないデパートの秘密いっぱいの愉しい読み物。

(目次)
船にのって
包む人
流儀と符丁
よそいきと、おでかけ
いまどきのデパート
十時から六時まで
お客さまもいろいろ
「暮らしの手帖」がテストしたデパート
あのころにはもどれない

新聞に載っていた新刊案内から題名に惹かれて図書館で借りてみました。
著者の他の作品は全く読んだことはありません。が、同世代ということもあり、まさに「あの頃」の記憶が呼び覚まされる懐かしさを感じました。ただ一つ大きな違いが
私が子供の頃、デパートと言えばただ一店、県内では老舗のKデパート(かなり前に閉店になってしまった)しかなかったのよね

東京と地方の差はあれど、親に連れられて出かけたデパートでのお楽しみは、大食堂でのお子様ランチとクリームメロンソーダやパフェを食べ、それから屋上の遊園地で観覧車やメリーゴーランドに乗せてもらって、おもちゃ売り場で誕生日やクリスマスの時にどれを買ってもらおうと思案し(行くたびに玩具を買ってもらったわけではなかった・・と思う。)、帰りに食品売り場の回転するキャンディワゴンで量り売りのキャンディを買ってもらうことだったのは、同じだったのね
付け足せば、屋上への階段の踊り場にあったおみくじ(からくり人形が運んでくる)やバスの待ち時間に食品売り場で生ジュースを飲ませてもらったことなども思い出しました。

とはいえ、学生時代や社会人となって東京人の仲間入りをしてからは、筆者の書く三越・伊勢丹・高島屋に松坂屋、西武に東武に京王・小田急はetc・・頻度は少なくても利用してます。開店早々に行くことは殆どなかったけれど、仕事帰りにデパートを冷やかすのはよくありました。閉店間際の時間になると通路に店員さんが並んでお辞儀をされるのが何とも居心地悪かったっけ。店によって休業日も異なってたよねぇ

田舎では同じ品でも老舗デパートの包装紙に包まれているだけで格が上がったけれど、それは東京でも同じ。ただ、住んでいる地域によって?好みによって?「高島屋じゃなきゃ」とか「伊勢丹」あるいは「三越」といった具合に意見が分かれているのがちょっと面白かったわ。
(西武線沿線の親戚は「伊勢丹」だったし、夫は「高島屋」派だった。)私にとっては東京のデパートのランクは今でも疎いので

でも今はギフトもネットで済ますので、売り場に出かけるのは友人との待ち合わせの時くらいかなぁそもそも売り場で欲しいと思う「もの」との出会いが殆どないんだもの。

値段の高いデパートに行くのは、そこでしか扱っていない品物を買うという見栄を満足させてくれることの他に、家族でのお出かけという娯楽性を伴っていたからなのだということが、今ならわかりますそしてその役割は今郊外型のショッピングセンターが担っているということも

一つのテーマを書きながらもあちこち脱線していく筆者の文章構成はやや難ありですが、元店員だった彼女が書くデパートの内側を楽しみながら、ついつい思いは自らの子供時代に還るのでした


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ミラノ、愛に生きる

2012年09月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年12月23日公開 イタリア 120分

繊維業で成功を収めたレッキ一族の後継者タンクレディ(ピッポ・デルボーノ)と結婚したロシア人のエンマ(ティルダ・スウィントン)は、富豪の妻、3人の子どもの母親として何不自由ない生活を送っていた。家長エドアルド・シニア(ガブリエーレ・フェルゼッティ)の誕生パーティの日。彼女は、“エド”と呼ばれる息子エドアルド・ジュニア(フラヴィオ・バレンティ)の友人でシェフのアントニオ(エドアルド・ガブリエリーニ)と出会う。しばらくして、エドのフィアンセ、エヴァ(ディアーヌ・フレリ)の誕生日パーティでエンマはアントニオと再会、胸のざわめきを覚える。夏になって、ニースで行われる娘エリザベッタ(アルバ・ロルヴァケル)の展覧会に向かったエンマはサンレモに立ち寄るが、そこで偶然アントニオと再会。エドとサンレモにリストランテを開く計画を立てていたアントニオは、予定地へとエンマを案内する。山荘に降り注ぐ太陽と周辺の美しい自然の中で、自分の中の“何か”が目覚めていくのを感じるエンマ。そして2人は情熱的なキスを交わす。やがてエドアルド・シニアが亡くなると、タンクレディはイギリス企業への会社の売却を計画。これに反対のエドだったが、売却先とのビジネスディナーの料理をアントニオに依頼し、エンマとメニューの相談をしてほしいと告げる。サンレモで再会すると、激情に身を任せて身体を重ねるアントニオとエンマ。ロンドンで行われた会社売却の会議から傷心のまま帰国したエドは、アントニオの山荘でブロンドの髪を発見。その瞬間、母エンマと友人アントニオに対する疑惑が芽生える。イギリス企業を招待したディナーの日。気がかりをぬぐいきれず、母の様子を見ていたエドは、やがて母と友人の裏切りを確信し、ディナーの席上を飛び出し、後を追いかけたエンマと庭で言い争ううち、悲劇が訪れる……。


ティルダは美しい高価で洗練された衣服をまとった彼女の身のこなしは優雅で気品が漂っています。お飾り人形から生身の女の匂い立つような生気を立ちのぼらせるその表情にも魅せられます。そしてヴィスコンティ映画を彷彿とさせる映像美。目を楽しませる華やかなお料理や食器に館の豪華な装飾品。でもストーリーの結末には納得できな~~い家族のために自分を殺して生きてきた富豪の妻が、息子の友人と恋に落ちる・・・まさにメロドラマですが、悲劇の後、家を飛び出すのはどうよ責任ってもんは感じないのか?それも捨て去れるほど「真実の恋」だってのか?凡人の道徳観では理解できませんあれじゃ、エドが可哀想過ぎるぞ

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おとなのけんか

2012年09月16日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2012年2月18日公開 フランス=ドイツ=ポーランド

ニューヨーク、ブルックリン。ザッカリー・カウワンがイーサン・ロングストリートの顔を棒で殴ったという11歳の子供同士の喧嘩の後、彼らの両親が話し合いのため集まることに。リベラルな知識層であるロングストリート夫妻(ジョン・C・ライリー/ジョディ・フォスター)は、カウワン夫妻(クリストフ・ヴァルツ/ケイト・ウィンスレット)を家に招くが、冷静に平和的に始まったはずの話し合いは、次第に強烈なテンションで不協和音を響かせる。やがてお互いの本性がむき出しになっていき、夫婦間の問題までもが露わになっていくのだった……。

舞台劇の映画化だけあって、物語の舞台はアパートの一室(とエレベーターホール)だけ。
冒頭、出演者や製作者の名前のバックで、子供たちのトラブルが小さく映り、一人の少年が棒で別の少年を殴った後、当事者たちの両親がPCで何か書面を作成している場面に切り替わりますどうやら加害者の両親が被害者の家に謝罪に訪れたようです。

上辺は友好的に穏やかに会話が進みますが、カウワン夫妻が辞去する際にロングストリート夫妻の何気ない一言がきっかけで、二組の両親の間に緊張が走ります。丸く収めようと再び室内に招き入れ茶菓子なぞ食べながら世間話をするうち、今度は夫婦同士の諍いに。この繰り返しでどんどん会話がエスカレートする様子を、オスカー受賞者、ノミネート者の4人の達者な演技で魅せてくれるのです。

きっかけはロングストリート氏が娘のペットを勝手に捨てたことや、カウワン氏が携帯で頻繁に仕事の話をして会話が途切れてしまうことだったりと、些細ではあるけれど笑って許容するにはちと引っかかる事です。それらに対して、両家で、夫婦で、男女でと様々な対立の模様を次々と見せられて、「あ~~だからあの時すぐに帰ればこんなことには・・」と何度も思わせて、どんどん泥沼にはまっていく両家の口論を他所に、最後は仲直りした息子たちが公園で仲良く遊ぶ場面で終わるのが何とも皮肉です。

仲の良さそうな夫婦でも互いに隠していた不満があったり、男と女では物事に対する見方や感じ方が違ったり(携帯漬けの夫の携帯を水没させた妻に対し、もう一組の夫婦がそれぞれの同性に共感していたのが可笑しかった)と、隠れた本音が炸裂する後半は見ものです。それにしてもそこにゲロするか~~!!!

昔から子供の喧嘩に親が出るとろくなことがない、と言われたものですが、それは世界共通なのねそしてこの手の諍いはまさに国際社会にも当てはまるということでもあります。まさに大人のブラックコメディですが、親たちはこの後どう和解したのか、それとも夫婦関係まで破綻してしまったのか、ちょっと興味があります

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はかぼんさん 空蝉風土記

2012年09月13日 | 
さだまさし:著 新潮社:刊

この国には古来、「不思議」が満ちていた――京都の旧家で長子誕生の際に行われる謎の儀式を描く表題作ほか、節分の夜に鬼がやって来るという信州の「鬼宿」、長崎に伝わる不老長寿をもたらす秘密の石「崎陽神龍石」など、各地の“伝説”を訪ね歩いて出逢った虚実皮膜の物語。ゾッとするほど面白く、ホロリと沁みる奇譚集!

さださん初の幻想小説です。
「小説新潮」に平成23年5月号~平成24年3月号(ついこの間の春やん)に連載された作品の単行本化のようです。普段雑誌を読まないので新聞の新刊案内で知りました

第一話 はかぼんさん 
第二話 夜神、または阿神吽神 
第三話 鬼宿 
第四話 人魚の恋 
第五話 同行三人 
第六話 崎陽神龍石

長年全国を旅する日々を送ってきた著者ならではの視点で書かれた6つの物語は、それぞれが民間伝承や古代神話にまつわる豊富な知識に裏打ちされていて、何だか全てが本当にあった話のように思えてしまうから不思議です。登場人物も実在する著者の周囲の友人・知人を連想させます

元々が一対の夫婦神と推測する「鬼宿」や、恋女房を救った神龍石(始皇帝の時代から伝わる願い事が叶う龍の卵の伝説)「崎陽神龍石」はふんわり温かな気持ちになれる話でした。

「はかぼんさん」の話はちょっと悲しい。本来はめでたい寿ぎの儀式なのに、伝達役のはかぼんさんに要らぬ重圧を与えて時には悲劇が生じてしまうから・・。でもあのオチはちょっと悪乗りな気もしますいや、そう思いたいだけなのかな

「夜神~」は能登の寒村での神事にまつわる人情話です。遠く古代神話にまで端を発するカウンセリングと解く筆者の眼差しはあくまで優しいのです。彼の「償い」という歌にも通じるところがあります。

「同行三人」では四国の霊場で山伏姿の仙人と呼ばれる行者との出会いが書かれます。人が踏み込んではならない神様の領域って本当にあるのかも・・・
行者の襟に書かれた「三人」の意味も神様の領域を穢した罰という考え方もとても深いものがありました。

「人魚の恋」だけは他の作品と少し色合いが違います。これは主人公の若き日の恋を人魚伝説に重ねて創作した一種のファンタジーでしょう。

どの物語にも人と人の繋がりを大切に思う筆者の温かい眼差しが感じられて読後感もでした。

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踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望

2012年09月12日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2012年9月7日公開 

湾岸署管内で開催中の国際環境エネルギーサミットの会場で誘拐事件が発生。数時間後に被害者は射殺体で発見される。使用されたのは警察が押収した拳銃。緊急招集された捜査会議では、全ての捜査情報を鳥飼(小栗旬)管理官へ文書で提出すること、所轄の捜査員には一切の情報が開示されないことが発表される。そんな中、第2の殺人事件が発生。さらに、真下(ユースケ・サンタマリア)署長の息子が誘拐されるという第3の事件までも起こる。青島(織田裕二)は疑念を抱きつつも事件解明に向け懸命に捜査するが……。

1997年のTVドラマから始まった「踊る~」。15年の歳月を経て映画4作目で遂にファイナル?
公開翌週のレディースデーとあってぎっしり埋まった客席に人気の高さが覗えます。

TVシリーズからずっと見続けているのでやっぱり見届けたい、というわけで劇場鑑賞。
(本当はTV放送になってからでもいいかとも考えたけれど、この日この時間で観たいものが他になかったの

話の流れは結構単純、冒頭で鳥飼が意味ありげに出てくるから、真相も早い時点でわかってしまう。でも・・どんな理由があっても彼らの行動は警察官として決して許されることじゃないけどなぁそして相変わらずの警察幹部の「会議」は吐き気がするほど欺瞞と自己保身に満ちていました。

今回はSMAPの慎吾ちゃんも出演しているのだけど、山場になるまでぜ~~んぜん気付かなかったぁで、気付いた途端「え?両さん??」と思っちゃったもちろんキャラ全く違うんだけど・・あのわざとらしい髪型のせいかなぁ

リズミカルでテンポの速い展開は相変わらずです。
冒頭の張り込みシーンでの青島とすみれの会話は下手な夫婦漫才のようで悪ノリな感もあるけど後半のバスを使ったすみれの大胆な「突っ込み」にはびっくり(後で始末書間違い無し)でした。
青島と室井の男の友情や湾岸署の面々の仲間意識の深さもシリーズを通して変わらないね
最後に幹部の悪事が暴かれ警察人事の新旧刷新で青島と室井の理想がいよいよ実現するのか?とか期待させるけど・・ま、面白かったですよ。この作品は一貫してぶれない軸があるから続いてきたのよね

でも「ファイナル」と銘打ってはいるけれど、作ろうと思えばまだまだ続きそうな終わり方なのはちょっと肩透かしだったかな。予告で青島が倒れる?シーンが出てきて「撃たれた?」と勘違いしてしまうけど、本編では全くそのような場面ではなかったわ。広告としては巧い予告編集だけど、なんか騙された感じ

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ターゲット

2012年09月11日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2010年 日本未公開 イギリス/フランス 98分

知的で腕利きの殺し屋ビクター・メイナード(ビル・ナイ)は、贋作を使いギャングから大金を騙し取った 詐欺師ローズ(エミリー・ブラント)の殺害を依頼される。ビクターは1日中ローズを付け狙い何度も暗殺を試みるが、その都度邪魔が入り中々ローズを仕留められない。しびれを切らしたギャングのボスファーガソン(ルパート・エヴェレット)は自らの部下にローズの始末を命令した。邪魔の入らない駐車場で、ビクターがやっとローズを撃とうとしたその時、ギャングの部下が現れ同じくローズを狙っていた。何を血迷ったのか、ビクターはギャングの部下を撃ち殺し結果としてローズを助けてしまう。ビクターはもう一人のギャングの部下にローズ共々捕まってしまい、絶体絶命の危機に陥る。そこに偶然居合わせたただの一般人トニー(ルパート・グリント)のおかげでピンチは脱したものの、ギャングと、さらに新たに雇われた殺し屋に追われる事になってしまう・・・。


仏映画『めぐり逢ったが運のつき』を現代風にリメイクした作品だそうですが、元版は未見。

ビクターは由緒正しい?殺し屋一家に生まれた腕利きさんで、依頼された仕事は完璧にこなしてきました。ところが、詐欺師ローズを殺そうと彼女を張ってみると・・まぁこれがいい加減で自分勝手で・・でもなんて自由に生きてるんでしょ。あまりの奔放さに逆に惹かれてしまったビクター。当然殺害は失敗続きでしまいにはファーガソンが業を煮やして送りこんだ部下を殺してしまうの全く何やってるんだろ?と混乱するビクターを命の恩人と信じて助けを求めるローズと、偶然彼らを助けたトニーも加わり可笑しな逃避行が始まります。

高級ホテルなら大丈夫と逃げ込んだ同じフロアにファーガソン一味がいたり、新たに雇われた殺し屋マイク(グレゴール・フィッシャー)がビクターに密かに対抗心を燃やしていたり、ビクターが母親(アイリーン・アトキンス)に頭が上がらなかったリ(この母がまた超過激)といたるところに笑いが仕込まれていて楽しくなります。

ハリポタシリーズ以外で初めて観たルパート君ですが、なかなかとぼけた演技をみせてくれますが・・無駄に多い入浴シーンで運動してそうもないなまっちろい体を見せられてもなぁトニーは両親に顧みられず育った青年ですが、その割に掏れもせず純朴な人柄です。彼がビクターを父のように慕う姿が何だか愛しくみえてきました。

ドタバタコメディなのですが、ビル・ナイ演じるビクターは常にきちんとしたスーツを着て礼儀正しい紳士的な男なので、どんなシーンも不思議に品がありました。
少々マザコン気味な独身男に訪れた初めての春が無事に成就するのも良い感じです。もちろんオチもクスッと笑えます。息子の将来有望だね

たぶん前に観たDVDの作品紹介で気になってセレクトした筈なんですが、とてもツボにはまってしまいました。買っちゃおうかなぁ

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タイタンの逆襲

2012年09月10日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2012年4月21日公開 アメリカ 99分

ゼウス(リーアム・ニーソン)と人間の間に生まれたペルセウス(サム・ワーシントン)が、怪物クラーケンを倒してから10年。10歳になる息子ヘリウスを男手ひとつで育てながら、村の漁師として静かに暮らしていた彼の元にゼウスが現れ助力を請う。人間からの崇拝を失い危険なまでに力を弱めた神々は、クロノス率いるタイタン族を制御できなくなりつつあったのだ。一旦は断ったペルセウスだったが、ゼウスが冥界の神ハデス(レイフ・ファインズ)とゼウスの息子である軍神アレス(エドガー・ラミレス)の裏切りにより囚われの身となったことを知ると、女王アンドロメダ(ロザムンド・パイク)、ポセイドン(ダニー・ヒューストン)と人間の間に生まれたアゲノール(トピー・ケベル)、堕ちた神ヘパイストス(ビル・ナイ)の力を借りて、ゼウスを救出すべく冥界への危険な旅に乗り出す。

前作でイオと結ばれ子を儲けながらも早々に死に別れてしまったペルセウス。イオに息子には漁師として平凡な一生を送らせると誓った彼は、自分の出自を隠し剣も教えずに育ててきました。英雄(の息子)として危険な道を歩ませるより、平凡でも穏やかな一生を送らせたいと願うのは、親としては当たり前の感覚ですよね。そして10年の時は、さらに人間の神への信頼を失墜させていたのでした

クロノスはゼウス・ハデス・ポセイドンの3兄弟の父で、その凶悪さにこのままでは世界が滅びると危惧した3兄弟がタルタロスに閉じ込めていたのですが、兄弟に騙されて冥界の神にされたハデスの恨みは続いていたわけで、今回はデミゴッッドのペルセウスばかりゼウスに寵愛されていることを妬むアレスを仲間に引き入れてクロノスを解き放ち、ゼウスの愛する人間界を滅ぼそうとするのです。

前作もでしたが、このハデスってば、どうも中途半端なんだよねいざ、ゼウスが絶体絶命の窮地に陥ると逆に助けようとするんだもの。結局は兄弟の情が憎悪に勝ってしまうのそれに比べたらアレスの酷薄さは実の父を手にかけることに何ら躊躇いもなく、自分を崇める人間もゴミのように扱う始末。クロノスよりよほど恐いかも

囚われたゼウスの力を吸収し復活していくクロノスのせいで、地上はキメラなどの魔獣が暴れ回り地獄と化していきます。CGを多用した映像は迫力ありますが、私は戦い自体には興味がないのでその辺はスルー冥界の迷宮を彷徨う冒険も割とあっさりと描かれているのもちょっと物足りなかったな

前作でも父(ゼウス)と子(ペルセウス)の関係が軸になっていましたが、今回はペルセウスが父の立場で息子を守るために戦いに身を投じていくのねそして息子・ヘリウスもまた拙いながらも父を助けようとするのでした。

でも一番良かったのは、前作で坊主頭だったペルセウスが今回はちゃんと古代ギリシャ人ぽく長髪だったことかな

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あしたのパスタはアルデンテ

2012年09月06日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年8月27日公開 イタリア 113分

トンマーゾ(リッカルド・スカマルチョ)はローマに住む作家志望の青年。実家は南イタリアのレッツェにある老舗のパスタ会社だが、兄アントニオ(アレッサンドロ・プレツィオージ)の新社長就任が決まり、共同経営者一族の晩餐会が開かれることになった。帰郷したトンマーゾは、その席上で家族に言えなかった3つの秘密を告白するとアントニオに予告する。1つ目は経営学部と偽って文学部を卒業したこと。2つ目は家業を継がずに小説家になること。そして最大の秘密はゲイであること。だが、ディナーの席でトンマーゾが告白しようとした矢先、アントニオが先にカミングアウトしてしまう。実は彼もゲイだったのだ。一同は驚愕、父ヴィンチェンツォ(エンニオ・ファンタスティキーニ)は憤怒のあまり、アントニオに勘当を言い渡してそのまま卒倒。家族は大騒ぎになる。トンマーゾは告白どころか、ローマに戻ることもできず、共同経営者ブルネッティ(ジャンカルロ・モンティジェッリ)の美しい娘アルバ(ニコール・グリマウド)とパスタ工場を任される羽目に。果たして、トンマーゾの未来は……?老舗パスタ会社の将来は……?そして、一家に再び平和な日々は訪れるのか……?


老舗パスタ会社の後継者がゲイを告白したことで巻き起こる騒動を描いたコメディですが、自立と家族の絆がテーマでもあります。
今や同性愛なんて珍しくもないけれど、それが家族だったら・・・長男の告白をジョークと受け取ったり、事態を呑み込んだ父親が驚きと怒りのあまり発作を起こして倒れるあたりはまぁ、当然の反応ですな

実は弟の方もゲイなのですが、兄に先を越され父が倒れたとあっては「僕もゲイ」とは言いだせなくなってしまうのです。事前に予告したのにお兄ちゃんずるいよ!と弟が思ったかどうかはわからないけど、後に兄弟喧嘩のシーンで、「俺はずっと我慢してきたんだ!」と弟に不満をぶつける兄の姿に「あぁ、だからあのタイミングで告白したのか」と

面白いのは入院した父が愛人に愚痴るところ。女好きを公言してはばからない父の姿がいかにも田舎親父風で笑えます。

他にも個性的な家族の面々の姿が映し出されます。
独身の叔母ルチアーナ(駆け落ちした男に逃げられた過去あり?)は酒浸りで現実逃避してるし、祖母(イラリア・オッキーニ)は夫の弟のニコラを想い続けていて周囲からは爆弾と呼ばれている様子。糖尿病を患っているためお菓子禁止で、テレザにインシュリン注射を打ってもらっているようだけど、無表情で無愛想なテレザは祖母にだけは親愛の情を持っているみたい
姉エレナの娘たちは肥満児で、夫サルヴァトーレ は義父に頭が上がらない様子。

トンマーゾにアルバは次第に惹かれていくようですが、彼がゲイだということを彼女は知っているので、これはけっこう辛い恋ですね。
そんなある日、トンマーゾのゲイ仲間(マルコ・アンドレア・ダヴィデ・マッシミリアーノ)が彼を訪ねてきます。何も知らず彼らを歓待する両親の前でゲイだとバレないよう苦労する友人たちの姿が可笑しくてちょっとした仕草や会話で観てる方にはけっこうバレバレなんだけどね。そう、わかる人にはわかってしまうもの。例えば姉のエレナだってトンマーゾがゲイだって以前から気付いてたしね
海でのダンスシーンは最高に面白いでもじゃれ合う恋人たち(トンマーゾとマルコ)を見つめるアルバの哀しげな瞳がちょっと切なかったな

ところで立場が同じ母という視点で見ると、ステファニアが兄の告白に「ずっと一緒に暮らしていたのに気づかない筈はない」と部屋の「証拠品」を探すシーンなどは、何だか身につまされるというか同情してしまいます。でもルチアーナと町を歩いていて仲の悪いアントニエッタに嫌みを言われた時の言い返し方の痛快さやテレザへの容赦ないマシンガントークでの云い付け方を見てると元来とても勝気な女性なんだなぁとか思ったりトンマーゾの恋人とも知らずマルコにゲイについて相談するシーンで「ゲイは病気ではなく個性です」と言われるのも印象的です。夫が頑なに拒み続ける現実を、彼女は少しづつ理解していくというか、あるいは諦めなのか、息子の「個性」を認めようというスタンスに変わっていくんですね

トンマーゾはゲイであることは伏せていますが、小説家になりたいという希望は家族にはっきりと宣言します。そして祖母の死。この死は、彼女がもう我慢することを止めたことが原因。好きなケーキをまさに死ぬほど食べたんだから、彼女にとっては幸福な死ですね

葬式で久しぶりに家族が揃い共に歩く中で見交わす目と目。あぁ、この家族は大丈夫。再び堅い絆で結ばれたんだなぁと感じるラストでした

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最強のふたり

2012年09月05日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2012年9月1日公開 フランス 113分

スラム街出身で無職の黒人青年ドリス(オマール・シー)と大富豪フィリップ(フランソワ・クリュゼ)。およそ接点のないふたりが、パラグライダーの事故で首から下が麻痺したフィリップの介護者選びの面接で出会った。他人の同情にウンザリしていたフィリップは、不採用の証明書でもらえる失業手当が目当てのドリスを採用する。クラシックとソウル、高級スーツとスウェット、文学的な会話と下ネタ──相容れないふたつ世界を生きてきたふたりだが、偽善を憎み本音で生きる姿勢は同じだった。互いを受け入れ始めたふたりにとって、毎日はワクワクする冒険に変わり、静かに深い友情が生まれていく。ドリスの宝石強盗の前科を忠告されてもフィリップは毅然と答える。「彼は私に同情していない。そこがいい。彼の素性や過去など、今の私にはどうでもいい事だ」と。ドリスには自然な思いやりが備わっていて、フィリップはそれを肌で感じていたのだ。だが、ドリスの弟が兄を頼ってやってきた時、フィリップはドリスに家族のために自分の時間を使うよう忠告する。ドリスは自分の人生を始めるが、フィリップは再び孤独に陥っていき・・・。


公開前から評判が良かったのと上映館の少なさからか、けっこう混んでいました。
予告を観た時はハリウッド映画かと思っていたのだけど、フランスなのね。そう思って観るとなるほどエスプリの効いた人間ドラマでした

妻を亡くし、自らも事故で首から下が麻痺して介護が必要なフィリップは、同情や義務で介助されることに少なからぬ不満と鬱屈を抱えています。そのイライラを介護人にぶつけるため次々と介護人が辞め、新たな人を雇わねばなりません。面接でお行儀のよい応募理由を述べる者たちの中で、ドリスは異色の存在でした。不採用証明を貰えば失業手当が貰えるから応募したという彼に興味を持ったフィリップは、この時ドリスの飾らない人柄を無意識に見抜いていたのかな

スラムに暮らし大家族で風呂もゆっくり入れないドリスにとって、フィリップの屋敷は別世界。何しろ自分の部屋に風呂が付いてるフィリップの世話は大変だけど、元々面倒見の良い彼にとっては逃げ出したくなるほど辛い仕事でもありません。何より彼らはウマが合ったのです。断固拒否していたう○この掻き出しでさえ、後に引き受けたりもするんですから

ワゴン車の後ろに車椅子ごと乗せるのは荷物みたいで嫌だとフィリップが事故前に乗っていた高級車の助手席に座らせたり、夜中に発作を起こした彼を街に連れ出して落ち着くまで付き合ったりするエピソードが出てきますが、そんな風に自然な気遣いのできる優しさを持つドリスに、フィリップは使用人としての枠を超えた友情を感じていきます。文通相手に高尚な文学的比喩を並べるより、電話で告白しろとけしかけたり、「耳は感じる」と答えるフィリップをはちょっといかがわしいマッサージに連れて行ったりはまさに男の友情だね

ドリスのために彼を解雇したフィリップですが、信頼出来る友を失いみるみる焦燥していく様は無精髭と生気を失った瞳に表されます。見かねたフィリップの使用人(ドリスは彼らとも和気藹々の関係を築いていました)に呼び出されたドリス・・・映画の冒頭のシーンはここに繋がるのね
波音を聞きながらただ傍にいるだけで、フィリップには最高の癒しです。ラストでは海辺のでドリスによるサプライズも用意されていて・・・ちょっと出来過ぎな感はありますが、ハッピーな結末に

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幸せパズル

2012年09月04日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年10月1日公開 アルゼンチン=フランス 90分

南米アルゼンチンの首都ブエノスアイレス。マリア・デル・カルメン(マリア・オネット)は夫フアン(ガブリエル・ゴイティ)と2人の息子、長男イバン(フリアン・ドレゲール)、次男フアン・パブロ(フェリペ・ピリャヌバエ)の幸せを生きがいに家族を支えてきた専業主婦。窮屈な親戚付き合いや、妻や母としての務めに疲れることがあるものの、今でも夫からは愛されており、息子たちも立派に成長。それなりに幸せな生活を送る半面、どことなく満たされない気持ちも抱えていた。そんな彼女の人生を、50歳の誕生日にもらったプレゼントのジグソーパズルが一変させる。それまで気付かなかったジグソーパズルの才能に目覚めてしまったのだ。地元の売店で目にした“パズル大会のパ-トナ-募集”という広告に興味を惹かれた彼女は、家族に内緒で新しい世界に足を踏み入れる。広告主は、パズル大会の常連という大富豪の独身紳士ロベルト(アルトゥーロ・ゴッツ)。ジグソーパズルの常識にとらわれない彼女の才能に驚いたロベルトは、一緒に世界選手権を目指そうと誘う。夫に嘘をついて、ロベルトの邸宅に通ってゲ-ムの規則を学んでいくマリア。一気に花開いていく才能。世界予選となる全国大会制覇も夢ではなくなってきた。しかし、世界大会への出場は、遠くドイツへの旅を意味していた。思い切って全国大会出場の意志を家族に打ち明けるマリア。だが、夫には一笑に付され、自分の独立準備に夢中の息子たちからも相手にされない。皆それぞれに自分だけの生活がある家族。理解を得られないマリアは、ますますジグソーにのめり込んでいく。そして訪れる全国大会。周りの競技者の中には、マリアのような方法でジグソーを解いていく者はいなかった。戸惑い焦る彼女を、ロベルトがそっとなだめた。“君のやり方でやればいいんだよ”。パズルが開いてくれた広く新しい世界。マリアは旅立つことができるのか……?(Movie Walkerより)

冒頭のシーンはマリアの50歳の誕生祝いの席です。主役の筈の彼女は大勢の招待客のために料理を次々と作り運ぶだけ。ケーキだって自分で出してきて、後片付けだって一人でしてる。これって幸せなのかな?と思わず疑問が浮かんでしまいました

そんな彼女が贈り物のパズルを手にして変わっていきます。
1000ピースをあっという間に仕上げてしまったマリアは近所のスーパーの簡単なものじゃ物足りません。送り主の伯母(叔母?)にお店を聞いて買いに行くのそこで目にしたパズル大会のパートナー募集を見つけた彼女は、店の人に教わりながら相手に連絡を取って訪ねていきます。メールも知らない主婦には凄い思い切った冒険です。

息子たちが独立して離れて行く年頃を迎え、夫だけでは埋まらない満たされない心に、パズル
が導く新しい世界が入ってきて夢中になっていくマリアですが、大会に出ることやパートナーの存在は家族に秘密。表向きは膝の悪いおばさんの世話をしに行ってることにしてる。そりゃ、独身男性と大会出ます!なんて言えるわけない。大会に出たいとほのめかしただけで大笑いされるんだものね。私の存在価値って何?といらつく気持ちもわかるな

でもさ・・・やっぱり夫への裏切りはよくないよ~~そして、そこで引いちゃうんですか~~な幕切れ。それってマリアの自己満足で終わっちゃってる気もしますが
平凡な専業主婦のうたかたの夢なのか、それとも大いなる輝きの季節だったと思えばいいのか・・・。私だったら優雅で紳士なロベルトとドイツ行っちゃう・・・いや、やっぱり行けないかぁでもマリアは以前の彼女とは明らかに違うよね。やっぱ、女って強いわ

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