杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

名探偵コナン 緋色の弾丸

2021年10月29日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年4月16日公開 110分 G

世界最大のスポーツの祭典「WSG-ワールド・スポーツ・ゲームス-」の記念すべき東京開催を迎えようとしている日本。
その開会式に合わせて、日本の技術を総結集した、最高時速1,000kmを誇る「真空超電導リニア」が新名古屋駅と東京に新設される芝浜駅間に開通することが発表された。世界からの注目を集める中、名だたる大会スポンサーが集うパーティー会場で突如事件が発生!
企業のトップが相次いで拉致されてしまう異常事態に。その裏には事件を監視する赤井秀一(池田秀一)の姿、そして赤井からの指令を待つFBIの姿があった。コナン(声:高山みなみ)の推理により、15年前にアメリカのボストンで起きた忌まわしきWSG連続拉致事件との関連性が浮かび上がり、当時の事件もFBIの管轄だった事が判明する。果たしてこれは偶然なのか?世界中から大勢の人々が集まる日本で、一体何が起ころうとしているのか?(公式HPより)

 

青山剛昌原作「名探偵コナン」の劇場版24作目は、FBI捜査官・赤井秀一が、シリーズ20作目「純黒の悪夢」以来の登場。さらに、赤井の弟でプロ棋士の羽田秀吉(森川智之)、女子高生探偵の妹・世良真純(日髙のり子)、3人の母親で“領域外の妹”と名乗る謎の女性メアリー(田中敦子)と、“赤井ファミリー”が集結しています。正直、シリーズ全部観てるわけじゃないので、この家族については良く知らないのですが

一方、いつもの少年探偵団のメンバー、歩美(岩居由希子)・元太(高木 渉)・光彦(大谷育江)と阿笠博士(緒方賢一)は今回は出番少な目で、灰原(林原めぐみ)はサポートに回り、眠りの小五郎(小山力也)の活躍も、蘭(山崎和佳奈)が危ない目に遭うこともなかったかな。
後半部は、リニアに乗り込んだ世良とコナンの活躍が目立ちました。今回はリニアが脱線してセレモニー会場に突っ込むという状況で、現実にはありえない最悪な展開の中で、生きているのも奇跡なフィクションならではの結末となっています。

犯人は複数いて、15年前の事件の関係者であり、復讐目的で事件を起こしていますが、結果として的外れな行動だったというオチが

個人的な恨みにしては起こした事件の規模デカ過ぎでしょ

合間に秀吉と彼の恋人の婦人警官との話を挟み込んで一休み的空気感を出していました。でも秀吉さん、プロ棋士らしく、五手で犯人を追い詰める頭脳を発揮して捜査を助けています。

タイトルの緋色の弾丸は赤井がリニアに放った「銀」の弾丸を指すようです。リニアとMRIの共通点である磁力を使ったトリックも興味深かったかな。 クエンチというのも初めて知りました。超電導磁石を冷やすための液体ヘリウムが気化して酸素濃度が下がる事だそうです。


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太陽は動かない

2021年10月28日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年3月5日公開 110分 G

謎の秘密組織AN通信。この組織に属するエージェントは心臓に爆弾が埋め込まれ、24時間ごとに死の危険が迫まるという。エージェントの鷹野(藤原竜也)は相棒の田岡(竹内涼真)とともに、死の危険を抱えながら「全人類の未来を決める次世代エネルギー」の極秘情報をめぐって、各国のエージェントたちとの命がけの頭脳戦を繰り広げる。(映画.comより)

 

コロナ禍の影響で公開が一年近く延期されていた作品です。監督は「海猿」「暗殺教室」などを手がけた羽住英一郎。

吉田修一のスパイアクション小説が原作で、鷹野のエピソードは原作シリーズ第1作『太陽は動かない』(現在)、シリーズ第2作『森は知っている』(高校時代)を基にしているそうですが、原作知らないのよね~~

ブルガリアで行われたロケは大統領官邸前の道路を封鎖してのカーチェイスや、アレクサンドル・ネフスキー大聖堂での撮影、列車を貸し切って往復400km走らせながらの撮影ということで、お金かかってますね~

ブルガリアの首都ソフィアで埋め込まれた起爆装置が今にも起動しそうな(ウルトラマンのカラータイマーのように点滅しているのがちょっと可笑しかった)エージェント山下竜二(市原隼人)。鷹野一彦と相方の田岡亮一に救出されますが、鷹野の因縁のライバル、デイビッド・キム(ピョン・ヨハン)に邪魔され時間切れとなります。血に染まる公衆電話BOX。非情な世界です。

山下が追っていた情報を探るため、鷹野たちは、CNOXのアンディ・ウォン(翁華栄)に接近。彼が次世代型太陽光エネルギーの実用化を睨み、日本の大手電機メーカーMETと手を組もうとしていると知ります。山下はMETの取締役・河上満太郎(鶴見辰吾)の依頼でアンディ・ウォンを探っていたとわかり、鷹野は、河上に会いに行きます。河上夫妻には昔マニラで誘拐され行方不明の息子がいて、AN通信で危険な仕事に就く鷹野たちに息子の姿を重ね心を痛めます。妻(宮崎美子)が出すオムライスに星型にケチャップがかけられているのですが、失った息子が生きていたら真っ先に食べるであろうヒントになっているのが切なく哀れでした。もちろん鷹野は彼らの息子ではないのですけれど。

AN通信のエージェントは親に虐待され棄てられた子供たちでした。彼らの胸には爆弾が埋め込まれ、裏切りを防ぐため一日連絡がないと爆発する仕掛けになっています。鷹野も母親に部屋に閉じ込められたまま置き去りにされ弟を亡くした過去があります。司令塔の風間武(佐藤浩市)に拾われた鷹野も、名前を変え産業スパイとして育てられ、高校まで島で過ごします。彼は狭い世界を抜け出して壁の向こうの広い世界に飛び出したいと、自らエージェントの道を選んだのです。

宇宙太陽光発電の開発に乗り出していたCNOXの目的が、METの新型蓄電池の技術を盗むことだと知った鷹野は、河上にCNOXとの提携を止めるよう忠告します。アンディ・ウォンが中国の砂漠地帯に建設していた巨大なレクテナ基地の偵察に向かった鷹野と田岡ですが、狙撃され墜落し、鷹野が捕まります。田岡が救出に現れ、砂漠に沈む太陽を眺めながら「今日も生き延びた」と呟く鷹野に田岡は「鷹野さん、死ぬの怖くないんですか?」と問いかけます。鷹野は「明日のことは考えなくていい。一日一日を生きるだけだ」と答えます。それは昔彼が風間から言われた言葉でした。

一方、鷹野にデータを奪われたアンディ・ウォンは、女スパイのAYAKO(ハン・ヒョジュ)に新たな儲け話を持ち掛けます。(このAYAKOの役割がイマイチわからなかったかな)レクテナ基地とMETの蓄電技術で集めたエネルギーを変換する技術を開発している小田部教授(勝野洋)を狙いますが、デイビッド・キムが先回りして教授の娘・奈々に取り入り教授の信頼を得、教授をロシアに高値で売ろうとしていました。それを知ったアンディ・ウォンは、奈々を誘拐します。救出に向かった鷹野たちは小田部親子を助け出しますが、沈みゆく船の中で絶体絶命の窮地に陥ります。諦める田岡を前に決して諦めない鷹野は水中で渾身の力を振り絞り彼を救出します。やってきたヘリコプターに乗っていたのはデイビッド・キム。「なんで、お前が?」と訝しむ鷹野に「俺の雇い主がお前を生かせとの命令だ。伝言を預かってきた」と言います。このエピソードは島で一緒に暮らしていた親友の柳勇次(加藤清史郎)しか知りません。エージェント試験の前に姿を消した彼は生きていたのです。ちなみに爆弾を埋め込まれてエージェントとして生きるか否かの選択は本人に任されていました。

河上に「このままでいいのか」と聞かれた鷹野は「今は壁の向こうにいます。生きているだけでいい。どこにでも行けるんですと答えます。母親に部屋に閉じ込められ置き去りにされた鷹野は今、自ら壁を越えて世界中を飛び回ることに生きている実感を見出しているのね。

非情な産業スパイの世界を描いたハードボイルド作品ですが共感はできなかったかな。


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ロン 僕のポンコツ・ボット

2021年10月27日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2021年10月22日公開 アメリカ=イギリス 107分 G

最新式ロボット型デバイス<Bボット> ―それは、スマホよりハイテクなデジタル機能に加えて、持ち主にピッタリな友達まで見つけてくれる夢のようなデバイス!そんな<Bボット>で誰もが仲間と繋がる世界で、友達のいない少年バーニーの元に届いたのはオンライン接続もできないポンコツボットのロンだった。 出会うはずのなかった1人と1体が‟本当の「友情」“を探すハートウォーミング・アドベンチャーが今、始まる―(公式HPより)

 

友達が欲しい少年と不良品の最新式ロボットが“本当の友情”を探して繰り広げる冒険を描いた長編アニメーションです。

行きつけのシネコンでは字幕版の上映がなかったので吹替版で鑑賞。平日の初回上映だったせいか観客は私を含めて二人だけで、ほぼ貸し切り状態でした。

Bボットはネット、写真、通話、テレビ、ゲームなどあらゆるデジタル機能を持ち、さらに乗り物にもなる便利なロボット型デバイスです。

バーニーはお母さんが亡くなっていて、お父さんとお祖母さんと暮らしていますが、二人ともかなり個性的な性格(特にばぁちゃんが)おそらくはそういう環境もあって友だちがいないバーニーはBボットを欲しがっています。バーニーのためにクラスの皆を招いて誕生会を開こうとした二人は、初めてバーニーの本当の願いに気付いてBボットを買おうとしますが、人気のため数か月待ちと言われます。困った二人は配送途中に転がってひび割れた商品をこっそり売ってもらい誕生祝として贈ります。だから不良品だったのね

喜んだのも束の間、ロンがオンラインにすら接続できない不良品と分かり、返品しようとしたバーニーですが、途中でいじめっ子のリッチをやっつけるロンを見て気が変わります。本来、Bボットは人間に危害を加えないよう設定されているのだけれど、ロンは「欠陥品」なので設定されてないのね バブル社は彼を廃棄処分しようとしますが、バーニーが助け出します。バーニーは親たちにも内緒でロンを匿い何も知らないロンに“友だちの条件”を説明して学習させていきます。

まだ学校に連れて行くには早いと考えたバーニーはロンを置いて登校しますが、ロンは町に出て「友達」を集めつつ学校に現れ騒動を巻き起こします。リッチがロンのデータを自分のBボットにコピーさせて安全制御装置を解除させたことでBボット同士が合体して巨大ロボットになって暴れる様子が動画で生配信され、バーニーの幼馴染のサヴァンナがウンチのように落とされたことで「ウンチガール」という不名誉な渾名を付けられ傷つきます。良いことより悪いことの方があっという間に広まり、一度流れたものは消えないデジタル社会の落とし穴ですね。ただ、物語の結末では「人の噂も・・」的解決も見られましたが

事態解決のためバブル社がロンを回収に来ますが、バーニーはロンを連れて森に隠れます。アンドリューは子供たちのBボットに搭載されているカメラを起動させ二人を探します。それはプライバシーを侵害する違法行為でもあります。実は純粋に子供たちの友達作りのために開発したバブル社のCEOのマークと違って、アンドリューはBボットで集めたデータを金儲けの道具として利用しようとしていたのね。いかにもあるあるな現実もさりげなく描かれていました。 バッテリー残量が少なくなったロンのため、暗闇の怖さに耐えるバーニーでしたが、喘息の持病が出て倒れてしまった彼をロンが連れ帰ります。ロンは一転、少年を助けたヒーローとして世界中に知られます。

マークが良かれと思って初期化したロンは、バーニーの友達のロンではなくなっていました。元に戻して欲しいと訴えるバーニーのため、本社地下のサーバーに保管されているバックアップデータを取りに向かったお父さん、おばあちゃん。マークも遠隔操作で協力します。マークが協力したのは、ロンとバーニーの関係性こそが自分の望んだ理想形だったからです。

ロンのデータを見つけて元に戻したバーニーですが、カメラに映る他の子供たちの様子が楽しそうではないことに気付きます。(学校での騒動の後、Bボットのプログラムも限定されていたのね。)ロンのプログラムをインストールすれば改善すると考えロンも賛成しますが、それはデータが断片化され、ロンが消えてしまうことでもありました。途中でそれに気付いたバーニーはロンを失いたくなくて止めようとしますが、みんなのBボットを良いものに変えるため、ロンとの別れを決断します。

バーニーはBボットを持っていないけれど、学校では大勢のBボットが彼を慕って集まってきます。幼馴染のリッチやサヴァンナとも友達になりました。(元々6歳の誕生日の騒動が無ければずっと友達だったかもしれないんだけどね)バーニーはロンを失いましたが、代わりに大勢の友人ができたのね

ロンのくるくる変わる表情や、バーニーのために彼なりに一生懸命な姿が愛らしかったです。

映画は友達作りすらデジタル機器任せな現代に警鐘を鳴らしているようにも感じました。


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ミッドナイトスワン

2021年10月24日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2020年9月25日公開 124分 G

故郷を離れ、新宿のニューハーフショークラブのステージに立つ、トランスジェンダーの凪沙(草彅剛)。ある日、凪沙は養育費目当てで、少女・一果(服部樹咲)を預かることになる。常に社会の片隅に追いやられてきた凪沙、実の親(水川あさみ)の育児放棄によって孤独の中で生きてきた一果。そんな2人にかつてなかった感情が芽生え始める(映画.comより)

 

トランスジェンダーの主人公と親の愛情を知らない少女の擬似親子的な愛の姿を描いた、内田英治監督オリジナル脚本によるドラマです。第44回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞、ツヨポンも最優秀主演男優賞を受賞しています。

凪沙は男性として生まれたけれど、性別違和のため、女性の姿で暮らしています。親にはカミングアウトできずにいて、親からの電話には男として話していました。姉の娘で中学生の一果は叔父の筈の凪沙の姿を見て戸惑い、そんな一果を邪険に扱う凪沙。うまくいくんかい?と思ってしまいますね。

一果の母の早織は、水商売で娘を養っていましたが、生活は乱れていて部屋は散らかり、苛々を娘にぶつける毎日で、一果は自傷行為を繰り返すようになっていて、心配した祖母である母親が凪沙に面倒を見るよう依頼した経緯があります。当初は周囲に心を閉ざしていた一果ですが、凪沙のチュチュ(ショーの衣装)に興味を示します。(彼女は広島でバレエを習っていたようです)

近所のバレエ教室を覗き見して先生(真飛聖)から声を掛けられ教室体験した際、一果に古いバレエシューズをくれたりん(上野鈴華)が、後日同じ中学とわかり友人になります。(彼女には裕福な両親がいて、プリマを目指していますが、父親は浮気をしていて家庭は円満とは言えないようです。境遇の異なる二人が惹かれ合ったのは互いの孤独を感じ共有していたからかも)教室の月謝を工面するため、りんに誘われ違法バイトをしますが、客とトラブルを起こして凪沙にバイトやバレエ教室のことがバレてしまいます。りんの母親に家族を中傷され自傷に走る一果を気遣って店に一緒に連れていった凪沙は、そこで一果のバレエダンサーとしての才能を目の当たりにして「バレエを続けさせてやりたい」と思うようになります。次第に一果が実の娘のように思えてくる一方、一果も凪沙の理解者になっていくんですね。性転換手術のための貯金をバレエ教室の費用として切り崩し、「一果の“母親”になりたい」という思いからタイで性転換手術を受けて「“娘”の一果を引き取る」ために実家を訪れますが、実母や早織から心ない言葉をぶつけられ拒絶されて一果とも引き離されてしまいます。

やがて、中学を卒業した一果(早織にそれまでは会わない約束をさせられていたようです)は凪沙と再会しますが、彼女は心身共に衰弱しきっていました。一果から引き離されて生きる希望を失った凪沙は、手術後のアフターケアを疎かにしていて後遺症が出ていたのです。その結果、介護オムツが必要なほどに体は衰弱し、飼っていた水槽の金魚が生きているのかもわからない程、視力も低下し意識も混濁していました。(このシーンは本当に哀しく切なかったです。)ホルモンバランスの崩れからくる鬱もあったのかもしれません。そもそもアフターケアにもお金がかかるけれど、凪沙にはその費用を捻出することも難しかったようです。

海が見たい(自分の性に違和感を持った最初の場面として海水浴の水着の回想シーンが登場していました)と言う凪沙を連れて海岸を訪れ、請われるままに海辺でダンスを踊る一果と、彼女のコンクールでの踊りが重なります。怪我でバレエの夢が挫折したりんはコンクールの直前、一果に電話した後自殺するのですが、映画の中で彼女の死は多く語られません。でもラストのダンスシーンでリンクしてくるのね 視力の衰えた凪沙が一果の姿を捉えられていたのかはわかりませんが、それでも「娘」の成長した姿は脳裏に深く刻まれ、その最期の瞬間は確かに幸せだったのではないかと思ってしまいました。


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るろうに剣心 最終章 The Final

2021年10月22日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年4月23日公開 138分 G

かつて人斬り抜刀斎として恐れられ、激動の幕末を刀一本で戦い抜いた男、緋村剣心(佐藤健)。新時代を迎え、二度と人を殺さないと誓う。斬れない逆刃刀に持ち替え、日本転覆を狙った志々雄真実をはじめ数々の敵との戦いを乗り越えた今は、仲間たちと平穏な日々を送っていたー。
ある日、東京が何者かに攻撃され、次々と大切な人々が襲われた剣心は、次第に追い詰められていく。憔悴しきった彼の前に現れたのは、あの志々雄に武器や軍艦を送り込んでいた上海マフィアの頭目・雪代縁(新田真剣佑)。剣心の十字傷の謎を知る彼こそが、剣心自らが生み出してしまった最恐最悪の敵だった。剣心に強烈な恨みを持ち、剣心だけではなく剣心が作った新時代をも破壊するため人誅を仕掛けてくる!全てを悟った剣心は「自分のせいでござる」と、薫や仲間達を集め自分の過去を語り始める。かつて結婚していたこと、そして自らの手で妻を斬殺したこと。今まで語られることのなかった衝撃の過去に仲間たちはショックを受ける。
その矢先、遂に縁による東京への総攻撃が開始され、一瞬で修羅場と化す。そして縁の復讐の刃は神谷道場の仲間たちにも容赦なく向けられていくー。逃れられない運命を背負い、愛する者のため全てをかけて立ち向かう、究極の戦いが始まる。(公式HPより)

 

和月伸宏のコミックを佐藤健主演&大友啓史監督で実写映画化したシリーズ「るろうに剣心」の完結編2部作の第1弾です。原作の「人誅編」をベースに、剣心の十字傷の謎を知る上海マフィアの頭目・縁との戦いが描かれます。

先に「The Beginning」を観たので、十字傷の謎も、剣心が不殺の誓いを立てる理由となった剣心の妻・雪代巴(有村架純)のことも知った上での鑑賞ですが、観る順番は正解だったかな~!こちらが先だと、やっぱり多少の疑問を抱えながら観ることになりそうだものね。そもそも斬殺といっても、あれは故意じゃないしな~~とか

縁君ってば、思いっきりシスコンでちょっと引いてしまうぞ。そしてその復讐の刃は罪なき人々の上に無情に振り下ろされるのだからたまったものではない あ、刃というか砲弾・炎ですが あそこまで破壊することないでしょ

そして、延々続く死闘と、どんだけ不死身だよ!!な左之助(青木崇高)にもびっくりです お前はゾンビか!

正直戦いは苦手なのよね~。

お馴染みのメンバー、神谷薫(武井咲)、高荷恵(蒼井優)、斎藤一(江口洋介)も引き続き登場しますし、相変わらず薫は攫われてます

 四乃森蒼紫(伊勢谷友介)、巻町操(土屋太鳳)、瀬田宗次郎(神木隆之介)など懐かしキャラも再登場して盛り上げてくれます。(かつての敵が味方になるという展開はヒーローものでよくあるね

アクションは申し分なく、剣技好きにはたまらん作品だと思いますが、個人的には「The Beginning」の方が好きかも。

それにしても事の発端は窪田君演じる清里明良を殺害したことなので、シリーズ通して清里の存在感はんぱね~~な!


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キャッシュトラック

2021年10月18日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2021年10月8日公開 アメリカ=イギリス 118分 G

LAにある現金輸送専門の武装警備会社フォーティコ・セキュリティ社。日々、百貨店やカジノ、銀行などあらゆる場所から集められた現金を積んだ現金輸送車(キャッシュトラック)を運転するのは、特殊な訓練を受け厳しい試験をくぐり抜けた強者の警備員たち。ヨーロッパの別の警備会社の倒産で職を失くし、フォーティコに雇われた新人パトリック・ヒル(ジェイソン・ステイサム)、通称“H”。同僚の“ブレット”(ホルト・マッキャラニー)の指導のもと、試験をぎりぎりで合格した彼は周りから特に気に留められる存在ではなかった。しかし、ある日彼の乗ったトラックが強盗に襲われ仲間が人質に取られた時、驚くほど高い戦闘スキルでそれを阻止する。Hによって皆殺しにされた強盗への過剰防衛を疑うFBIも捜査に動くが、フォーティコの社長は仲間と現金を守り切った彼を英雄扱いする。Hはフォーティコでの地位を徐々に確立していくが、その数カ月後、新たな強盗によってHの乗るトラックがまた襲われる。しかし、今回は彼の顔を見た犯人たちがなぜか金も奪わずに逃げ出してしまった。同僚のブレット(ホルト・マッキャラニー)やデイヴ(ジョシュ・ハートネット)は彼が一体何者なのかを疑い始め、Hの周囲は疑心暗鬼に陥る。そんな中、感謝祭の次の金曜日、全米で最も現金が動く日とも称される“ブラック・フライデー”にフォーティコ社に集められる約1億8,000万ドルの大金を狙った緻密な強奪計画が、静かに進行していた…(公式HPより)

 

ガイ・リッチー監督による2003年製作のフランス映画「ブルー・レクイエム」をリメイクしたクライムアクション作品です。

監督らしいスタイリッシュで派手な銃撃戦が目を引きます。戦い自体は好きじゃないけど、ジェイソン・ステイサムが好きなんだわ~~

今回も目的のために手段を選ばない謎多き寡黙な男を魅せてくれました。

映画の予告では、彼が強盗計画に関係しているように印象付けていましたが、実際は全く違って、息子を殺された復讐というごくごく個人的なお話でした 少し前にDVDで観たキアヌ・リーブスの「ジョン・ウィック」は愛犬の復讐だったけど、裏稼業の男の復讐心は侮りがたい迫力と執念深さがありますね。

Hの素性は裏稼業のボス。ちょっと寄り道したばかりに最愛の一人息子が強盗現場で巻き添えになり、自身も瀕死の重傷を負います。息子を殺した強盗犯を突き止めるため、容疑者をリストアップして片っ端から問い詰めますが、犯人に辿り着けません。警備会社の内部に手引きした者がいると睨み、自身が潜入するんですね~~。時間が行ったり来たりする中で、Hの動機が明かされていく構成でした。

担当を外された警備員に銃器やゲートの管理者など、怪しげに見せる手法は定法ですが、敵はなかなか尻尾を出しません。予告に出てくるHの顔を見て逃げ出す強盗犯たちは、実は彼の部下という・・・そりゃ~ボスだとわかったら手を引くわな

警備員仲間のデイナ(ニーヴ・アルガー)とベッドインもするけど、彼女を疑ってのHなりの「捜査」なのね

男ばかりの警備員の中で唯一の女性ですが、ヒロインとまではいかず、結局脇役でしたね

ブラック・フライデー当日、やっと内部の裏切り者が判明します。Hは辛抱強く「犯人」の登場を待ちます。顔に傷があるので観る側もわかりやすいという 縛られていたHの反撃はまさにプロですが、銃撃戦で撃たれてしまってどうなるの?と思わせて、最後に憎き犯人を処刑する痛快な結末です。FBIもHの正体を知りながら泳がせるというか、半ば協力しているのは互いの利益が一致していたからね

アクションは銃撃がメインですが、華麗な銃さばきは流石のステイサム様 


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ターミネーター ニュー・フェイト

2021年10月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年11月8日公開 アメリカ 129分 PG12

人類滅亡の日である「審判の日」は回避されたが、まだ危機は去っていなかった。メキシコシティで父と弟とごく普通の生活を送っていた21歳の女性ダニー(ナタリア・レイエス)のもとに、未来から最新型ターミネーター「REV-9」が現れ、彼女の命を狙う。一方、同じく未来からやってきたという女性戦士グレース(マッケンジー・デイビス)が、ダニーを守るためにREV-9と壮絶な戦いを繰り広げる。何度倒しても立ち上がってくるREV-9にダニーとグレースは追いつめられるが、そこへ、かつて人類を滅亡の未来から救ったサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)が現れる。(映画.comより)

 

「ターミネーター」シリーズ6作目で、「ターミネーター2」の正当な続編の位置づけだそう。ジェームス・キャメロンがプロデューサーとなり、監督はティム・ミラーです。

シリーズは最初の二作くらいしか観てないかも。

冒頭で、サラの息子のジョンがT-800に殺されるシーンが登場。え?それじゃ話が始まらないじゃん!

これはジョンのいない、異なる時間軸の世界のお話で、敵は「スカイネット」ではなく「リージョン」という機械軍団なのです。

場面は変わり、父と弟と暮らすダニー登場。そこへ新型ターミネーターREV-9がダニー抹殺に現れ、同時に彼女を守るためにグレースがやってきます。

倒しても倒しても復活するREV-9(合体と分離を繰り返す液体金属型兵器)の前に窮地に立たされた二人を救ったのはサラですが、グレースは彼女を信用せず、彼女の車を奪いダニーを連れて逃走します。でも途中で意識を失ってしまうの。グレースはターミネーターを倒すために志願して肉体を強化していますが、激しい新陳代謝を伴い体力を消耗するという欠点があったのね。薬局で必要な薬を入手しようとする二人の前に再びサラが現れ助けます。

隠れ家でサラは二人にジョンが殺された後、謎の人物から送られてくる座標を元にターミネーターを破壊してきたことを話します。三人はその人物の居場所を突き止め向かいますが、現れたのはT-800:カール(アーノルド・シュワルツェネッガー)でした。

今作ではサラはT-800への復讐心に燃えていますが、彼の方はカールと名乗り家族もいて、自分のしたことを後悔しています。だからこそ陰ながらサラに協力していたということらしい。

グレースは、未来でダニーに助けられたことも明かされます。彼女を送り込んだ「リーダー」こそがダニーなんですね。

REV-9を倒す唯一の武器は電磁パルス(EMP)で、サラは旧知のディーン少佐に頼んで入手しますが、追ってきたREV-9との戦いの中で被弾し使えなくなります。終わりがないかのような激しい戦いの末、戦闘不能になったグレースが自らの体内に埋め込まれた動力源を使ってREV-9を倒すようダニーを説得、瀕死のカールが自らを道連れにREV-9を破壊溶鉱炉跡へ落下し両者とも絶命します。

数日後、公園で遊ぶ幼いグレイスを眺めながら、「二度とあなたを殺さない」と誓って、サラと共に去っていくダニーなのでした。

制作時はトランプ政権下にあり、物語がメキシコから始まているのは、移民抑制を推進する政権への批判の意味もあるようです。人間対殺戮マシーンの構図も、人類が人種を超えて手を結んで戦う必要性を強く意識していて、幼いグレースを無法者から助ける際にダニーが「私たちを争わせて滅ぼす事が奴らの目的だ」と言って団結を呼びかけるシーンが象徴的でした。


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泣く子はいねぇが

2021年10月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2020年11月20日公開 108分 G

秋田県・男鹿半島で暮らす、たすく(仲野太賀)に娘が誕生した。たすくが喜ぶ中、妻のことね(吉岡里帆)は子どもじみていて父になる覚悟が定まらない夫に苛立ちを募らせていた。大晦日の夜、たすくは妻に「酒を飲まずに早く帰る」と約束し、地元の伝統行事「ナマハゲ」に例年通り参加する。しかし、酒を断ることができずに泥酔したたすくは、溜め込んだ日頃の鬱憤を晴らすかのように「ナマハゲ」の面を付けたまま全裸で街へと走り出し、その姿がテレビで全国に放送されてしまう。ことねに愛想を尽かされ、地元にもいられなくなったたすくは逃げるように東京へと向かう。それから2年、東京にも居場所を見いだせないたすくは、くすぶった生活を送っていた。そんなある日、親友の志波(寛一郎)からことねの近況を聞き、ことねと娘に会いたいという思いが強くなり、ようやく自らの愚行と向き合い、地元に戻る決意をする。だが、現実はそう容易いものではなかった…。

 

佐藤快磨監督の長編劇場デビュー作で、是枝裕和監督率いる映像制作者集団「分福」が企画協力しています。親になることから逃げた青年が不器用ながらも成長する姿が描かれ、舞台となった秋田は監督の地元だそうで、男鹿の「ナマハゲ」が物語の核にもなっていました。余貴美子や柳葉敏郎など脇を固める俳優陣も良い味出してますギバちゃんは秋田出身だけど角館で男鹿じゃないけどね

娘の誕生を喜びながらも、父親としての自覚の足りないたすくをことねは前々から危惧していたことが伝わる冒頭部。全裸事件で夫婦の亀裂は決定的なものになります。彼の仕出かしたことへの影響は大きく地元にいられなくなるのもわかりますが、ことねから三行半を突きつけられ、結局は責任を取ることもせず一人で逃げ出したわけですね。

そんな男が東京で上手くいくはずもなく、鬱々とした毎日を過ごし、郷里のことは忘れようとしていたところに、志波からことねの近況を聞くと、ふらふらと戻ってきてしまいます。実家に転がり込んできた息子を、母(余貴美子)は泰然と受け入れ、仕事を手伝わせます ババヘラアイスは秋田の人なら誰でも知っていますが、これを販売するのは中高年の女性たちで、たすくは彼女たちを道路際に落としていく移動車の運転をさせられるの  

志波から、ことねが川反(秋田市内の繁華街です)で働いている=水商売をしていると聞いたたすくは会いにいきますが、「再婚するから」と拒否されます。キャバ嬢役で古川琴音も出てました ことねにとって、たすくはもう過去の人であり、助けを必要としていなかったのですが、彼は勝手に自分が何とかしなきゃと思い込んでしまいます。

事件のせいで「ナマハゲ存続の会」の活動自体が危機に陥っている会長の夏井(柳葉敏郎)の怒りは大きく、鬼の面を作ったたすくの父親の気持ちを考えたことがあるかと問いますが、何も答えられません。ナマハゲ行事は、今や観光面ばかりがクローズアップされていますが、子供の成長を願う親の気持ちが根底にあるのですね。

志波はサザエやウニの密漁をしているようで、ことねとよりを戻すためにお金を稼ぎたいたすくも手伝います。志波は所謂悪友だけど、根は良い奴に見えます。フットサルのシーンが登場しますが、志波がソックスを履きながらたすくと会話するシーンがなんか、良いかったです。

結局ことねの意志は変わらず、娘の凪が通う保育園の発表会をこっそり見に行っても、どれが我が子かわかるはずもない情けないたすくが唯一出来ること、それは父親の形見のナマハゲの面を被って、大晦日に凪に会いに行くことでした。凪を抱くことねの再婚相手の前で、「なぐ子はいねが~!」と叫び続けるたすくの思いをこの時ことねは受け止め彼を家に入れます。が・・・迫力あり過ぎだよ~!!あれではトラウマになってしまいそうな迫力で、ちょっと引いてしまいました。一方で父としてではなく、元妻の再婚相手に娘を託すための一種の儀式にも見えてきます。

現実は甘くない!覆水盆に返らずですが、それでも父として娘に初めて贈った彼なりの親心が伝わってくるラストでした。 同時に逃げ続けた過去と向き合い新たな一歩を踏み出そうとするかのような姿に彼の成長を感じることもできるかな


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キネマの神様

2021年10月16日 | 

原田マハ(著) 文藝春秋(発行)

無職の娘とダメな父。ふたりに奇跡が舞い降りた! 39歳独身の歩は突然会社を辞めるが、折しも趣味は映画とギャンブルという父が倒れ、しかも多額の借金が発覚した。 ある日、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに歩は編集部に採用され、ひょんなことから父の映画ブログをスタートさせることになった。〈ゴウ〉のハンドルネームで父が書くコラムは思いがけず好評を博し、借金とギャンブル依存から抜け出せそうになるが、ある時〈ローズ・バッド〉を名乗る覗の人物に反論されて……。 〝映画の神様〟が壊れかけた家族を救う、奇跡の物語。(アマゾン内容紹介より)

 

映画も公開されているがそちらは未見。映画好きなら絶対気に入ると薦められて借りた一冊です。

21世紀になってから本格的に映画にはまったのですが、本に登場する作品名や俳優名はどれもこれも聞いたことがある、観た事があるものばかりで、親近感が湧きぐいぐい話に引き込まれました。とはいえ、基本的にはシネコンしか行かないので、本当の意味での映画ファンとはおこがましくてとても言えないのですが

名画座と呼ばれる小さな劇場でのオールナイト興行で、大好きな俳優の3本立てを友人たちと観たことや、遥か昔、小学校の行事として年に一度か二度、近所の映画館で忍者の出てくる時代劇などを観たこと、中学校の体育館で上映された半魚人が出てくる作品や「サイボーグ009」を観た記憶が鮮やかに蘇ってきました。そういえば、当時は一人ではなく、友人や家族など複数で行ったっけ。いつから一人で鑑賞するようになったかと思い返せば、やはりシネコンが出来てからかなぁ。近くて便利で複数上映している中から、好きな作品を都合の良い時間帯で楽しめる、これはシネコンの最大の恩恵です。それでも、記憶に鮮明に残っているのは、昔誰かと一緒に観た映画の方だったりするんですね この本はそういう心の奥に眠っていた郷愁を呼び覚ましてくれました。

ギャンブル依存症の父親に振り回されてきた母と歩。借金が発覚するたび、本人ではなく母が肩代わりしてきたことが逆に作用して負の連鎖を断ち切れずにいた家族ですが、父の手術・入院を機に意識の変化が生じます。同時期、歩が謂れのない中傷から左遷されそうになり自分から会社を辞めたこともきっかけになっていました。父の影響で映画好きになった歩が、シネコン誘致建設に向けて頑張ってきたことが、後に父の親友テラシンの名画座廃業の危機を呼んでしまうのは皮肉なことですが、現代映画業界の一端を垣間見ているようでもあります。

失業した歩の就職活動は難航していましたが、父の入院の留守を引き受けた際に見つけた業務日記(中身は殆ど映画の感想)に刺激されて書いた自分の文章を父が映画の交流サイトに投稿したことがきっかけで、「映友社」のライターとして働くことになります。父がゴウというハンドルネームで寄せた映画評論が評判となり、ブログを開設したいと言われた歩は、初めはダメ親父に務まる筈がないと反対しますが、同僚の協力を得て始めてみることにします。

「キネマの神様」と名付けたサイトは、ゴウがキネマの神様に映画鑑賞の報告をする形で、その第一号に取り上げたのは、『フィールド・オブ・ドリームス』でした。これ、名前は聞いたことがあるけどまだ観てないなぁ。これが予想外に評判となったことで、歩の元部下で駆け落ち同然に結婚してアメリカに移住した清音の協力で海外版も作られ、日本版の10倍のPV数を叩き出すのですが、そこにローズ・バット(1941年公開「市民ケーン」・・これも未見・・に出てくるキーワード)を名乗る人物が現れゴウを挑発するようなコメントを寄せます。圧倒的かつ的確で辛辣なその評論にサイトは盛り上がり、ゴウとの対決が期待されるようになります。

父の性格から、叩かれれば逃げるのではと危惧する歩でしたが、父を良く知るテアトル銀幕のテラシンの予想通り、彼は逆に発奮して挑戦を受けて立ちます。ゴウとローズ・バットの間で映画論争が繰り広げられ、その数は20作品を超え、ますます映画ファンからの注目が集まるようになります。

一つの作品をどう解釈するか、それは個人個人の判断に任せられるべきですが、二人のやり取りを読んでいると「あぁ、そういう見方もあるのか」「監督はこういう気持ちで作っていたのかも」と自分では思いつかなかった発見があり、その作品に更なる深みを感じてしまいます。

ゴウが「映画好きのただの爺さん」として人間のささやかな幸福や登場人物の切ない心情に焦点を当てて映画の良さを取り上げるのに対し、ローズ・バットはそれを容赦なく叩いて監督の心理や脚本に潜む闇の部分を暴こうとします。とても素人とは思えないローズ・バットは、ゴウをおちょくっているようで、どこか導いているようにも感じた歩。その判断は正しかったことが後に判明します。

歩の元いた会社のシネコンがテラシンの劇場のすぐ近くに建設されると知り、大手相手では客を奪われ立ちいかなくなると考えた彼は廃業を決意します。自分が打ち込んできたことが思わぬ方向に影響を与えたことを知り悩む歩は、名画座との共存を元部下に提言するのですが、冷たくあしらわれてしまいます。(この川野辺という男の人物描写が実に嫌らしいんですね

親友を助けたいゴウはローズ・バットに相談という形のメールを送ります。暫く音沙汰がなかったのですが、ある日清音から連絡が入り、彼が世界的に高名な映画評論家のリチャード・キャパネルであり、これまた有名なTV番組で対談中に自分がローズ・バットであることを明かし名画座について言及したことを知ります。時代の先端を行くシネコンと映画人の思いを大切にする名画座との共存を望む彼の発言の影響は大きく、テラシンは名画座の存続を決めます。まさに一人映画好きの老人の一言が状況を変えたわけです。

経営不振にあった映友社は、ブログ効果で大映画会社からの資金提供の話に色めき立っていましたが、ゴウのメールの件で手を引かれます。しかしローズ・バットの正体が明かされ、世間の風向きが変わると手のひら返してくるのね。これを毅然と断った編集長の高峰女史の映画ファンの言論の自由を守りたいという思いにです。

ゴウとローズ・バット=リチャード・キャパネルの間には映画が結んだ強い友情が育まれていました。それからも二人のやり取りは続きましたが、やがてキャパネルが癌に冒された身であり、病床から会いたいというメールが送られてきます。急ぎ渡米の支度をするも、間に合わず彼は逝ってしまいます。以後、ゴウは外にも出ず名画座にも行かず引き籠っていましたが、ある日テラシンの招待で特別上映が催され一同が名画座に集まるの。

翻訳を担当してくれてい興太た清音と彼女の父の姿もあります。清音が渡米する前に歩と交わした約束、一番好きな映画を一番好きな映画館で観るという約束がこの夜実現したのです。

高峰の一人息子・興太は、父親の自殺にショックを受けて以後引き籠りになっていましたが、ゴウの出現が彼に良い影響を与えます。ブログ開設に尽力し、徐々に外に出るようになり、テラシンの名画座にも通うようになり、見事社会復帰するんですね。 母としては、何より嬉しい息子の変化。映画に対する情熱もですが、こちらも胸が熱くなりました。

そしてこの夜上映されたのは『ニュー・シネマ・パラダイス』これこそが父やキャパネル、そして歩が一番好きな映画です。まさに古き良き映画を愛する人たちのための作品に違いありません。 

物語には、歩が退職し父が手術した春、一年後、二年後の春が登場します。大きく変化していくそれぞれの春にそれぞれの人生を重ね合わせるかのように感じました

公開中の映画は、配役から想像すると若い頃のゴウとテラシンが描かれているようで、本とは話の軸が異なるようで別物として観た方が良さそうですね どちらかというと、『蒲田行進曲』を連想してしまいますが・・・ 


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DUNE デューン 砂の惑星

2021年10月15日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2021年10月15日公開 アメリカ 155分 G

人類が地球以外の惑星に移住し、宇宙帝国を築いていた西暦1万190年、1つの惑星を1つの大領家が治める厳格な身分制度が敷かれる中、レト・アトレイデス公爵(オスカー・アイザック)は通称デューンと呼ばれる砂漠の惑星アラキスを治めることになった。アラキスは抗老化作用を持つ香料メランジの唯一の生産地であるため、アトレイデス家に莫大な利益をもたらすはずだった。しかし、デューンに乗り込んだレト公爵を待っていたのはメランジの採掘権を持つハルコンネン家と皇帝が結託した陰謀だった。やがてレト公爵は殺され、妻のジェシカ(レベッカ・ファーガソン)と息子のポール(ティモシー・シャラメ)も命を狙われることなる。(映画.comより)

 

フランク・ハーバートのSF小説を原作に、1984年のデビッド・リンチ監督の『デューン/砂の惑星』や2000年のテレビシリーズに続く通算5度目の映像化作品で今回はドゥニ・ビルヌーブ監督によるSFスペクタクルアドベンチャーになっています。今作では原作小説の前半部分のみを映像化していて、続編で後半部分を映像化する二部作構想だとか。前半だけでも二時間半だものね~これを一本にまとめるのは無理ってことですね。

原作はスピルバーグの『スター・ウォーズ』や宮崎駿の『風の谷のナウシカ』にも影響を与えたと言われるだけあって、スペース・スラッグやオームを思い浮かべるとなるほどな~!と

メランジはアラキスに生息する巨大ミミズのような砂虫(サンドワーム)により産出されているスパイスで、抗老化作用の他、意識を拡張して様々な超能力を引き出す力があります。アラキスでしか作られないこのスパイスは、超光速輸送を支えるギルドのナビゲート能力や、ベネ・ゲセリットの特異な心身能力の源でもあり、これを手中に収める者は莫大な富と権力を持つことになるのね。またメランジに長期に曝されると眼球が深青に染まるので、原住民であるフレメンたちの目の色も青です。砂虫は砂の中に生息していて、振動に反応して全てを飲み込んでしまいます。その描写も迫力がありました。 砂虫はメランジだけではなく生命の水をも生み出すのですが、本編では多くを語ってはいませんのでこれは後編で明かされるのかな。

ポールの母のジェシカは正確には妻ではなく愛妾(正式な結婚をしていない)で、ベネ・ゲセリット出身。心身統御術を習得し特異な戦闘と生存の能力を持つ女性です。そもそもベネ・ゲセリットの目的は父母系双方の先祖の記憶=人類の記憶を保持して未来を予視できる超能力者(クイサッツ・ハデラッハ)を生み出すことらしい ジェシカの師である教母は、ポールをゴム・ジャッバール(致死の毒)を用いてテストしますが、彼をコントロールすることには失敗するんですね。この婆さま、威厳があるというか冷酷そうというか・・・恐っ!

ポールは一見ひ弱な貴族のお坊ちゃんに見えますが、ガーニイ(ジョシュ・ブローリン)、ダンカン(ジェイソン・モモア)から戦い方を、母からはベネ・ゲセリット流の心身統御術を学んでいます。危機に陥った時に見せる戦闘能力は日ごろの鍛錬の賜物というわけね。

アトレイデス家の繁栄を危惧した皇帝が、ハルコンネン家を唆して争わせ、両家の力を削ごうとする計略に気付きながらも敢えてアラキス移住の命を受け入れたレト侯爵の真の目的はフレメンと手を結ぶことでしたが、その前にハルコンネン男爵(ステラン・スカルスガルド)の策にはまって命を落としてしまいます。侍医が妻を人質に取られて裏切ったからですが、彼は侯爵に復讐の機会を与えるんですね。それでもしぶとく生き残る男爵はその外見もとても醜い 過度の肥満で自分の重さを支えられずに重力中和技術を用いている設定ですが、宙に浮くその姿に「SW」のガマ・・もとい、ジャバ・ザ・ハットを連想してしまいました。というか、ジャバの方が後なんですけどね アトレイデ家とは長年にわたる宿敵関係ですが、ハルコンネン一族は残虐非道で知られ、策略に秀で利己的で計算高いのね。まさに悪役としてこれ以上ないキャラです。対するアトレイデス家は高潔で知られる一族ということで、予想通り不意を突かれ一夜で滅ぼされてしまうのでした。

アラキスの砂漠に逃れたジェシカとポールがフレメンたちの居住区に辿り着いてリーダーのスティルガー(ハビエル・バルデム)に受け入れられ、ポールが何度も見た夢に出てくるチャニ(ゼンデイヤ)と出会うところで今回は終わりとなります。

最後にサンドワームに乗り操るシーンがチラッと登場したのを観て、確か過去の作品でも見たような記憶が蘇りました。

劇場に置いてあったチラシの「はじめてのDUNE」という漫画でわかりやすくストーリーを紹介しているのですが、そのゆるさ加減が絶妙で噴き出してしまいました


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ヘラクレス

2021年10月10日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2014年10月24日公開 アメリカ 99分 G

2021年10月7日放送 午後ロード

全能の神ゼウスと人間アルクメネの間に生まれたヘラクレス(ドウェイン・ジョンソン)が、自身の出自や犯した罪にさいなまれ、救いを求めて旅に出る姿や、不死身の獅子や地獄の番犬ケルベロスといった魔物たちとの戦いを通し、いかにして英雄となっていったのかを、迫力のアクション満載に描き出す。(映画.comより)

 

ギリシャ神話の英雄ヘラクレスを描いたスティーブ・ムーアのグラフィックノベルを、ドウェイン・ジョンソン主演で映画化したアクション大作。監督はブレット・ラトナー。

海賊に捕まったイオラオス(リース・リッチー)が、ヘラクレスの伝説を語る冒頭。ゼウスと人間の女の間に生まれたヘラクレスは、ゼウスの妻ヘラの怒りに触れ殺されそうになりますが、難を逃れます。成長すると神々に12の難行(ネメアーの獅子、レルネーの水蛇、鹿や猪や牡牛、アマゾネスの腰帯などなど)を命じられ、全てを終えればヘラも許すというので次々とその難行をこなしていきます。この難行シーンはちょっとB級色はありますがファンタジーっぽく出来ていました。

ただの神話と馬鹿にする海賊たちの前にヘラクレスと仲間たちが現れ、海賊たちは退治されます。彼のパワーは確かに超人的ですが、実はイオラオスが語った話は敵を怯ませる為のもので、ヘラクレスは報酬目当ての傭兵だということが早々に明かされます。人間ヘラクレスのお話なのね。 

ある日、コテュス王(ジョン・ハート)の娘メガラ(イリーナ・シェイク)が助けを求めてヘラクレスの元を訪れ、多額の報酬目当てに引き受けた一行はトラキアへ向かいます。敵のレーソス(トビアス・サンテルマン)に苦戦して兵を失い、戦えるのは農民しかいない状態を見兼ねて、ヘラクレスたちは彼らを兵士に鍛えようとしますが、訓練途中での出兵で、レイソス軍の罠にはまり、兵の半数を失ってしまいます。 この時点で戦を急ぎ兵を無駄死にさせた王の態度に疑念が生じますね。 

妻メガラ(イリーナ・シェイク)や子どもたちを彼自身が殺害する悪夢にうなされるヘラクレスを心配するユージニアに、アウトリュコス(ルーファス・シーウェル)は、ヘラクレスはアテネで王達から危険な任務を幼馴染である自分と遂行するなかで、今の仲間たちに出会ったと話します。スキタイではアタランテ(イングリッド・ボルゾ・ベルダル)と共に戦い、テーベではテュデウス(アクセル・ヘニー)を保護し育て、アルゴスの預言者アムピアラオス(イアン・マクシェーン)も加わり、その活躍を甥のイオラオスに伝説として語らせたのですが、仲間たちもそれ以上の真相はわからないのです。

その後、残った農民兵を鍛え上げたヘラクレスたちは、見事勝利してレイソスを捕虜にしますが、彼から暴君はコテュス王の方だと聞かされます。騙したのかと詰め寄るヘラクレスにユージニアは息子のアリウス王子 (アイザック・アンドリュース)を守るためだったと言います。

真実を知ったヘラクレスはトラキアを暴君から救おうとアウトリュコス(彼だけは拒否して報酬と共に去っていきます)を除いた仲間と城に乗り込んだものの、待ち構えていた王に捕らえられてしまいます。そこにアテネのエウリュステウス王(ジョセフ・ファインズ)が現れて、ヘラクレスの家族を殺したのは自分だと言い放ちます。王は国民に人気がある彼に嫉妬し、王座を奪われるのではと疑ったのです。

絶望するヘラクレスをアムピアラオスが鼓舞し、人間離れした怪力で戒めを引きちぎったヘラクレスは、エウリュステウス王を倒して妻子の復讐を果たします。(ヘラクレスの妻子を嚙み殺した王の3頭の飼い犬をケルベロスの番犬に例えていました)王子を楯にしたコテュス王は、トラキア軍にヘラクレスたちを殺させようとしますが、アウトリュコスが助けに戻ってきます。しかし王子を守ろうとしたテュデウスが殺されてしまいます。追い詰められたヘラクレスは、女神ヘラの巨大な像の台座を破壊し、崩壊する像の頭部に弾き飛ばされた王は転落死。その雄姿に兵士たちはヘラクレスの名を叫んで讃えるのでした。

神話の物語に登場する伝説を人間同士の戦いに置き換えているのが新しいかな。レイソスがケンタウロスの兵を率いているという噂が実は騎馬兵だったり、レルネーの水蛇は蛇の頭を被った人間だったりね 魔物より恐ろしいのは権力に取り憑かれた人間ってのもまさに真実ですね。

でもなんといってもドウェイン・ジョンソンの長髪&獅子頭がインパクト大でした


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マルモイ ことばあつめ

2021年10月09日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年製作 韓国 135分 G

1940年代・京城(日本統治時代の韓国・ソウルの呼称)― 盗みなどで生計をたてていたお調子者のパンス(ユ・へジン)は、ある日、息子の授業料を払うためにジョンファン(ユン・ゲサン)のバッグを盗む。ジョンファンは親日派の父親を持つ裕福な家庭の息子でしたが、彼は父に秘密で、失われていく朝鮮語(韓国語)を守るために朝鮮語の辞書を作ろうと各地の方言などあらゆることばを集めていました。日本統治下の朝鮮半島では、自分たちの言語から日本語を話すことへ、名前すらも日本式となっていく時代だったのです。その一方で、パンスはそもそも学校に通ったことがなく、母国語である朝鮮語の読み方や書き方すら知らない。パンスは盗んだバッグをめぐってジョンファンと出会い、そしてジョンファンの辞書作りを通して、自分の話す母国の言葉の大切さを知り・・・・。(公式HPより)

 

1940年代の日本統治下の朝鮮半島で言語が朝鮮語から日本語に変わり、名前も日本式となっていく中、母国語を遺したい思いで全国の言葉・方言を集めた「マルモイ(ことばあつめ)作戦」の史実をベースに描いたドラマです。演者に日本人がいなかったようで、日本語がいささか拙かったのは残念ですが、弾圧の暴力シーンを同輩が演じるのを見るのも何だか辛い気もするので、ま、いっか 

それにしても当時の日本の植民地政策の何と傲慢だったことか やった方は忘れていてもやられた方は代が変わっても忘れることはできないだろうと今更ながら思わされます。 私たちは歴史教育の中で、あまりにも知らされず知ろうとしなかったことが多いと感じます。それは本当は受け身のままでなく自ら知ろうとしなければいけないことなのに、どこか他人事として触れずにいようとしているのです。でも、どんな理由でも他国によって自国の言語が奪われるようなことはあってはならないと強く思います。書物や文化を狩ることは国が滅ぶ兆しであり、それを黙認することは自らの自由を手放すということでもあるのですから。

リュ・ジョンファンは、民族の精神である言葉を守ることが国を守る道であると信じる知識人。彼の信念は昔父から教わったことでもありましたが、その父は名門中学の理事長でありながら親日派として知られていました。父に反発し留学したリュでしたが、帰国して日本化政策が進む現状を憂い、ハングル書籍の書房を運営し、秘密裏に全国の朝鮮語を集め辞典を作ろうとしていました。

一方のパンスは名門中学校に通うドクジンと幼いスンヒを育てる前科のある男やもめ。非識字者ですが口は達者です。勤め先の劇場をクビになり息子の学費を工面しようとジョンファンのカバンを盗んだことがきっかけで、刑務所で同房だった朝鮮語学会のチョ先生の紹介で、雑用係として働くことになります。最悪の出会いをしたパンスとジョンファンでしたが、文字を学び、会員たちと接するうちに自分なりにマルモイに参加するようになったパンスを通じて、“1人の10歩より、10人の1歩のほうが大きい”という“マルモイ”の本当の意味を悟ったジョンファンとの間に連帯感が生まれていきます。

その場しのぎの金稼ぎの手段であり、「カネなら分かるが言葉を集めてどうする?」と思っていたパンスでしたが、文字を覚えると、街で見かける文字が読めることや本の内容に感動するようになります。それと反比例して、朝鮮語が失われていく危機感に気付いていくんですね。

方言が思ったように集まらない中、パンスが連れてきたのはムショ仲間たち。様々な地方出身者の彼らが一同に集まっての聞き取りはまさに1人の10歩より、10人の1歩です。朝鮮語の出版を禁止された最後の出版物に手紙の募集広告を載せる案も根っこは同じです。反響は皆無に見えて、実は郵便物が止められていたというのも怖いこと。

弾圧が強まる中、劇場を隠れ蓑に朝鮮語学会の有識者を集めて標準語指定の作業を進めるジョンファンたち。上映されていたのは当時大ヒットした『朝鮮海峡』で、軍国主義に従ったプロパガンダ映画だったというのが風刺が効いています。

事が露見して、原稿を持って逃げる途中、ジョンファンは負傷し、パンスに託されます。逃げきれないと悟った彼は原稿の入ったカバンをある場所に放り込み、銃弾に倒れてしまいます。

希望が潰えたかと思われた次の瞬間、場面は転換し、朝鮮の独立解放後が描かれます。

ジョンファンが釈放され(銃で撃たれかなり激しい暴行を受けていたけど生きていたのね)学会の仲間たちに迎えられますが原稿は紛失したまま。でもやがてそれが郵便局の倉庫から見つかるんですね。そしてジョンファンは完成した辞書をパンスの子供(ドクジンは教師になっていました)たちに届けます。辞書の「タンポポ」の頁に掲載された、パンスが描いたタンポポの絵に、彼の存在を確かに感じることができました。 


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世界で一番しあわせな食堂

2021年10月08日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年2月19日公開 フィンランド=イギリス=中国 114分 G

フィンランド北部の小さな村にある食堂へ、上海から料理人チェン(チュー・パック・ホング)とその息子がやって来た。
恩人を探していると言うが、知る人は誰もいない。食堂を経営するシルカ(アンナ=マイヤ・トゥオッコ)は、チェンが食堂を手伝う代わりに、
恩人探しに協力することとなる。恩人探しが思うように進まない一方で、チェンが作る料理は評判となり食堂は大盛況。
次第にシルカ、そして常連客とも親しくなっていくチェンだったが、観光ビザの期限が迫り、帰国する日が近づいてくる(公式HPより)

 

フィンランドの小さな村にある食堂を舞台に、異国から来た料理人と地元の人々が織りなす心の交流を描いたヒューマンドラマです。ミカ・カウリスマキ監督が描くのは、異文化との出会いと、そこから生まれる喜び。お互いの文化を尊重しあい、全く異なった世界を受け入れようと努力する人々の姿に、分断に揺れる現代社会に対する監督の強いメッセージが込められている。(公式HPより)

シルカの店はブッフェ形式でマッシュポテトとソーセージを提供しています。フィンランド人の常食のようです。常連客たちは年配のおじいちゃんたち。 そこへやってきたチェンは、シルカや常連客達にある人を知らないかと尋ねて回りますが誰も知りません。長旅で疲れて眠り込んだチェンと息子のニュニョ(ルーカス・スアン)に、シルカは空いている部屋を提供します。

翌日も店の客に尋ね回るチェンでしたが、突如やってきた中国人の団体客の対応に困っているシルカをみて、料理を買って出ます。彼は上海の高級料理店を経営していたプロの料理人で、その料理に客もツアーガイドも満足して帰っていきます。シルカは彼の人探しを手伝う代わりに食堂を手伝ってもらうことにします。チェンの料理はツアーガイドたちの間で評判となり店は連日観光客で大繁盛します。

ヴィルプラ(ベサ=マッティ・ロイリ)やロンパイネン(カリ・バーナネン)ら常連客たちも、初めは胡散臭げに彼の料理を眺めていましたが、その料理を一口食べた途端虜になります。チェンが作る“医食同源”の見た目も美しい料理はとても美味しそうで、それを食べる人たちの体を癒し心を解きほぐしていくんですね。まさに料理に国境無し

チェンとシルカは次第に打ち解けていきましたが、ニュニョは心を閉ざしたままゲームばかりしていました。そりゃ、異国に連れて来られて父親は料理に忙しく独りぼっちなのだから当たり前よねそんな時、森でトナカイを追いかけるうち迷子になってしまったニュニョをロンパイネンが見つけて連れ帰ってきます。必死に探していたチェンは息子を叱りつけてしまうのですが、シルカに厳しすぎることを指摘されます。翌日、チェンはニュニョを村が見渡せる丘に連れ出して亡き妻の指輪を埋め、母を恋しがるニュニョに「ママは心の中で生きている」と慰めます。彼女は自転車に乗っていて事故に遭い亡くなっていたのね。

ある日、ヴィルプラとロンパイネンの会話に出てきた人の名前が探していた人だと気付いたチェンですが、既に彼は亡くなっていました。中国人のチェンがフィンランド人の名前を正確に発音できていなかったのね チェンは、上海で彼の窮地を救ってくれた恩人に、借りたお金を帰そうとフィンランドにやってきたのでした。滞在する理由がなくなり、帰国しようとするチェンをシルカは引き留めます。彼の野菜中心で季節や身体を考えた料理はロンパイネンたちの持病を和らげ、体調も良くなっていて、店に来る客たちのためにもチェンを必要としていたのです。

シルカは夫との間に子供が出来ず別れていました。妻を事故で亡くしたチェンは、シルカも自分と同じく孤独を抱えていることを知ります。

ヴィルプラとロンパイネンに誘われサウナを体験するチェンが何だか微笑ましい。

ニュニョも近所の子供たちと一緒にサッカーしたり、徐々に地元の人々に溶け込んでいく二人。村のダンスパーティーの夜、互いの気持ちを確かめ合ったチェンとシルカでしたが、チェンのビザの期限が迫っていました。さて、どうするのか?とみていると・・・

場面は変わり、中国の湖上でニュニョがスマホで撮影した動画を嬉しそうに眺める村の人たち・・・チェンはシルカを連れて中国に帰って、二人は結婚します宣言 そしてまた村に戻ってくると告げます シルカの食堂は彼女の友人?の女性が切り盛りしていたような

フィンランドの片田舎?の村に頻繁に観光バスがやってくるのかは??ですが、料理は世界共通の言語なのね。 心を開けば大らかに受け入れてくれるフィンランドの人たちもでした。


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静おばあちゃんにおまかせ

2021年10月07日 | 

中山七里(著) 文藝春秋(版)

神奈川県内で発生した警官射殺事件。被害者も、容疑者も同じ神奈川県警捜査四課所属。警視庁捜査一課の葛城公彦は、容疑者となったかつての上司の潔白を証明するため、公休を使って事件を探り出したが、調査は思うに任せない。そんな葛城が頼りにしたのは、女子大生の高遠寺円。――円はかつてある事件の関係者で、葛城は彼女の的確な洞察力から事件を解決に導いたことがあった。円は中学生時代に両親を交通事故で亡くし、元裁判官だった祖母の静とふたり暮らしをしている。静はいつも円相手に法律談義や社会の正義と矛盾を説いており、円の葛城へのアドバイスも実は静の推理だったのだが、葛城はそのことを知らない。そしてこの事件も無事に解決に至り、葛城と円は互いの存在を強く意識するようになっていった――(「静おばあちゃんの知恵」)。以下、「静おばあちゃんの童心」「不信」「醜聞」「秘密」と続く連作で、ふたりの恋が進展する中、葛城は円の両親が亡くなった交通事故を洗い直して真相を解明していく。女子大生&おばあちゃんという探偵コンビが新鮮で、著者お約束のどんでん返しも鮮やかなライトミステリー。(内容紹介より)

 

全部で5話の事件を通して葛城と円の仲が進展する一種の恋愛小説にもなっているような 驚いたのは最後に明かされる静おばあちゃんの正体。え?それってありですか 

・知恵

警視庁捜査一課刑事・葛城公彦は、埠頭のコンテナターミナルで神奈川県警組対本部長の久世警視が銃殺体で発見され、その犯人として逮捕された久世と犬猿の仲だった同じ対策課の椿山警部(葛城の元上司)の無実を証明しようと、非番を利用して調べ始めますが、解決の糸口は見つからず、1か月前に知り合った女子大生・高遠寺円に協力を求めます。円は事件現場で椿山の部下の立石の話を聞いて家に帰ると祖母の元裁判官の静に話して推理を伝授されます。久世警視が倒れていた時にうつ伏せだったことから、証拠を捏造して椿山に罪をかぶせた犯人が判明しますが、動機には同情すべき点ありでした。

・童心

祖母の遺体を発見した女子大生の朝倉美緒と生協の配達員の通報で、葛城ら警察が現場に駆けつけます。裏口は開いていて室内は荒らされた形跡が無く顔見知りの犯行と推察するが、身内には完全なアリバイがありました。喜美代のド派手ファッションが鍵となって、犯人のアリバイが崩れるお話です。 事件解決後、葛城は上司である財部管理官に謎解きは円がしたと話したことを謝り、円も謎を解いたのは祖母の静だと打ち明けるのでした。

・不信

財部に呼び出された葛城は、〈至福の園〉という宗教団体から警視庁の釘宮警備部長の一人娘の亜澄を脱退させて欲しいと内密の命を受けます。記者を名乗って取材を申し込み亜澄にインタビューした彼は、彼女の傾倒の理由が師父・総領龍人の復活の儀を目の当たりにしたからと考え、そのトリックを暴こうと円に助けを求めます。〈至福の園〉に体験入信した円は、亜澄から話を聞いて祈祷所も調べて静に報告します。単純なマジックのトリックでしたが、潜入した円が危険な目に遭いそうになりちょっとハラハラする場面も 円の両親の命日に、彼女が事故の詳細を葛城に語るのは後の伏線になっていました。

・醜聞

東京スーパータワー(スカイツリーを連想させますね)の地上450メートル付近でタワークレーンの解体作業中に作業員の須見田が突然倒れ、監督の土岐が死亡を確認します。状況的に外国人作業員・パウロに嫌疑がかかりますが、彼は全面否認。財部の命を受けて応援に行った本所署には、円の両親を轢き殺した犯人の三枝刑事がいました。財部の意向で円を現場に伴いますが、三枝と鉢合わせしてしまいます。円は動揺しながらも、「印象が違う」と言い、違和感を持った葛城は改めて事故の記録を調べ直すと不備が見つかり、円の両親を轢いたのは別の人物なのではと考えるようになります。事件の方は古い灯油を使って一酸化炭素中毒を起こさせてからの犯行と分かり、犯人の動機も女性絡みでした。 外国人に対する偏見からの冤罪を防いだお話でもあり、静おばあちゃんの昔の冤罪告白もありました。

・秘密

警視庁警備部の完全な警備体制の中、南アの小国パラグニアの大統領が暗殺され、釘宮警備部長から葛城を通して協力を要請された円から、現場の様子を聞いた静かは真犯人の正体に気付きます。独裁者の敵は身内というのはテッパンよね

一方円も、両親を轢き殺した犯人は三枝ではないと考え真犯人の正体に思い至ります。事件解決後、事件を推理していたのは円の祖母であると知ってその功績を労いたいと釘宮、財部、津村と葛城は高遠寺家へ。そこには三枝も来ていて、遂に円の両親の事故の真実が明らありゃりゃ~~ありゃりゃ~~上司皆繋がってるじゃん 同時に静が既に死亡していることが判明。彼女は孫娘が心配で幽霊として見守っていたという・・・なんかファンタジーになってきたぞ 事故の真犯人がわかっても一度結審した裁判を覆せるんだっけ??

この静おばあちゃんのお説教はいちいちごもっともで耳が痛いところもあるのですが、円の素直さ、純粋さは、やはりおばあちゃんの教育の賜物ってことですかね


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護られなかった者たちへ

2021年10月06日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2021年10月1日公開 134分 G

東日本大震災から9年後、宮城県内の都市部で全身を縛られたまま放置され餓死させられるという凄惨な連続殺人事件が発生した。被害者はいずれも善人、人格者と言われていた男たちだった。宮城県警捜査一課の笘篠誠一郎(阿部寛)は、2つの事件からある共通項を見つけ出す。そんな中、利根泰久(佐藤健)が容疑者として捜査線上に浮かび上がる。利根は知人を助けるために放火、傷害事件を起こしたて服役し、刑期を終えて出所したばかりの元模範囚だった。犯人としての決定的な確証がつかめない中、第3の事件が起こってしまう。(映画.comより)

 

中山七里の同名ミステリー小説の映画化です。原作を先に読んで部屋で一人泣きました。これを俳優陣がどう演じてくれるのか楽しみに劇場へ足を運びました。映画化にあたり、犯人の性別が変わっていることはネタバレ読んで知っていました。非力な犯人が被害者を拉致監禁はちょっと無理がある気もしますが、スタンガン使ったり引きずったりの描写で成立させていました 強い復讐心の表現は目力もあり迫力がありました。

原作の被害者たちは、表向きの善人の顔の裏で規則や国の指示に盲従する冷徹な役人の顔がありましたが、映画の三雲(永山瑛太)と城之内(緒形直人)は善人の部分を強めに出していたように見えます。特に第三の被害者となった上崎(吉岡秀隆)は、過去の過ちを悔いてより良い未来のために働こうとしている人物になっていて、原作とはかなり異なっていてびっくりでした。

また、最後に登場する笘篠の息子と利根の意外な接点は原作にないエピソードだったような?そもそも、原作では妻が行方不明だったけれど、映画では息子になっていて、彼が来ていた黄色いパーカーというのがキーポイントになってますのでね。 避難所で笘篠・カンちゃん・利根がすれ違っているというのも映画ならではの設定ですね。

福祉予算がひっ迫している現状で、国が生活保護受給者を調整したり、申請を却下する「水際作戦」が行われていることが犯行の動機となっているのは原作通りで、最後に「あなたは一人ではない。何度でも勇気を持って声を上げてください。不埒な者が上げる声よりも、もっと大きく、図太く」と残すメッセージは作り手の共通する強い思いだと思いました。

笘篠の部下の蓮田(林遣都)・・ネタバレ知るまでは彼が犯人役かと思ってました・・は、組織からはみ出して行動する笘篠に当初反発していましたが、行動を共にするうちに同調していくようになります。

物語のキーパーソンとなる遠島けいを演じた倍賞美津子さんの演技は流石の一言。円山幹子役の清原果耶さんも峻烈な強さを印象付けています。

けいの悲惨さは本の方が想像の余地がある分、より悲惨に感じましたが、それでも十分に伝わってくるものがありました。

ただ本と映画だと、私は本の方がより哀しく切なく重く受け止めたかな


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