2018年9月21日公開 116分
時田数(有村架純)が働く喫茶店・フニクリフニクラには奇妙な都市伝説があった。それは、店内のある席に座ると、望んだとおりの時間に戻れるというものだが、それにはとても面倒くさいルールがった。それは、過去に戻ってどんなことをしても現実は変わらない、過去に戻れる席には先客がいて、その先客が席を立ったときだけその席に座れる、過去に戻れるのはコーヒーをカップに注いでから、そのコーヒーが覚めてしまう間だけで、コーヒーが冷めないうちに飲み干さなければならない、過去に戻っても喫茶店を出ることはできない、過去に戻ってもこの喫茶店を訪れたことのない人には会うことはできない、というもの。すべてのルールを守ったとき、優しい奇跡が起こる。不思議な噂を聞いた客や常連客が、連日喫茶店を訪れる。噂を怪しみながらもやってきた三十路前のキャリアウーマン・清川二美子(波瑠)、なにか訳ありそうな常連客の高竹佳代(薬師丸ひろ子)と房木康徳(松重豊)、なぜか妹の久美(松本若菜)から逃げ回る平井八絵子(吉田羊)、過去に戻れる席にいつも座っている先客の謎の女(石田ゆり子)。そして、数に想いを寄せ始める新谷亮介(健太郎)。過去に戻れるコーヒーを唯一淹れることができる数も亮介に導かれ、心に秘めた過去に向かい合う。(MovieWalkerより)
川口俊和の同名小説の映画化です。
4つのエピソードが登場します。
その一:幼馴染の賀田多五郎(林遣都)から突然アメリカに行くと告げられ動転して喧嘩別れをしたキャリアウーマンの二美子は、その日に戻って互いの本心に気付きます。彼がアメリカに行った事実は変えられないけれど、自ら仕事を辞して彼を追いかけて渡米する選択をした彼女は未来を変えたといえるでしょう。
その二:若年性アルツハイマーに侵された妻をやさしく見守る夫の房木。妻が渡せずにいる手紙の中身が知りたい房木はその手紙を渡そうとしていた日に戻り、妻の本心を知ります。夫のことさえ忘れてしまった妻に敢えて余計な刺激を避けて寄り添っていた彼ですが、妻の願いは最後まで夫婦でいたいというものでした。妻の現状に向き合うことを彼自身が恐れ避けていたと気付いた夫は、まっすぐ妻に向き合うことを決意します。
その三:故郷の妹を残し実家を捨てて出てきて、スナックを営む喫茶店の常連客の八絵子は、訪ねてくる妹に会おうとせず逃げ回っていました。ところが突然妹が事故死してしまいます。後悔を抱え、もう一度妹に会いたいと願った八絵子は、妹が姉と一緒に実家の旅館を継いでいきたいという願いを知ります。自分が家を出たせいで仕方なく妹が実家と両親の面倒をみなければならなくなったと思っていた彼女は、妹の死は覆せないけれど、彼女とした約束を果たすため、スナックを閉めて実家の旅館を継ぐんですね。
その四:次第に惹かれあっていく新谷と数。ある日新谷はあの席にいつも座っている女性の正体が数の母親であることを知ります。
ルールを破ってしまった彼女は「その日」から戻れず幽霊として席に座り続けていたのです。
この不思議な時間を超える旅のための珈琲を淹れるのは時田家の代々の女性の役割という設定で、母親にコーヒーを淹れたのは幼い日の数だったのです。彼女は母が亡くなった父に逢うため珈琲を飲んだのだと思い込んでいましたが実は、母が望んだのは過去ではなく未来だったのね。病魔に侵された母が幼い娘の行く末を心配するのはまぁ当たり前の心理で、戻れなくなったのも娘との別れに耐えられなかったからということらしい。でもねぇ・・現実に娘は取り残されたわけで、それってやっぱり母親の身勝手ともいえるんじゃないかしらん
この母娘の呪縛を解くのが新谷君と未来からきた彼らの娘。そりゃ~この能力を持ち合わせるのは時田家の女系ですからねぇ
時間旅行のパラドックスをうまく避けているような設定ではありますが、深く考えると矛盾も出てきそう。そこは置いといて、やっぱり人は前向きに生きなきゃねという結論でよろしいようで