4.
種々の花からなる冠が、彼女の頭のその崇高な頂にあった。冠の中央、額のすぐ上には鏡のようななめらかな珠、白く輝く光があった。あらゆる種類の花と果実から作られた冠は、波打つ深い黒色のマントのはしに結びつけられていた。そのロープには輝く星が散りばめられ、星の中央には満月が光を放っていた。彼女の片耳には月、もう片方には太陽があり、この二つがすべての自然物の能動者と受動者、父性原理と母性原理を示していた。彼女自身は月であり、月は自ら光を持たず、その光や力を太陽から受け入れていることを意味していたのです。
第四の門番にイシュタルは胸飾りを奪われましたが、彼女の上半身を取り巻く帯には多くの神秘的な象徴がありました。帯は体の前で四角形の金の板で結ばれていました。金の板は四つの要素(生命、光、熱、力)であり、それが万物を生成することを意味しました。この帯には強い力を放つ多くの星が見られ、明るいところにも暗いところにも、マントの主人が力を持っていることを表したが、いまやイシュタルは力を失った。アルルの門を一つ通り抜けるたびに、地上的物質的なものを一つ受け取り、代わりに霊的なものを一つ失った。最後の門を通ったとき、イシュタルは物質的なものに満たされ、神としての本質、霊的な法則をまったく忘れてしまった。
煙のような蒸気を生む神秘的で水のような物質が渦を巻いていた。空気は聞きとれないほどのうめき声とため息に満たされたが、それは闇に飲み込まれた光から来ているように思われた。かって地上の豊饒神だったイシュタルは、もともと光そのものだ。1滴づつでもコップに水がたまるように、ある時イシュタルのコップから光が溢れた。突然にか、あるいは徐々にであったか、漆黒のアルルに光が生まれた。神としての本質、霊的な法則をすべて忘れ去ったはずのイシュタルは、時間の留まったなかにあって蒸気に満ち、すべての自然物を養い、大気からの滋養である水分を与えてそれらを潤した。
イシュタルがいなくなった地上では、作物は実らず、動物も子供を産まなかった。生殖に関わるあらゆる営みがとだえていた。
「牡牛は雌牛にいどみかからず、牡ろばは雌ろばをはらませず、
街では若者が娘をはらませることなく、
若者は自分の部屋で眠り、
娘は女友達どうしで眠った」
(この粘土板訳は、ヘンリエッタ・マッコール著、青木薫訳)