ジーン・ウールの不思議な旅

ジーン・ウールは不思議な女性です。姿を変えて過去にも未来にも現れます。
もしかしたら貴方の友人や奥様かも知れません。

店主ご挨拶

ようこそお越し下さいました。 昨年(2010)、3ヶ月の雲水修行に行ってまいりました。 私は働き者で(自己申告)、精舎は朝は早く夜は遅く「朝瞑想」の時間は、気がつくといつも寝ておりましたが・・。 私の人生の1ページに、思いがけないご褒美を頂けたような日々を過ごさせて頂きました。・・ま、主婦でも決心ひとつで如何様な道も開けるんですね。 今も精舎に行くと「実家に帰った」ような気がします。 このブログ管理人は、最近物忘れ症候群中につき、おいで頂いた感謝を申し上げ、コメントを頂いても書いたり書かなかったり、付き合いが悪いことのご無礼をお許し下さいませ。

ウトナピシュティム 21

2006-08-31 10:29:53 | ウトナピシュティム
21.
「暁がかすかに輝きはじめたとき、私のところに国の人々が集まってきた。大工は舟柱を運んだ。石工は石を運んだ。富者はアスファルトを運んだ。貧者はすべての必需品を持ち込んだ。5日目にわたしはその方舟を設計した。その面積は1イクー(約3600㎡)、側面の高さは10ニンダ(1ニンダは約6m)、上面の縁も等しく10ニンダであった。

わたしはその構造を設計し、それを描いた。それに6つの床面を加え、全体を7つの階に分け、その内部を9つに分けた。その中央には水杭を取り付けた。わたしは櫂を吟味し、必需品を整えた。

3シャル(1シャルは約1万800リットル)の瀝青を溶炉に注ぎ、3シャルのアスファルトで小舟の内部を張り巡らした。また1万800人の籠を運ぶ労働者群が油を持ち込んだ。それ以外に、1シャルの油を彼らは消費し、2シャルの油を舟乗りが取りのけた。

わたしは働く者たちのために数々の雄牛を屠った。日毎、数々の雄羊を殺した。シラシュ・ビール、クルンヌ・ビール、油、ぶどう酒、吸物を川の水のように彼らは飲んだ。
アキトウ祭の日のように彼らは祝祭を催した。太陽が昇るころ、わたしは塗油に手を置いた。太陽が沈むころ、方舟は完成した。

積み荷の搬入は難しかった。彼らは舟底板を上下に一致させた。彼らはその3分の2を生き物たちのために分けた。
そこにあるものすべてをわたしは方舟に積み込んだ。
そこにあるすべての銀を方舟に積み込んだ。
そこにあるすべての金を方舟に積み込んだ。
そこにある生き物の種すべてを方舟に積み込んだ。
わたしはわが家族、わが親族を方舟に乗せた。
荒野の獣、荒野の生きもの、すべての技術者を方舟に乗せた。
シャマシュはわがために時を定めて言った。

『朝にはクックを、夕には小麦を雨と降らせよう。さあ、方舟の中に入り、お前の戸を閉じよ』


ウトナピシュティム 20

2006-08-23 11:00:37 | ウトナピシュティム
20.
『葦屋よ、葦屋よ。壁よ、壁よ。葦屋よ、聞け。壁よ、悟れ。
シュルッパクの人、ウバル・トゥトゥの息子よ、家を壊し、方舟を造れ。
持ち物を放棄し、生命を求めよ。財産を厭い、生命を生かせ。
生命あるもののあらゆる種を方舟に導き入れよ。
あなたが造る方舟は、その寸法が測られるように、その長さと幅とが等しいように。
アプスーのようにそれを屋根で覆え。』

わたしはこれを知って、わが主なるエアに語った。
「わが主よ、あなたがわたしに告げてくださった命令を、私は守り行います。でも、どのように町の人々や職人や長老たちに答えたらよいのでしょう」
エアは語り、僕であるわたしに告げた。

「あなたは若者だから、彼らに次のように言ったらよい。『エンリルがおそらく私を嫌われるのです。わたしはもはやあなた方の町には住めません。もはやエンリルの地に足をおくことは出来ません。わたしはアプスー(深淵)に降り、わが主であるエアと共に住むのです。あなた方の上に彼は豊かさを雨と降らせましょう。
鳥の豊猟と魚の秘密とを、豊富な収穫をあなた方に下されましょう。
朝にはクック(パン)を、夕には小麦の雨をあなた方のために降らせましょう。」


ウトナピシュティム 19

2006-08-21 10:59:06 | ウトナピシュティム
19.
 そのときわたしはまだ若者だった。わたしに対する祝福が告げられたとき、偉大な神々アヌンナキは集い、マミートゥム〔出産・誕生・特に人類創造に関わる女神、あるいは冥界と関わりを持ち、ネルガル神あるいはエラ神の配偶神・・ということは、アルルの女主人エレシュキガル〕が天命を定め、アヌンナキと共にわたしの天命を決めたのだった。彼らがわたしの死と生の定めを確立したのだ。ただ、死の日を印づけず、生のそれも印づけなかった。」
ウトナピシュティムは彼方を見、遠い日に思いを馳せるのだった。

ギルガメシュは彼、遙かなウトナピシュティムに語った。
「わたしはあなたを見つめます。あなたの身体は別に変わっていません。あなたはわたしと同様です。あなたは別に変わっていません。わたしの心はあなたに注がれています。わたしの腕はあなたに向かって伸ばされています。わたしは知りたいのです。わたしにお話ください。あなたがどのようにして神々の集いに立ち、不死の生命を探し当てたのか」

ウトナピシュティムはギルガメシュの懇願を受け入れ、語ります。
「ギルガメシュよ、隠された事柄をお前に明かそう。神々の秘密をお前に語ろう。
シュリッパクはお前が知っている町、ユーフラテス川の岸辺にある町だ。その町は古く、偉大な神々は心をはたらかせ、洪水を起こそうとされた。

そこにおられたのは彼らの父アヌ、彼らの顧問官エンリル、彼らの式部官ニヌルタ、彼らの運河監督官エンヌギ、ニンシクであるエア〔エンキ:エンキはニビル王アヌとその側室イドとの間に生まれた第1子だ。一方、エンリルはアヌと異母妹アントゥムとの間に生まれた第2子だ。エンキは王の第1子だが、正当な「王とその異母妹との間に生まれた子」のエンリルのために第1王位継承権を失った〕も彼らと共に誓った。だが彼(エア:エンキ)は、彼らの言葉を葦屋に向かって繰り返した。

ウトナピシュティム 18

2006-08-18 07:00:11 | ウトナピシュティム
18.
ギルガメシュは、ウトナピシュティムに語った。
「わたしはマーシュの山を登り、死の川を渡って、人々が語り伝える遙かなウトナピシュティムに会いたく思いました。
すべての国々を歩き回り、困難な山々を越え、すべての海を渡り、わたしはよき眠りに満たされることはなかったのです。

わたしは眠れぬまま、不安を抱き、悲嘆がわが身をさいなみました。長い放浪生活で、酌婦のもとにたどり着く前に、衣服は破れはてました。
わたしは熊、ハイエナ、ライオン、豹、虎、大鹿、野生山羊など、荒野の動物たちを殺し、それらの肉を食べ、それらの破れた毛皮を着ています。

悲嘆の門はアスファルトと瀝青をもって閉ざされたらいいのに、悲嘆はわたしを弄ぶ。」

「ギルガメシュよ、あなたはいつまで悲嘆にくれているのだ。あなたは神々と人間との肉をもって造られた。
あなたの父と母のように、神々はあなたを造ったのだ。それなのに、いつそんな愚か者になったのだ。

あなたは眠らずに自分を疲れさせ、自らの身体を悲嘆で満たしている。そして、愚かにもあなたの死という遠い日を近づけている。

人間の名前は葦原の葦のようにへし折られる。美しい若者も美しい娘も等しく死にへし折られるのだ。
誰も死を見ることは出来ない。
誰も死の声を聞くことは出来ない。
死は怒りのなかで人間をへし折るのだ。

いつかはわれわれは家を建て、巣造りをする。
いつかは兄弟たちがそれを分配してしまう。
いつかは憎しみが生じ、いつかは川が氾濫し、洪水をもたらす。
蜻蛉たちも川に流される。この葦を手にとっても、たちまち風が奪い去っていくのだ。
顔は太陽を見つめて生きようとしても、すぐさま何もかも消え失せてしまう。
眠る者と死ぬ者は等しい。人々は死の姿を心に描けないのだ。

ウトナピシュティム 17

2006-08-17 06:35:36 | ウトナピシュティム
17.
ウトナピシュティムは、近づいたギルガメシュに語りかけた。
「客人よ、なぜあなたの頬はやせこけ、顔は落ち込んでいるのか。なぜ、あなたの心は憔悴し、姿は消沈しているのか。悲嘆があなたの胸に押し寄せ、あなたは遠い道のりを行く者のようだ。あなたの顔は暑さと寒さで焼けついている。なぜ、あなたはライオンの毛皮をまとって荒野をさまようのか」

ギルガメシュはウトナピシュティムに語った。
「わが頬がやせこけ、顔が落ち込まずにいれようか。わが心が憔悴し、悲嘆がわが胸に押し寄せずにいれようか。わが顔が遠い道を行く者のようでなくいられようか。わが顔が暑さ寒さで焼けつかずにおられようか。わたしがライオンの毛皮をまとって荒野を彷徨わずにいられようか。

わが友エンキドゥは狩られた野生騾馬、山の驢馬、荒野の豹、われらは力を合わせて山に登った。われらは天牛を捕らえて、これを撃ちたおした。香柏の森に住むフンババを滅ぼし、山の麓でライオンどもを殺した。

わたしが愛し、労苦を共にしたわが友エンキドゥ、彼を人間の運命が襲ったのだ。6日、7晩と、わたしは彼のために泣いた。蛆虫が彼の鼻から落ちこぼれるまで。わが友の言葉は、わたしに重くのしかかり、わたしは遠い道を旅した。わたしはライオンの毛皮をまとって荒野をさまよった。わたしはどうして黙し、沈黙を保てようか。わたしが愛した友は粘土になってしまった。

わたしも彼のように死の床に横たわるのであろうか。わたしも永遠に起きあがらないのだろうか」

ウトナピシュティム 16

2006-08-16 08:27:03 | ウトナピシュティム
16.
ウトナピシュティムは、遠くからマギル舟を眺め、思いめぐらした。
「舟が死の水につかっている。なぜ、舟の<石物>は壊されているのだ。その舟主でない者が乗り、櫂を取っている。
やって来る者は、わが従者ではない。右側にわが従者ウルシャナビがいるようだ。
わたしが眺めるところ、彼は神ではない。
わたしが眺めるところ、彼は人間でもない。
わたしが眺めるところ、彼は3分の2が神、3分の1が人間のようだ」

<石物>とは、想像するに反重力装置みたいなものかも知れない。死の川に達するまではひこばえで作った櫂で棹さし、死の川に達したら反重力装置を使うのだ。死の川の水は、その川の水に触れるものを腐らせる。だから舟は石で出来ている。死の川に達すると、<石物>を稼働させる。すると重い石の舟は軽くなり、櫂が腐らないように水面から浮いて前方への推進力をも持っているはずだ。
だから死の川の水面から浮いていないマギル舟を見て、ウトナピシュティムは<石物>が壊されていると察することが出来たに違いない。


【ギルガメシュ叙事詩は、詩人リルケやヘルマン・ヘッセを魅了しました。

リルケは「ギルガメシュは凄い」と感嘆し、当時出版された彼よりもわたしの方がもっとすぐれた物語にできると、詩人リルケによって語りなおされたギルガメシュ叙事詩が出来るはずでしたが、ついに書き残されることはありませんでした。

ヘルマン・ヘッセも、次のような書き出しで「ギルガメシュ」という短文を残しているそうです。
「わたしが以前から読んできたなかで、最も力強い文学作品は「ギルガメシュ」と呼ばれる古代オリエントの物語である。・・」

わたしのギルガメシュは、月本昭男訳が好きで多く引用していますが、粘土板が欠損していて意味不明であったり、言葉そのものが意味不明であることが多々出てきます。
例えば<石物>であるとか、このあと出てくる<何>とかです。<何>って何?って感じです。
でも、この<何>にある言葉を当てはめてみると、すんなりお話が展開してくるのです。

では、どんな展開が始まるのか楽しみにしていてくださいね。】

ウトナピシュティム 15

2006-08-15 19:49:18 | ウトナピシュティム
15.
ウルシャナビは、ギルガメシュを奮い立たせる大きな声をあげた。
「ギルガメシュよ、斧を取り上げよ。森にくだり、5ニンダ(1ニンダは約6メートル)の櫂を120本伐り出せ。皮を剥ぎ、水かきを付けよ。そして舟にそれを運べ」
ギルガメシュはこれを聞くと、喜び勇んで斧を取り上げた。そして大太刀を抜いた。彼は森にくだり、5ニンダの櫂を伐りだした。皮を剥ぎ、水かきを付け、舟に運んだ。ギルガメシュとウルシャナビは舟に乗った。彼らはマギル舟を出航させた。1ヶ月と15日の海路は3日ですんだ。
ウルシャナビは死の水に達した。

ウルシャナビはギルガメシュに語る。
「遠ざかれ、ギルガメシュよ。静かに櫂を取れ。おまえは死の水に触れぬようにな。
第2、第3、第4の櫂を取れ。第5、第6、第7の櫂を取れ。第8、第9、第10の櫂を取れ。第11、第12の櫂を取れ」
そしてギルガメシュは、120本の櫂を使い尽くしてしまった。
仕方なくギルガメシュは帯を解き、自分の衣を脱ぎ舟柱にくくりつけた。その腕で舟柱を高く掲げ、風に運を託した。

ウトナピシュティム 14.

2006-08-13 00:28:03 | ウトナピシュティム
14.
ギルガメシュは、またウルシャナビに語った。
「さあ、ウルシャナビよ、ウトナピシュティムへの道はどこか。その道しるべをわたしに与えてくれ。もしあなたが案内してくれるならば、あなたと共にこの大洋を渡ろう。もしあなたの案内が得られないならばわたしは再び荒野をさまようだろう。それが俺の運命ならば、この身に受けよう。」

ウルシャナビは、ギルガメシュをとがめる。
「ギルガメシュよ、あなたの手が舟を止めたのだ。あなたは<石物>を壊し、ひこばえを伐りだした。死の川を渡るには<石物>が必要なのだ。<石物>がなければ死の川を渡ることはできない。この川を渡った者は、英雄シャマシュのみだ。」
【なんと無謀な男だ。しかし、よくぞ遙かな死の川まで達したものだ。・・・して、わたしは舟師だ】

ウルシャナビは、ギルガメシュを奮い立たせる大きな声をあげた。
「ギルガメシュよ、斧を取り上げよ。森にくだり、5ニンダ(1ニンダは約6メートル)の櫂を120本伐り出せ。皮を剥ぎ、水かきを付けよ。そして舟にそれを運べ」
ギルガメシュはこれを聞くと、喜び勇んで斧を取り上げた。そして大太刀を抜いた。彼は森にくだり、5ニンダの櫂を伐りだした。皮を剥ぎ、水かきを付け、舟に運んだ。ギルガメシュとウルシャナビは舟に乗った。彼らはマギル舟を出航させた。1ヶ月と15日の海路は3日ですんだ。
ウルシャナビは死の水に達した。

ウトナピシュティム 13

2006-08-12 09:15:06 | ウトナピシュティム
13.
ギルガメシュは岸辺へ戻り、しばりあげた舟師の縄目を解き、ウルシャナビに言った。
「ウルシャナビよ、わたしはかの国に入りたい。あなたに案内をお願いしたい」

ウルシャナビは答える。
「おまえが香柏の森に住むフンババを滅ぼし、山の麓でライオンどもを殺し、天から下った天牛を捕らえてこれを打ち倒したあのギルガメシュならば、なぜおまえの頬はやせこけ顔は落ち込んでいるのか。
なぜ、おまえの心は憔悴し、消沈しているのか。悲嘆がおまえの胸に押し寄せ、おまえは遠い道のりを行く者のようだ。おまえの顔は暑さと寒さで焼けついている。なぜ、おまえはライオンの毛皮をまとって荒野をさまようのだ。」

ギルガメシュは言った。
「わが頬がやせこけ、顔が落ち込まずにいれようか。わが心が憔悴し、悲嘆がわが胸に押し寄せずにいれようか。わが顔が遠い道を行く者のようでなくいられようか。わが顔が暑さ寒さで焼けつかずにおられようか。わたしがライオンの毛皮をまとって荒野を彷徨わずにいられようか。
わが友エンキドゥは狩られた野生騾馬、山の驢馬、荒野の豹、われらは力を合わせて山に登った。われらは天牛を捕らえて、これを撃ちたおした。香柏の森に住むフンババを滅ぼし、山の麓でライオンどもを殺した。
わたしが愛し、労苦を共にした友エンキドゥ、彼を人間の運命が襲ったのだ。6日、7晩と、わたしは彼のために泣いた。蛆虫が彼の鼻から落ちこぼれるまで。

わが友の言葉は、わたしに重くのしかかり、わたしは遠い道を旅した。わたしはライオンの毛皮をまとって荒野をさまよった。わたしはどうして黙し、沈黙を保てようか。わたしが愛した友は粘土になってしまった。わたしも彼のように死の床に横たわるのだろうか。わたしも永遠に起きあがらないのだろうか」

ギルガメシュはなおも、心の闇をさまよう旅人のようだった。

ウトナピシュティム 12

2006-08-11 18:19:31 | ウトナピシュティム
12.
彼らはもみあった。
怪力ギルガメシュはウルシャナビの頭を叩き、彼の腕をしばりあげた。それから彼をしばった縄を釘で固定した。これでウルシャナビは動けまい。
「おまえは俺の舟を動かすことはできんぞ。」
「なぜだ。」
「この俺と<石物>がなければ、死の水を渡ることは出来ないからだ。」
それからウルシャナビは頑として口を閉ざした。

仕方なくギルガメシュは、舟を動かすに必要らしい<石物>を積み、広い海に漕ぎだした。順調だった。しかし死の水に達したとき、彼は舟を止めざるを得なかった。
死の水は暗く、ひこばえで出来た櫂は、死の水に触れると腐って役に立たなかった。
このためにあったのだと、<石物>をあれこれ試してみるが、奪い取った<石物>は、うんともすんとも言わない。役に立たない<石物>に腹を立てたギルガメシュは、<石物>をたたき壊した。
しかし舟は、舟師ウルシャナビと<石物>がなければ死の水を渡ることはできなかったのだ。