以前ご紹介したように、ヨガでは、プラーナとよばれる生命エネルギーを体内に取り込むことを昔から非常に重視してきましたが、プラーナに気がついたのはインド人だけではありませんでした。
日本では、「手当て」という言葉が古くから存在していますが、これは昔の人が手から生命エネルギーが出ることを知っていて、実際に病人の患部に手を当てて病気を治療していたことを示しているようです。
中国では、この目に見えない生命エネルギーを「気」とよんで、気を扱う技術(気功)が古くから発達しましたが、現在でも国家が気の存在を認めていて、気功師の国家資格があるそうです。
私が最近読んだ気功の本に、『気功の真髄』(張永祥:著、現代書林:2008年刊)という本があります。
著者の張さんは、中国で「神手張」(神の手を持つ張)とよばれた気功の達人で、多くのがん患者を治しただけでなく、気功によって行方不明になった人を探し出したり、犯罪者の居場所を突き止めたりしたそうです。
張さんは1986年に来日し、1989年からは日本医科大学で「中国気功専門医」という肩書きを与えられ、病状の悪い入院患者を20人ほど集めて同時に施術していたそうです。
といっても、最初は疑いの目で見られていたそうですが、大学の教授たちの前で写真だけで患者の病状を言い当てたりして信用を得たそうです。
張さんは、大学で遠隔治療の実験も行なっていて、張さんの手の動きに合わせて遠く離れた場所にいる患者さんの足が動く様子がビデオに収められているそうです。
この本によると、中国には「養病」という考え方があるそうです。
すなわち、「病気を敵対視してそれを排除したり叩きつぶしたりするのではなく、病気を含めた体まるごとを養い守っていくこと」が大切で、「体全体に対する養生が七分で、病気に対する治療が三分」だそうです。
また、「病気は敵ではなく、体からのメッセージ」という著者の言葉は、西洋医学的な考え方に慣れた我々に新鮮な驚きを与えてくれます。
普通は、もし自分ががんになったら、なんで自分がと思って絶望したり、手術や抗がん剤、放射線治療で徹底的にがんを殺そうとするでしょうが、そういうことが結局自分の寿命を縮めてしまうことになるようです。
しかし「養病」という考え方を知っていれば、これまでの生活習慣を改めて、自分の肉体をいたわりながら病気を気長に治療するということも可能になると思います。
また著者は、「気の能力とは命の能力」だから、誰でも気を出すことができると断言していますが、これは正に気功の真髄を極めた人の言葉だと思いました。