最近、大阪市にあるオフセット校正印刷会社の工場で、12人が胆管がんを発症し、うち計7人が死亡したことが判明し、問題になっています。
胆管とは、胆汁(肝臓で作られ、胆のうに蓄えられる)を十二指腸へ送るための管で、この部分にがんができることは珍しく、また、50歳代以降に発症する場合が多いそうです。
毎日新聞の報道によると、死者7人(全員男性)の死亡年齢は27~46歳で、今のところ「1,2ジクロロプロパン」や「ジクロロメタン」などを含む有機溶剤が原因ではないかと推測されているそうですが、作業中に嘔吐する人もいたそうなので、作業環境は相当ひどかったようです。
このような職業が原因のがんは、古くは1775年に、若い煙突掃除人の陰のうに皮膚がんが見られることがイギリスで報告されています。また、日本でも、六価クロムやヒ素、アスベストなどによる職業がんが発生し、大きな社会問題となりました。
我々一般人は、就職する前に就職先の環境を調べるのは容易ではないので、異常を感じたら、職場を替えてもらうか、退職して別の会社に就職するといった対策を講じるしかありません。なお、過去にどんな職業がんが発生したかを知っておけば参考になると思いますので、少し調べてみました。
【職業】 【がんの種類】 【原因物質】
毒ガス工場 呼吸器系のがん 各種毒ガス(広島県大久野島)
農薬工場、鉱山 皮膚・肺がん ヒ素
メッキ工場 肺がん 六価クロム
アスベスト工場 肺がん、中皮腫 アスベスト(石綿)
染料工場 膀胱がん オーラミン、マゼンダ
ガソリンスタンド 白血病 ベンゼン(ガソリンに含まれる)
合成ゴム工業 白血病 ベンゼン
塩化ビニル工業 肝血管肉腫 塩化ビニルのモノマー
また、これらの職業がんは、従業員だけでなく、近隣住民にも被害が及ぶことが多いので、注意が必要です。例えば、ガソリンスタンドの場合は、付近に住む乳幼児の白血病罹患率が高くなるというフランスの研究報告があるそうです。
さらに詳しく知りたい方は、国立がん研究センターの「人のがんにかかわる要因」というサイトの末尾に、「主に職業曝露に起因する発がん化学物質」という表があるので、よかったら検索してみてください。