
メディアは連日、トランプ氏が機関銃を撃つようにSNSを通じて流す「出まかせ発言」(?)を一つひとつ精査する時間的余裕もないまま、「大本営発表」記事として報じている。
そうした中、ニューヨーク・タイムズ(NYT)論説委員会が長い眠りから目覚めたと、高濱 賛氏。
トランプ米大統領の「MAGA」(米国を再び偉大に)政治に拍車がかかっている。
同氏は、選挙公約を盛り込んだ「大きくて美しい法案」(BBB)を立法化した。
2020年の大統領選に敗れ、野に下っている間に結集されたMAGA忠臣たちが準備してきた諸政策を「トランプの名の下に」打ち出し、トランプ氏はサインしているだけだと皮肉る向きもある。
メディアは連日、トランプ氏が機関銃を撃つようにSNSを通じて流す「出まかせ発言」(?)を一つひとつ精査する時間的余裕もないまま、「大本営発表」記事として報じている。
そうした中、ニューヨーク・タイムズ(NYT)論説委員会が長い眠りから目覚めた。
同紙が、7月6日付の紙面でトランプ氏の独断的政策をこれまでにないような過激な表現で批判したと、高濱氏。
NYTの主張は、こうだと。
「トランプ氏は就任後11日の間にFBIの反トランプ派8人をパージし、いくつかの部門の機能を弱体化させた。さらに、就任後5か月間で国家安全保障対策のエキスパートを排除した」
「数百人にも及ぶFBI職員がトランプ氏の要求に従うことを拒否して辞任した」
「トランプ氏は、FBIをMAGAのアプリオリを実践する法執行機関に塗り替え、反トランプ分子を見つけ出し、追い出した」
「その後釜に親トランプ派を据え、知人たちやトランプ派に対してFBIが行ってきた捜査を差し止め、トランプ氏に批判的な職員に恐怖心を植え付けてきた」
「その好例が、FBIを長年にわたって批判してきた検察官出身のカシュ・パテル氏をFBI長官に据え、ダン・ボンジーノ氏を副長官に配置した人事だ」
「こうした公的機関の政治化はFBIだけでなく、司法省全体に及んでいる」
「その影響は中東での紛争に始まり、米国にとっての脅威となっているテロ、スパイ、生物兵器、サイバー攻撃、組織犯罪、ホワイトカラー犯罪、麻薬の密輸などの捜査に重大な影響を及ぼし始めている」と、高濱氏。
公的機関の政治化は、米中央情報局(CIA)や国土安全保障省にも及んでいる。
外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」の最新号は、「Trump is Breaking American Intelligence」と題する記事を掲載した。
世界に冠たる米情報機関がトランプ氏の政治干渉によって弱体化していることに警鐘を鳴らした。
元CIA長官のマイケル・ヘイデン氏と元CIA分析官で英キングズ・カレッジのデイビッド・ジョーイ教授が共同執筆したと、高濱氏。
要旨はこうだ。
一、米国の情報機関とそのシステムは世界の羨望の的だった。ところがトランプ政権のポピュリスト的手法で弱体化し始めている。
二、6月のイラン核施設空爆による損害状況をめぐってタルシ・ギャバード米国家情報長官は当初、「損害は限定的」と議会で証言していた。
ところが、トランプ氏が「核施設を完全に崩壊した」と発言するや、ギャバード氏は急遽前言を翻してトランプ氏に同調。
ピート・ヘグセス国防長官、ジョン・ラトクリフCIA長官ら政権高官らがこぞって空爆は大成功したと自画自賛した。
情報機関が集めた損害情報を自分に都合よく解釈したトランプ氏の発言に同調。
三、トランプ氏はCIAはじめ各情報機関の各部門の専門官たちを排除し、トランプ氏に忠誠を誓ったシンパを配置。
四、トランプ氏は、経験豊かな専門家や前政権から働いてきた資格のある官僚に対して強い疑念を抱いている。
その結果、情報機関で働く人間は、入手した情報、その分析でトランプ氏に「不都合なもの」は捨てたり、脚色したりする傾向が出ている。
五、歴代大統領は、情報の政治化を極力自粛してきた。それは情報機関の職務は入手した情報に正直に向き合うという鉄則によるものだ。
大統領にとってどんなに不利な情報であろうとも、大統領に報告することこそ国益を守る上での最優先任務だからだ。
ところがトランプ政権では一変してしまった。
六、 陰謀論がトランプ政権の情報機関にまで浸透している。
2021年の米連邦議会占拠事件はバイデン政権の内部者がたくらんだ事件だとか、ジョン・F・ケネディ暗殺も、少女買春受刑者のジェフリー・エプスタイン服役囚の刑務所内での自殺も、みな「ディープステート」の仕業と信じている陰謀論者がトランプ政権にはうようよしている。
七、トランプ氏自身、情報機関が嫌いだ。
歴代大統領は週6日、毎朝CIA長官らのブリーフィングを受けたが、トランプ氏の場合にはせいぜい週1日。
同氏は内外の情勢をポピュリスト的経験則と自らの「常識」で判断し、最後は勘で決定しているとさえ言われている。
八、トランプ氏は感覚や知覚による経験を重視するあまり、向こう見ずな政策を打ち出している。
高関税策については、エコノミストたちが反対しているにもかかわらず、(情報機関からの最新情報などには一切耳を貸さず、1980年代に見聞きした貿易不均衡からくる)経験則を繰り返している。
九、元CIA分析官のブライアン・オニール氏(ジョージア工科大学教授)は、「次に起こる情報機関の失敗には誰も驚かないだろう。それはトランプ氏の身から出た錆だからだ」とまで言い切っている。
と、高濱氏。
一期目のトランプ氏には、習近平氏との最初の会食でチョコレートケーキを食べながら「イラクに59発のミサイルを発射した」と伝え、度肝を抜くなどデールに革新が見られた。
対プーチンでもリードする姿勢。
しかし、後がない二期目の今期は、習近平には軽くいなされ、プーチンには逆に翻弄されている。
スタッフも、一期目は諫言する人材に恵まれていたが、喧嘩わかれが多発。今期はイエスマンが多数で裸の王様化・暴走。
高関税策については、エコノミストたちが反対しているにもかかわらず、(情報機関からの最新情報などには一切耳を貸さず、1980年代に見聞きした貿易不均衡からくる)経験則を繰り返している。
かろうじて、ベッセント財務長官の提言で実施期間延長とその間の交渉実現!
「次に起こる情報機関の失敗には誰も驚かないだろう。それはトランプ氏の身から出た錆だからだ」と、元CIA分析官のブライアン・オニール氏(ジョージア工科大学教授)。
高関税が始まると、その物価高騰被害を実感するのは米国の消費者や企業。
その時、トランプ氏への支持率はどうなるのでしょう??
自由主義の優国だった米国。トランプ氏の唱える「MAGA」は、「モンロー主義」への回帰・復古で、米国の孤立化を進めるのではと思うのは、遊爺が素人だから??
# 冒頭の画像は、トランプ大統領(2025年1月7日、後ろはピート・ヘグセス国防長官)

この花の名前は、キンケイギク
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そうした中、ニューヨーク・タイムズ(NYT)論説委員会が長い眠りから目覚めたと、高濱 賛氏。
ついに反撃の狼煙を上げた米メディア、トランプの政府機関私物化を糾弾 CIA、FBIを人事で掌握、メディア退治に乗り出したトランプに挑戦状 | JBpress (ジェイビープレス) 高濱 賛 2025.7.9(水)
トランプの名の下にできないことはない――。
ドナルド・トランプ米大統領の「MAGA」(米国を再び偉大に)政治に拍車がかかっている。
同氏は、選挙公約を盛り込んだ「大きくて美しい法案」(BBB)を立法化した。
「トランピズム」が法律となり、トランプ氏が米国を偉大な国にするという夢がかなう下地ができた。
対外的には高関税、同盟関係軽視のスタンス、国内的には政治の仕組みや慣行を強引にぶち壊し、強権を発動し、反対する者や裏切り者は徹底的に打ちのめす「マフィア的手法」(米保守派コラムニスト、デイビッド・フラム氏)を臆面もなく、見事なまでに取り入れている。
これだけのことを79歳のトランプ氏一人でできるわけがない。
2020年の大統領選に敗れ、野に下っている間に結集されたMAGA忠臣たちが準備してきた諸政策を「トランプの名の下に」打ち出し、トランプ氏はサインしているだけだと皮肉る向きもある。
メディアは連日、トランプ氏が機関銃を撃つようにSNSを通じて流す「出まかせ発言」(?)を一つひとつ精査する時間的余裕もないまま、「大本営発表」記事として報じている。
そうした中、「遅きに失した」(A day late and a dollar short)感すらあるが、ニューヨーク・タイムズ(NYT)論説委員会が長い眠りから目覚めた。
同紙が、7月6日付の紙面でトランプ氏の独断的政策をこれまでにないような過激な表現で批判したのだ。
「トランプ氏が米連邦捜査局(FBI)に政治干渉(Politicized)し、米国民の安全度を弱めている」
政敵の政策を批判する際に自らの政策を「武器化する」(Weaponized)という表現はしばしば使われる。
一方、「政治干渉(政治化)」(Politicized)するとは、政策を自らの政治的野心を実現するために使う行為を指している。
NYTの主張は、こうだ。
「トランプ氏は就任後11日の間にFBIの反トランプ派8人をパージし、いくつかの部門の機能を弱体化させた。さらに、就任後5か月間で国家安全保障対策のエキスパートを排除した」
「数百人にも及ぶFBI職員がトランプ氏の要求に従うことを拒否して辞任した」
「トランプ氏は、FBIをMAGAのアプリオリを実践する法執行機関に塗り替え、反トランプ分子を見つけ出し、追い出した」
「その後釜に親トランプ派を据え、知人たちやトランプ派に対してFBIが行ってきた捜査を差し止め、トランプ氏に批判的な職員に恐怖心を植え付けてきた」
「その好例が、FBIを長年にわたって批判してきた検察官出身のカシュ・パテル氏をFBI長官に据え、ダン・ボンジーノ氏を副長官に配置した人事だ」
「こうした公的機関の政治化はFBIだけでなく、司法省全体に及んでいる」
「その影響は中東での紛争に始まり、米国にとっての脅威となっているテロ、スパイ、生物兵器、サイバー攻撃、組織犯罪、ホワイトカラー犯罪、麻薬の密輸などの捜査に重大な影響を及ぼし始めている」
(Opinion | Trump’s Politicized F.B.I. Has Made Americans Less Safe - The New York Times)
■トランプはCIAをずたずたにした
公的機関の政治化は、米中央情報局(CIA)や国土安全保障省にも及んでいる。
外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」の最新号は、「Trump is Breaking American Intelligence」と題する記事を掲載した。
世界に冠たる米情報機関がトランプ氏の政治干渉によって弱体化していることに警鐘を鳴らした。
元CIA長官のマイケル・ヘイデン氏と元CIA分析官で英キングズ・カレッジのデイビッド・ジョーイ教授が共同執筆した。
(foreignaffairs.com/trump-breaking-american-intelligence)
要旨はこうだ。
一、米国の情報機関とそのシステムは世界の羨望の的だった。ところがトランプ政権のポピュリスト的手法で弱体化し始めている。
二、6月のイラン核施設空爆による損害状況をめぐってタルシ・ギャバード米国家情報長官は当初、「損害は限定的」と議会で証言していた。
ところが、トランプ氏が「核施設を完全に崩壊した」と発言するや、ギャバード氏は急遽前言を翻してトランプ氏に同調。
ピート・ヘグセス国防長官、ジョン・ラトクリフCIA長官ら政権高官らがこぞって空爆は大成功したと自画自賛した。
情報機関が集めた損害情報を自分に都合よく解釈したトランプ氏の発言に同調した。情報機関の情報を自らの政策に政治利用した好例だった。
三、トランプ氏はCIAはじめ各情報機関の各部門の専門官たちを排除し、トランプ氏に忠誠を誓ったシンパを配置した。
国家安全保障省のテロ対策部門の長には大学を出たばかりの人間をつけている。イラン空爆以後、予想されるテロ攻撃に対処する態勢としては考えられない人事と言える。
四、トランプ氏は、経験豊かな専門家や前政権から働いてきた資格のある官僚に対して強い疑念を抱いている。
その結果、情報機関で働く人間は、入手した情報、その分析でトランプ氏に「不都合なもの」は捨てたり、脚色したりする傾向が出ている。
五、歴代大統領は、情報の政治化を極力自粛してきた。それは情報機関の職務は入手した情報に正直に向き合うという鉄則によるものだ。
大統領にとってどんなに不利な情報であろうとも、大統領に報告することこそ国益を守る上での最優先任務だからだ。
ところがトランプ政権では一変してしまった。
六、 陰謀論がトランプ政権の情報機関にまで浸透している。
2021年の米連邦議会占拠事件はバイデン政権の内部者がたくらんだ事件だとか、ジョン・F・ケネディ暗殺も、少女買春受刑者のジェフリー・エプスタイン服役囚の刑務所内での自殺も、みな「ディープステート」の仕業と信じている陰謀論者がトランプ政権にはうようよしている。
七、トランプ氏自身、情報機関が嫌いだ。
歴代大統領は週6日、毎朝CIA長官らのブリーフィングを受けたが、トランプ氏の場合にはせいぜい週1日。
同氏は内外の情勢をポピュリスト的経験則と自らの「常識」で判断し、最後は勘で決定しているとさえ言われている。
同氏のスローガンは、微妙な意味合いを感じ取るニュアンスよりも平たいナラティブ(話術)、好奇心よりも陰謀・策略なのである。
八、トランプ氏は感覚や知覚による経験を重視するあまり、向こう見ずな政策を打ち出している。
高関税策については、エコノミストたちが反対しているにもかかわらず、(情報機関からの最新情報などには一切耳を貸さず、1980年代に見聞きした貿易不均衡からくる)経験則を繰り返している。
九、元CIA分析官のブライアン・オニール氏(ジョージア工科大学教授)は、「次に起こる情報機関の失敗には誰も驚かないだろう。それはトランプ氏の身から出た錆だからだ」とまで言い切っている。
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高濱 賛 Tato Takahama 米国在住のジャーナリスト
1941年生まれ、65年米カリフォルニア大学バークレー校卒業(国際関係論、ジャーナリズム専攻)。67年読売新聞入社。ワシントン特派員、総理官邸キャップ、政治部デスクを経て、同社シンクタンク・調査研究本部主任研究員。1995年からカリフォルニア大学ジャーナリズム大学院客員教授、1997年同上級研究員。1998年パシフィック・リサーチ・インスティテュート(PRI、本部はサウスパサデナ)上級研究員、1999年同所長
トランプの名の下にできないことはない――。
ドナルド・トランプ米大統領の「MAGA」(米国を再び偉大に)政治に拍車がかかっている。
同氏は、選挙公約を盛り込んだ「大きくて美しい法案」(BBB)を立法化した。
「トランピズム」が法律となり、トランプ氏が米国を偉大な国にするという夢がかなう下地ができた。
対外的には高関税、同盟関係軽視のスタンス、国内的には政治の仕組みや慣行を強引にぶち壊し、強権を発動し、反対する者や裏切り者は徹底的に打ちのめす「マフィア的手法」(米保守派コラムニスト、デイビッド・フラム氏)を臆面もなく、見事なまでに取り入れている。
これだけのことを79歳のトランプ氏一人でできるわけがない。
2020年の大統領選に敗れ、野に下っている間に結集されたMAGA忠臣たちが準備してきた諸政策を「トランプの名の下に」打ち出し、トランプ氏はサインしているだけだと皮肉る向きもある。
メディアは連日、トランプ氏が機関銃を撃つようにSNSを通じて流す「出まかせ発言」(?)を一つひとつ精査する時間的余裕もないまま、「大本営発表」記事として報じている。
そうした中、「遅きに失した」(A day late and a dollar short)感すらあるが、ニューヨーク・タイムズ(NYT)論説委員会が長い眠りから目覚めた。
同紙が、7月6日付の紙面でトランプ氏の独断的政策をこれまでにないような過激な表現で批判したのだ。
「トランプ氏が米連邦捜査局(FBI)に政治干渉(Politicized)し、米国民の安全度を弱めている」
政敵の政策を批判する際に自らの政策を「武器化する」(Weaponized)という表現はしばしば使われる。
一方、「政治干渉(政治化)」(Politicized)するとは、政策を自らの政治的野心を実現するために使う行為を指している。
NYTの主張は、こうだ。
「トランプ氏は就任後11日の間にFBIの反トランプ派8人をパージし、いくつかの部門の機能を弱体化させた。さらに、就任後5か月間で国家安全保障対策のエキスパートを排除した」
「数百人にも及ぶFBI職員がトランプ氏の要求に従うことを拒否して辞任した」
「トランプ氏は、FBIをMAGAのアプリオリを実践する法執行機関に塗り替え、反トランプ分子を見つけ出し、追い出した」
「その後釜に親トランプ派を据え、知人たちやトランプ派に対してFBIが行ってきた捜査を差し止め、トランプ氏に批判的な職員に恐怖心を植え付けてきた」
「その好例が、FBIを長年にわたって批判してきた検察官出身のカシュ・パテル氏をFBI長官に据え、ダン・ボンジーノ氏を副長官に配置した人事だ」
「こうした公的機関の政治化はFBIだけでなく、司法省全体に及んでいる」
「その影響は中東での紛争に始まり、米国にとっての脅威となっているテロ、スパイ、生物兵器、サイバー攻撃、組織犯罪、ホワイトカラー犯罪、麻薬の密輸などの捜査に重大な影響を及ぼし始めている」
(Opinion | Trump’s Politicized F.B.I. Has Made Americans Less Safe - The New York Times)
■トランプはCIAをずたずたにした
公的機関の政治化は、米中央情報局(CIA)や国土安全保障省にも及んでいる。
外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」の最新号は、「Trump is Breaking American Intelligence」と題する記事を掲載した。
世界に冠たる米情報機関がトランプ氏の政治干渉によって弱体化していることに警鐘を鳴らした。
元CIA長官のマイケル・ヘイデン氏と元CIA分析官で英キングズ・カレッジのデイビッド・ジョーイ教授が共同執筆した。
(foreignaffairs.com/trump-breaking-american-intelligence)
要旨はこうだ。
一、米国の情報機関とそのシステムは世界の羨望の的だった。ところがトランプ政権のポピュリスト的手法で弱体化し始めている。
二、6月のイラン核施設空爆による損害状況をめぐってタルシ・ギャバード米国家情報長官は当初、「損害は限定的」と議会で証言していた。
ところが、トランプ氏が「核施設を完全に崩壊した」と発言するや、ギャバード氏は急遽前言を翻してトランプ氏に同調。
ピート・ヘグセス国防長官、ジョン・ラトクリフCIA長官ら政権高官らがこぞって空爆は大成功したと自画自賛した。
情報機関が集めた損害情報を自分に都合よく解釈したトランプ氏の発言に同調した。情報機関の情報を自らの政策に政治利用した好例だった。
三、トランプ氏はCIAはじめ各情報機関の各部門の専門官たちを排除し、トランプ氏に忠誠を誓ったシンパを配置した。
国家安全保障省のテロ対策部門の長には大学を出たばかりの人間をつけている。イラン空爆以後、予想されるテロ攻撃に対処する態勢としては考えられない人事と言える。
四、トランプ氏は、経験豊かな専門家や前政権から働いてきた資格のある官僚に対して強い疑念を抱いている。
その結果、情報機関で働く人間は、入手した情報、その分析でトランプ氏に「不都合なもの」は捨てたり、脚色したりする傾向が出ている。
五、歴代大統領は、情報の政治化を極力自粛してきた。それは情報機関の職務は入手した情報に正直に向き合うという鉄則によるものだ。
大統領にとってどんなに不利な情報であろうとも、大統領に報告することこそ国益を守る上での最優先任務だからだ。
ところがトランプ政権では一変してしまった。
六、 陰謀論がトランプ政権の情報機関にまで浸透している。
2021年の米連邦議会占拠事件はバイデン政権の内部者がたくらんだ事件だとか、ジョン・F・ケネディ暗殺も、少女買春受刑者のジェフリー・エプスタイン服役囚の刑務所内での自殺も、みな「ディープステート」の仕業と信じている陰謀論者がトランプ政権にはうようよしている。
七、トランプ氏自身、情報機関が嫌いだ。
歴代大統領は週6日、毎朝CIA長官らのブリーフィングを受けたが、トランプ氏の場合にはせいぜい週1日。
同氏は内外の情勢をポピュリスト的経験則と自らの「常識」で判断し、最後は勘で決定しているとさえ言われている。
同氏のスローガンは、微妙な意味合いを感じ取るニュアンスよりも平たいナラティブ(話術)、好奇心よりも陰謀・策略なのである。
八、トランプ氏は感覚や知覚による経験を重視するあまり、向こう見ずな政策を打ち出している。
高関税策については、エコノミストたちが反対しているにもかかわらず、(情報機関からの最新情報などには一切耳を貸さず、1980年代に見聞きした貿易不均衡からくる)経験則を繰り返している。
九、元CIA分析官のブライアン・オニール氏(ジョージア工科大学教授)は、「次に起こる情報機関の失敗には誰も驚かないだろう。それはトランプ氏の身から出た錆だからだ」とまで言い切っている。
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高濱 賛 Tato Takahama 米国在住のジャーナリスト
1941年生まれ、65年米カリフォルニア大学バークレー校卒業(国際関係論、ジャーナリズム専攻)。67年読売新聞入社。ワシントン特派員、総理官邸キャップ、政治部デスクを経て、同社シンクタンク・調査研究本部主任研究員。1995年からカリフォルニア大学ジャーナリズム大学院客員教授、1997年同上級研究員。1998年パシフィック・リサーチ・インスティテュート(PRI、本部はサウスパサデナ)上級研究員、1999年同所長
トランプ米大統領の「MAGA」(米国を再び偉大に)政治に拍車がかかっている。
同氏は、選挙公約を盛り込んだ「大きくて美しい法案」(BBB)を立法化した。
2020年の大統領選に敗れ、野に下っている間に結集されたMAGA忠臣たちが準備してきた諸政策を「トランプの名の下に」打ち出し、トランプ氏はサインしているだけだと皮肉る向きもある。
メディアは連日、トランプ氏が機関銃を撃つようにSNSを通じて流す「出まかせ発言」(?)を一つひとつ精査する時間的余裕もないまま、「大本営発表」記事として報じている。
そうした中、ニューヨーク・タイムズ(NYT)論説委員会が長い眠りから目覚めた。
同紙が、7月6日付の紙面でトランプ氏の独断的政策をこれまでにないような過激な表現で批判したと、高濱氏。
NYTの主張は、こうだと。
「トランプ氏は就任後11日の間にFBIの反トランプ派8人をパージし、いくつかの部門の機能を弱体化させた。さらに、就任後5か月間で国家安全保障対策のエキスパートを排除した」
「数百人にも及ぶFBI職員がトランプ氏の要求に従うことを拒否して辞任した」
「トランプ氏は、FBIをMAGAのアプリオリを実践する法執行機関に塗り替え、反トランプ分子を見つけ出し、追い出した」
「その後釜に親トランプ派を据え、知人たちやトランプ派に対してFBIが行ってきた捜査を差し止め、トランプ氏に批判的な職員に恐怖心を植え付けてきた」
「その好例が、FBIを長年にわたって批判してきた検察官出身のカシュ・パテル氏をFBI長官に据え、ダン・ボンジーノ氏を副長官に配置した人事だ」
「こうした公的機関の政治化はFBIだけでなく、司法省全体に及んでいる」
「その影響は中東での紛争に始まり、米国にとっての脅威となっているテロ、スパイ、生物兵器、サイバー攻撃、組織犯罪、ホワイトカラー犯罪、麻薬の密輸などの捜査に重大な影響を及ぼし始めている」と、高濱氏。
公的機関の政治化は、米中央情報局(CIA)や国土安全保障省にも及んでいる。
外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」の最新号は、「Trump is Breaking American Intelligence」と題する記事を掲載した。
世界に冠たる米情報機関がトランプ氏の政治干渉によって弱体化していることに警鐘を鳴らした。
元CIA長官のマイケル・ヘイデン氏と元CIA分析官で英キングズ・カレッジのデイビッド・ジョーイ教授が共同執筆したと、高濱氏。
要旨はこうだ。
一、米国の情報機関とそのシステムは世界の羨望の的だった。ところがトランプ政権のポピュリスト的手法で弱体化し始めている。
二、6月のイラン核施設空爆による損害状況をめぐってタルシ・ギャバード米国家情報長官は当初、「損害は限定的」と議会で証言していた。
ところが、トランプ氏が「核施設を完全に崩壊した」と発言するや、ギャバード氏は急遽前言を翻してトランプ氏に同調。
ピート・ヘグセス国防長官、ジョン・ラトクリフCIA長官ら政権高官らがこぞって空爆は大成功したと自画自賛した。
情報機関が集めた損害情報を自分に都合よく解釈したトランプ氏の発言に同調。
三、トランプ氏はCIAはじめ各情報機関の各部門の専門官たちを排除し、トランプ氏に忠誠を誓ったシンパを配置。
四、トランプ氏は、経験豊かな専門家や前政権から働いてきた資格のある官僚に対して強い疑念を抱いている。
その結果、情報機関で働く人間は、入手した情報、その分析でトランプ氏に「不都合なもの」は捨てたり、脚色したりする傾向が出ている。
五、歴代大統領は、情報の政治化を極力自粛してきた。それは情報機関の職務は入手した情報に正直に向き合うという鉄則によるものだ。
大統領にとってどんなに不利な情報であろうとも、大統領に報告することこそ国益を守る上での最優先任務だからだ。
ところがトランプ政権では一変してしまった。
六、 陰謀論がトランプ政権の情報機関にまで浸透している。
2021年の米連邦議会占拠事件はバイデン政権の内部者がたくらんだ事件だとか、ジョン・F・ケネディ暗殺も、少女買春受刑者のジェフリー・エプスタイン服役囚の刑務所内での自殺も、みな「ディープステート」の仕業と信じている陰謀論者がトランプ政権にはうようよしている。
七、トランプ氏自身、情報機関が嫌いだ。
歴代大統領は週6日、毎朝CIA長官らのブリーフィングを受けたが、トランプ氏の場合にはせいぜい週1日。
同氏は内外の情勢をポピュリスト的経験則と自らの「常識」で判断し、最後は勘で決定しているとさえ言われている。
八、トランプ氏は感覚や知覚による経験を重視するあまり、向こう見ずな政策を打ち出している。
高関税策については、エコノミストたちが反対しているにもかかわらず、(情報機関からの最新情報などには一切耳を貸さず、1980年代に見聞きした貿易不均衡からくる)経験則を繰り返している。
九、元CIA分析官のブライアン・オニール氏(ジョージア工科大学教授)は、「次に起こる情報機関の失敗には誰も驚かないだろう。それはトランプ氏の身から出た錆だからだ」とまで言い切っている。
と、高濱氏。
一期目のトランプ氏には、習近平氏との最初の会食でチョコレートケーキを食べながら「イラクに59発のミサイルを発射した」と伝え、度肝を抜くなどデールに革新が見られた。
対プーチンでもリードする姿勢。
しかし、後がない二期目の今期は、習近平には軽くいなされ、プーチンには逆に翻弄されている。
スタッフも、一期目は諫言する人材に恵まれていたが、喧嘩わかれが多発。今期はイエスマンが多数で裸の王様化・暴走。
高関税策については、エコノミストたちが反対しているにもかかわらず、(情報機関からの最新情報などには一切耳を貸さず、1980年代に見聞きした貿易不均衡からくる)経験則を繰り返している。
かろうじて、ベッセント財務長官の提言で実施期間延長とその間の交渉実現!
「次に起こる情報機関の失敗には誰も驚かないだろう。それはトランプ氏の身から出た錆だからだ」と、元CIA分析官のブライアン・オニール氏(ジョージア工科大学教授)。
高関税が始まると、その物価高騰被害を実感するのは米国の消費者や企業。
その時、トランプ氏への支持率はどうなるのでしょう??
自由主義の優国だった米国。トランプ氏の唱える「MAGA」は、「モンロー主義」への回帰・復古で、米国の孤立化を進めるのではと思うのは、遊爺が素人だから??
# 冒頭の画像は、トランプ大統領(2025年1月7日、後ろはピート・ヘグセス国防長官)

この花の名前は、キンケイギク
↓よろしかったら、お願いします。

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